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2020年10月の記事

2020年10月31日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その164)車軸に与える横遊び量(3)

(2)ホーゲル氏の画法

 ロイ氏の画法においては軌道曲線を円弧にて表したに対し、ホーゲル氏画法においては放物線にて表した。まずホーゲル氏画法の根拠を概説すれば次のごとくである。第134図から直角三角形の理により

P199

が得られる。ここでロイ氏の場合のごとく

P199_20200930095701

として曲線を表す時は同円の実線の円弧(P-P)は点線の円弧(p-p)となる。第(54)式に(55)式のεおよびЧを代入すると

P200

または

P200_20200930095801

となり本式は楕円を示す公式である。

(56)式から

P200_20200930095802

故に

P200_20200930095901

ここで

P200_20200930095902

を二項定理で展開し降べきを省略するときは(58)式は次のごとくなり放物線を表わす式となる。

P200_20200930100001

 すなわち放物線で描かれた線上の点(P)について考えればЧ なる寸歩は現寸の(y)のb分の1で示され、εなる寸歩は現寸(x)のbn分の1で示されているものである。しかして本図においてもロイ氏のごとく省略している項があるので、bとnとの数値の選択によっては誤差が大となる。故にある一定範囲内の数値を曲線半径に応じて選び、誤差を最小範囲に収める必要がある。実用的に差し支えない範囲は次のごとくであると言われている。

P200_20200930100002

 一般にホーゲル氏の画法は b=2,n=20 として描かれる場合が多いが、これは図面の適当なる大きさを欲するがためである。

 

11013p199_20200930095301
11013p200
11013p201

 

2020年10月30日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その163)車軸に与える横遊び量(2)

 画き方(例)

 第132図において曲線半径Rは現寸の100分の1(すなわち半径100メートルならば1メートルの半径となる)の円弧を書き、その内側と外側には『スラック+フランジとレールとの隙間の2分の1』の現寸にて、また外側には「フランジとレールとの隙間の2分の1」の現寸にて、いずれも同心円を書く。

132_20200929232901

 台枠や軸距の寸法は現車の10分の1(軸距3メートルとすれば300ミリとなる)とし、第1動輪(D₁)と第3動輪(D₃)を固定軸距と仮定し、D₁とD₃がいずれも外側レールに接触して通過するものとすれば、先輪第1位L₁の偏倚はS₁、第2動輪横動遊間所要量はS₂、従輪Tの偏倚はS₃(いずれも現寸で表れる)となる。ただし実際の場合においてはD₁が外側レールに接し、D₃は内側レールに接するから、従輪の偏倚が小さくなり、第2動輪および先輪の偏倚はいずれも大となる。

 実際にこれを描く場合、曲線半径を100分の1にすると作図が過大となるから、その2分の1すなわち半径を200分の1とし、スラックやレールとの隙間寸法は現寸の2分の1、軸距等は20分の1で描くのが良い。しかるときは偏倚寸法もまた現寸の2分の1で表れる。

 また、軸距やスラック等の関係でD₂の位置におけるS₂の量がゼロまたは負(内側円と交わらない場合)となる場合は、横動遊間を必要としない事を示すものである。

133_20200929232901

 第133図は主要機関車形式の前部連結面および端梁と後部端梁の偏倚(最前位および最後位の動輪のいずれも外側レールに接している場合の)寸法をロイ氏の画法で求めたものである。

 

11013p197_20200929232401
11013p198
11013p199

2020年10月29日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その162)車軸に与える横遊び量(1)

13.車軸に与える横遊び量

 機関車が曲線を容易に通過する一つの施設として、既述のごとく車軸に横動を与える場合とタイヤのフランジを薄く削る場合とがある。また、先台車や従台車に対しても、台車全体の偏倚を見込み、台車が自由に曲線を通過し得るよう主台枠との関係を考慮しなければならぬ。

 この目安を付する場合、計算による事は中々困難なので図式計算によるのが普通である。従来一般的に使用された方法はロイ氏の画法であるが、縮尺の取り方によっては誤差が大きいので、最近は誤差の少ないホーゲル氏画法による場合が多い。

(1)ロイ氏の画法

 元来ロイ氏の画法は曲線半径が大きい場合はその誤差は少ないが、半径が小さくなるとかなり小さく表れるから、従来の経験より推してロイ氏の画法より求めた値に対し適宜修正されるのが通例である。

 いま動輪3軸の場合について、両端の動軸の中心が曲線の中心上にある場合を図示すると第131図のごとくである。

131_20200928232401

 これを幾何学の定理によって説明すると次のごとく証明することができる。上図は幾何学の定理によって次式が成立する。

P196

 上式中S²すなわち車軸の横動寸法を自乗した値は、曲線の直径に横動寸法を乗じたる値より、非常に小さな値であるから、これを省略するときは

P196_20200928232501

が得られる。上式は機関車前後の動軸中心が曲線の中心に一致する様にした場合(換言すると線路と車輪フランジ間に全然遊間の無い場合)に中央動軸がSだけ曲線の内側に移動するから、これにSだけの横動を許容せねばならぬことを明らかにしたものである。

 しかして実際問題として曲線半径の寸法と横動を与える寸法とは非常に相違しているから、同一縮尺をもって作図することは困難である。故に曲線半径、軸距横動の各寸法をそれぞれ次のごとき縮尺で表わす。すなわちロイ氏の画法では

P197

で表わす。かくのごとくしても次式が成立するのでSの値には変わりない事を証明している。すなわち

P197_20200928232601

となってRやℓを縮尺で表わしてもSだけは現寸で見られる便宜がある。例えばn=10とすれば、ℓ=10分の1、R=100分の1の縮尺で表わされることになる。しかしてこの画法においては機関車の車体は1本の直線で、車軸はその直線状の一点で表わされ、線路は内外同心円で表わし、内外円の間隔はレールとフランジ間の隙間で描かれる。

 

11013p195_20200928231901
11013p196
11013p197

2020年10月28日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その161)横動軸の位置

12.横動軸の位置

 機関車が曲線通過を容易ならしめるために施設する主なるものは、線路ではスラックであるが、機関車では車輪配置その他から考慮して、動軸に横動を付するかもしくはタイヤフランジを薄く削正するかである。

 しかして動輪に横動を付する場合を考えてみると次の通りである。

(1)車輪が曲線通過のため幾何学的に必要な場合

(2)8620形式の様に、第1動輪に横動を与え先輪と組み合わせて一種の2軸台車の作用をせしむる場合

(3)固定軸距を建設規程に示された最大値4.6メートル以下に保つため、動輪に横動を付する場合

 かように動輪に横動を付ける場合に、果たしていずれの動輪に付けるかは相当考慮を要する。主動輪に横動を付することは、主連棒より受けるクランクピン圧力が大きいから不適当である。もし必要あれば、なるべくタイヤフランジを薄くして、軸箱に横動を設けるのを止めるのが通例である。従って主動軸に隣れる(となれる:並び接する)中間の動輪に横動を付けても、主動輪に横動がないからその効果は割合少ない。故に特別の場合を除いて、多くの場合、最前位または最後位の動軸に横動を付することになるのである。

 なお、機関車の横動軸の位置を最前位にするか、最後位にするかは曲線通過の難易はもちろん、機関車端梁の偏倚(へんい:片寄り)、先従輪の横動およびフランジの摩耗その他色々の条件を考慮して決定されるが、省における代表的機関車の横動遊間を示せば次のごとくである。

P195

 なお、動軸に横動遊間を与える代わりにタイヤフランジを基本のものより薄く削正すればその効果は輪軸に横動を与えたと同様であるから、フランジを薄くする程度で間に合う場合は、この方法によるべきで、動輪3軸を有する形式では第2動輪のフランジを6ミリ薄く削正しているものが多い。

 しかしてフランジを削正する場合は左右車輪のフランジを削正するのであるから結局、片側削正代の2倍の寸法が横動遊間に相当するわけで、すなわちフランジ厚さを6ミリ削正すればその効果は12ミリの横動遊間に相当するのである。

 第2動輪フランジを薄く削正している形式

 6ミリ削正・・・C50,C51,C53,C54,C10,C11,C56,C57,C58
 4.5ミリ削正・・・D50

 

11011p194
11013p195

2020年10月27日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その160)固定軸と横動軸

11.固定軸と横動軸

 動輪軸数の多い機関車はそのうちの1軸または2軸に、横動遊間を付して曲線通過を容易ならしめるのが普通である。もっともそれ以外のふつうの車輪でも軸箱守、軸箱間および受金、ボス間等に約1ミリの遊間を設けるが横動遊間に比べれば極めて少量である。

 すなわち特に横動遊間を付した車軸を横動軸と称し、他の軸を固定軸と称す。固定軸距は建設規程によって4.6メートル以下でなければならぬ。車軸の横動は動軸ばかりでなく、先従台車の車軸、3軸炭水車(450立方尺炭水車)の中央軸等にも設けられることがある。

 

11011p194

 

2020年10月26日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その159)車軸の大きさと受ける力(8)

(3)台車輪軸

 先輪および従輪軸はクランクピンがないから、その負担重量に対してのみ考えればよい。従って動軸の様な面倒な計算はいらない。

 次の様な実験式によって直ちにジャーナルの直径を見出し、その長さは規定のベアリング圧力を超過しない様に定める方法を採ったこともある。

P193

 d =ジャーナルの直径(センチメートル)
 Pt =先従輪バネ上の重量(トン)

 ふつうは動軸の場合の様に、ベアリング圧力から計算している。

P193_20200927111101

 d =ジャーナルの直径(センチメートル)
 ℓ =ジャーナルの長さ(センチメートル)
 w =ジャーナル上の重量(キロ)
 K =許し負担圧力=13キロ/平方センチメートル

 ふつうジャーナルの長さと直径との割合は

 ℓ =1.3~1.7d

であるから、仮に ℓ=1.5d とすれば、ジャーナルの直径は次の様にして求められる。

P193_20200927111102

 かくして求めたジャーナルの直径は、その重量による曲げモーメントに十分耐えることができるから、ふつう強さに対して検算する必要がない位である。もし強いて検算をしようと思えば、(33)式によって曲げモーメントを求め、その内力を計算すれば良い。

 また、炭水車車軸に対しては、許しベアリング圧力(k)を18キロ/平方センチメートルとして(52)式によって計算すれば良いのである。

 

11010p192
11010p193

2020年10月25日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その158)車軸の大きさと受ける力(7)

(ヘ)曲げモーメントとねじりモーメントの合成

 これを求める方法は連結動軸の場合と何ら変わりがないから、説明を省きその算式のみを掲げると次の通りである。

P192

 しかし上式中のMの値は大体前述によって明らかではあるが、連結動輪軸の場合とは全然相違していることを念のため断っておきたい。

 しかしてこの合成換算曲げモーメントを、軸に受ける全力として車軸ジャーナルの径を算出することは連結動輪軸の場合と変わりはない。また車軸輪座の径もジャーナルの径より10ミリ位大きくすることも同様である。ただしこの場合の許し内力(k)は700キロ/平方センチメートルである。

 故にジャーナルの直径は次式で得られる。

P192_20200927104401

または

P192_20200927104402

 以上によって求めたものは、いずれもその摩耗限度における車軸の直径であるから、これに許し摩耗量(15ミリ)を加えたものを、新製の場合の直径とするのである。3シリンダー機関車の主動軸はクランク軸となっているから、さらに中央ピストンの圧力による曲げモーメント等を考慮に入れて、その1回転中の種々の場合について考え、主連棒の圧力による曲げモーメント(M₂)の最大の値を求めて前述の方法によって計算するのである。

 例題について再説すれば、さらに了解を早められるとは思われるが、前節においてかなり詳しく例証しておいたから、計算方法の同一なる本項に対してはこれを省略することにしたい。従って読者は任意の機関車について随時計算を試みられたい。

 

11010p191_20200927104001
11010p192

2020年10月24日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その157)車軸の大きさと受ける力(6)

(ハ)主連棒の圧力による曲げモーメント

 主連棒の圧力すなわちピストンの圧力を、クランクピンを介して最も大きく受けるのはクランクピンが死点にある場合であって、この場合にはピストン面に作用する全圧力を、そのまま全部主クランクピンの中心に受けるものとして、ジャーナルの中心に対して曲げモーメントを求めるのである。

P190

 M' =ピストン圧力による曲げモーメント(キロセンチメートル)
 P' =シリンダー内径の拡大限度におけるピストン面に作用する蒸気総圧力(キロ)
 a' =主クランクピン中心とジャーナル中心間の水平距離(センチメートル)

 この曲げ作用に対して連結棒は反対に支える作用をするため、連結棒部のクランクピンにピストン圧力と同じ大きさの反力が働くものと考えることができる。その曲げモーメントは次の通りであって、前者と作用方向が全く反対である。

P190_20200924222301

 Mr =ピストン圧力による反対方向の曲げモーメント(キロセンチメートル)
 a =連結棒部クランクピン中心とジャーナル中心間の水平距離(センチメートル)

 しかしてクランクピンが死点にある場合は、連結棒ブッシュとクランクピンの間には多少の遊間があるから、前述の曲げモーメントのみを考えれば良い様であるが、実際問題として前述の遊間が無かった場合、または死点よりも少しでもクランクピンの位置が変わった場合には、連結棒部のクランクピンに相当大きな圧力の働いていることを見逃す事ができないのである。故にこの作用をも加味するのが妥当であると思われる。

 すなわちピストンピンに作用する最大圧力による曲げモーメントがそれである。この値は(36)式で与えられている。故に主連棒の圧力による曲げモーメントは、真の主連棒の圧力による曲げモーメントと、クランクピンに作用する圧力による曲げモーメントの和である。

P191

 M₂ =主連棒圧力による曲げモーメント(キロセンチメートル)
 P' =シリンダー内径の拡大限度におけるピストン面に作用する蒸気総圧力(キロ)
 a' =主クランクピンとジャーナル中心間の水平距離(センチメートル)
 a =連結棒クランクピンとジャーナル中心間の水平距離(センチメートル)
 μ =粘着係数=0.3
 W =一軸のレール面上の圧力(キロ)
 R =動輪の半径(センチメートル)
 r =ピストン行程の2分の1(センチメートル)
 b =ジャーナル中心とレール頭中心間との水平距離(センチメートル)

130_20200924222601

(二)合成曲げモーメント

 前二者の合成曲げモーメントは連結動軸の場合に述べたと同様にして求められる。

P191_20200924222501

 M =合成曲げモーメント(センチメートル)

(ホ)ねじりモーメント

 連結動軸の場合と全く同様である。読者は前節連結動軸の場合の説明を一読されたい。

P191_20200924222502

 Md =ねじりモーメント(キロセンチメートル)

 

11010p189_20200924221801
11010p190
11010p191

2020年10月23日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その156)車軸の大きさと受ける力(5)

(2)主動軸

 主動軸の大きさを決める大体の要領は、連結動軸の場合とほぼ同様であるから、特に注意を要する点は別として簡単に記述することにしたい。

(イ)ベアリング圧力

 これを考慮する理由は全く連結動軸の場合に述べておいた通りであるが、主動軸は主連棒を介して直接ピストン圧力を受けるから、許し負担圧力をいく分小さく定めているのである。

P189

 d =ジャーナルの直径(センチメートル)
 ℓ =ジャーナルの長さ(センチメートル)
 w =片側ジャーナル上の重量(キロ)
 K =許し負担圧力=(15キロ/平方センチメートル)

 摩耗を考慮したジャーナルの大きさは上式で得られる。もし強さの点からもその大きさを決める事を要し、または(42)式で求めた直径が受ける力に対して耐え得るかについて、連結動輪軸の場合で説明した様に、各方面から受ける力に対しても計算しなければならぬ。

(ロ)重量による曲げモーメント

 ジャーナル上に受ける重量を基として、その曲げモーメントを求めることは全く連結動軸の場合と同様である。

P189_20200923112101

 M₁ =ジャーナル上の重量による曲げモーメント(キロセンチメートル)
 w =ジャーナル上の重量(キロ)
 b =ジャーナル中心とレール頭中心との水平距離(センチメートル)

 

11010p189

2020年10月22日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その155)車軸の大きさと受ける力(4)

(ヘ)曲げモーメントとねじりモーメントの合成

 連結動軸に働く力の作用は、前述のとおり合成曲げモーメントと、ねじりモーメントとの2つであると考えることができるから、計算に便利な様にねじりモーメントを1つの曲げモーメントとして換算し、これと合成曲げモーメントの2つの和をもってさらに1つの合成換算曲げモーメントとして取り扱うのが通例である。

 曲げモーメントとねじりモーメントとの、合成換算曲げモーメントの一般公式は次の通りである。

P185_20200923103601

 M₁ =換算曲げモーメント(キロセンチメートル)
 M =合成曲げモーメント(キロセンチメートル)
 Md =ねじりモーメント(キロセンチメートル)

 m分の1はポアソンの比(Porson's ratio)と称し、材質の縦の歪みに対する横の歪みの比の逆数で、材質によって多少違うが、まずm=3~4であって、ふつう3分の10をとっているから、結局m分の1は10分の3である。

 今、m=3分の10とすれば、前式は次の通りになる。

P186

 この合成換算曲げモーメントに対抗するものは車軸自身の強さである。故に次式が成り立つわけである。

P186_20200923103801

P186_20200923103901

 かようにして摩擦限度における場合の連結動軸のジャーナルの直径が決定されるのであって、新製の場合はこれに許容摩耗量を加えたものをその直径と定めるのである。設計の場合における見込摩耗量は15ミリと採っているから、計算によって求めたものに15ミリを加算したものが、新製の場合の車軸ジャーナルの直径となるわけである。

 しかして材料は普通鍛鋼(SF54)を用い、その安全率は摩耗限度の場合によって約6位になっている。

【例】参考のためC53形式機関車の第1連結動軸の太さを算出してみる。

 w =6140キロ……片側ジャーナル上に乗る静荷重
 b =15.5センチメートル……レール頭の中心からジャーナル中心までの水平距離
 W =15400キロ……1軸のレール面圧力
 R×2 =175センチメートル……車輪直径
 r×2 =66センチメートル……ピストン行程
 a =32.5センチメートル……クランクピンの中心からジャーナル中心までの水平距離
 μ =0.3……粘着係数
 許容摩耗量=15ミリ

(1)許容ベアリング圧力によりまずジャーナルの直径を見出す。

P187

 今、d=ℓとすれば

P187_20200923104101

 すなわちジャーナルの直径は18.5センチメートルとなったのであるが、前述の様にこの数値は摩耗限度の場合におけるものであるから、これに許容摩耗量(1.5センチメートル)を加算したものを直径とするのが正しいわけである。ゆえに新製の場合のジャーナルの直径は

 d =18.5+1.5=20センチメートル

 次に強さの点から幾ばくの直径を要するかを計算してみよう。

(2)重量による曲げモーメント

 ジャーナル上の重量による曲げモーメントを(33)式によって計算すると次のとおりである。

 M₁ =wb=6140×15.5=95170キロセンチメートル

(3)クランクピンに作用する最大圧力による曲げモーメントは(36)式によって

P187_20200923104201

(4)合成曲げモーメント

 前二者の合成曲げモーメントは(37)式により

P188

(5)ねじりモーメント

 車軸に作用する最大のねじりモーメントは(38)式により

P188_20200923104301

(6)合成換算曲げモーメント

 結局車軸の受けるモーメントは前述の合成曲げモーメントと、ねじりモーメントの和であるからこれを(39)式で求めると次のごとくなる。

P188_20200923104401

 この合成換算曲げモーメントを受ける車軸の直径は(41)式によって求めると

P188_20200923104501

 故に前述の様にこの値に摩耗量15ミリを加算したものがジャーナルの直径となる。

 d =18.5cm+1.5cm=20cm

 すなわち先にベアリング圧力より求めた直径と同じであるから、これを直径と決めて差し支えないわけである。ちなみにC53形第1動軸のジャーナル直径は20センチメートルが新製寸法である。

 

11010p185_20200923102801
11010p186
11010p187
11010p188
11010p189

2020年10月21日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その154)車軸の大きさと受ける力(3)

(ニ)合成曲げモーメント

 重量を基因とする曲げモーメントと、クランクピンに作用する最大圧力による曲げモーメントとは、その作用方向が違っているのである。すなわち前者は車軸に垂直に、後者は水平に作用するから、その作用方向は互いに直角である。故にその合成力は力の直角三角形によって斜辺の大きさで表わすことができる。

 故に合成の曲げモーメントは次の通りとなる。

P184_20200922084001

 M =合成曲げモーメント(キロセンチメートル)

(ホ)ねじりモーメント

 車輪が円滑に回転しているときは、車輪に与えるねじり作用は比較的小さなものであるが、一度車輪が空転したときは非常に大きなねじり作用を与えるものである。車輪の空転は概ね一方のクランクピンが垂直の位置にあるとき、または両方のピストンが上述の位置から30度内外の位置にあるときに起こりやすいのである。一方のクランクピンが仮に垂直の位置にある場合を考えると、そのクランクに属する車輪を空転せしめ様とする力は、その車軸に対して何らのねじり作用を与えないから、他側の車輪を空転せしむるに要する力が、この作用の原因となるのである。故に一方のクランクピンに加わるピストン圧力の2分の1が他方を空転せしむる最大なるねじり作用を起こすものと考えられるのである。

P185

 Md=ねじりモーメント(キロセンチメートル)
 P =ピストン面に働く圧力(キロ)
 r =クランクの長さ(センチメートル)

 しかるにこのモーメントは連結棒の項(144ページ)で既述したとおり、次式に置き代えることができる。

P185_20200922084201

 Md=ねじりモーメント(キロセンチメートル)

 

11010p184_20200922083801
11010p185

2020年10月20日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その153)車軸の大きさと受ける力(2)

(ロ)重量による曲げ作用

 ジャーナル上に受ける重量はその中心に受けるものとし、車軸の端は輪心によって固定されているのであるから、第129図の様にいったん固定された長さbなる梁の他端に、wという重さを置いた場合の曲げ作用を考えれば良い。故に重量による曲げモーメントは次の通りとなる。

P182

 M₁ =重量による曲げモーメント(キロセンチメートル)
 w  =ジャーナル上の重量(片側)(キロ)
 b  =レール頭の中心とジャーナルの中心との水平距離(センチメートル)

129_20200920224201

(ハ)クランクピンに掛かる最大圧力に基因する曲げモーメント

 主動軸の場合には単にピストン圧力をその受ける最大の圧力として考えて良いが、連結動軸の場合には車輪を滑走させる力と、それに反抗する圧力の両者の和である。

 クランクピンに働く滑走せしめ様とする力は、連結棒の大きさの項で既に説明しておいた通り次式で表わされている。

P183

 P₀ =車輪を滑走せしめ様とする力(キロ)
 μ =粘着係数=0.3
 W  =軸重(一軸のレール面圧力)(キロ)
 R =車輪半径(センチメートル)
 r  =クランクの長さ(センチメートル)=(ピストン行程の2分の1)

 故にこの力が働く曲げモーメントは次の通りである。

P183_20200920224401

 Ma =滑走せしめ様とする力による曲げモーメント(キロセンチメートル)
 a =クランクピン中心とジャーナル中心との水平距離(センチメートル)

 しかしてこの滑走せしめ様とする力に反抗する力は片側車輪の粘着力である。

P183_20200920224402

 この力による曲げモーメントは

P183_20200920224501

 Mb =粘着力による曲げモーメント(キロセンチメートル)
 b  =レール頭中心とジャーナル中心との水平距離(センチメートル)

 故に両者の曲げモーメントは次の通りにして、これがすなわちクランクピンに作用する最大圧力に基因する曲げモーメントである。

P184

 M2 =クランクピンに作用する最大圧力による曲げモーメント(キロセンチメートル)

 

11010p182_20200920223601
11010p183
11010p184

2020年10月19日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その152)車軸の大きさと受ける力(1)

10.車軸の大きさと受ける力

 車軸といっても動輪用と台車および炭水車用軸とは全くその趣きを異にするから大体主動軸、連結動軸および台車炭水車車軸の3つについて述べる事とする。

(1)連結動輪軸

 一般に動軸の大きさを定めるには、次の様な事柄について考えなければならぬ。

(イ)ベアリング圧力

(ロ)重量に基因する曲げ作用

(ハ)主連棒の圧力またはクランクピンに掛かる最大圧力による曲げおよびねじり作用

 このほか機関車が曲線を通過するに当たり、その遠心力によってジャーナルの一方を偏圧するために生じる余分の曲げ作用、遠心力の影響によりタイヤ・フランジがレールを横圧するために生ずる曲げ作用および動揺によって車軸に及ぼす激動に基因する曲げ作用等も、車軸の強さを定めるに考慮すべき事柄であるが、その計算が極めて面倒になるから、前述の3つの作用について計算し、その安全率を少し大きく見込んで決定するのが通例である。

(注)ここで車軸の直径といえば、全てジャーナルの直径を指す。

(イ)ベアリング圧力(受金面圧力)

 ベアリング圧力の強弱は、この摩擦面積(ジャーナルの直径に長さを乗じたもの)1平方センチメートル上における圧力を標準として考えられるものである。

 しかしてその標準たるべき圧力は車軸によって違うのはもちろんで、また如何ほどが最も適当であるかは潤滑剤の種類ならびにその使用方法によって、なお研究の余地はあるが、鉄道省ではその許し負担圧力(K)を次の様に定めている。

 主動軸に対し 15キロ/平方センチメートル
 連結動軸に対し 18キロ/平方センチメートル
 先従軸に対し 13キロ/平方センチメートル
 炭水車車軸に対し 18キロ/平方センチメートル

 ジャーナルの直径と長さの振合は自からある範囲に限られるが、機関車の主動軸および連結動軸に対しては、その構造上多少の相違はあるが、大体直径と長さを同一に、またその何れかを10%内外大きくするのが通例である。

 

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2020年10月18日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その151)車軸

9.車 軸

 車軸は機関車の重量を負担しつつ車輪と共に回転するものであるから、その重量、車輪の横道、クランクピンを通じて来るピストンの圧力および動揺等に起因する曲げ作用と、軸箱受金とジャーナルとの摩擦による帯熱とを考慮して、十分強大なものに作られている。

 ふつう良質の鍛鋼材(SF54)を用いるが、時には特殊鋼(ニッケル・クロム鋼)または鍛鋼材に熱処理を施したものを用いる場合もある。

 その形状は単式3シリンダー式または内側シリンダー式機関車の主動軸の様なクランク軸は別として、一般には真っ直ぐな太い丸棒であって、輪心に嵌入する部分すなわち輪座をやや太く、ジャーナル部分をいく分細くしてツバを付けてあるのが通例であるが、最近製作されるものは何れもツバを付けない傾向にある。

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 クランク車軸と称するものは車軸がクランクピンを兼用するもので、内側シリンダー式および3シリンダー式機関車の主動輪がそれである。ここでは単式3シリンダー式機関車の主動軸について概説することとする。

 C53(またはC52)形式機関車の第2動軸すなわち主動軸は、その中央にクランクを有し、この部分に内側主連棒の太端がつながれている。故にこの主動軸は外側2個と内側1個合計3個のクランクピンを持っていることとなり、しかもその三者より常に不均一な力を受けるから、特殊鋼を用いしかも熱処理までも施して十分の強さを満たしてある。

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 製作当初は中央のクランクと同一体の火造りとされたのであるが、その形態が大きく工作困難で、加えるに材質の均等が得られず使用中に疵を発生したものもあったから、最近では各クランク・ウェブ(クランクアームとバランスウェイトが一体化)とピンおよび車軸は全然別個に、しかも工作の容易なる良質の鍛鋼材(SF54)で作り、車軸およびクランクピンをクランク・ウェブに、各水圧で嵌入するいわゆる組立方式を採っている。その水圧力はクランク・ウェブに、車軸を嵌入するときは82ないし123トン、ウェブにクランクピンをはめるには92ないし138トン位である。

 一般に車軸を輪心に嵌入するには、輪座の外径をボスの内径よりもその直径に対し最大1000分の3の割合で大きく作り、白ペイントとボイル油との混合油を塗って水圧で押し込むのである。この作業は輪心にタイヤを焼き嵌めしない以前に行われるのが通例である。しかしてその嵌入圧力は輪心の材質によって相違しているが、現行の嵌入圧力は次表の通りである。

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 かくして圧入された車軸は金属の弾性によってボス内面に圧着し、その嵌入圧力より相当高い(50%位高い)圧力でも抜けないのであるが、さらに一層安全を期するためにボスと車軸の間にキーを挿入するのが通例である。キーはふつうクランクの反対側に挿入されるのであるが、キーの挿入によって輪心および車軸その他の部分に疵を発生した事もあるから、あまり大きな側圧を受けない台車および炭水車車軸にはキーは用いないものが多い。

 ボスの外側に出ている軸面には車軸の製造所、熔融番号、鍛成工場とその年月日および検査官印を、またボス面には、車軸嵌入年月と工場名等を印して、特に車軸の工作および嵌入に注意を払わしているのである。

 

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2020年10月17日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その150)タイヤの摩耗限度とその測定法(3)

(6)タイヤ各部の測定方法

 車輪の内面距離、すなわちバックゲージを測定するには棒状の内面距離測定器を用いて、タイヤ内側の垂直面間を測ればよい。しかしてその内面距離がわかったらタイヤの厚さおよびフランジ測定ゲージ(第125図参照)によって、タイヤの厚さおよびフランジの高さ等を測定するのである。まずタイヤの厚さおよびフランジ測定ゲージの遊尺板(ノギス等に使われるバーニヤスケール)A部の目盛りを、内面距離の寸法に合わせて止ネジで固定し、定規板(2)のB部をタイヤ内側面に、遊尺板(3)のC部を踏面に接着せしむると、タイヤの厚さおよびフランジの高さ等は一目瞭然である。

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 すなわちタイヤの厚さは、直ちにB部の目盛りを読めばよろしい。またB部目盛りの0点から、定規曲り部分の内面までの寸法が35ミリとなっているから、フランジの突端が曲り部分下面と接着しないで、その間になお隙間があればフランジの高さの限度35ミリに達していないことがわかる。車輪一対の中心線からフランジ外面までの距離(すなわちフランジの厚さを測定すること)は、遊尺(4)の突端を押し進めてフランジに当てE部の目盛を読めば良いのである。

 なお、このゲージG面は、寸法目盛が75ミリだけ刻んであるから、この部分で踏面の擦傷面の長さを測るに使用される。

 次にフランジの直立摩耗限度を測るには、フランジ直立摩耗測定のタイヤを用いるのである。第126図の様にゲージの定規板(1)のA部をタイヤ内側面に、B部を突端に立てて滑板(2)をフランジの外面に当たるまで押し進めるのである。しかしてa点とその下隅まで垂直距離は1.5ミリに、b点とその下隅までの垂直距離が3ミリ、C面のなす角は17度であるから、これらの部分を測定して限度に抵触するかどうかを見極めるのである。

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 しかしてフランジの直立摩耗を機関区等で削正した場合における角点付近の円弧の半径は、10ミリより大なる事を要するものであるから、このゲージのD面の円弧(半径10ミリ)を当ててみて、その適否を検査する様になっている。

 なおタイヤの厚さを測定する場合、タイヤ止輪をカシメたる部分が不規則な形状となり正確に測定し得ないので、その正確なる測定を期するため、タイヤの内側面に25ミリ線と称する切欠き線が円周に沿って付してある。B尺部分でこの25ミリ線までの寸法を読み、これに25ミリを加えれば、正確なるタイヤ厚さの寸法を得る事ができる。

 

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2020年10月16日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その149)タイヤの摩耗限度とその測定法(2)

(3)車輪一対の中心線よりフランジ外側面に至る距離およびフランジの高さ

 首題(タイトル)の前段に対する限度は次の様に定められている。

 工場修繕限度  521ミリ
 使用限度    516ミリ

 これはいうまでもなくフランジの厚さの限度を既定したものであって、上記の寸法から車輪内面距離の半分を差し引いたものがフランジの厚さとなるのである。例えばその内面距離が最大994ミリの場合を想像すると、フランジ厚さの限度は次の通りとなる。

 工場修繕限度  521ミリ-497ミリ=24ミリ
 使用限度    516ミリ-497ミリ=19ミリ

 しかし車輪一対の内面距離がこれより小さければフランジの厚さの限度は上記より厚くなるわけである。

 一般に車輪の内面距離を見て、直にその摩耗限度に対するフランジの厚さを知る必要のある場合は、第124図を見てもらえば良いと思う。

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 フランジの高さは、25ミリ以上35ミリ以下でなければならぬ。すなわちタイヤが摩耗するに従ってフランジの高さは反対に増加することになるから、35ミリがその高さの限度と見られるのである。これらの限度を設定せる趣旨は、レール継目板との衝撃その他、脱線、異線侵入等の、運転上の危険を除去するためにほかならない。

(4)踏面の擦傷面と車輪の直径差

 タイヤの踏面に長さ50ミリ以上の擦傷面が2個以上、または70ミリ以上のものがあるときは削正する事になっている。

 この擦傷面は扁平であるから、タイヤ踏面周は真円でない。従って車輪回転中にドンツキを生じ、各部の弛緩を惹起するほか、乗り心地が極めて悪いから常に擦傷を生ぜしめない様ブレーキの取り扱いに注意すべきである。

(5)その他

 また各連結動輪のタイヤの直径差は3ミリが区修繕限度とされ、左右一対の直径差は削正仕上りで1ミリ以下ならば良い事になっている。

 

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2020年10月15日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その148)タイヤの摩耗限度とその測定法(1)

8.タイヤの摩耗限度とその測定法

 車輪各部は摩耗した場合運転上の安全を確保するために、摩耗限度を設けてある。以下運転保安上設定されているタイヤ摩耗限度に対する現行法規を示すこととする。

(1)タイヤの厚さ

 タイヤの厚さに関する摩耗限度を公達文のまま示すと次の通りである。

 タイヤノ厚サ及其ノ他ノ摩耗限度ハ左表(次表)ニ依ル 
 但シ長キ勾配ヲ有スル線路ニ使用スル動輪タイヤノ摩耗限度ハ機関車ノ種類ニ応シ鉄道局長ニ於テ左表ノモノヨリ大トスルコトヲ得

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 工場修繕限度は、工場における一般検査の場合に取替えまたは加修しなくてもよい寸法であって(この限度を超えたものは修繕を要す)、使用限度はこの寸法を超えたものは使用できないという限度を示しているのである。制輪子の作用する車輪は、ブレーキによってタイヤが熱せられるから、制輪子の作用しないものより限度を大きくし、またストラウドリー式止装置のものは、止輪がタイヤに食い込む寸法が他の式より大きいから、その限度をいく分大きくして安全を図っているのである。

 なお、長い勾配を有する線路に使用するものは、ブレーキの作用時間が割合長いから動輪タイヤに限って、特にその限度を本規定よりも多少大きくしても良いことになっている。

(2)フランジの形状

 フランジのレール頭に接触する部分が、直線状態に摩耗(俗に直立摩耗という)して、フランジ先端の円弧と交わる点に角点ができた時は、その角点から、フランジ突端に至る距離(車輪直径の方向に測って)が1.5ミリ以下なる場合、および同上距離が3ミリ以下にして、且つ摩耗直線部と車輪内面の平面との成す角が17度以下なる場合は、使用限度にして共に削正してその形状を整正することになっている。

 この規程は従来の脱線したタイヤについて調査した結果、その原因と認められる点が上記の寸法を超過したものに多かった実績に徴し(照らし)、これが脱線防止上定められたものである。

 

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2020年10月13日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その147)車輪各部の寸法の制限

7.車輪各部の寸法の制限

 車輪各部の寸法は国有鉄道建設規程によって次の様に定められている。

(イ)タイヤの幅・・・120ないし150ミリ

(ロ)タイヤ一対の内面距離(バックゲージ)・・・988ないし994ミリ(標準990ミリ)

(ハ)フランジの高さ・・・25ないし35ミリ 

(ニ)車輪一対の中心線よりフランジ外面までの距離・・・516ミリないし527ミリ

(ホ)タイヤの直径・・・730ミリ以上

 しかしてこの車輪の寸法は軌道の寸法と密接な関係を有するもので、転てつ器轍叉(てっさ:ポイント)、曲線、レール継目等において安全且つ円滑に運転し得る様に定められているのである。

 

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2020年10月12日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その146)車輪の直径と関係事項(2)

(3)フランジとレールとの接触面積

 これを一般車両についてみれば、車輪の径が大きいほど、フランジとレールとの接触面積は大きくなるから、車輪の進行には安全度を増すものである。

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 すなわち第122図から、幾何学の定理に従って次式が得られる。

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 ℓ  =レール頭との接触長さ(ミリ)
 h =フランジの高さ(ミリ)
 D =車輪の径(ミリ)

 故に

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(4)脱線の傾向

 車輪直径の大きいものは小さいものよりもレールに乗り上げやすい。第123図の大小2つの車輪について見ると、車輪フランジの下端からレールとの接点に引かれた直線は、直径の大きい方が小さいものよりも水平線に対する傾斜角が小さいから、フランジはレール頭に乗り上げやすくなるのである。故に機関車の先輪には比較的直径の小さい車輪を用い、機関車進行の誘導を安全ならしめているのである。

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(5)直径の制限

 国有鉄道建設規程第65条に、「車輪の直径は車輪一対の中心線より560ミリの距離における踏面において測り730ミリ以上なることを要す。ただし特別の事由ある場合はこれによらざることを得」とあって、一般的にはその最小径が730ミリと定められている。特別の場合とは例えば操重車(ソ10形式)の様な特殊車両を指すのであって、ふつうの客貨車でも一般の制限によっているのである。

 機関車の車輪のうち、直径小なるものは先輪、従輪および炭水車車輪で、いずれも860ミリがふつうである。動輪については機関車の高さに制限規定があるから、その方で押えられ、構造上2メートル以上のものを作ることは、まず困難とみてよろしかろうと思われる。

 


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2020年10月11日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その145)車輪の直径と関係事項(1)

6.車輪の直径と関係事項

 車輪の直径の大小は色々な事柄に関係を持つものである。

(1)速 度

 機関車の速度は動輪の直径の大きさに大体正比例することは周知の事がらである。

 一般に機関車の構造上から定まる許容最大速度は、動輪径の大小によって表現されているが、車輪の配列および回転数を加味したものもある。今その各々の場合による主要形式機関車に対する安全最大速度を表示して、参考に供する事とする。

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(2)シリンダー牽引力

 動輪径の大小はシリンダー牽引力を左右するものである。シリンダー牽引力の一般公式は

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 T =シリンダー牽引力(キロ)
 K =係数=0.85
 P =缶使用圧力(キロ/平方センチメートル)
 d =シリンダー直径(センチメートル)
 ℓ  =シリンダー行程(センチメートル)
 D =動輪直径(センチメートル)

 すなわち牽引力は動輪直径と反比例する。

 

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2020年10月10日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その144)タイヤ(13)

(リ)フランジに焼き入れすること

 タイヤの耐摩耗性を増大するために硬度の高いタイヤを使用することは有効であるに違いないが、材質が硬くなれば勢いその性質はもろくなり、衝撃を受ける事の多いタイヤとしては危険が伴うため、硬度については自ずから限度がある。最近使用されるタイヤは前述の様に従来70キロ/平方ミリメートルであったものが、80~90キロ/平方ミリメートルに上げられたが、この程度においても既に裂損の危険がある。これがため最近は特に摩耗の多い先輪とか第1動輪のフランジに焼き入れを施し、タイヤ全体としての性質を変化することなく、摩耗しやすいフランジのみの硬度を増し著しい効果を上げている。

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 その方法は第121図のごとくアセチレンガスの吹管と温水冷却装置を設け、車輪を適当の速度で回転せしめて焼き入れするのであって、この装置によればフランジの全体に一様な焼き入れを施すことが可能で、容易に所期の目的を達することができる。しかしながらその方法を誤り過度の焼き入れをするとタイヤ裂損の危険があるため、一定の基準を設け慎重に施行されている。この基準に定められた主要事項を摘記すると次の通りである。

(1)車輪は踏面に作用するコロにより、踏面が1分間300ミリの速度をもって回転する様な装置を用いること。

(2)吹管の火口は細く波形に移動しフランジ面が均一に焼き入れされる様に注意すること。

(3)吹管の焔は第121図に示す様に火口より17~18ミリの箇所において炭火焔が焼き入れ面に接する様に調節すること。

(4)動輪にあっては釣合錘の部分から焼き入れを始めること。

(5)焼き入れが重なることを避けるため焼き入れ終わりは、焼入れ始め点より約20ミリの箇所とすること。

(6)焼き入れ開始と終了の点には刻印を付し検査に便すること。

(7)冷却は温水により行いその温度は次の標準によること。

(8)焼き入れの硬度はショア(硬度)の50~60を標準とすること。

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 フランジ焼き入れを成したるタイヤは焼入れせざるものと区別するため、タイヤ側面外周の全部または一部に白色ペンキを塗布しこれを表示している。

 

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2020年10月 9日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その143)タイヤ(12)

(ト)特殊制輪子を使用すること

 特殊制輪子は普通の鋳鉄製の制輪子の中へ、鋼片等の固い金属を鋳込んだものであるが、その目的はフランジの偏耗や、踏面の扁平を削正するためであった。

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 タイヤの寿命が割合に短いのは、フランジの偏耗および踏面の扁平その他を修正するための削正代が比較的多いからである。タイヤの輪郭を正常に保つことができれば、削正もまた少なくなるという見地から、この特殊制輪子を試用されたのであるが、その結果はタイヤや制輪子の寿命を長くすることには成功したが、制動力を減ずること、取り付け取り外しが厄介であること、および値段の点で実用的ではなく、ほんの試用に止まってしまったのである。

(チ)タイヤの硬度を増加すること

 レールはタイヤよりも硬い結果、軟質のタイヤの方がレールよりも摩耗量が多いのである。故に今少し固いものにして(抗張力を高くして)、タイヤの摩耗をいく分でも減少しようというのがこの試みである。すなわち数年以前まではタイヤの抗張力は70キロ/平方ミリメートルであったが、現在では75キロ/平方ミリメートル以上のものとなり、実際のものは80キロ/平方ミリメートル以上のものが多く、時には90キロ/平方ミリメートルを超えるものすらある様になったのである。

 旧来のタイヤと抗張力の高いタイヤとの摩耗量比較試験の結果は次の通りであった。

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 なお、硬さを増すことには違いないがこれと少し趣きを変えて、タイヤ全体を熱処理(焼き入れや焼き戻しをすること)して、その金属組織を変更して、硬さを増したものがある。一般に特殊タイヤと称しているものはこれである。外国製にもあるが、国産では住友製があり、その仕上り抗張力は何れも85~100キロ/平方ミリメートルであって、前述のものより多少硬いからその摩耗量もまた少ない様である。

 

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2020年10月 8日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その142)タイヤ(11)

(ニ)中間緩衝器を中心1個のものとすること 

 機関車と炭水車との間にある中間緩衝器が左右にあるもの、すなわち両側緩衝器式は、曲線通過のとき抵抗があるから、従ってタイヤとレールとの間に無理ができてフランジの摩耗が早い。これを1個の中央緩衝器に改造した結果について見る時、タイヤの摩耗量を著しく減少する事ができた。近来、中央緩衝器式が一般に採用される様になったのは脱線防止の見地と、フランジの摩耗を軽減する意味とによるものである。

(ホ)フランジ給油器を使用すること

 フランジの摩耗は、運転中タイヤ・フランジがレールに接し軋(きし)むためであるから、フランジとレール間の摩擦力を軽減すれば、フランジの摩耗を少なくすることができる。

 フランジ給油器はこの目的に従い考案せられたもので、我が国においても数年前これが利用について研究され、種々な構造のものが試用されたが、給油の調整が意のごとく行われないとか、タイヤの踏面にまで油が塗布され空転を惹起するとか、理想的なものを得るにいたらず、十分に実用の域に到達せずに今日に及んでいるが、その後、同様の目的から考案せられたレール水まき装置が広く使用されるに至った。

(へ)レール水まき装置を利用する事

 フランジ給油器に代わるに撒水(散水)をもってタイヤとレールとを湿潤(湿らせる)せしめたならば、その効果は油には及ばないが費用は極めて低廉であり、構造、取り扱いも簡易で相当の効果を挙げ得るものと信ぜられ、これを実施した結果は果たして次表に示したごとく有利な事が判明した。鉄道省では現在ほとんど全機関車にこれを実施している程であるが、撒水ノズルは第1動輪または先輪の車輪直前においてレールと車輪間に向け、1分間に約3リットルの流水割合で放射してこの両者を湿潤せしめる様にしている。

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2020年10月 7日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その141)タイヤ(10)

(ロ)線路のスラックはなるべく寛大にすること

 曲線におけるスラックが十分であれば車両の通過に無理もないから、フランジの摩耗もまた少ないのは、理論上もまた実際上もうなずかれる事である。しかし無制限にスラックを大きくする事は許されないことであって、いくばくの曲線にはいくばくのスラックを付するという規定があるが、その許された範囲内でなるべく寛大な方がタイヤの摩耗を減少し得るものである。

(ハ)機関車台車の復元力を増すこと

 機関車は直線も曲線も通過するのであるから、復元力が小さ過ぎては直線で蛇頭動が起きやすいし、またあまり大き過ぎては曲線で脱線する恐れがある。すなわち台車の適当なる復元力は機関車の構造、大きさ等によって個々に決められるべきものであるが、現在では大体3ないし5トン位の一定の復元力を有するものが良い様に言われている。

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 先台車の復元力の小さ過ぎるものをある程度まで大きくすると、第1動輪のフランジの摩耗は著しく減少することはできるが、先輪の摩耗量はかえって多くなる。しかるに動輪のタイヤを削正または取り替えるよりは、先輪のタイヤを削正または取り替える方が、修繕および経済上好ましいからなるべく復元力を大きめにするのが良い。C51形式機関車先台車の復元バネを枚数の多いものに取り替えて試験した結果は、上表の通りである。

 

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2020年10月 6日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その140)タイヤ(9)

(9)タイヤ摩耗の影響とその防止方法

 車輪とレール間に置ける回転摩擦、滑走、蛇頭動および遠心力による滑り摩擦ならび動輪釣合錘の不平均による槌打ち作用等のため、レールも摩耗するがタイヤもまた摩耗を避ける事はできないのである。

 タイヤ踏面の全面的一様な摩耗は常に期待できない。普通は踏面に凹溝または扁平点を作るから、運転の円滑を欠き機械部分の弛緩疵入等を助長する。またフランジが編耗し削正期を早める事も、直立摩耗して脱線を招来する事もある。さらにタイヤが薄くなればその弛緩および割損を生ずる傾向多く、しかもタイヤは相当高価なものであるから、なるべく摩耗しない様な方途を考究し実行する事が望ましいわけである。

 以下、タイヤ摩耗防止について研究実施された事例と現状とを概括的に述べてみよう。

(イ)護輪レール(脱線防止ガード)を設置すること

 護輪レール敷設の目的に2つある。1つは車輪の脱線防止で、他はレールおよびタイヤの摩耗防止である。ここでは後者の目的で設置された護輪レールをいうわけである。曲線路の内側に護輪レールを設けて護輪レールと内側レールとの間隔を狭くすれば、両側のタイヤ・フランジがほとんど同様な圧力で1つは外側レールに、他は護輪レールに接着するから、フランジの摩耗を防止し得るわけである。

 参考のために山陽本線における、護輪レール敷設前後の試験記録を表示すると次の通りである。

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 上表は9600形式機関車の第4動輪のタイヤ摩耗量が、同一量になるまでの走行キロと経過日数の比較をしたもので、護輪レールを設置したために、タイヤの摩耗量は約3分の1に減少した事を表明している。しかし護輪レールを敷設すると上記の利益の反面において、走行抵抗がいく分増加することは実験上否めないとされている。

 

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2020年10月 5日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その139)タイヤ(8)

(7)タイヤ割損の原因

 タイヤ割損の主なる原因を挙げれば次の通りである。

(イ)タイヤの材質不良なる場合

(ロ)タイヤの焼き嵌め代が著しく大きかった場合

(ハ)焼き嵌めの際の過熱不平等にしてタイヤに一様な緊締力の無い場合

(ニ)タイヤが薄くなった場合

(ホ)ブレーキによってタイヤが過熱されその材質が変化せる場合

(へ)レール接手の不整正によってタイヤが槌打ちせられた場合


(8)タイヤの弛緩検査法

 タイヤが弛緩すると、リムとタイヤとの間にアカギレができ、そこへ油が滲み出すから、躊躇なくリムとタイヤに跨りポンチマークを入れるか、または白ペイント線を書いてそのマークの移動を見るべきであるが、リムとタイヤとの間に油が滲み出ない初期には、タイヤをハンマーで叩いてその音響を聞き分けるのである。濁音を発する時は弛緩の兆候であって、この様な場合、槌打ちによって往々リムとタイヤとの間に油が滲みだして来ることがある。

 上述の様な方法によって、その弛緩を確認した場合は、焼き嵌め直しあるいはタイヤ取替えの手配を講ずべきである。

 

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2020年10月 4日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その138)タイヤ(7)

(6)タイヤ弛緩の原因とこれが防止対策

(イ)タイヤを輪心に取り付ける方法そのものが、焼き嵌めにより緊締力に待つものであるから、長い下り勾配等で連続的にブレーキを使用すると、その熱により緊締力は著しく減殺され、ついに弛緩するに至る事は想像し得るところで、貨車について実験した結果によるも、ほとんど全てのタイヤが弛緩気味となることが実証されている。しかしもっぱらこの場合はタイヤの温度が常温となれば再び緊締力を生ずるも、厚さの薄いもの等ではこれが原因となって、永久弛緩を生ずるに至る。これがため機関車においてはタイヤ冷却装置を設け、ブレーキ使用による温度上昇を防止している。

(ロ)タイヤの厚さが薄いもの

 タイヤは常時輪心に掛かる負担重量により、輪心とレール間において圧延せられ、伸びを生じ、緊締力を失い弛緩する。

(ハ)タイヤと輪心間に使用されるライナーの腐食によるもの

 弛緩せるタイヤは輪心間にライナーを挿入し締め直しされるが、このライナーが水気の侵入等により腐食し、その用をなさない様になって弛緩するものが多く、これに対しては最近不銹鋼板(ふしゅうこうばん:不錆鋼板:ステンレス鋼)のライナーを使用し効果を挙げているむきがあり、将来かような方法が広く採用されんとする傾向にある。

(ニ)輪心の変形歪によるもの

 輪心はふつうクランク・ピンと釣合錘のある方向を長軸とする楕円形に変形する傾向であるが、かような変形が大になるとタイヤの弛緩を招来する。これがため最近輪心の強度増大が問題となり、D51,C57,C58形式等においては箱形輪心が採用され、その強度を増大し歪みを防止している。

(ホ)タイヤの焼き嵌め代が過小な場合

 タイヤを輪心に焼き嵌めるには、先に述べた様にタイヤの内径を輪心の外径よりも、1000分の1だけ小さく削正し、タイヤを過熱膨張せしめて嵌入するのであるが、締め直しタイヤ等ではライナーの厚さにより焼き嵌め代を加減するため、往々ライナーの厚さが不十分で焼き嵌め代が不足し弛緩する場合がある。

 

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2020年10月 3日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その137)タイヤ(6)

(5)タイヤ・フランジ偏耗の原因

 次のごとき場合フランジの偏耗を生じやすい。

(イ)缶の中心線と台枠の中心線とが一致しない場合はもちろん、空気圧縮機および給水ポンプ等の補助機の配置いかんによって、機関車左右の重量分布が不平等となった場合

(ロ)車軸中心線がシリンダー中心線と直角でない場合

(ハ)機関車を転向せずして長く同一線路に使用する場合

(二)先台車復元装置の調整不良、摩耗その他によって左右復元力が相違した場合

(ホ)台車心向棒の中心不一致、または左右長さ不等の場合

(へ)車輪の横動遊間が不適当な場合

(ト)バネ装置の調整悪しく台枠が水平でなく荷重の配分不良なる場合

(チ)曲線における線路のスラックが適当でない場合

 

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2020年10月 2日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その136)タイヤ(5)

(4)タイヤ取付装置

 タイヤは輪心に焼き嵌めされているから一見丈夫な様にも思えるが、制動作用による過熱、フランジの側圧および踏面の転動(レールの上をころがす)により弛緩脱出の不安がある。故に焼き嵌めした上、さらに第119図に示す様に機械的にタイヤを輪心に取り付ける装置が講じられているのである。

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(イ)押しネジ式(止ネジ式)

 この形式は、第119(A)のごとく大体スポーク2本ごとに1本の割合でリムを貫通して、タイヤに止ネジをねじ込む最も簡単な装置であって、タイヤが摩耗してくると止ネジ挿入部付近から亀裂、割損する傾向が多い。

(ロ)ストラウドリー式

 この取付装置は第119図(B)に示すごとく、その構造は極めて複雑であるのみならず、止輪が約20ミリもタイヤに食い入っているから、タイヤの使用期間は必然的に短い欠点がある。

(ハ)マンセル式

 この形式は第119図(C)に示すごとく、タイヤは両側2個の止輪に挟まれボルトにて確実に締結されるので、タイヤの破損部分はもちろん、帯熱しても弛緩することがないから理想的の止装置であるが、工作上かなり面倒であるばかりでなくリムに穴を開けるから弱くなる欠点がある。

(ニ)ギブソン式

 この形式は第119図(D)に示した通り、大体としての構造はストラウドリー式に良く似たものであるが、ただクサビ形の止輪がなく、比較的簡単な点で使用される事も前者より多い様である。

(ホ)鉄道省基本(式)

 現在の国有鉄道の機関車のほとんど全部はこの止装置であって、第119図(E)に示した通りである。その構造はタイヤに止輪を挿入し得る溝を作り輪心に焼嵌めた後、く字形の止輪をタイヤの溝に嵌入し、タイヤ内側を槌打ちして固定するのである。この式では止輪を用いるからタイヤは比較的厚いものにしなければならず、また古タイヤを再生する場合には溝掃除の手数もかかり、且つまたタイヤを槌打ちするためその内側面に亀裂を誘発する不利はあるが、構造が比較的簡単なのと、タイヤ割損の場合の破片が飛散する恐れが、押しネジ式よりも確実に防止し得る点で広く採用されているのである。

 現在、タイヤと輪心との取付力はほとんど全部が焼嵌めによる緊締力によるものと考えられ、タイヤ止輪の効果はむしろ無きに優る程度とみられている。車両研究会で9600形式機の動輪に止輪無しの試験車を出し、既に10数年異常無く使用中であるが、いまだ止輪を全面的に廃止するまでの結論には到達していない。

 

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2020年10月 1日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その135)タイヤ(4)

(3)タイヤの緊締力

 タイヤの緊締力はタイヤの内径を輪心の外径より1000分の1だけ小さくして焼嵌めするから、タイヤが冷却すると元の内径に復帰しようとするタイヤの抗張力のために、輪心に緊着するのであって、その抗張力は明らかに弾性限界内にあるのである。しかしてその緊締力は力学上次式で得られる。

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 k =タイヤ緊締力(キロ/平方センチメートル)
 E =弾性係数=2.2×10⁶(キロ/平方センチメートル)
 D =輪心の外径(センチメートル)
 d =タイヤの内径(センチメートル)

 しかしてタイヤの締代は1000分の1であるから

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となる。すなわち既述しておいた様に、輪心の直径の大きさによって締代を変えないから、緊締力は車輪の直径には無関係であって、単に締代の大小によって緊締力に相違が生じて来るものである。Eの値を2.2×10⁶とすれば

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となる。すなわち緊締力なるものはタイヤの断面を有する鋼棒に力を加えて長さの1000分の1だけ引延ばした場合に生ずる弾力(縮もうとする力)と同一なもので、極めて大きな力が作用するものである。

 

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