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2021年9月の記事

2021年9月30日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その119)牽引力の一般式(2)

【 例1 】

 C58形式機関車が50キロ/時の速度で運転しているとき、その平均有効圧力を4キロ/平方センチメートルとすれば、この場合発揮する指示牽引力を求めよ。

 ただし本機関車はシリンダー直径48センチ、ピストン行程61センチ、動輪直径152センチ、シリンダー数は2個である。

【 解 】

 機関車の指示牽引力は(66)式

P159_20210908095901

を用い、

  P =4 d =48 ℓ =61 D =152 n =2

を上式に代入すれば

P159_20210908095902


【 例2 】

 シリンダーの直径45センチ、ピストンの行程66センチ、動輪直径160センチなる3シリンダー機関車が、指示牽引力として11400キロを出すためには、蒸気の平均有効圧力はいくばくと成すべきか。

【 解 】

P159_20210908100001

を変形し

P159_20210908100002

しかるに 

  T =11400 D =160 n =3 d =45 ℓ =66

であるから、これを上式に代入すると

P159_20210908100003

 

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2021年9月29日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その118)牽引力の一般式(1)

第3編 機関車牽引力

第1章 牽引力の一般式

 蒸気機関車は缶内の蒸気をシリンダー内に供給し、この蒸気圧力を利用して、ピストンを前後に動かし、これをピストン棒、クロスヘッドおよび主連棒を経て車輪に伝え、この回転によって牽引力を発揮せしめるものである。

 今、

  d =シリンダーの直径(センチメートル)

  ℓ =ピストンの行程(センチメートル)

  p =シリンダー内のピストンに作用する蒸気の平均有効圧力(キロ/平方センチメートル)

  D =動輪の直径(センチメートル)

  n =シリンダーの数

  π =円周率

  T =牽引力(キログラム)

とすれば、ピストンが1行程する間に、シリンダー内で成す仕事は、ピストンの面積に蒸気の平均有効圧力を乗じた力に、ピストンの行程長さを乗じた

P157

である。

 しかるに動輪が1回転する間に、ピストンは1往復すなわち2行程を成すから、1個のシリンダーが成す仕事は

P157_20210907215601

となる。

 それ故 n 個のシリンダーを有する単式機関車が、動輪1回転の間に成す仕事は

P158

となる。

 また一方、動輪とレールとの間に成される仕事は、動輪1回転中に進んだ距離に、動輪の周囲に現れる牽引力を乗じたものであるから

P158_20210907215701

となる。

 機関車が牽引力を発揮するのは、シリンダー内の蒸気の圧力によるものであるから、ピストンの成した仕事量が動輪の周囲に現れる牽引力、として利用されるのものと仮定すれば、両者の仕事量は相等しいから次の式が成り立つはずである。

P158_20210907215801

 牽引力は一般にこの式から計算することができるが、この場合の牽引力は、シリンダー内のピストンに作用した蒸気の力が少しの損失もなく、全部機関車の牽引力として利用されるものと考えた牽引力であるから、これを特に指示牽引力と称している。

 しかしながら本式は、蒸気の平均有効圧力 P を除けば、他は機関車形式ごとに一定な値であるから、この P の変化によって、牽引力もまた変化することが知られ、従ってこの P をいかに変えるによっては、後で述べる様に指示牽引力のみでなく、動輪周牽引力をも表わすことができる。

 機関車の牽引力とは後で述べる様に、シリンダーの大きさより求めるシリンダー牽引力、および缶の容量より求める缶牽引力等の種類があるが、このいずれもが、この式中の蒸気の平均有効圧力の値を変更する事によって、求め得られるのである。

 ただ缶の容量による牽引力は、缶の蒸発量から各速度に対して適当な P を求めるため、非常に煩雑とはなるが、結局、本式が基となるのである。

 

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2021年9月28日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その117)エントロピーの応用(3)

(c)絞りの損失

 蒸気を絞って運転するのは不利益であることは、エントロピーによって容易に証明することができる。

36_20210905180301

 いま第36図に付いて、絞った場合を考えるに、温度 T(圧力P )なる蒸気を絞って圧力を下げ、温度を T₁ にする時は熱の一部が遊離し、この熱により蒸気はいく分過熱せられ、S 点で示される過熱蒸気となる。

 この2種の蒸気を、同一温度 T₂(圧力P₂ )まで膨張せしめる場合を比較するに、絞らない場合、蒸気が成す仕事(熱量)は面積 ABCD であるから、排気と共に捨てる熱量は OZDCG である。

 また絞った場合は、蒸気の成す仕事は DMLSE であるから、排気と共に捨てる熱量は OZDEJ である。それ故、絞った場合はしからざる場合に比し、CEJG だけ多くの熱を捨てることになり、明らかに損である事がわかる。今

  H =絞らない時の乾燥蒸気(すなわち B 点)1キログラムの有する熱量

  H₂ =吐出蒸気1キログラムの有する熱量

とすれば、絞らない時の蒸気の成す仕事 Q は

P155_20210905180301

 絞ったとき蒸気の成す仕事 Q₁ は

P156

 しかし絞りたる後、過熱せられたる蒸気の有する熱量は、最初の蒸気が有する熱量と等しいから OZMLSJ=OZABG=H である。よって

P156_20210905180401

 よって絞りにより生ずる損失は

P156_20210905180501

 絞りによる損失は、絞りの程度大なるに従って増加するのみならず、吐出圧力にも関係し、吐出圧力の高くなるほど、損失もまた増加するものである。

 エントロピーの応用は極めて広く、蒸気の研究には非常に大切なもので、種々の圧力に対し図表とせられた、モリエール線図( Mollier Diagram )のごときものがあるから、実際の場合は、このエントロピーダイヤグラムを使用するのが便利である。

 

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2021年9月27日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その116)エントロピーの応用(2)

(b) 断熱膨張によって成す仕事

35_20210905125901

 第35図において b 点で示す蒸気、すなわち温度 T、乾燥度 x なる蒸気を温度 T₁ まで断熱膨張せしめた場合の仕事を求めんに、最初蒸気の有する熱量は面積 OZAbD にして、膨張後の蒸気が有する熱量は OZadD であるから、その差 aAbd は仕事に変わった熱量である。

 しかして図形 OZAbD=OZAE+EAbD にして、EAbD は温度 T なる蒸気の潜熱にして、その面積は γx である。

 また OZAE は蒸気の顕熱にして、これを q とすれば、蒸気が最初有した熱量は

P154

 次に膨張後の蒸気、すなわち排出蒸気の有する熱量は

P154_20210905164001

であるから

P154_20210905164002

従って

P154_20210905164101

 しかるに膨張後における蒸気の乾燥度 x₁ は(63)式により

P154_20210905164102

であるから、これを上式に入れ

P154_20210905164201

 

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2021年9月26日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その115)エントロピーの応用(1)

7.エントロピーの応用

 例に付きエントロピーの応用を述べよう。

(a) 蒸気を断熱膨張せしめた時の蒸気中の水分

35_20210905125901

 いま第35図において b 点で示される蒸気、すなわち温度 T、乾燥度 x なる飽和蒸気を、温度 T₁ まで断熱膨張せしめた時、生ずる水分の量を求めてみよう。

 断熱膨張(または圧縮)では、蒸気は膨張中、少しも他から熱を受けず、また他に熱を与えないから、蒸気のエントロピーは一定である。

 それ故、断熱膨張により温度が T から T₁ に下降したとすれば、その状態は垂直線 bd で表わされ、膨張の終わりにおける蒸気の状態は d 点で示され、蒸気中の水分は

P152_20210905130101

に増加する。

 しかして膨張前の蒸気、すなわち b 点で表わされる蒸気のエントロピー φx は(60)式より

P152_20210905130102

である。

 次に膨張の終わりにおける蒸気の乾燥度、すなわち

P152_20210905130201

を x₁ とすれば、そのエントロピー φ₁ は

P152_20210905130202

である。

 膨張断熱ではエントロピーは一定であるから、両式は等しくなければならぬから

P153

 すなわち

P153_20210905130301

  T =膨張前の蒸気の温度(絶対温度)

  γ =T なる温度の蒸気1キログラムの潜熱(カロリー)

  x =膨張前の蒸気の乾燥度

  T₁ =膨張後の蒸気の温度(絶対温度)

  x₁ =膨張後の蒸気の乾燥度

  γ₁ =T₁ なる蒸気1キログラムの潜熱(カロリー)

 もし最初の蒸気が乾燥飽和蒸気なれば x=1 であるから

P153_20210905130401

 

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2021年9月25日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その114)過熱蒸気のエントロピー

6.過熱蒸気のエントロピー

 飽和曲線に達した蒸気、すなわち乾燥飽和蒸気をさらに熱すれば過熱蒸気となり、熱を加えるに従って蒸気の温度は上昇し、同時にエントロピーも増加する。

34_20210905101701

 いま温度 T なる乾燥飽和蒸気 Ts(過熱蒸気の温度)まで熱すれば、過熱蒸気の温度は第34図 BS に示すがごとく上昇し、この場合におけるエントロピーの増加 φ₁ は

P151_20210905101401

 Cp =温度 T より Ts まで蒸気を熱する間の平均比熱

である。よって過熱蒸気のエントロピー φs は、これに(59)式で示す飽和蒸気のエントロピーを加え

P151_20210905101402

 同様にして温度 T₁ なる飽和蒸気を S₁(過熱蒸気の温度は Ts₁ )まで過熱すれば、この場合における過熱蒸気のエントロピー φs₁ は

P151_20210905101501

である。


【 例 】

 摂氏ゼロ度の水1キログラムを、150℃において蒸気と成せば、エントロピーの増加は何程か。

【 解 】

 この例題では蒸気の温度 T=273+150=423℃

 蒸気の潜熱はヘンニン氏の式によれば

P152

 またレニョー氏の公式を用いれば

P152_20210905101601

  (注)ヘンニンおよびレニョー氏の公式に付いては蒸気の潜熱の項参照

 ここでは簡単なためレニョー氏の公式を用い計算すれば、第(59)式より

P152_20210905101602

 

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2021年9月24日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その113)飽和蒸気のエントロピー

5.飽和蒸気のエントロピー

 温度 T なる飽和蒸気を造るには、(1) まず摂氏ゼロ度の水を熱しこれを温度 T となし、(2) この水に潜熱 γ を加えて蒸気と成すのである。

32_20210903232101

 しかして水を蒸発温度 T まで熱する時のエントロピーの増加と、水の温度が上昇する関係は第32図の曲線 ZA で表わされ、OZAA₁ の面積 q は顕熱である。

 次に温度 T、すなわち A 点に達した水を蒸発するには、熱を加えるにも関わらず、水の温度は変化しないから AB は水平直線となり、潜熱を γ とすれば、水を蒸気に化するための

P148_20210903231701

である。よって乾燥飽和蒸気1キログラムのエントロピーの増加 φ は、(57)式と(58)式とを加え合わせ

P149_20210903231701

 もし蒸気中にある量の水分を含み、その乾燥度を x とすれば、蒸気1キログラムの潜熱は γx カロリーであるから、この場合のエントロピーの増加 φx は

P149_20210903231801

である。図において B は、温度 T を有する乾燥飽和蒸気の状態を表す点で、b はこれと同温および同圧を有する、湿潤蒸気の状態を示す点である。

33_20210903232201

 次に温度 T₁ において水が蒸発する時は、蒸発の状態に達せる水は第33図の C 点で表わされ、これに熱を加える時は、水はやはり一定温度 T₁ で蒸発するから、エントロピーの増加は T₁ を通る水平線 CB₁ によって表され、この温度における乾燥飽和蒸気の状態は B₁ 点で表わされ、この蒸気のエントロピーは

P150_20210903231901

で、これと同じ温度および圧力を有する、湿潤飽和蒸気のエントロピーは

P150_20210903231902

である。

 これと同様にして T₂ なる温度にて水を蒸発せしめる時は、水の状態は a にて、乾燥飽和蒸気の状態は B₂ にて表され、乾燥飽和蒸気のエントロピーは

P150_20210903232001

 また湿潤飽和蒸気のエントロピーは

P150_20210903232002

である。

 かように種々の温度において水が蒸発する場合の、乾燥飽和蒸気の状態を示す点 B,B₁,B₂・・・・・・等を求め、これを結ぶ時は B₁BB₂ のごとき曲線となり、この曲線を飽和曲線と言い、曲線 ZaAC を水線と言う。

 もし蒸発温度を漸次上げて行き、摂氏約374℃に達する時は、ついに飽和曲線 B₂BB₁ と水線 ZaAC とは一点に会するに至り、この点においては潜熱はゼロとなり、蒸気の全熱量は顕熱のみとなる。この温度を水の臨界温度と称し、これに対する圧力(225キロ/平方センチメートル)を、臨界圧力と称す。

 

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2021年9月23日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その112)エントロピー・水のエントロピー

3.エントロピー

 蒸気およびその他の気体が一つのサイクルを完成する時、成した外部仕事の量を熱量 Q に換算し、この熱量を一つの図形に表すことは、熱機関の研究上極めて必要な事である。

 これを図形に表すには、縦軸に温度を取るのが便利で、かようにすれば横軸には当然 T分のQ を表さねばならぬことになり、図形の面積は


P146

すなわち熱量を表すこととなる。

 この T分のQ なる関数をエントロピー(entropy)と言い、図形をエントロピー・ダイヤグラムと言う。

29_20210901104901

 いまこの事をわかりやすくするため、ある一定圧力の下に水が沸騰する場合を考えるに、この場合は如何ほど熱を加えても、その熱は全部蒸発に費やされ、温度は一定であるから、第29図のごとく横軸にエントロピーの増加を取れば、AB は OC に平行な直線となり、ダイヤグラム OABC の面積は

P146_20210901104801

にして加えられたる総熱量を表すことになる。

30_20210901105001

 次に第30図のごとく温度が変化する場合は、その平均温度を T とすれば、面積はやはり T×θ=Q にして、この間に加えられたる熱量を表す。

 さらに水を例に取り、エントロピーの増加を説明せんに、いま摂氏ゼロ度、すなわち絶対温度 273℃ の1キログラムを摂氏 10℃ に上げたる時、水の比熱を1とすれば、加えられたる熱量は10カロリーであるから、エントロピーの増加は

P147

である。この水をさらに温度10度上昇させる時は、この間におけるエントロピーの増加は前同様の方法により

P147_20210901105101

 よって最初の状態より増加した全体のエントロピーは

P147_20210901105102

 以上の説明はわかりやすくするため水を例に取り、しかもその比熱を1と仮定して求めたものであるが、一般には比熱は温度により相違し、物体に熱を加え、または取り去る時はその温度も変化するから、ある温度 T において、この温度が変化しないと考えられるほどの小熱量 △Q を加え(または取り去る)時は、T分の△Q は、その物体が有するエントロピーの変化である。

 かくのごとき小変化が引き続き起こり、物体の温度が T₁ より T₂ に変化したとすれば、全体のエントロピーの変化 φ は、これらの小変化を温度 T₁ より T₂ まで加え合わせたものに等しいから

P147_20210901105201

である。

31_20210901105301

 しかして今ある物体、例えば蒸気が第31図のごとくある状態 A から出発し、始めの状態 A に帰り一つのサイクルを完成する時は、途中の経路いかんに関係なく、その蒸気が有する熱量と温度は、最初の蒸気が有する熱量と温度に全く等しいから、エントロピーの変化はゼロである。

 すなわち

P148

 しかしてエントロピーの変化を測る基点は、どこに置いても差し支えないのであるが、蒸気の全熱量を考える場合と同様、便利なため摂氏ゼロ度を基点とする。それ故、一般に温度 T なる物体のエントロピーの変化 φ は

P148_20210901105401


4.水のエントロピー

 水に極めて少量の熱 △Q を加え、温度上昇を△T、水の比熱を1とすれば、△Q=△T×1 であるから、水の温度が 273℃ より、T℃ に変化した場合のエントロピーの変化は(55)式により

P148_20210901105501

 

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2021年9月22日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その111)ランキン・サイクル

2.ランキン・サイクル

 カノー・サイクルは全く理想的機関のサイクルにして、実際の機関の動作を研究するには不適当であるに鑑み、イギリス人ランキン(Rankine)氏は1854年、実際の蒸気機関の動作に最も近い一つのサイクルを考案した。

 一方、フランツ人クラシウス(クラウジウス:Clausius)氏もまた、サイクルの研究をなし、1856年ランキン氏の考案したサイクルと全く同一のサイクルを発表した。それ故このサイクルを、ランキン・サイクルまたはクラシウス・サイクルと言う。

 このサイクルは1896年英国において、熱機関の効率を定める場合の基準として採用せられるにおよび、広く世に認められる様になり、蒸気機関の研究には非常に重用せられる様になった。

28_20210829183101

 ランキン・サイクルは第28図に示すがごとく、四つの動作より成り

 (1)容積v、温度 T₂ ( D 点)なる水を缶に注入し、蒸気と同温度の水 T₁( A )に熱し

 (2)この水(圧力 P₁、温度 T₁ )に熱を加え、一定圧力 P₁ の下において全部蒸発せしめ、その容積が V₁( B )になったとする

 (3)この蒸気を圧力 P₂、容積 V₂、温度 T₂ なる C 点まで膨張せしめ

 (4)C 点において温度 T₂ の下に、蒸気を凝結せしめて OD と成し、初めの状態 D に帰らしめサイクルを完成するのであって、今

   L₁ =蒸気の潜熱

   T3 =過熱蒸気の温度

   Cp =過熱蒸気の平均比熱

とすれば、このサイクルの熱効率は次のごとくなる。

P145

 

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2021年9月21日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その110)カノー・サイクル

第6章 サイクルおよびエントロピー

1.カノー・サイクル(カルノー・サイクル)

 フランス人カノー(カルノー:S.Carnot)氏は、熱機関の動作を研究するため、1824年一つのサイクルを考案した。

 このサイクルは機関が、全く理想的な膨張および圧縮を成す場合に、実現せられ得べきもので、実際のサイクルとはいく分違うも、それ以来これを基として比較研究せられる様になった。

26_20210829130001

 カノー・サイクルは第26図に示すがごとく、四つの動作より成っている。すなわち

 (1)最初 A 点で示される圧力 Pa、容積 Va、温度 T₁ なるガスに熱を加え、これを圧力 Pb、容積 Vb、温度 T₁ なる B 点まで等温膨張せしめ

 (2)B 点にて熱の供給を絶ち、このガスを C 点(圧力 Pc、容積 Vc、温度 T₂ )まで断熱膨張を行わしめ

 (3)この状態のガスを、圧力 Pd、容積 Vd、温度 T₂ なる D 点まで等温圧縮せしめ

 (4)D 点より断熱圧縮により、始めの状態 A に帰らしめる

のである。この場合、圧縮点 D は圧縮の終わりにおけるガスの状態が、ちょうど最初の状態 A に帰る(一致)がごとく選定せねばならぬ。

 かくのごとく一つのサイクルが完成したる時、ガスが成した仕事を求めるに

 (a)ガスが A から B まで膨張する間に成す仕事

 この間に成す仕事は面積 ABVbVa にして、且つ等温膨張であるから仕事の量 Wa は(すなわち面積は)第32式より

P141_20210829130101

 (b)蒸気が B より C まで膨張する間に成す仕事

 この間は断熱膨張で、仕事は面積 BCVcVb にて表され、その量は第34式より

P141_20210829130201

 (c)圧縮により CD 間にて費やされる仕事

 C より D まで圧縮するに要する仕事は、逆に D から C まで膨張によって成す仕事と全く同一であるから

P142

 (d)D より A まで圧縮するに費やされる仕事

 圧縮に要する仕事は面積 DAVaVd にして、この間は断熱圧縮であるから

P142_20210829130301

よって蒸気の成した仕事 W は

P142_20210829130302

 ここで B および C 点にて示される蒸気の圧力、容積および温度の関係を考えるに、この間は断熱膨張であるから圧力、容積および温度の間には次の関係がある。

P142_20210829130401

 また DA も断熱圧縮であるから D と A の間にも次の関係がある。

P142_20210829130402

よって両式より

P142_20210829130501

すなわち


P142_20210829130601
P142_20210829130602

 これらの関係を(d)式に代入すれば

P142_20210829130701

 次に CD 間は等温圧縮であるから PcVc=PdVd である。この関係を(d)式に入れ

P142_20210829130702

 これを(b)式と比較するに全く同一であるから Wd=Wb である。よって(51)式は

P143

 しかるに(e)式により

P143_20210829130801

であるから

P143_20210829130901

 完全気体においては第29式により PV=RT なる関係があるから、圧力 Pa および Pd に対する温度をそれぞれ T₁ および T₂ とすれば、上式は次の様になる。

P143_20210829130902

 しかして、これだけの仕事を成さしめるために与えた全体の熱量は

P143_20210829130903

であるから、このサイクルの熱効率は

P143_20210829131001

 このカノーサイクルを、蒸気機関に当てはめるとどうなるかと言うに、第26図の等温線 AB および CD は、第27図の AB および CD で示すがごとく圧力一定な線となり、前記四つの動作は次のごとくなる。

27_20210829131101

 (1)まず最初、容積 OK、圧力 KA、温度 T₁ なる水を、一定圧力 KA の下にて熱しことごとく蒸発せしめ、蒸気の容積が OL になったとする。この動作は実際の場合は缶内において起こることで、直線 AB で表わされる。

 (2)ここで熱の供給を止め、この蒸気をシリンダー内に入れ、その容積を OM まで断熱膨張せしめる時は圧力 MC、温度 T₂ となり、この動作は曲線 BC で表わされる。

 (3)C 点で示される蒸気(圧力MC、容積OM、温度T₂ )を、同圧力および同温度の水に還元せしめる時は、水の容積は ON となり、その動作は直線 CD で表わされる事になる。

 (4)D 点より DA に沿い、断熱圧縮により容積 OK、圧力 KA、温度 T₁ になる点 A に帰らしめ、始めの状態に戻らしめるのである。

 図中、水の容積 OK は、蒸気の容積 OL に比較すれば非常に小であるから、実際においては点 A は縦軸 OY の上にあると考えても良い。

 

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2021年9月20日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その109)蒸気膨張の利益とその限度

7.蒸気膨張の利益とその限度

 蒸気はこれを膨張せしめて利用するのが利益であることは、既に述べたところであるが、これをさらに具体的に説明せんに、計算を簡単にするため蒸気は PV=C すなわち等温膨張を成すものと仮定し、膨張比が 5、3分の10、2 および 75分の100 なる場合、平均背圧を 11分のP と仮定して、仕事の割合を比較すると次の通りである。

P139_20210825100501

 これによって見るに、蒸気を膨張させる程利益にして、膨張比 7.5分の10 なる場合は、実に3.75倍の蒸気を消費するに関わらず、有効仕事はわずかに1.985倍に過ぎなく、いかに膨張せしむる事が利益であるかがわかる。

 かく蒸気を膨張させて使用することは利益ではあるが、膨張にも一定の限度があって、それ以上はかえって損失となる。

 蒸気膨張の限度を支配するものは、背圧とシリンダー内における蒸気の凝結で、もし極度に膨張させるときは、行程の終端における圧力はかえって背圧よりも低くなり、ピストンは逆に押し返され負の仕事を成す。

 また行程の終端における圧力が極度に低いことは、蒸気の温度もまた極めて低い事となるから、これがためシリンダーを冷やし、次に入り来る蒸気を冷却せしめて凝結を促し、膨張による利益と相殺されるに至る。

 実験によれば最も有利な膨張は、吐出点の圧力が 3分の1 ~ 3分の2 キロ/平方センチメートル(ゲージ圧力)なる時で、これに対する締切は缶圧力、蒸気の種類等によって異なるが、大体15%付近である。

 

257p139_20210825100201
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2021年9月19日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その108)指圧線図とこれより平均有効圧力を求める方法

6.指圧線図とこれより平均有効圧力を求める方法

 インジケーターという装置により、シリンダー内における実際の蒸気の圧力を描かしめたる図を、指圧線図(インジケーター・ダイヤグラム)と言い、これにより機関が成す実際仕事を精密に計算する他、その形状により弁調整の良否、背圧蒸気の温度等、シリンダー内における蒸気の一切の動作を知ることができる。

25_20210824231001

 第25図は指圧線図を示したもので、この図を描かしめるにはまず最初、大気圧線 XX を引いておき、それに線図 ABCDEF を描かせるのである。

 図はピストンが左側より動き始めた場合を示し、ピストンは最初 AB なる(高さで示す)圧力にて押され、B にて締切を起こし、それより蒸気は B に沿って膨張し、C に至りたるとき吐出を起こすから、シリンダー内の圧力は CD のごとく急に降下し、終端 D に達すれば、ピストンは DX なる背圧を受けつつ左方へ動き、E にて圧縮を起こし、これより圧力は EF に沿って上昇し、F 点に達したとき給気を始めるから、圧力は FA に沿って急に上昇する。

 この場合、蒸気が成した仕事は明らかに ABCDEF であって、FAB を給気線、(FA を特にリード線とも称す)、BC を膨張線、CD を吐出線、DE を背圧線、EF を圧縮線と言い、B は締切点、C を吐出点、E を圧縮点、F を給気点と言う。

 蒸気の平均有効圧力は、この指圧線図の面積を求め、これを行程の長さにて除したるものが最も正確である。

 面積はプラニメーター(Planimeter:面積計)と称する器械を使用すれば、極めて簡単にしかも正確に計算する事ができるが、しからざる場合は、図のごとく行程 XX を n 等分(ふつうは十等分)し、分点 a,b・・・・・・に垂線を立て、さらに各分点の中央に垂線 P1,P2・・・・・・を立てるときは、各細片の面積はそれぞれ P1,P2・・・・・・に行程の n分の1 の長さを乗じたものであるから、全体の面積は

P139

P139_20210824231101

は平均有効圧力であるから、高さ P1,P2・・・・・・をインジケーターのバネの縮尺にて読み、これらを全部加え合わせて n 等分すれば、求める平均有効圧力である。

 

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257p139

2021年9月18日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その107)過熱蒸気と飽和蒸気の成す仕事の比較

5.過熱蒸気と飽和蒸気の成す仕事の比較

 蒸気が断熱膨張を成す際には、容積と圧力の間には

P136_20210824102301

なる関係を有するために

P136_20210824102302

する。

 この γ は常に1より大なる値の数であるから

P137

である。それ故、圧力 P は γ の大きいほど低くとも良い。

 そこで過熱蒸気と飽和蒸気に付いて γ の大きさを比較するに、前者は1.135~1.28、後者は16分の17~9分の10=1.062~1.111であるから、過熱蒸気の方が大である。

 それ故、シリンダーに同一容積だけ給気する時、換言すれば同一締切で運転する時は、過熱蒸気の方がいく分圧力が低く、蒸気の成す仕事が小である。

24_20210824102701

 第24図はこの関係を示したもので、同一点 B で締切るときは飽和蒸気は BC に沿い、過熱蒸気は BD に沿って膨張するから、過熱蒸気の方が仕事が小さく、従って平均有効圧力もいく分小となる。

 しかし過熱蒸気は容積が大であるから、同一重量の成す仕事ははるかに大である。図において AB を飽和蒸気1キロとすれば、過熱蒸気の容積は AB₁ となり、各1キロの成す仕事は結局、過熱蒸気の方が大である。

 飽和蒸気に比し過熱蒸気が何程利益になるかは、過熱度により相違するも γ の大小、蒸気の凝結、ワイヤー・ドローイング、缶効率等を考えない時は、蒸気1キロと作るに要する蒸量と容積の増加により、その大体の比を求める事ができる。

 例えば14キロ/平方センチメートルの飽和蒸気と、これを300℃に過熱した過熱蒸気とを比較するに、給水温度を15℃とすれば

  飽和蒸気1キロの全熱量=652.4カロリー

  飽和蒸気1キロの容積=0.1346立方メートル

  過熱蒸気1キロの全熱量=711.8カロリー

  過熱蒸気1キロの容積=0.1739立方メートル

で、過熱蒸気1キロを作るためには

P137_20210824102901

多くの熱量を要するも、容積において

P137_20210824102902

増加するから差引き

P138

ほど利益となる事がわかる。

 

255p136_20210824101601
255p137
256p138

2021年9月17日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その106)ダイヤグラム・ファクター

4.ダイヤグラム・ファクター

 ダイヤグラム・ファクターとは、実際の平均有効圧力の、理論的平均有効圧力に対する比を言う。

 このファクターは蒸気の膨張率、速度、シリンダー保温装置の有無、弁の種類等により著しく相違し、膨張率が大となるに従って小となり、シリンダー保温装置を有するものは、しからざるものに比し大である。また、キノコ弁のごとく開閉の動作敏速なるものは、滑り弁に比し大である。

 速度に関しては、一般に高速度となるに従い、蒸気が弁にて絞られる程度が大となるから、速度が高くなると共に小となる。

 かようにこのファクターは、種々の原因により相違するものであるから、正確な計算をするには各機関車に付き、正確なファクターを定めておかねばならぬ。

 

255p136

2021年9月16日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その105)断熱膨張によって成す仕事および平均有効圧力(2)

【 例 】

 前記130ページの等温膨張における例題を断熱膨張として、蒸気の成す仕事と平均有効圧力を求めよ。ただし γ の値は1.1とする。

【 解 】

 シリンダー容積

  V₂ =0.1455立方メートル

  P₁ =140000キロ/平方メートル

  P₃ =15000キロ/平方メートル

  C =0.3

  μ =0.15

  α =0.7

  γ =1.1

であるから、これらの値を(49)式に入れ


P134_20210823211801
P135_20210823211901

 よって平均有効圧力 Pm は

P135_20210823212001

 この値を前記、等温膨張として計算した時の値と比較するに、断熱膨張の場合は等温膨張に比し、蒸気の成す仕事は少なく、背圧によって費やされる仕事はかえって多い。それ故、平均有効圧力もいく分低くなる事が了解されよう。

 以上述べたる公式により求めた蒸気の仕事と、平均有効圧力は全く理論上の値であるから、一種の理想機関が成す仕事と平均有効圧力とである。

 実際の機関車においては、缶より供給せられる蒸気は長い通路を通るため、摩擦および冷却等により蒸気は熱の一部を失ない、いく分圧力の降下を生じ、シリンダーに供給せられる蒸気の圧力は、缶圧力に比し低く、速度の増すに従いその差が大となるものである。

 且つ狭い給気口を通過する際、弁によって絞られるため、シリンダー内の蒸気圧力はピストンの進むにつれ、漸次降下する傾向を有し、高速度となるに従い降下もはなはだしくなる。

 それ故、シリンダーの蒸気圧力は、第23図(b)の点線 AB₁ のごとく漸次降下する。

23b

 それ故、理論上 P なる圧力を有する蒸気が、V 立方メートル供給せられるに対し、実際は圧力 P₁ なる蒸気が、V 立方メートル供給せられることになるから、膨張中の圧力も理論上の BC に対し、実際は B₁C のごとく低くなり、且つ行程の終端より少し手前の位置 G において排気を始め、以後圧力は急激に低くなるから、理論上のものに比し ABCDGB₁ だけ仕事が小となる。

 なお、この他、完全気体に非ざる蒸気を完全気体と考え、あるいは完全なる等温、または断熱膨張を成すものと仮定する等のため、理論的計算によって求めた値は実際の値より大である。

 それ故、ふつうは計算値をもって直ちに真の値とせず、これにダイヤグラム・ファクターを乗じて実際に近い値を求める。

 

253p134_20210823211301
253p135
255p136

2021年9月15日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その104)断熱膨張によって成す仕事および平均有効圧力(1)

3.断熱膨張によって成す仕事及び平均有効圧力

 断熱膨張は、蒸気とシリンダーとの間に熱の受授が行われないから、膨張により機械的仕事を成せば、蒸気は仕事に化せられただけの熱量を失なうをもって、蒸気の有する熱量は膨張と共に減少し、その温度が降下するから、蒸気の容積は膨張するに従って漸次減少し、圧力と容積の関係は次の式で表わされる。

   PVɤ =C

23a

 第23図(a)において LO をピストン隙間容積、B を締切点とすれば、シリンダー内の蒸気圧力は PVɤ = 一定なる曲線 BC に沿って降下し、任意の点における圧力と容積の関係は


P131

である。

 今 O および D 点を行程の両端とすれば、ピストンが O より D へ動く場合、蒸気が成す仕事は

  面積 OABCD=OABE+EBCD

 返り行程において背圧のために損失となる仕事は

  面積 DFGJO=DFGH+HGJO

であるから有効仕事 W は

  W =面積 OABCD-面積 DFGJO

      =ABCFGJ=(OABE+EBCD)-(DFGH+HGJO)

 いま OABE、EBCD、DFGH および HGJO の面積、すなわち仕事量をそれぞれ W₁,W₂,W₃ および W₄ とすれば


P131_20210822185301
P132

 従って蒸気が成したる仕事は

P132_20210822185501


 背圧により費やされた仕事は

P132_20210822185502

 今(a)(b)両式を変形すれば(a)式は

P132_20210822185601

 膨張断熱では

P132_20210822185602

であるから

P132_20210822185701

故に

P132_20210822185702

これを上式に入れ

P132_20210822185901

 今 C を締切比、μ をピストン隙間容積のシリンダー容積 V₂ に対する比とすれば

P132_20210822185902

よって

P132_20210822190001

 同様の方法により(b)式は

P133_20210822190101

 ただし a =圧縮の始まる位置 H 点の行程に対する比にして DH/DO なり。

 故に有効仕事 W すなわち面積 ABCFGJ は

P133_20210822190201

 W =蒸気の成す有効仕事(キログラムメートル)

 P₁ =シリンダーに供給せられた蒸気の圧力(キロ/平方メートル)

 V₂ =ピストン隙間容積=π/4×d²ℓ )立法メートル

 C =小数にて示した締切比

 μ =ピストン隙間容積のシリンダー容積 V₂ に対する比(小数にて示す)

 P₃ =背圧(キロ/平方メートル)

 a =圧縮点の行程に対する比(小数にて示す)

 従って平均有効圧力 Pm は

P133_20210822190202

 上式中の ɤ は、低圧比熱 Cp の定積比熱 Cv に対する比 Cp/Cv にして、等温膨張の場合を除き(等温膨張の時は1である)常に1より大で、過熱蒸気と飽和蒸気とにより異なるはもちろん、ジャケットの程度ならびにその有無により相違する。

 乾燥飽和蒸気に対しては ɤ=1.135 であるが、湿潤飽和蒸気のときは次の式で表わされる値である。

   ɤ =1.035+0.1x

 ただし x は蒸気の乾燥因子にして、蒸気中の水分を w% とすれば

P134_20210822190301

である。

 ふつう蒸気機関のシリンダー内における蒸気は、決して完全なる断熱膨張を成すものではなく、実際はむしろ等温膨張に近い膨張を成すものであるから、計算には次のごとき値を採用するのが普通である。

P134_20210822190302

 過熱蒸気に対しては、従来 ɤ=1.3 を採用せられていたが、ɤ の値は温度と圧力により相違し、その後研究の結果によれば ɤ の値は大体次の範囲である。

   ɤ =1.135~1.28

 

253p130_20210822135001
253p131
253p132
253p133
253p134

2021年9月14日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その103)等温膨張によって成す仕事および平均有効圧力(3)

22_20210818120001

(d)面積 HGJO

 この面積は圧縮に費やされる仕事であって、等温圧縮とすれば(32)式により

P129_20210818184401

以上により蒸気が成す有効仕事 w は

P129_20210818184402

 W =蒸気の成す有効仕事(キログラムメートル)

 P₁ =シリンダーに供給せられた蒸気の絶対圧力(キロ/平方メートル)

 P₃ =絶対圧力にて示した背圧(キロ/平方メートル)

 V₂ =ピストン行程両端間のシリンダー容積(立方メートル)

 C =小数にて示した締切割合= OE/OD

 μ =ピストン隙間容積のシリンダー容積 V₂ に対する比= V₄/V₂

 α =圧縮点の行程に対する比= DH/OD

 E =蒸気の膨張率にして 1+μ/C+μ なり

 (47)式は、蒸気がシリンダー内において成す有効仕事であるから、平均有効圧力 Pm は

P129_20210818184501


【 例 】

 直径530ミリ、行程660ミリなるシリンダーに、ゲージ圧力13キロ/平方センチメートルの蒸気を供給し、30%の締切にて運転する時の仕事量と、平均有効圧力とを求めよ。

 ただしピストン隙間容積のシリンダー容積に対する比は15%、背圧0.5キロ/平方センチメートル(ゲージ圧力)、圧縮点は行程の70%の位置とする。

【解】

 シリンダー容積

P130

 これらの値を(45)式に代入すれば仕事量 W は

P130_20210818184601

 平均有効圧力 Pm は

P130_20210818184602

となる。

 

252p129
253p130

2021年9月13日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その102)等温膨張によって成す仕事および平均有効圧力(2)

22_20210818120001

(a)矩形 OABE の面積

 蒸気の圧力を P₁ キロ/平方センチメートル(絶対圧力)とすれば、ピストンを動かす総圧力は

P128

にして、この力をもってピストンを OE だけ動かせば、蒸気の成す仕事 W₁ は

P128_20210818142301

である。

 今、

 P₁ =面積1平方メートル当たりの圧力(キログラム)(絶対圧力)

 D =シリンダーの直径(メートル)

とすれば


P128_20210818142501

であるから

P128_20210818142601

P128_20210818142602

は行程の左端 O から締切点 E までのシリンダーの容積で、これは明らかに V₁ (立方メートル)であるから

P128_20210818142701

(b)面積 EBCD

 蒸気が膨張によって成した仕事は面積 EBCD で表わされ、その仕事量を W₂ とすれば(32)式より(ただし2.3026は省略して2.3とする)

P129_20210818142801

(C)面積 DFGH

ピストンが D から H へ動く間、圧力が一定であるとすれば、先に面積 OABE を求めたと全く同じ方法で


P129_20210818143001

 

252p128
252p129

2021年9月12日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その101)等温膨張によって成す仕事および平均有効圧力(1)

2.等温膨張によって成す仕事および平均有効圧力

22_20210818120001

 第22図は、シリンダー内における蒸気の作用を示したもので、図中 LO をピストン隙間容積、O および D 点を行程の両端とすれば、ピストンは工程の左端 A より締切点 B まで P₁ なる圧力にて圧され、B 点以後蒸気は 圧力×容積=一定、すなわち P₁(V₁+V₄)=C なる関係にて膨張し、圧力は曲線 BC に沿って降下し、終端 C に達した時 P₂ となる。

 次の行程においてピストンは P₃ なる背圧を受けつつ、圧縮点 G まで動かされ、G から圧縮を始めるから、ピストンの進むに従い、圧力は曲線 GJA に沿って上昇し、行程の終端 O に達した時 P₁ となる。

 この場合、蒸気の成した仕事は、ピストンが O より D へ動く場合は面積 OABCD で表わされ、次の行程において背圧のため面積 DFGJO だけの仕事が費やされるから、差し引き蒸気が成した有効仕事は面積 ABCFGJ である。

 しかして

  面 積 OABCD=OABE+EBCD

  面 積 DFGJO=DFGH+HGJO

であるから

  有効仕事 ABCFGJ=(OABE+EBCD)-(DFGH+HGJO)

 よって有効仕事を求めるには、以上4つの面積を求め、その差を求めれば良い。

 

252p127
252p128

2021年9月11日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その100)シリンダー内における蒸気の膨張

第5章 シリンダー内における蒸気の作用

1.シリンダー内における蒸気の膨張

 蒸気は完全気体でないから、厳密に言えば膨張および圧縮の関係は、気体の法則に一致しないのであるが、シリンダー内における蒸気の作用を論ずる場合には、その圧力、容積および温度の関係は、気体の法則に一致するものとみなす。

 しかして気体の膨張(または圧縮)は、等温膨張(または圧縮)と断熱膨張(または圧縮)とに区別されるが、蒸気の場合にもまた等温膨張と断熱膨張の2種に分けられ、蒸気がシリンダー内において膨張する際、その温度が一定に保たれるときは、これを等温膨張と言い、また蒸気が膨張する際、シリンダーとの間に熱の受授が行われないときは、これを断熱膨張と言う。

 蒸気がシリンダー内で膨張する時は膨張に伴い、蒸気の有する熱の一部は機械仕事に変えられるものであるから、等温膨張の場合は、適当の方法により絶えず外部から熱を補給し、蒸気の温度を一定に保たねばならぬ。蒸気がシリンダー内で膨張する際、蒸気の温度を終始一定に保つことは非常に困難な事であるが、

(1)シリンダーにジャケットを有し、そのジャケットから与える熱により、シリンダー内の蒸気中に含有する水分を蒸発し得る場合

(2)完全気体の状態を成した過熱蒸気を使用し、これが膨張の際、ジャケットその他の装置により温度を一定に保ち得る場合

は、大体等温膨張とみなす事ができる。

 また、断熱膨張のごとく蒸気が膨張の際、シリンダー壁との間に熱の受授が全然行われないというがごとき事は、元より有り得べからざる事ではあるが、高速度機関ではピストン速度が極めて大であるから、シリンダー壁との間に熱の受授が行われる暇がないものと見ることができるから、機関車および発電機運転用の蒸気機関のごとき高速度機関は、ジャケットの有無に関わらず断熱膨張と考えて良い。

 

251p126
252p127

2021年9月10日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その99)過熱蒸気の全熱量

11.過熱蒸気の全熱量

 過熱蒸気は飽和蒸気を過熱したものであるから、その全熱量は飽和蒸気に比し、過熱に要したる熱量だけ大である。

 今、

  Ts =飽和蒸気の温度(℃)

  T =過熱蒸気の温度(℃)

  Hs =飽和蒸気の全熱量(カロリー/キログラム)

  H =過熱蒸気の全熱量(カロリー/キログラム)

  Cp =蒸気の温度を Ts より T まで上げる間の平均比熱

とすれば、過熱蒸気の全熱量は次の式で表わされる。

P124_20210818103101

 次表は(44)式により、過熱蒸気の全熱量を計算するに必要なる、平均比熱を示すものである。



P125_20210818103201
P125

 上式により、過熱蒸気の全熱量を求めることはできるが、多くの場合、平均比熱表は、ある特定の温度と圧力に対してのみ掲げられているから、任意の圧力と温度を有する過熱蒸気の全熱量を、求めることができない不便がある。

 今、

  t =過熱蒸気の温度(℃)

  P =過熱蒸気の絶対圧力(キロ/平方センチメートル)

  T =過熱蒸気の絶対温度(℃)

  H =圧力 P 温度 t℃ なる過熱蒸気の全熱量(カロリー/キログラム)

とすれば、任意の圧力と温度を有する過熱蒸気の全熱量は、次の式で表わされる。

P125_20210818103401


【 例 】

 缶使用圧力16キロ/平方センチメートル、給水温度摂氏20度なる時、摂氏300度の過熱蒸気の全熱量を求めよ。

【 解 】

 過熱蒸気の全熱量は、第(45)式または(46)式で計算するか、あるいは上の表より直接求めるかの3つの方法があるが、ここでは(44)式で求めてみよう。

 缶圧力16キロ/平方センチメートルは、これを絶対圧力に直すと17キロ/平方センチメートルで、この圧力の飽和蒸気の温度は203.4℃、全熱量は668.1カロリーであるから、過熱蒸気の過熱度は

   300-203.4=96.6度

である。

 次に平均比熱表を見るに、過熱度96.6度の欄が無いから、75度と100度の比熱から比例によって求めると、96.6℃の平均比熱は0.582であるから、過熱蒸気の全熱量は、

   668.1+0.582×96.6-20=704.3カロリー

 

2411p124_20210818102601
2411p125
251p126

2021年9月 9日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その98)過熱蒸気の容積

10.過熱蒸気の容積

 過熱蒸気1キログラムの容積は、圧力と過熱度によって相違し、蒸気の温度が同一な時は圧力の高くなるに従って、その容積が小となる事は飽和蒸気と全く同じである。

 圧力が同一なる場合は、その容積はほぼ蒸気の絶対温度に比例するものと考えて良いが、厳密に言うと過熱蒸気は完全気体でないから、この方法は近似値を求める場合に用いられ、正確な容積は一般に次式にて計算される。

 T =過熱蒸気の絶対温度(℃)

 P =過熱蒸気の絶対圧力(キロ/平方センチメートル)

 v =過熱蒸気1キロの容積(立方メートル)

とすれば

P123_20210816225201


【 例 】

 缶の圧力14キロ/平方センチメートル、温度摂氏300度なる過熱蒸気1キロの容積を求めよ。

【 解 】

 缶の圧力14キロ/平方センチメートル、温度300℃ であるから

 P =(14+1)=15キロ/平方センチメートル

 T = 300+273=573℃

にして、これを前の式に入れ

P124

であるから、摂氏300℃の時の過熱蒸気1キログラムの容積 v は(44)式により

P124_20210816225301

 次に蒸気の容積が、絶対温度に比例するものとする概略計算によって求れば、ゲージ圧力14キロ/平方センチメートルなる飽和蒸気の性質表より、容積0.1346立方メートル、温度197.4度である。

 一方、過熱蒸気の温度は 300℃ であるから

P124_20210816225302

となり

P124_20210816225303

の誤差を生ず。

 

2410p123_20210816224801
2411p124

2021年9月 8日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その97)過熱蒸気の比熱

9.過熱蒸気の比熱

 過熱蒸気の比熱は、圧力と過熱度とによって相違し、第21図に示すがごとく圧力が高くなるに従って大となり、また過熱温度の上昇に伴い減少し、300℃ 付近で最小となり、それより徐々に大となる性質を有する。

21_20210815170101

 かく温度の上昇に伴い比熱が小となるため、過熱温度を高めるに従い過熱に要する熱量が減じ、比較的少量の熱をもって、高温な過熱蒸気を得ることになる。

 一方、缶のごとく圧力一定の場合は、蒸気の容積は大体その絶対温度に比例して増加するものであるから、過熱温度を高めるほど有利である。

 

249p122
2410p123

2021年9月 7日 (火)

機関車の構造及理論:下巻(その96)過熱蒸気の利益

8.過熱蒸気の利益

 過熱蒸気の有利な点を挙げれば、大体次の通りである。

(1)容積が増加すること

 過熱蒸気は、過熱のために相当の熱量を要し、且つ蒸気の膨張割合が小なるため、同一容積の仕事量は飽和蒸気に比しいく分小なるも、容積が増加するため、重量1キログラム当たりの仕事量は、飽和蒸気に比しはるかに大である。

 この事は熱量的に考えると、飽和蒸気に比し全熱量も多いが、有効に利用し得る部分の熱が、より大なるがためである。

(2)復水を防止し得ること

 過熱蒸気は、飽和蒸気をさらに熱したものであるから、膨張の際、飽和蒸気固有の温度に低下するまでは、決して復水を起こすことがない。

(3)流動性に富み、且つ熱の不良導体であること

 過熱蒸気は、飽和蒸気に比し、はるかに完全気体に近いから流動性に富み、ワイヤー・ドローイングが少ない。それ故、シリンダー内に進入した蒸気の初圧力は、飽和蒸気に比し大である。従って平均有効圧力が高くなり、仕事量が増し、これがため牽引力も大となる。

 次に、過熱蒸気が熱の不良導体であることは、蒸気室およびシリンダー内において、熱損失が少なくなる利益がある。

 

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2021年9月 6日 (月)

機関車の構造及理論:下巻(その95)過熱蒸気


7.過熱蒸気

 飽和蒸気に熱を加え、飽和蒸気固有の温度以上に熱した蒸気を、過熱蒸気という。

 過熱蒸気は温度の高まるに従い、漸次完全気体に近付き、容積を一定に保つときは圧力が上昇し、圧力を一定に保つときは、その容積が増加する。

 機関車の過熱器は、蒸気管および加減弁により缶内に通じているから、過熱蒸気の圧力は缶内の飽和蒸気圧力に等しく、過熱の結果、容積が膨張し、過熱蒸気機関車は飽和蒸気機関車に比し、20~30%の石炭および使用水量を節約することができる。


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2021年9月 5日 (日)

機関車の構造及理論:下巻(その94)相当蒸発量および蒸発因子

6.相当蒸発量および蒸発因子

 缶の蒸発成績は、石炭1キログラムが蒸発した水量をもって比較するを常とするも、蒸気1キログラムの全熱量は給水温度、缶の使用圧力によって相違するから、直ちに蒸発水量をもって比較することができない。

 それ故、実際蒸発した水量は、これを摂氏100度の水を大気圧の下において蒸発する量に換算し、その大小を比較するのが便利で、この換算した量を相当蒸発量という。

 蒸発水量を換算するに当たり給水温度を t℃ とすれば、蒸気1キログラムを蒸発するに要した実際の熱量は、飽和蒸気の性質表から、全熱量より t カロリーを引いた値である。

 今

 W =ある圧力において石炭1キログラムが実際蒸発した水量(キログラム)

 w =摂氏100度において蒸発し得る換算水量(キログラム)

とすれば、石炭1キロが水を蒸発した熱量は W(H-t)カロリーである。大気圧(絶対圧力1.034キロ/平方センチメートル)のもとにおいて、摂氏100度の水1キログラムを同温度の蒸気にするには、536.7カロリーの潜熱を要するから、求める換算水量 w は

P120

で、w を相当発熱量、

P120_20210815121001

を蒸発因子と呼ぶ。


【 例 】

 甲乙両機関車の比較試験を施行せるに、次のごとき成績を得たりという。甲乙何れの機関車が優秀なりや。

P120_20210815121002

【 解 】

 甲乙両機関車は、圧力と給水温度が相違するため相当蒸発量を求め、それを比較して優劣を定めねばならぬ。

 甲機関車は圧力12キロ/平方センチメートル、給水温度 10℃ であるから、蒸気1キログラムの全熱量は飽和蒸気の性質表から

  (666.6-10)=656.6カロリーである。

 よって相当発熱量は(43)式により

P120_20210815121101

 同様にして乙は

P121_20210815121101

で、甲を100とすれば、乙は97.5に当たり、甲の成績が2.5%良好である。

 

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2021年9月 4日 (土)

機関車の構造及理論:下巻(その93)飽和蒸気の全熱量(2)

 以上述べた飽和蒸気の全熱量は、蒸気中に全く水分を含まない場合の値であるが、実際缶より発生する蒸気中には常に多少の水分を含んでおり、これを湿潤(しつじゅん)蒸気という。

 蒸気中に含む水分の量は缶水の多寡、缶水の清濁、燃焼率の大小等に関係し、缶水過多なるか、または缶水が汚濁せるか、あるいは燃焼熾烈なる場合には、蒸気中に含まれる水分が多量にあって、はなはだしい場合は、フォーミングあるいはプライミングを起こすことは、飽和蒸気機関車において日常経験するところで、最も良く乾燥せる場合といえども、飽和蒸気中にはなお4~5%の水分を含有し、蒸気中に y %の水分を含有するものとすれば、(1-y/100)を蒸気の乾燥因子(または乾燥度)と言い、これを x で示せば、この場合の蒸気の全熱量は次のごとし。

P119

  Q = y %の水分を含む蒸気1キロの全熱量(カロリー)

  L =乾燥蒸気1キロの潜熱(カロリー)

  h =蒸気1キロの顕熱(カロリー)

  x =蒸気の乾燥因子=(1-y/100)


【 例 】

 使用圧力12キロ/平方センチメートルなる飽和蒸気あり、蒸気中に8%の水分を含む場合の全熱量を求めよ。また給水温度を15℃とすれば、この蒸気1キログラムを蒸発するに要する熱力は何ほどか。

【 解 】

 蒸気1キログラムに付いて考えるに、水分を8%含んでいるから真の蒸気は92%である。

 よって x =0.92

 缶圧力12キロ/平方センチメートル、すなわち絶対圧力13キロ/平方センチメートルの蒸気1キロの潜熱および顕熱は、飽和蒸気の性質表より潜熱472.8、顕熱193.6カロリーであるから

  Q =0.92×472.8+193.6=628.6カロリー

 この全熱量は 0℃ の水を使用する場合の熱量であるから、15℃ の水を給水するときは顕熱が15カロリーだけ少なくて済むのであるから、給水温度15度の時の全熱量は

  Q =628.6-15=613.9カロリー

 

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2021年9月 3日 (金)

機関車の構造及理論:下巻(その92)飽和蒸気の全熱量(1)

5.飽和蒸気の全熱量

 飽和蒸気の全熱量は、顕熱と潜熱の和であるから

  H =L+h

   H =飽和蒸気の全熱量(カロリー/キログラム)

   L =蒸発の潜熱(カロリー/キログラム)

   h =顕 熱(カロリー/キログラム)

しかるに(37)式により

  h = T

 また潜熱はレニヨー氏の式を用いるものとすれば(38a)式により

  L =606.5-0.7T

であるから

P117_20210815092701

 (39)式および飽和蒸気の性質表より見るも明らかなるごとく、飽和蒸気の全熱量は蒸気の温度、すなわち圧力に比例して増加するものであるが、蒸気の温度1度の上昇に対し、わずかに0.3カロリーの増加に過ぎない。それ故、僅少なる熱の増加により、はるかに高圧蒸気を得る事がわかる。

 換言すれば高圧蒸気の有する熱量は、低圧蒸気に比し圧力の割合に熱量が少である。例えば、缶使用圧力10キロ/平方センチメートルの蒸気1キロの全熱量は665.2カロリー、圧力14キロ/平方センチメートルの時は全熱量667.4カロリーで、その差はわずかに2.2カロリーに過ぎなく、10キロ/平方センチメートルの蒸気が有する熱量に、僅々 2.2/665.2×100=0.33% の熱量を増やせば、圧力を3キロ/平方センチメートル高めることができるのである。

 今、この蒸気1キロをゲージ圧力0.5キロ/平方センチメートルまで、断熱膨張せしむれば、蒸気の成す仕事の量は10キロ/平方センチメートルのものは36100キログラムメートル、14キロ/平方センチメートルのものは40300キログラムメートルにして、圧力14キロ/平方センチメートルの方が11.0%の利益となる。もって高圧蒸気の有利なることをうかがい知ることができる。

 前に掲げた表の全熱量は、摂氏ゼロ度を基とするものであるから、給水温度を t℃ とすれば、蒸気1キロを蒸発するに要する熱量は、表中の数字より t カロリーだけ減ぜねばならぬ。(38a)~(41)式は、いずれも近似値を求める実験式であるから、実際の熱量は表より求めるのがよい。

 しかして飽和蒸気の全熱量の最も大なるは、絶対圧力26キロ/平方センチメートル付近にして、それより圧力も増加すれば却って全熱量は少なくなるものであるが、温度は圧力と共に高温となる。

 

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2021年9月 2日 (木)

機関車の構造及理論:下巻(その91)蒸気の潜熱(2)

【 例1 】

 缶の使用圧力16キロ/平方センチメートルなる飽和蒸気の、内部潜熱および外部潜熱を求めよ。

【 解 】

 この場合、圧力 P=(16+1)×100²=170000キロ/平方メートル

 蒸気1キロの容積 V は、飽和蒸気の性質表より求め

   V =0.1192立方メートル

 よって外部潜熱 Q₁ は(39)式により

P116_20210811183901

 次に内部潜熱の量を求めるに、同表から潜熱 L =460.9カロリーであるから、内部潜熱 Q₂ =L-Q₁ なるをもって

   Q₂ =460.9-47.48=413.42カロリー


【 例2 】

 缶水6トンを持ち、缶の使用圧力16キロ/平方センチメートルの機関車あり、加減弁を全開せるため圧力1キロ/平方センチメートル降下するものとすれば、缶水の保有せし剰余熱量により何キロの水を蒸発するや。

【 解 】

 圧力16キロ/平方センチメートルの缶水温度は 203.4℃、圧力15キロ/平方センチメートルの温度は 200.4℃ であるから、缶水1キロから遊離せられる熱量は

   203.4-200.4=3.0カロリー

 よって全体の遊離熱は

   3.0×6000=18000カロリー

 圧力15キロ/平方センチメートルの時の潜熱は463.8カロリーであるから、

 蒸発する水量は

P117

 

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2021年9月 1日 (水)

機関車の構造及理論:下巻(その90)蒸気の潜熱(1)

4.蒸気の潜熱

 沸騰点に達した水を蒸気とするには、多量の熱を要す。この熱は水の分子力に打ち勝ってこれを隔離し、且つその容積を増加するために費やされるものにして、これを蒸気の潜熱という。

 蒸気の潜熱とは、ある圧力の下において、蒸気の温度と同温度の水1キログラムを、蒸気と成すに要する熱量にして、蒸気の温度、すなわち圧力の上昇と共に減少するもので、

 レニヨー氏の研究によれば

P114_20210811170301

 また、ヘンニン氏の研究によれば

P114_20210811170302

 L =蒸気の潜熱(カロリー/キログラム)

 T =蒸気の温度(℃)

である。潜熱がいかなる仕事を成すために費やされるかを分けると

(1)一部の熱は蒸気となってその容積を増加するために費やされ

(2)残部の熱は水の分子力に打ち勝つために費やされる

ものにして、前者は全く外部仕事を成すために費やされる熱量であるから、これを外部潜熱と言い、後者は内部エネルギーの増加に費やされるものであるから、これを内部潜熱という。

 今

 Q₁ =外部潜熱(カロリー/キログラム)

 Q₂ =内部潜熱(カロリー/キログラム)

 ν =沸騰点における水1キログラムの容積(立方メートル)

 V =蒸気1キログラムの容積(立方メートル)

 P =外部圧力すなわち水面に加わっている圧力(キログラム/平方メートル)(絶対圧力)

とすれば、外部潜熱の量 Q₁ は

P115

 これを(38a)式に入れ、内部潜熱 Q₂ は L=Q₁+Q₂ 故に Q₂=L-Q₁ なる故(レニヨー氏の式の方が簡単であるから以下この式を用いる)

P115_20210811170401

 外部潜熱 Q₁ は圧力の増加に対し、その増加率が非常に小さいから、圧力に関係なくほとんど一定とみなす事ができる。それ故、蒸気圧力の増加に伴い潜熱が減少するのは、実に内部潜熱が減少するのである。

 蒸気を膨張させずに使用する時は、その使用せられる熱、すなわち機械仕事となる熱は外部潜熱のみで、外部潜熱の全熱量に対する比は、絶対圧力16キロ/平方センチメートルの飽和蒸気においては 46.94/667.8=7%、また同圧力にして過熱蒸気の温度を300℃とすれば、全熱量は726.1カロリー、外部潜熱は58.9カロリーなるをもって、その比は約8%に過ぎなく、この割合はフルギアーにて運転する場合における蒸気の最大効率である。

 飽和蒸気は、圧力と温度との間に一定の関係があるものであるから、もし加減弁を急に全開し、あるいはその他の理由により、缶内の圧力が急激に低下する様な場合は、蒸気の温度もまた降下するため、水中の熱は一部遊離し、この遊離熱によりかなりの水を蒸発するものである。

 今、最初の蒸気温度を T₁、圧力降下後の蒸気温度を T₂ とすれば、圧力の降下により遊離せられる熱は、缶水1キログラムに付き T₁-T₂ カロリーであるから、缶水の総量を W キログラムとすれば、全体の遊離熱は(T₁-T₂)W カロリーである。

 よって圧力降下後の蒸気の潜熱を L カロリーとすれば、蒸発せられる水量は

P116

である。

 

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