【 自動連結器(Automatic Coupler) 】
既に述べたるがごとく米国においては機関車及び各車両の連結器として、現在皆いわゆる自動連結器なるものを採用せり。通常これを単に「カプラー」と称せり。けだしその特長は、連結手が車両の中間に出入することなくして車両を連結解放することを得るにありて、車両に僅少なる打撃を与ふれば自動的に連結を了し得べく、車両の外側より1箇の杷柄を操縦すれば自動的に解放を了することを得。
「カプラー」の種類はなはだ多けれどもその異なる点は、主として「ナックル」の形状、及び「ナックル」を鎖錠または解錠するの方法なりとす。けだし「カプラー」の触接すべき曲線さへ同一なれば、「カプラー」の内部の構造は異なるとも相互の連結には差支なきものなり。第 1187図は 1903年米国車両製造工師会において規定したるこの曲線なり。
「カプラー」の主要部分は「カプラー・ヘッド」「ナックル」及び「ロック」より成る。「ナックル」は頭(head)及び尾(tail)より成り、その中間において「ピボット・ピン」により「カプラー・ヘッド」に取付けらる。「カプラー」は「ナックル」の頭(head)により互に噛合ひ連結せらるるものして、「ナックル」の尾(tail)は「ロック」と共働して「カプラー」を鎖錠し、または開錠することを司さどらしむ。
車両を連結せんとするときは双方の「ナックル」を開きて相接合せしむれば、双方の「ナックル」の頭と尾とは互にまず触接して尾を内部に押込め、「ロック」をして自動的にこれを食止めしむ。しかしてこのごとく「ナックル」が固定したる後は、「ロック」をその位置より引き上ぐるにあらざれば相離るることなし。
「カプラー・ヘッド」は「バッファー・ビーム」に直接取付けらるる所の座金箱(pocket)に嵌入し、「ピン」によりそれに連結せらるるもの多し。ただし種類によりては「カプラー・ヘッド」の内に弾機を蔵し、打撃を緩和するの装置を有するものあり。または「カプラー・ヘッド」に脚を付して深く「テンダー・フレーム」の下部に入れ、ここに弾機を介して堅牢に取付けらるることあり。
第 1188ないし 1199図及び第 1200図は、「ジャネー・カプラー」(Janney Coupler)を示すと共に「テンダー」用なり。前者は簡単なるものにして、後者はその取付方やや複雑なると共に「バッファー」を備ふるを見るべし。且つ三桿を有する「カプラー」にして、「カプラー」の頭は多少左右に振り得るをもって曲線運転には便利なり。
第 1201ないし 1207図は「タワー」(Tower)式「カプラー」、第 1208ないし 1212図は「ナショナル」車両会社式「カプラー」の略図を示す。
第 1213ないし 1216図は「タワー・カプラー」(Tower Coupler)の三位置を示し、第 1217ないし 1219図は「クライマックス・カプラー」(Climax Coupler)の三位置を示す。
これらの図により「ナックル」と「ロック」との関係を察知することを得べし。「タワー・カプラー」の「ロック」は7字形をなし、「クライマックス・カプラー」の「ロック」は靴形をなし、共に鎖にて釣られ鎖は杷柄の一端に掛かり、杷柄の位置を変更すれば「ロック」を上下することを得るものにして、「ロック」はその最下位にあるときをもって定位とす。
「ロック」が定位にあるときは「ナックル」を食止めて連結状態となさしめ、その最上の位置に引上げられたるときは、「ナックル」をして自由に「ピボット・ピン」の廻りに回転し得せしめ「ナックル」を開放す。しかして「ロック」が中位にある場合はこれを「ロック・セット」の位置と称し、車両を解放するに都合よき程度まで「ロック」を引上げてその位置を保たしむるものなり。けだし「ナックル」を解放するため「ロック」の位置を定むる(set)と言ふ意味より、これを「ロック・セット」の位置と称す。
従来は別に「ロック・セット」の位置なるものなく、解放の都度杷柄を持して「ロック」を引上ぐるか、または前もって杷柄にて「ロック」を引上げて杷柄を一定の棚の上に置きて、随時の解放に任せたりと言えども、前者は取扱上面倒の方法に属し、後者はさらに連結に際して「ロック」を正当の位置に復せしめざるべからざるの不便あり。
故に米国車両製造工師会は 1903年より、総ての「カプラー」にこの「ロック・セット」の装置を施すべきことを議決実行したり。これにより解放すべき車両の「カプラー」は、前もってその「ロック」を「ロック・セット」の位置に置くときは何時にてもその車両を解放し得べく、また解放後「ロック」は自然に降下して常位に復し次の自動的連結に便利なる状態を保たしむ。
「タワー・カップラー」においては、特に「ロック・セット」のために「ロック」の傍に コ 形の小片を加へ、これを「ロック・セット」と命名せり。けだし「ロック」を「ロック・セット」にて支へ、「ロック・セット」の下端を「ナックル」の尾の上に置くと第 1215図のごとくするを目的とす。「クライマックス・カプラー」においては1個の「ロック」にてこの目的を達す。
「カプラー」の種類数多ありて、同時に数多の「ナックル」の形状あることは既に述べたるがごとし。第 1220ないし 1235図は各種「ナックル」の実例を示すものにして、実際はこの種類百種を超ふるなるべし。
「カプラー」の仕様書は米国車両製造工師会において作製したるものを基本とす。「ピボット・ピン」は直径 1 ⁵/₈ インチのものを採用し、「ナックル」の高は最小を9インチとし、機関車のものは 11インチのものを使用するものあり。「カプラー」製造の後その強さを試験するに種々の方法ありと言えども、2個の「カプラー」を連結して徐々にこれを伸張するとき少なくとも 120000ポンド、すなわち約 54英トンに耐ふることを必要とせり。故に少くとも 25英トンの安全牽引力を有するものと仮定し得べし。
最近のコメント