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2024年1月の記事

2024年1月30日 (火)

機関車工学:中巻(その220)通風の理及び燃焼率:通風と燃焼率との関係

【 通風と燃焼率との関係 】

 この関係については米国「パデュー」大学の「ゴス」氏は、実験の結果平均数を取りて左の公式を提供せり。

   D = 0.037G

  D 通風にして「スモーク・ボックス」内の真空を水のインチ数にて示したるもの。すなわち前に述べたる A - B に相当す。

  G 「グレート」1平方フィートに付き1時間内に燃焼し得る石炭の分量(ポンド)、すなわち燃焼率。故に 100ポンドの燃焼率を得んとせば左の通風を要す。

   D = 0.037 × 100 = 3.7 インチ

 燃焼率は石炭の種類にも関すべきは素より論を待たざるべし。「ゴス」氏のこの実験に用ひたる石炭は良く燃焼する瀝青炭にして、灰分少くその重量1ポンド中に有する熱単位は 13000英熱単位にして、我国の一種炭に類似するものなり。

 また 1903年米国「セント・ルイス」博覧会において数多の機関車に就き試験したる成績中、その通風と燃焼率との関係を見るに左のごとし。

 1.「スモーク・ボックス」内「ダイアフラム」の前面における通風(6台の平均) D = 0.0537G

 2.同「ダイアフラム」の後面における通風(6台の平均) D = 0.0373G

 3.「ダイアフラム」の備へなき「スモーク・ボックス」内の通風(2台の平均) D = 0.036G

 4.「ファイア・ボックス」内の通風(8台の平均) D = 0.0165G

 5.「アッシュ・パン」内の通風(8台の平均) D = 0.0056G

 この実験に用ひたる石炭は同じく善良なる瀝青炭にして、その熱単位は 14000英熱単位にして前者よりもはるかに好良なるものなり。その両種石炭の分析の結果は左のごとし。

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 「アッシュ・パン」内の通風は風入口の面積により増減するものにして、前記試験の結果によれば風入口の面積は「グレート」面積の1割1分ないし1割4分を適当とし、これより以下なれば通風激増しこれより以上なれば別に効能なきがごとし。

 「スモーク・ボックス」内に起りたる真空は、順次「チューブ」「ファイア・ボックス」「アッシュ・パン」に及びて、その程度を減殺せらるること前式によりて明かなるべし。この効力を減殺するものはガス及び空気の摩擦にして、第1にはガスが「スパーク・アレスター」または「ダイアフラム」等を通過するときの摩擦により、第2には「チューブ」、第3には「ブリック・アーチ」及び「ファイア・ボックス・プレート」、第4には炭層及び「グレート」との接触によるものなり。しかして「ファイア・ボックス」内に存する真空は、「スモーク・ボックス」内の真空の約 3分の1 に当るを見る。

 

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2024年1月29日 (月)

機関車工学:中巻(その219)通風の理及び燃焼率:燃焼率

【 燃焼率(rate of combustion) 】

 「グレート」面積1平方フィートに付き、1時間内に燃焼する石炭の分量を燃焼率と称す。この燃焼率は瀝青炭を使用するとき普通の場合において左のごとし。

 1.大気中において「グレート」上にて燃焼せしむるとき、3ポンド

 2.普通の「ストーブ」にて燃焼せしむるとき、5ポンド

 3.適当の「チムニー」を有する据付汽缶内にて燃焼せしむるとき、10ポンドないし 20ポンド

 4.自然通風と強制通風とを併用する舶用汽缶内にて燃焼せしむるとき、30ポンドないし 50ポンド

 5.機関車の汽缶内にて燃焼せしむるとき、40ポンドないし 100ポンド

 機関車が高速度をもって運転するとき、もしくは急勾配を上るとき、その最高燃焼率は外国の例に徴すれば 200ポンドに達することあり。しかれども我国狭軌鉄道の機関車にては平坦線においては 100ポンド、急勾配線にては 150ポンドを超ゆる事はなはだ稀なり。しかして一般に無烟炭の燃焼率は、大塊にありては 100ポンド、小塊にありては 60ポンドをもってその最高率となすべし。

 一般に燃焼率は通風のいかんにより変ずるものにして、その関係は次に示すがごとし。

 

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2024年1月26日 (金)

機関車工学:中巻(その218)通風の理及び燃焼率:通風の理

【 通風の理 】

 「ブラスト・パイプ」より逃出する蒸気は二様の方法に基づき通風を発生するものにして、その一は逃出したる蒸気が「スモーク・ボックス」内のガスに衝突接触し、分子の摩擦によりガスの流通を誘導するにあり。その二は逃出蒸気が「チムニー」内において「ピストン」の作用を成し、もってガスを「チムニー」外に排出するにあり。

 これらの作用によりて「スモーク・ボックス」内に一部の空虚を生ずるをもって、ガスはこれを補充せんがために「ファイア・ボックス」より「チューブ」を経て「スモーク・ボックス」内に進入し、空気はまたその後を追ふて「ダンパー」または「ファイア・ドア」より「ファイア・ボックス」内に進入すべし。斯のごとく通風を誘引するをもってこれを誘引通風(Induced Draught)と称し、普通の陸上汽缶の自然通風(Natural Draught)、舶用汽缶の強制通風(Forced Draught)と区別す。

 通風の強弱を測るにはガスの希薄の程度を測るべく、ガスの希薄の程度はガスの圧力を計量することによりて知り得べし。ガスの圧力低きときはガス希薄なるべく従って通風大なるべし。これあたかも地球上における空気の低気圧を察して大風の至るを知ると異ならず。吾人は常に「スモーク・ボックス」内に低気圧を作りて大風を誘ひつつあるなり。

 「スモーク・ボックス」内のガスの圧力を測るにはガラス管を曲げて U 形となし、これに水を入れて「スモーク・ボックス」の外に懸け、その左端はさらに他の管に連接して「スモーク・ボックス」内適宜の箇所に至らしめ、右端はそのままにして大気と通ぜしむべし。

 今汽缶が休止して「スモーク・ボックス」内に空気充満するときは、管の両端ともいずれも大気の圧力を受くるが故に、U 管内の水面は平均して左右同一の高さを保つべし。しかれども汽缶が仕業を始むるときは「スモーク・ボックス」内のガスの圧力大に低下するをもって、U 管内左右の水面はその平均を失し右脚の水面は押し下げられ、左脚の水面は押し上げられここに不平均なる水の柱を残すべし。

 これすなわち大気の圧力と「スモーク・ボックス」内のガスの圧力との差異を示すものにして、この不平均なる水柱の差が(管の大小に関せず)4インチなるときは、「スモーク・ボックス」内の真空または通風は4インチなりと称す。なお圧力をもって計算するの必要あるときは左の式を用ふ。

   P =(A-B)× 5.2

  P: 「スモーク・ボックス」内のガスの圧力の減差にして1平方フィートに付きポンドをもって示す。けだし1平方インチにて示すときは数字余り小なるをもって1平方フィートに付て示すを例とす。

  A: 管内左脚における水の高さ(インチ)

  B: 管内右脚における水の高さ(インチ)

  5.2: 高さ1インチの水の重量(1平方フィートに付きポンド)

 すなわち A  = 8、B = 4、なるときは

   P =(8-4)× 5.2 = 20.8 ポンド

 陸上汽缶にして長き「チムニー」により自然通風のみを利用するものにあっては、通風は「チムニー」の高さに比例するものにして、通例水の 0.1ないし 0.4インチなり。また舶用汽缶のごとく自然通風と強制通風とを併用するものにあっては、通例1インチないし4インチなり。機関車の汽缶においては2インチないし6インチにして、時として8インチに達することあり。ただし最も普通なるは3インチ内外なりとす。

 通風の強弱は「ブラスト・ノズル」の大小高低、その他「スモーク・ボックス」内の諸取付品の排列により著しく相違を来すものなれども、これらを同一の状態にあるものとすれど、その強弱はまた全く一定時間内に「ブラスト・パイプ」より排出する蒸気の分量に比例するものなり。

 その他、炭火の深浅は著しく通風に影響するものにして、炭火厚くして且つ密なるときは「スモーク・ボックス」内の真空の度はなはだ高く、炭火薄くして且つ疎なるときは通風最も低し。これ空気の流通いかんに関するものにして、「ファイア・ドア」及び「ダンパー」の開閉もたちまち通風に影響す。

 

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2024年1月25日 (木)

機関車工学:中巻(その217)通風の理及び燃焼率

第12編 汽 缶(Boilers)

第1章 通風(draught)の理及び燃焼率(rate of combustion)

 機関車は据付機関または舶用機関に比すれば、その大きさの小なる割合に多大の馬力を発生するの必要あるをもって、その汽缶には強大なる通風を利用して燃焼率を増加し、もって多量の蒸気を「シリンダー」に供給す。

 強大なる通風を発生せしめんがために従来諸種の方法を案出したるものありと言えども、「シリンダー」より放出せる蒸気を「チムニー」に通して、もって「スモーク・ボックス」内のガスを排出するは、かの有名なる「トレビシック」氏が機関車を創成するの当時既に採用したる方法にして、最も簡単にして且つ有効なるをもって今日なお唯一の方便として採用せらる。

 

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2024年1月24日 (水)

機関車工学:中巻(その216)連結器及び緩衝器:自動連結器及び螺旋連結器兼用法

【 自動連結器(Automatic Coupler)及び螺旋連結器(Screw Coupling)兼用法 】

 第 1236及び 1237図は英国「W.A.レーコック」氏の発明に係る連結器にして、前に述べたるごとく螺旋連結器と米国における自動連結器とを兼用せしむるの目的をもって設計せられたるものにして、図に示すは英国の大北、北東、及び北英鉄道に採用せられたるものとす。

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 1は牽引鈎、2は自動連結器、3は螺旋連結器を示す。螺旋連結器を使用せんとするときは「カプラー・ヘッド」2を下部に垂下し、また自動連結器を使用せんとするときはこれを水平の位置に引き上げ、「ピン」6と「フック」2とをもって支ふる様装置せらる。

 自動連結器を使用せんとするときは両側における緩衝器は不要となるをもって、その構造は高さを伸縮し得るよう「プランジャー」を「ケース」の中に退縮せしめ、または突出せしむるの装置を有す。すなわち螺旋連結器を使用せんとするときは緩衝頭を普通の高さに置き、自動連結器を使用せんとするときはこれに退縮してその用をなさしめざるものとす。

 

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2024年1月22日 (月)

機関車工学:中巻(その215)連結器及び緩衝器:自動連結器

【 自動連結器(Automatic Coupler) 】

 既に述べたるがごとく米国においては機関車及び各車両の連結器として、現在皆いわゆる自動連結器なるものを採用せり。通常これを単に「カプラー」と称せり。けだしその特長は、連結手が車両の中間に出入することなくして車両を連結解放することを得るにありて、車両に僅少なる打撃を与ふれば自動的に連結を了し得べく、車両の外側より1箇の杷柄を操縦すれば自動的に解放を了することを得。

 「カプラー」の種類はなはだ多けれどもその異なる点は、主として「ナックル」の形状、及び「ナックル」を鎖錠または解錠するの方法なりとす。けだし「カプラー」の触接すべき曲線さへ同一なれば、「カプラー」の内部の構造は異なるとも相互の連結には差支なきものなり。第 1187図は 1903年米国車両製造工師会において規定したるこの曲線なり。

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 「カプラー」の主要部分は「カプラー・ヘッド」「ナックル」及び「ロック」より成る。「ナックル」は頭(head)及び尾(tail)より成り、その中間において「ピボット・ピン」により「カプラー・ヘッド」に取付けらる。「カプラー」は「ナックル」の頭(head)により互に噛合ひ連結せらるるものして、「ナックル」の尾(tail)は「ロック」と共働して「カプラー」を鎖錠し、または開錠することを司さどらしむ。

 車両を連結せんとするときは双方の「ナックル」を開きて相接合せしむれば、双方の「ナックル」の頭と尾とは互にまず触接して尾を内部に押込め、「ロック」をして自動的にこれを食止めしむ。しかしてこのごとく「ナックル」が固定したる後は、「ロック」をその位置より引き上ぐるにあらざれば相離るることなし。

 「カプラー・ヘッド」は「バッファー・ビーム」に直接取付けらるる所の座金箱(pocket)に嵌入し、「ピン」によりそれに連結せらるるもの多し。ただし種類によりては「カプラー・ヘッド」の内に弾機を蔵し、打撃を緩和するの装置を有するものあり。または「カプラー・ヘッド」に脚を付して深く「テンダー・フレーム」の下部に入れ、ここに弾機を介して堅牢に取付けらるることあり。

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 第 1188ないし 1199図及び第 1200図は、「ジャネー・カプラー」(Janney Coupler)を示すと共に「テンダー」用なり。前者は簡単なるものにして、後者はその取付方やや複雑なると共に「バッファー」を備ふるを見るべし。且つ三桿を有する「カプラー」にして、「カプラー」の頭は多少左右に振り得るをもって曲線運転には便利なり。

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 第 1201ないし 1207図は「タワー」(Tower)式「カプラー」、第 1208ないし 1212図は「ナショナル」車両会社式「カプラー」の略図を示す。

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 第 1213ないし 1216図は「タワー・カプラー」(Tower Coupler)の三位置を示し、第 1217ないし 1219図は「クライマックス・カプラー」(Climax Coupler)の三位置を示す。

 これらの図により「ナックル」と「ロック」との関係を察知することを得べし。「タワー・カプラー」の「ロック」は7字形をなし、「クライマックス・カプラー」の「ロック」は靴形をなし、共に鎖にて釣られ鎖は杷柄の一端に掛かり、杷柄の位置を変更すれば「ロック」を上下することを得るものにして、「ロック」はその最下位にあるときをもって定位とす。

 「ロック」が定位にあるときは「ナックル」を食止めて連結状態となさしめ、その最上の位置に引上げられたるときは、「ナックル」をして自由に「ピボット・ピン」の廻りに回転し得せしめ「ナックル」を開放す。しかして「ロック」が中位にある場合はこれを「ロック・セット」の位置と称し、車両を解放するに都合よき程度まで「ロック」を引上げてその位置を保たしむるものなり。けだし「ナックル」を解放するため「ロック」の位置を定むる(set)と言ふ意味より、これを「ロック・セット」の位置と称す。

 従来は別に「ロック・セット」の位置なるものなく、解放の都度杷柄を持して「ロック」を引上ぐるか、または前もって杷柄にて「ロック」を引上げて杷柄を一定の棚の上に置きて、随時の解放に任せたりと言えども、前者は取扱上面倒の方法に属し、後者はさらに連結に際して「ロック」を正当の位置に復せしめざるべからざるの不便あり。

 故に米国車両製造工師会は 1903年より、総ての「カプラー」にこの「ロック・セット」の装置を施すべきことを議決実行したり。これにより解放すべき車両の「カプラー」は、前もってその「ロック」を「ロック・セット」の位置に置くときは何時にてもその車両を解放し得べく、また解放後「ロック」は自然に降下して常位に復し次の自動的連結に便利なる状態を保たしむ。

 「タワー・カップラー」においては、特に「ロック・セット」のために「ロック」の傍に コ 形の小片を加へ、これを「ロック・セット」と命名せり。けだし「ロック」を「ロック・セット」にて支へ、「ロック・セット」の下端を「ナックル」の尾の上に置くと第 1215図のごとくするを目的とす。「クライマックス・カプラー」においては1個の「ロック」にてこの目的を達す。

 「カプラー」の種類数多ありて、同時に数多の「ナックル」の形状あることは既に述べたるがごとし。第 1220ないし 1235図は各種「ナックル」の実例を示すものにして、実際はこの種類百種を超ふるなるべし。

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 「カプラー」の仕様書は米国車両製造工師会において作製したるものを基本とす。「ピボット・ピン」は直径 1 ⁵/₈ インチのものを採用し、「ナックル」の高は最小を9インチとし、機関車のものは 11インチのものを使用するものあり。「カプラー」製造の後その強さを試験するに種々の方法ありと言えども、2個の「カプラー」を連結して徐々にこれを伸張するとき少なくとも 120000ポンド、すなわち約 54英トンに耐ふることを必要とせり。故に少くとも 25英トンの安全牽引力を有するものと仮定し得べし。

 

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2024年1月19日 (金)

機関車工学:中巻(その214)連結器及び緩衝器:緩衝器

【 緩衝器(Buffer) 】

 緩衝器は車両と車両とが相接触するとき、その衝突を緩和せしめんがために設けられたるものにして、前後「バッファー・ビーム」に2個ずつ取付けらるるものとす。本邦機関車の左右「バッファー」の距間は4フィートにして、軌条面より2フィート 10インチないし3フィートの高さにあり。第 1183及び 1184図は英国製、第 1185及び 1186図は米国製「バッファー」にして、いずれも本邦機関車に属するものの実例を示す。

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 図に示すがごとく「プランジャー」A、「ケーシング」B、「スプリング」D よりなり、緩衝頭(buffer head)C は「プランジャー」と一体にしていずれも鋳鋼にて製せらる。

 

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2024年1月18日 (木)

機関車工学:中巻(その213)連結器及び緩衝器:牽引桿及び牽引鈎

【 牽引桿及び牽引鈎(Draw Bar and Draw Hook) 】

 牽引鈎はその顎本において牽引桿と鍛合して一本となすもの多しと言えども、時として鍛合の危険を避くるため「ピン」及び「リンク」をもって連結せるものあり。「ドロー・フック」以下の取付方法は第 1175ないし 1178図に示すがごとし。

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 「ドローバー」の尾端は機関車または「テンダー」の「クロス・ステー」に取付けられ、その長さはかなり長きを要すと言えども構造上直ちに「バッファー・ビーム」に取付けらるる事もあり。しかしてその取付箇所には必らず弾機を備へ、「ワッシャー」及び「ナット」にてこれを保持し、もって急劇なる打撃を緩和するの用に供せらる。

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 第 1179ないし 1182図はドイツにおいて採用せらるる「フック」の形状を示す。その中央上面の平扁なるは「フック」の力を増すことにおいて有効なるべく、「フック」に段階を設けたるは「カップリング」の脱出を予防するがためなり。また「フック・ピン」の孔を皷形に作りたるは機関車が曲線通過の場合において、「リンク」をして自由に行動せしむるの便を計りたるものとす。

 

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2024年1月17日 (水)

機関車工学:中巻(その212)連結器及び緩衝器:螺旋連結器

【 螺旋連結器(Screw Coupling) 】

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 第 1170及び 1171図は本邦において採用せらるる「スクリュー・カップリング」の一例にして、「スクリュー」1、「シャックル」2、及び「リンク」3の三者より成り、「リンク」は「フック・ピン」9によりて「フック」8に取付けられ、「シャックル」は他車両の「フック」に掛けらるるものとす。

 「リンク」及び「シャックル」の他端は各1個の「ナット」4を抱有し、「スクリュー」をしてこれに貫入せしむ。「スクリュー」は左右反対の螺旋をもって「ナット」に嵌入するが故に、「カップリング」を緊締または緩解せんとするときは、単に「スクリュー」をその取柄にて回転せば双方の「ナット」は同時に相近づき、または相遠ざかるものとす。取柄の端にある錘は運転中「スクリュー」の自然に回転するを防ぐがために設けらる。

 本邦における車両の連結法は、車両の一端の「フック」に螺旋連結器(screw coupling)を有し、他端の「フック」には連環連結器(link coupling)と称する簡単なる鎖のごとき連結器を備へ、甲車の「スクリュー・カップリング」を乙車の「フック」に掛けて緊張しこれをもって列車を牽引せしめ、乙車の「リンク・カップリング」を甲車の「フック」に緩く掛けこれをもって予備連結となす。この方法は本邦において一般に採用せらるる連結法なりと言えども両車の一つがその方向を転向したるときは、「リンク・カップリング」または「スクリュー・カップリング」が各相対向するをもって二重の連結をなす事あたわざるの不便あり。

 第 1172ないし 1174図は、ドイツにおいて現今採用せる「ジェルド」式と称する複式螺旋連結器(screw coupling)にして、前に述べたる 1896年における同国鉄道連合会において採用することに決議したる改良連結器なり。

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 車両はその両端に各1個の「ドロー・フック」を有し、図のごとくさらに長顎を有する1個の予備「フック」が吊り下げられ、連結に際してはまず甲車の「スクリュー・カップリング」を乙車の「フック」に掛けてこれを緊張し、次で「スクリュー・カップリング」を甲の予備「フック」に緩くつなぎもって予備連結器となす。この際乙の予備「フック」は全く不用にしてただ垂下したるまま運転すべし。この連結法は両車の一つがその方向を転換することあるも、常に同様の連結を施すことを得るの特長あるものとす。

 

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2024年1月16日 (火)

機関車工学:中巻(その211)連結器及び緩衝器:連結器形式の概要

第4章 連結器及び緩衝器(Couplings and Buffers)

【 連結器形式の概要 】

 連結器の種類数多ありと言えどもこれを二種に大別し得べし。すなわち螺旋連結器(screw coupling)及び自動連結器(automatic coupler)これなり。前者は欧州各国に用ひらるるものにして古き歴史を有するもの。後者は 1887年米国車両製造工師会(Master car builder's association)において採用することに決議したる改良連結器にして、もっぱら北米合衆国において用ひらるるものとす。

 けだしこの自動連結器は 1893年2月27日、米国国会の議決により米国各鉄道会社は皆これを使用し、1898年1月1日までにことごとく皆改造を了すべきことを命じたるものなり。我国においては元と範を英国に採りたるをもって、本州及び九州にては螺旋連結器を採用せりと言えども、北海道、朝鮮、及び南満州鉄道においては自動連結器を使用せり。

 螺旋連結器は従来幾多の改良を加へられ、一種完全なる連結器たるは失はずと言えども、連結または解放に際し連結手が車両と車両の間に介入して該器の掛け外しを行ふの必要あるをもって、その取扱の不便にして且つ危険なるはこの器の欠点にして、その一大改良を要すべきはこの種の連結器を用ふるものの等しく認むる所なり。

 機関車の牽引力は運輸の発達に伴ひ年々増加するをもって、連結器の強さはある年限を経ばこれを増大し、または改良するの必要を生ずるは自然の趨勢なりと言えども、運輸共通上一部の改造を許さず、一時に多数の車両に改造を加へんとせば多大の費用を要し、且つ車両使用上不便を来たすをもって容易にその目的を達する事あたわず。これ該器の予想外に発達せざる所以にして、米国工師会が自動連結器を採用するの英断をなすに至りたるは運輸の発達他とその趣を異にし、その強さを増大すると同時にその方式を改良するの必要の比較的急なりしによる。

 自動連結器は車両を互に押し付くるときは自動的に連結せられ、解除の際もほとんど自動的の作用あり。且つ機械の大部分が車体に固着し居るをもってその強さを増加するに伴ふ重量の増加は取扱上何らの影響なきのみならず、この種の連結器は緩衝器を兼ぬるの特長を有す。しかし現今使用せらるる該器の標準強度は少くも 25英トンに堪ふるものにして、これをドイツにおける標準連結器の 10トンなるに比すれば2倍半の強さを有するものとす。

 ドイツにおいても元と英国の例に倣ひ螺旋連結器を採用し、従来幾多の改良を加へたりしと言えども、1877年以来標準連結器として設計せられたるものはその強さ6トン半に過ぎずして、爾来列車の重量ますます増加して連結器の折損頻々たるに至り、1896年同国鉄道連合会は委員を命じて大いにその改良を研究せしめたり。

 当時世論の向ふところは米国形、もしくは類似の自動的連結器を採用するにありたるは事実なりしと言えども、一時に多数の車両を改造するの困難なることはもちろん、新旧連結器の混用の困難なることはついにその目的を達するに至らずして、一時姑息の手段を取り連結器の強さを10トンに増加するに止め、列車の重量を制限し牽引力をして 10トンを超過せしめざる事となすに決したり。けだし螺旋式は人力によってこれを解放または連結するものなれば、取扱上その重量に制限ありて設計上これを強大ならしむるを許さざるを遺憾とす。

 ドイツにおけるこの決議は鉄道輸送上、消極的制限を加へたるものにして、その発達を阻害したること少からざるはもちろん、機関車の改良にもまた多大の影響を及ぼしたり。

 元来連結器の問題たるその作用自動的なること、確実なること、安全なること、構造簡単なること、牽引力強きこと等にして、米国式自動連結器はややこれらの要求を満足するに近しと言えども、なお改良の余地あるはもちろん、他に相当の設計なきを保すべからざるは技術者の常に留意する所なるをもって、欧州各国においても鋭意これが研究に従事し、あるいは懸賞によりてその考案を奨励する等今なおこの問題の解決に苦心しつつあり、もっていかにこの問題の困難なるかを知るべし。

 

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2024年1月15日 (月)

機関車工学:中巻(その210)サイドタンク及びキャブ:キャブ

【 「キャブ」(Cab) 】

 「キャブ」は「ファイア・ボックス」の後部「フート・プレート」の上に建てたる一室にして、機関車乗務員の居所とし機関車を操縦するに要する一切の付属品をその内に備へ、もって雨露を防御するものとす。

 「テンダー」機関車にあっては「キャブ」の後方は全く開放せられ、前面には「ウェザー・ボード」を有し、左右各1個のガラス窓を備へて前途の注視に便ならしめ、両側には引戸ありてその開閉を自在ならしめ、側面よりも前途及び後方を望見するに便ならしむ。米国形機関車にあっては「キャブ」の前面に開き戸ありて、それより自由に「ランニング・ボード」に出で得るの装置を有するもの多し。

 「タンク」機関車にあっては「サイド・タンク」と「コール・バンカー」とによって既に相当の囲ひをなすをもって、「キャブ」はその上に建てられ前後とも「ウェザー・ボード」を有し各2個のガラス窓を備ふ。米国形機関車にあっては側面にもガラス窓を備へ、また昇降口に開戸を有するを例とす。

 「キャブ」の側面は普通 16分の3 インチの鋼板にて製せられ、屋根は二重の木板にて張り外部に薄き鋼板を張るを常とす。米国形機関車においては側面屋根共総て木製となすを例とす。

 

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2024年1月12日 (金)

機関車工学:中巻(その209)サイドタンク及びキャブ:サイドタンク

【 「サイド・タンク」(Side Tank) 】

 「サイド・タンク」は汽缶に密接して並行し、前部は「スモーク・ボックス」付近に至るものあり。または汽缶の中腹に達せざるものあれども後部は皆「キャブ」に進入し、「コール・バンカー」の間に人道を設くるの余地あるに止むるを常とす。

 左右の「タンク」はその底部において「コミュニケーション・パイプ」にて連絡を取り、水をして自由に流通せしむ。「コール・バンカー」の底に「タンク」を有する場合にもまた同じ。しかして「サイド・タンク」の水入口は左右とも前部にこれを設け、その口に「ストレーナー」を垂下すること「テンダー」の場合と同じ。

 「コール・バンカー」の「キャブ」内に面する部分には引戸あり。これを開けば石炭を取出すことを得べし。「コール・バンカー」の底部は「キャブ」内に向ていく分か斜面をなすをもって、石炭は常にその重量により引戸の方へ集中するものとす。

 「タンク」及び「コール・バンカー」は鋼板にて製し、その厚さは底部において 16分の5 インチ、側部及び上部において 4分の1 インチなるを普通とす。しかして「サイド・タンク」においては「テンダー」の「タンク」と同じく、その内部に数個の仕切り板を設け「タンク」の強さを増すと同時に、水の動揺を防ぐを常とし、内部における検査もしくは修繕のために、小児の職工が水口より自由に「タンク」内各所へ行き得るだけの余地あるを要す。

 

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2024年1月11日 (木)

機関車工学:中巻(その208)サイドタンク及びキャブ:タンク機関車

第3章 「サイド・タンク」及び「キャブ」(Side Tank and Cab)

【 「タンク」機関車(Tank Engine) 】

 「タンク」機関車はその運転に要する石炭及び水の容器を機関車の上に携帯するものにして、別に炭水車すなわち「テンダー」を伴はざるものなり。

 「テンダー」機関車にあっては「テンダー」を先頭にして逆行運転するときは、些少の障害物に遭ふも「テンダー」脱線を来し易く、且つ「テンダー」機関車の「キャブ」はその後面全く開放するをもって、逆行運転するときは「キャブ」内の乗務員及び諸取付金具は風雨に晒さるべく、「テンダー」内の粉炭飛散して「キャブ」内に進入する等不便少なからざるをもって、止むを得ざる場合の外は逆行運転することなし。

 しかるに「タンク」機関車においてはこの憂なく前進及び後進共に自在なるはその特色にして、且つ総ての部分約まやかにして軽便なるをもって区間列車及び入替用に多く使用せらる。殊に隧道多き区間及び降雪多き区間には、煤烟粉雪等の「キャブ」内に乱入するを防ぐべく、また除雪機関車として雪掻(snow plow)を前部あるいは後部に取付けて運転し、氷雪の付着せる軌条上を前進または後進するに最も適当なり。

 「タンク」機関車の欠点とするところは、石炭と水との貯蔵少なきをもって、しばしばこれを補給せざるべからざる事と、石炭と水との増減により著しく車輪上重量の分配を害するをもって、長距離及び高速度の列車には不適当なることなり。

 「タンク」機関車の水槽(tank)は「サイド・タンク」と称して、汽缶を挟みて機関車の両側に並ぶるを常とし、時として「サドル・タンク」と称して汽缶の上部に置くことあり。また「コール・バンカー」は「キャブ」の後部にこれを備へ、その下部を「タンク」の一部に供するもの多し。

 

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2024年1月10日 (水)

機関車工学:中巻(その207)炭水車:炭水車用ボギートラック

【 炭水車用「ボギー・トラック」 】

 米国形「テンダー・トラック」には種々の形式ありて一致せずと言えども、機関車の「トラック」と著しく異なる点は車軸の「ジャーナル」が車輪の外部にあることなり。

 機関車の「トラック」においては「ジャーナル」を車輪の外部に出すときは、「シリンダー」に支障するがために止むを得ずして車輪の内側にこれを置くと言えども、「テンダー・トラック」においては何ら支障するものなきをもってこれを外部に置くことを得べく、検査注油に便利なるのみならず、「アクスル・ボックス」にて全く「ジャーナル」を包囲するをもって、塵埃の侵入及び油の流出を防ぎ得るの効あり。且つ「ベアリング・ブラス」の取換え、「パッド」の入替等もはなはだ容易なりとす。

 第 1157ないし 1169図は米国形「テンダー」に属する「ボギー・トラック」の2~3の実例を示すものとす。

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2024年1月 9日 (火)

機関車工学:中巻(その206)炭水車:米国形炭水車

【 米国形炭水車(Tender) 】

 米国においては「テンダー」には必ず「ボギー・トラック」2組を使用す。これ英国形と異なる主なる点なり。また米国においては従来木製「フレーム」を採用するもの多し。けだし同国においては客貨車の「フレーム」に今なお木製のものを使用するもの多きと同じく、鉄製「フレーム」に比して特別の利益あるにあらざれども、ただ木を得るに容易なると旧来の慣習によるもののごとし。しかれども近来は鉄製「フレーム」を使用するもの多し。しかしてその「フレーム」が鉄製なると木製なるとを問はず、「フレーム」の上面には厚さ2インチの木板を敷き、その上に「タンク」を置くを例とす。

 第 1142ないし 1144図は米国「ペンシルベニア」鉄道の旅客列車用機関車の「テンダー」にして、鉄製「フレーム」を有し且つ「ウォーター・スクープ」を備ふ。

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 第 1145ないし 1152図は米国「テンダー」に多く使用せらる「タンク・バルブ」及びその付属物なり。A は真鍮製「タンク・バルブ」にして、B はその「バルブ」の嵌入すべき「バルブ・シート」なり。しかして以上の「バルブ」及び「シート」は C なる鋳鉄製「ストレーナー」にて全く覆はるるものとす。

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 D なる鋳鉄製「ノズル」は「バルブ・シート」の直下にて「タンク」の下側に取付けられ、この「ノズル」の先にはさらに角付「ナット」を介して鋳鉄製または真鍮製の「ニップル」F を備ふ。しかしてゴム「ホース」はこの「ニップル」に結び付けられ機関車に水を導くものとす。

 第 1153ないし 1156図は「タンク・バルブ・ロッド」及びその付属物の一例を示す。「ロッド」R はその下端において「タンク・バルブ」に接続す。A は鋳鉄製「スタンド」にして「タンク」の頂板に取付けられ「バルブ・ロッド」はこれを貫通す。

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 「スタンド」の上部には B なる「グランド」ありて、「バッキン」を有しもって水の漏洩を防ぐ。C C は鋳鉄製の「ハンドル」にして、その下端は D なる「ステップ」に上せられ、この「ステップ」は各半面ずつ斜面をなすをもって、「ハンドル」を一方に回転すれば「タンク・バルブ」は開放し、他方に回転すれば閉塞するものとす。

 

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2024年1月 8日 (月)

機関車工学:中巻(その205)炭水車:運転中給水装置

【 運転中給水装置 】

 第1131ないし1138図は機関車運転中において、線路内に設けある水槽より水を「テンダー」内にすくい上げる装置を示す。「ラムズボトム」氏の発明に係るをもってこれを「ラムズボトム」氏の「スクープ」(Scoop)と称す。

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 図に示すがごとく水管は3部より成り、最下部の砲金製の「スクープ」は、蝶交によりて中間の鉄管と連接せらるるをもって自由に上下せしむることを得べく、もってその口先を水に入れ、または水より引上ぐることを得るものとす。この「スクープ」を上下せしむるの方法は、「キャブ」内より手力または他の動力をもってする等種々あれども、この図に示せるものは「アスピノール」氏の専売特許を得たるものにして、真空作用により「スクープ」を上下するものなり。

 線路内に設けられたる水槽は図に示すがごとき形状にして鋼板を曲げて製すべく、その左右の耳によりて枕木上にある他の木片に支持せらる。その幅約 18インチ深さ約6インチなり。水槽の頂部は軌条面より約3インチ高く、水面は軌条面より約2インチ高きを常とす。しかして「スクープ」が降下したるときは水中に約2インチ進入し、あたかも軌条面と同一の高さにあり。

 「スクープ」の全長は一定せずと言えども普通  1500フィート内外とす。水槽の両端における底部は軌条と共に約 200分の1 の勾配をもって上に傾きて水を保てり。故に水槽の底と軌条面とは常に同一の間隔を有するをもって、「テンダー」の水管はいかなる場合においても水槽に触るることなし。

 この装置は 1859年始めて英国北西鉄道において実行したるものにして、同鉄道においては大にこの給水法を普及し、幹線においては普通の水槽(water tank)より水管柱(water column)を経て給水するものほとんど稀なり。米国においてもこの方法を採用せるものはなはだ多く、「スクープ」を上下するには圧搾空気を使用するもの多し。

 第 1139ないし 1141図に示すはプロイセン官有鉄道における炭水車の一例を示す。

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2024年1月 4日 (木)

機関車工学:中巻(その204)炭水車:英国形炭水車

【 英国形炭水車(Tender) 】

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 第 1114ないし 1117図は英国形「テンダー」を示す。石炭5トン水 2500「ガロン」を搭載する形式にして三対の車輪軸の上にあり、その「フレーム」は二重にして「テンダー」の全長にわたりその外側の分は幅深くして「アクスル・ボックス」を包蔵す。車輪は外側「フレーム」と内側「フレーム」との間に挟まり、内側「フレーム」は「クロス・ステー」により強固に支持せらる。 しかしてその機関車に接する前部には「フート・プレート」ありて、機関車の「フート・プレート」と相接近せり。「フレーム」「クロスステー」及び「バッファー・ビーム」は皆鋼板にして、その厚さ通常 4分の3 インチないし 8分の7 インチとす。

 「ウォーター・タンク」は薄き鋼板にて製せられ、その側板は厚さ 4分の1 インチ、底板は 16分の5 インチまたは 8分の3 インチ、頂板は 16分の5 インチなるを普通とし、隅鉄(angle iron)によりて強固に相連接せらる。しかして左右両側の板はその「ステー」として、中間2箇所において「タンク」の全幅にわたれる大なる板にて連結せらる。この「ステー」を「ウォッシュ・プレート」と称す。「ウォッシュ・プレート」には大なる孔ありて水の流通を自由ならしめ、且つ職工の出入に差支ならしむるを要す。ある場合には「タンク」の長さに沿ふても中間に「ウォッシュ・プレート」を挿入することあり。これ曲線を高速度にて走行するとき水が「テンダー」の一側に集中するを妨ぐるがためなり。

 「タンク」内に水を注入するために、「テンダー」の後部においてその頂上に直径約1フィート半の注入口を備へ、その口元に濾過器すなわち「ストレーナー」(Strainer)を置き、もって水と共に雑物の進入するを防ぐ。しかして水が「タンク」より「インゼクター」に赴く途においては、さらに他の「ストレーナー」によりて濾過せらるるを常とす。この「ストレーナー」の目は「インゼクター」における最小通路よりも小なるを要す。

 貯炭場すなわち「コール・バンカー」(Coal Bunker)は「タンク」の頂部における空間にして、その底部は「キャブ」の方へ向ひて斜面をなし、石炭をして漸次火夫の側に向て落下せしむるに便ならしむ。ふつう前部は戸にて仕切られ、左右は「タンク」の両脚によりて界せられ、後部は自然に「タンク」の後部上面と接するものあり。または段階をなすものあり。または図のごとく高く境板を有するものあり。しかして何れも「テンダー」の後部における水入口付近には平坦なる余地を存して、種々の道具を陳列し置くの場所に供して石炭はその辺に積込まざるを例とす。水入口は少しく高上して蓋を有し石炭または雑物の落下するを防御せり。

 「テンダー」の頂部において左右及び後部の三縁には相当の高さの板囲を設く。一種の装飾なれども、また実用として諸道具の落下を防ぐこと、及び必要の場合に石炭を多量に搭載し得ること、ならびに乗務員が「テンダー」の上にある時その安全を保たしむるに便ならしむ。

 「テンダー」を機関車に連結するの方法は、「テンダー」の前端にある2個の「バッファー」にて機関車の「バッファー・ビーム」を圧せしめ、中央において大なる「ドローバー」により緊結するものとす。この「ドローバー」は両端とも「ピン」にて支持せられ常に固く取付けて少しも余裕を存すべからず。しかれども「ドローバー」の孔または「ピン」の磨耗のために弛緩しやすく、その結果運転中機関車及び「テンダー」の動揺を来すべく、また引て「ピン」を折損することあり。

 「ドローバー」もしくはその「ピン」の折損して「テンダー」の分離するを予防するがために、その左右にさらに小なる「ドローバー」を取付くるものあり。しかれども近来は中央の「ドローバー」を丈夫にして全くこれに依頼し、補助「ドローバー」を使用せざるもの多し。また両側における「バッファー」を有せざるもの多し。

 第 1118及び 1119図は機関車と「テンダー」との取付方法の一例にして、第 1120ないし 1123図は他の一例を示す。

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 「テンダー」の後部における連結器は機関車の前部におけると同一なり。しかして「テンダー」と機関車とを連結する「ドローバー」及び「バッファー」は他と区別するため、「インターミディエート・ドローバー」及び「インターミディエート・バッファー」と称す。「テンダー」及び機関車の合せ目には、「テンダー」の「フート・プレート」より蝶交にて一つの橋板を渡せり。これを「フラップ」(Flap)または「エプロン」(Apron)と称す。

 第 1124ないし 1130図は英国形機関車に属するものの「インターミディエート・ドローバー」の一例を示す。

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 「テンダー」の水槽(tank)より「インゼクター」の「サクション・パイプ」に導く水管の連結方は、相当注意を要するものにして普通はゴム「ホース」を使用すれども、しばしば蒸気を「テンダー」に逆流するの必要あるときは破損し易きをもって、屈伸自由なる金属製の「ホース」をもって連結するを便とす。

 

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2024年1月 3日 (水)

機関車工学:中巻(その203)炭水車:概 要

第2章 炭水車(Tender)

【 概 要 】

 「テンダー」は炭水車と訳すべく、すなわち機関車の後部に直接連結せられたる鉄製の一車両にして、水及び石炭を搭載して機関車にこれを供給するの用に供せらる。昔は普通の客貨車と同一の方法をもって連結せられたるものなりしが、速度の増加に伴ひその動揺を防ぐがために強固なる連結方を要するに至り、現在は特別の連結方を施し機関車と「テンダー」とはほとんど一体をなすの観あり。しかして「テンダー」には必ず手用制動機(hand brake)及び貫通制動機(continuous brake)を取付くるを例とする。

 「テンダー」付機関車は「タンク」付機関車に比して便利なる点種々あり。その主なものを挙ぐれば左のごとし。

 第 1
 石炭と水とを多量に搭載し得るをもって、炭水の補給をなすことなくして長距離を運転し得ること。

 第 2
 機関車の上に炭水を搭載せざるをもって、動輪上の重量一定し「バルブ・ギア」等の正確を保ち得べく、高速度の場合においても動揺少なきこと。

 第 3
 機関車全体の諸取付物に余地ありて、乗務員の動作に敏捷を与へ検査修理及び前途注視等に便利なること。

 第 4
 「テンダー」にも「ブレーキ」を備ふるをもって、機関車の「ブレーキ」力を増加し、列車に貫通制動機を使用せざる場合において機関車の「ブレーキ」に信頼し得べきこと。

 以上はその主要なる特点なりと言えども、その不便なる点は終端駅において転車台によりて方向を転換せざるべからざること。及び「タンク」機関車に比すれば、やや無用の車両を連結するをもって、それだけ牽引力を削減せらるること。ならびに機関庫その他において収容上余分の長さを要することなり。故に短距離の運転には「タンク」機関車を使用するを便利とする場合少からず。

 「テンダー」に搭載すべき炭水の分量はその目的により一定せずと言えども、我国において使用するものは石炭3トン水 2500「ガロン」を普通とし、英国においては石炭5トン水 4000「ガロン」を普通とす。しかして米国においては従来大なる「テンダー」を利用し、石炭 14トン水 7000「ガロン」を搭載するもの少からず。

 水の1「ガロン」は重量 10ポンド容積 0.16立方フィートに相当するをもって、4000「ガロン」の水は重量 40000 ポンド、すなわち約 18トン容積 640立方フィートとなる。また石炭重量はその品質により等差あれども、石炭1トンは 45立方フィートの容積を占有するものと仮定して大差なし。故に5トンの石炭は 225立方フィートの容積を必要とすべし。

 

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2024年1月 2日 (火)

機関車工学:中巻(その202)フレーム:棒形フレーム

【 棒形(bar)「フレーム」 】

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 米国においては前に述べたるがごとく「フレーム」の構造大にその趣を異にし、第 1106ないし 1108図のごとく主要「フレーム」は4インチ内外の四角形、または長方形の断面を有する鉄棒にて製せらる。その形状はなはだ複雑せるにより、その製作またはなはだ困難なるをもって近来は鋳鋼をもって製するもの多し。

 主要「フレーム」は通常2個に分割せられ前部において「ボルト」をもって連結せらる。左右の「フレーム」は前部においては「シリンダー・サドル」をもって強固に連結せられ、後部においては堅牢なる鋳鉄または鋳鋼をもって連結せらる。中間は「ガイド・ヨーク」をもって「クロス・ステー」の代用となす。

 第 1109ないし 1113図は米国形棒形「フレーム」の実例にして、錬鉄製および鋳鋼製の二種を示す。

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