往復部分の慣性力を精確に計算するには主連棒の傾斜を考えに入れなければならぬが、それでは非常に複雑で難解なものとなるから、簡単にするため、ここでは主連棒は傾斜しないものとする。
第147図において主連棒が傾斜しないものとすれば、ピストンはクランクの位置から下した垂線の足H点にある事になるから、EHの長さはピストンが行程の左端から動いた距離に等しく
W =往復部分の不釣合重量(キロ)
v =機関車の速度(メートル/秒)
R =動輪の半径(メートル)
F =不釣合往復部分の慣性力(キロ)
r =クランクの半径すなわち行程の半分(メートル)
x =ピストンが行程の左端から動いた距離(メートル)
ω=動輪の角速度(ラジアン)
g =地球の重力に基く加速度=9.8メートル/秒/秒
とすれば
式中
は往復部分、すなわちピストンの加速度(メートル/秒/秒)である。
〔注〕車輪やクランク等のごとく回転する物体の回転速度を表すにその円周上の一点が、単位時間すなわち1秒または1分あるいは1時間に通過する距離をもって表わすよりも、回転する角度にて表す方が便利であるから、学問上では角速度を測るにのにラジアンという単位を用いている。
1ラジアンというのは半径の長さに等しい弧を中心で挟む角の大きさで、円周は2πrであるから、1回転すなわち360度はちょうど 2πr÷r=2πラジアンである。
いま第148図において物体がA点を出発しt秒間にB点まで回転したとすれば、その速度vはt分の弧ABである。円においては弧の長さは中心角θ(シータ)の大きさに比例するものであるから、弧ABの長さは
よって
となり、このt分のθは角速度といい通常ω(オメガ)なる記号で表わし
この式は線速度vと角速度ωとの関係を表すもので、もし1秒間の回転数をnとすれば ω=2πnラジアン/秒である。
いま機関車の速度をvメートル/秒、動輪の半径をRメートル、1秒間の動輪の回転数をnとすれば
である。
【例】ピストン行程660ミリ、動輪の直径1750ミリ、往復部の不釣合重量100キロの機関車が毎時80キロメートルの速度で運転している時、次の位置における往復部の慣性力を求めよ。
(1)ピストンが左側死点から動き始める時
(2)ピストンが左側死点から100および500ミリの点に来た時
【解】(1)1秒間の速度
ピストンが左側死点から動き始めんとする時は x=0(第147図参照)、
W=100キロ、r=0.33メートル、R=0.875メートルであるから(67)式により
(2)ピストンが左側死点から100ミリの点へ来た時は x=0.1メートルであるから
次にピストンが500ミリの点へ来た時、この場合は
ここに「-」は力の方向が前と反対、すなわちピストンと同じ方向に動く事を示す。
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