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2020年11月の記事

2020年11月30日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その194)基礎ブレーキ装置概論

第2章 基礎ブレーキ装置

1.概 論

 基礎ブレーキ装置とはテコの理によって制動筒、または手力によって発揮した力を適当な大きさに拡大して制輪子に伝える役目を成すもので、制動軸、制動腕、制動引棒、釣合梁、リンク、制動梁、制輪子釣および制輪子等から構成されており、次のごとく定義されている。

『基礎ブレーキ装置とは空気ブレーキにあっては制動筒の押棒ピン(ピンを含む)より制輪子に至るまでのブレーキ装置を言い、手ブレーキにあっては第一の引棒またはこれを作用せしめるテコのピン(ピンを含む)より制輪子に至るまでのブレーキ装置を言う。』

170d50

 しかして基礎ブレーキ装置として具備すべき条件について述べると次のごとくである。

(1)力の伝達に対しその効率の良好なること。

(2)軸重に応じて、車輪に加える圧力の分布を適当にし、車輪が滑走せぬ範囲で最大の制動力を発揮し得ること。

(3)安全度の高いもので、その重量および形状の小なること。

(4)制輪子およびタイヤの摩耗に関係なく、常に一定の制動力を得ること。

(5)各部分品は互換性を有し、且つ保守修繕が容易に行われること。

 

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2020年11月29日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その193)ブレーキの種類(2)

(2)作用上からの分類

(イ)単独ブレーキと貫通ブレーキ

 単独ブレーキとは、一車両のみ単独に作用するブレーキで、例えば手ブレーキや車側ブレーキのごときものである。これに対し一車両で操作すれば列車全体にブレーキが作用するものを、貫通ブレーキという。

 輸送が小単位で機関車の次位に数両の客車を連結し低速度で運転していた時代には、機関車単独で停車手配をしてもさほど不自由は感じなかったが、漸次連結車両数が増大するに従って機関車だけの制動力では不足するに至り、連結車両中に制動手や車掌を乗せ、手ブレーキを扱わしめるに至ったが、速度の向上と連結量数のいっそうの増大は、かくのごとき消極的な単独ブレーキの集合では間に合わず、全列車の作用を一括操作し得る貫通ブレーキの発達を促したものである。

 貫通ブレーキとして最初発達したものは真空ブレーキで、これは蒸気力で真空を創り、大気圧との圧力差によって制動筒を働かせるものであるが、さらに優秀なる空気ブレーキの発達により、今日では空気ブレーキが貫通ブレーキの代表的なものとなっている。

(ロ)直通ブレーキと自動ブレーキ

 空気ブレーキは作用上から直通ブレーキと自動ブレーキとに区別される。直通ブレーキとは、制動する場合、そのつど直接制動筒へ圧力空気を送ってやる装置で、機関車における単独ブレーキ装置のごときものである。これに対し自動ブレーキではあらかじめ補助空気溜に圧力空気を送っておき、制動する場合、制動管の減圧を成すことによって作用する装置である。列車分離等の場合、前者においては制動作用は不能に陥るが、後者においては直ちに自動的に制動が作用する。鉄道省の建設規程に決められている車両用ブレーキは、貫通ブレーキたる事を要するとされている。

(ハ)電磁空気ブレーキと急動空気ブレーキ

 これは自動空気ブレーキの作用をいっそう迅速有効ならしめるために設けられた装置で、制動弁を扱ってからブレーキの作用するまでの時間(空走時間)の短縮と同時作用とを目的とするものである。

 急動空気ブレーキとは常用制動または非常制動の際、機関車で制動管の減圧を行う以外に、編成車両においても各々局部的な減圧作用を成し、制動作用の伝達を速かならしめ、且つ制動筒内の圧力を高くして、制動距離の短縮と列車の衝動とを防止するごとく作用するブレーキ装置で、現在使用されている三動弁(制御弁)はいずれもかかる働きを成す構造になっている。

 電磁空気ブレーキとは各車両に装置された電磁弁と制動弁とを電気的に連絡し置き、急動式の三動弁を使用し、電磁弁により制動弁と同時に各車両制動管の減圧が行われるもので、空走時間が短縮され、衝動も少ない。現在省線電車に使用されているものは、J三動弁またはAVブレーキ装置に電磁弁を併用せるものである。

 

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2020年11月28日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その192)ブレーキの種類(1)

2.ブレーキの種類

(1)動力または機構よりの分類

 鉄道車両に使用されているブレーキを大別すると

(イ)制輪子を車輪に擦り付ける摩擦ブレーキ
(ロ)それ以外の特殊ブレーキ

とに区別される。

(イ)摩擦ブレーキ(制輪子ブレーキ)

 摩擦ブレーキは車輪に制輪子を押し付け摩擦せしめて、車両の有する運動のエネルギーを吸収し、これを熱エネルギーとして放散するもので、その原動力の種類または構造等により次のごとく区別される。

(A)手ブレーキ

 (a)テコブレーキ
 (b)ネジブレーキ
 (C)チェーンブレーキ
 (d)バンドブレーキ

(B)動力ブレーキ

 (a)真空ブレーキ
 (b)空気ブレーキ
 (C)蒸気ブレーキ

(C)動力ブレーキ

 (a)錘付ブレーキ
 (b)車側ブレーキ

(ロ)特殊ブレーキ

 特殊ブレーキとして最も広く使用されているのは電気ブレーキで、電動機を逆に発電機として作用させることによって、車両の有する運動のエネルギーを電気的エネルギーとしてこれを吸収するブレーキ装置である。しかしてブレーキによって生じた電気は、これを抵抗器に導き熱エネルギーとして空気中に放散する場合と、発電所に返して他の電力と共に使用する場合(回生制動と称している)とある。

 

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2020年11月27日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その191)ブレーキ装置の概念

第2編 ブレーキ装置

第1章 ブレーキ一般

1.ブレーキ装置の概念

 車両が輸送機関としてその動的使命を完遂するためには、任意に停止または減速を成し得るべき装置が絶対に必要である。すなわち車両の性能は動的使命を果たすための装置と、静的使命を果たすための装置とに二大別することができる。しかしてその使命に軽重を付すべきではないが、安全輸送の見地よりすれば静的装置は動的装置よりいっそう重要性を有するもので、いかなる場合においてもその故障による作用の停止は許されない。またブレーキは静的使命を果たすべき消極的装置のごとく考えられる場合もあるが、これが性能の優秀なる事によって、動的装置の性能を十分に発揮せしめることができる。

 すなわち高速運転(最高速度の向上)の実現、ことに制動距離の短縮により、平均速度の向上に役立つばかりでなく、列車運転時隔の短縮を可能ならしめ、線路容量の増大にも役立つものである。

 ブレーキがその使命を果たすために必要なる条件としては種々あるが、主なるものを挙げれば次のごとくである。

(イ)任意の場所に自由に停止し得ること

 時と場所との条件に支配されず、任意に自由に停止し得る装置を有してこそ、はじめて高速運転が許される。

(ロ)迅速に停止し得ること

 突発的場合においても、迅速に停止し得る強力なるブレーキ装置が必要で、高速運転となればなるほど強力優秀なることを要する。

(ハ)確実なること

 故障による作用不要となるがごとき事は許されない。仮に故障してもその場合は直ちにブレーキの作用するごとく、どこまでも安全側に働く機構たる事を要する。

 なおブレーキは運転中の車両を停止させるばかりでなく、運転中において任意の速度に低減し得ること、ならびに停止中その静止を確保することも使命の一つである。

 

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2020年11月26日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その190)3シリンダー機関車の釣合せ方(3)

(3)主動輪の往復部の釣合せ方法

 外側往復部は水平方向に運動するから、直ちに2シリンダー式機関車と同じ方法で釣合せを行うことができるが、内側シリンダーが傾斜する時は内側往復部も傾斜して運動し、その慣性力が傾斜して作用するから、これを水平と垂直の2つの力に分解して考えると、水平分力は各動輪に釣合錘を取り付け、容易にこれを釣合せることができるが、垂直分力は他の動輪に関係なく主動輪のみに作用する力であって(釣合梁によって他の動輪には伝えられないものとする)、その方向が左右のクランクと同じ角度を成さないため、この垂直分力と外側の往復部釣合錘の遠心力の垂直分力との合力を取ると、その大きさが左右違ったものになり、この合力はレールの槌打力であるから、いずれか大なる方が最大速度において片側動輪上重量の15%以内でなければならぬ。

 内側往復部の慣性力の垂直分力に対し釣合錘を取り付ける時は、レールの槌打力は減少するもこれがため水平方向に力を誘起し、この力がまた外側クランクと同じ角度をしないため軸箱守を押す力が左右異なってくる事になるが、この力は不釣合せとして残されてある往復部の水平力に比し割合に小さいからその一部を釣合せる。

166_20201025105001

 次に内側往復部の慣性力と重量を第166図のごとく、水平すなわち外側クランクピンと120度の方向と、これと直角な2つに分けて考えると、水平方向の分力は外側クランクと120度の位置にある仮想のクランクに付けた回転重量W₁の遠心力の水平分力に等しく、また垂直分力は120度の仮想クランクよりさらに90度後れた、第2の仮想クランクに取り付けた回転重量W₂の遠心力の垂直分力に等しいものと考えることができるから、主動輪には外側往復部と内側往復部の水平分力に対する釣合錘を取り付ける他、別に内側往復部の垂直分力をも釣合せねばならぬから、都合3個の釣合せを行わねばならぬ事となる。

(イ)外側往復部の釣合せ

167_20201025105101

 外側往復部の釣合せ重量をM₂とすれば、第167図から

P240

故に

P240_20201025104901

(ロ)内側往復部の水平分力の釣合せ

168

 内側往復部の水平分力の釣合せ重量をM₄とし、左右の動輪に取り付けた2個の釣合錘によって釣合せるときは第168図から

P240_20201025104902

(ハ)内側往復部の垂直分力の釣合せ

 垂直分力の釣合せ重量をM₅とし左右の動輪に釣合錘を取り付けて釣合せるものとすれば、各1個の釣合錘Y₄は次式のごとくなる。

 C53形式機関車では垂直分力の釣合錘Y₄は内側クランクウェブに取り付けられ、内側回転部の補正釣合錘と一体にしてあるから、その取付位置は内側クランクに対し90度進んでいる。

169_20201025105101

 それ故、車輪には第169図甲のごとく外側往復部に対する釣合錘と、内側往復部の水平分力に対する釣合錘とが取り付けられ、これと直角に交わる軸の上に移すと乙図のごとくなり、レールを槌打する力はこれら3つの釣合錘と内側往復部の垂直分力、および垂直分力の釣合錘の遠心力との合成力であって、この合成力が最大速度において片側動輪上重量の15%以内なる様に定められ、往復部に対する釣合錘は前記回転部に対する釣合錘と一体にして車輪に取り付けられる。

 

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2020年11月25日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その189)3シリンダー機関車の釣合せ方(2)

(2)主動輪の回転部の釣合せ

 第163図および第164図において

163_20201021184701
164_20201021184601

 W =クランク・ハブおよびクランクピンの根元の重量(キロ)
 W₁=連結棒およびクランクピンの重量(キロ)
 W₂=外側主連棒の一部およびクランクピンの重量(キロ)
 W₃=返クランクおよびクランクピンの重量(キロ)
 W₄=内側主連棒の一部、内側クランクおよびクランクピンの重量(キロ)

とすれば

(イ)外側回転部の釣合せ

 合成遠心力がゼロなるためには

P236_20201021183701

 モーメントがゼロなるためには(K点に関しモーメントを取れば)

P236_20201021183702

 よって


P236_20201021183801
P237

 釣合錘X₂は反対側車輪に取り付けられ、左右のクランクは第162図のごとく、右側クランクが120度進んでいるものとすれば、釣合錘X₁および反対側クランクに対するX₂なる釣合錘とは、2シリンダー式機関車のごとく直角とならないため、X₂をX₁の方向と、これと直角の方向とに分ける必要がある。

(ロ)内側回転部の釣合せ

 第164図においてMを内側クランクの位置、OPを外側シリンダーの中心線とする。前に述べた通り内側回転部を釣合せるには、クランクウェブと直角な位置に補正釣合錘X₄を2個取り付け、内側回転部W₄とX₄の遠心力の合力をOPの方向に向かわしめ、この合成遠心力の半分を各左右車輪に取り付けたX₃なる釣合錘によって釣合せるのである。

 補正釣合錘X₄と回転部W₄の合成遠心力がOPの方向に向かうためには、補正釣合錘X₄の大きさは力の三角形Oabから


P237_20201021184101

故に



P237_20201021183902

また合成遠心力を与える仮想の回転重量mは


P237_20201021184001

 mによって生ずる遠心力、すなわち合成の遠心力は左右車輪に取り付けた2個の釣合錘X₃によって釣合せるのであるから

P238

 X₄は内側クランクのウェブに直角に取り付くべき補正釣合錘にして、X₃は内側回転部と補正釣合錘の合成遠心力を釣合せる錘であるから、この釣合錘はP点の反対側に置かれる。それ故、左側車輪に取り付くべき釣合錘の位置は、第165図乙のごとくなり、外側回転部に対する釣合錘(同図甲)を加え合わせると両図のごとくなり、さらにこれをX₁の方向と、これに直角な方向に分けると丁図のQとQ₁とになる。


165_20201021184801

 

 

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2020年11月24日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その188)3シリンダー機関車の釣合せ方(1)

10.3シリンダー機関車の釣合せ方

 3シリンダー機関車は一般に内側シリンダーが傾斜しているから、2シリンダー機関車とは釣合せ方法も非常に趣きを異にしている。もっとも内側シリンダーが傾斜していても、左右輪心の形を違ったものにすれば比較的簡単になるのであるが、車輪の製作を便利にするため左右輪心を同形にする必要上、設計が面倒になるのである。3シリンダー機関車の例として、以下C53形式機関車の釣合せ方法について述べよう。

(1)回転部の釣合せ方法

 3シリンダー機関車の主動輪以外の動輪は、ただクランクが120度の角を成しているのみであるから、左右クランクに属する回転部の重量が同一であれば、左右の輪心には全く同一の釣合錘を取り付ければ良いのであるが、主動輪はクランク3個を有し、且つ内側シリンダーが傾斜しているためクランク角は互いに120度を成さず、一方に対しシリンダーの傾きだけ傾斜しているから、内側クランクの回転部に対する釣合錘の取付位置も、また外側回転部の釣合錘に対して傾き、これを半分ずつ外側車輪に取り付ける時は左右輪心の形が違ったものとなる。

161_20201021152601

 第161図においてR,LおよびMを順次に右側クランク、左側クランクおよび内側クランクの位置とし、内側クランクが外側シリンダーの中心線ABに対しθ(シータ)度傾くものとすれば、これらのクランクに属する回転部の主釣合錘の取付位置は各クランクの反対側であるから、内側クランクの回転部に対する釣合錘W₁の位置が、右側クランクの回転部に対する釣合錘の方へθ度片寄る事となり、左右の各車輪には各外側回転部に対する釣合錘Wと、内側回転部に対する釣合錘の半分とを取り付ける事とすれば、左右の車輪に取り付ける合成釣合錘の大きさと位置(クランクに対し)とが相違し、従って左右の車輪の形が違ったものとなる。

 車輪の形が左右違ったものとなることは製作上不便が多いから、内側クランクの回転部に対してはそのクランクウェブに釣合錘を取り付け、車輪には外側回転部の釣合錘のみを取り付ける様にすれば、左右の車輪を同じ形とすることができるが、内側回転部に対する釣合錘をクランクウェブに取り付けるには、その回転半径を大きくすることができないため、非常に大なる釣合錘を取り付けねばならぬ事となるから、この方法のみによって釣合わせることも不便である。

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 よって第162図に示すがごとく内側クランクと直角にクランクウェブに補正釣合錘を取り付け、これと内側回転部Mの遠心力の合力の向きがちょうど左右クランクと120度になる様にし、この合成錘の半部ずつを左右の車輪に取り付ける様にすれば、いく分釣合せ錘は大きくなるが、左右の車輪を同形にすることができ、且つクランクウェブにもあまり大なる釣合錘を取り付けなくても良いことになる。

 C53形式機関車の内側クランクが一種特別な形を成しているのは、かような理由により補正釣合錘が取り付けられているがためである。

 以上のごとく主動輪に対しては補正釣合錘を取り付け、左右車輪はクランクに対し同じ位置に同じ大きさの釣合錘を取り付け、車輪の形状を同一にする方法を採っているが、主動輪以外の釣合せ方は全く普通の2シリンダー機関車と同じであるから、以下、主動輪の釣合せ方についてのみ述べる事とする。

 

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2020年11月23日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その187)2シリンダー機関車の釣合せ方(3)

【例】下記のごとき寸法の機関車あり。釣合錘の大きさを求めよ。
   (第156図および第158図参照)

 ℓ =1200ミリ
 a = a₁ =145ミリ
 W =55キロ
 W₁=60キロ
 r =330ミリ
 WD=15トン
 最大速度 100キロメートル/時
 動輪直径 1750ミリ

【解】回転部に対する釣合錘の大きさは(72)式および(73)式から

P233_20201018175901

往復部に対する釣合錘の大きさは(77)式および(78)式から求めることができる。

P233_20201018180001

であるから

P233_20201018180101
P233_20201018180102

 合成釣合錘Rの大きさは(79)式により

P233_20201018180103
P234

 

 

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2020年11月22日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その186)2シリンダー機関車の釣合せ方(2)

(2)往復部の釣合せ

 往復部の慣性力はそれと同量の回転重量がクランクピンの上にあって、回転する時の遠心力の水平分力に等しいから、往復部の釣合せ重量W₀はクランクピンの上にあるものと考えるのである。

158_20201018174901

 この場合にもW₀と釣合錘とは同じ回転平面の上に置くことができなく、a₁だけ離れているからモーメントを釣合すため、第158図のごとく、反対側車輪に補助の釣合錘Y₂を取り付けねばならぬ。これが釣合いを保ち遠心力がゼロなるためには

P230_20201018173901

モーメントがゼロになるためには(H点に関しモーメントを取り)

P230_20201018174001

(c)および(d)を解き

P230_20201018174002
P231

 回転部の釣合せの場合と同様に、この釣合錘Y₂は反対側車輪に取り付けるものであるから、左側車輪についてみると、クランクピンの反対側にY₁が取り付けられ、さらに右側往復部に対する釣合錘Y₂が取り付けられ、その位置は第159図甲のごとくである。

159_20201018174901

 しかるにこれら2個の釣合錘Y₁およびY₂は合せて1つとされるから、同図乙のごとく力の三角形を描き、合成錘をYとすれば

P231_20201018174101

(74)式および(75)式より

P231_20201018174201

であるから

P231_20201018174202

この値を(e)式に入れ

P231_20201018174203

 合成錘Yの最大槌打力は遠心力に等しく、この遠心力が最大速度にて運転するとき、片側動輪上重量の15%以内でなければならぬから

P231_20201018174301

 r =クランク半径(メートル)
 ω=クランクの角速度(ラジアン/秒)
 WD=動輪上重量(トン) 
 g =地球の引力に基く加速度=9.8メートル/秒/秒

すなわち

P232

よって

P232_20201018174401

 この式と(76)式とを組み合わせ

P232_20201018174501
P232_20201018174502

 (77)式および(78)式により往復部の釣合錘Y₁,Y₂を定め、これに回転部の釣合錘を加え、これらを一体にして取り付けるのである。

 回転部と往復部の主釣合錘はいずれもクランクの反対側にあり、また回転部と往復部との補助釣合錘は、いずれも右側クランクに相当する位置にあるから、これを図に表せば第160図の様になる。

160_20201018175001

 合成の釣合錘を求めるには、同図乙のごとく力の三角形を描けばRは合成錘の大きさにして、abの向きはこの合成錘の取付位置、abはその大きさを示すものであるから、車輪の中心Oを通ってabに平行Odを引けばdは取付位置であって、全体の合成釣合錘Rは

P233

 

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2020年11月21日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その185)2シリンダー機関車の釣合せ方(1)

9.2シリンダー機関車の釣合せ方

 2シリンダー機関車の釣合せ方はいずれの動輪も同じであるから、釣合せの例は単に1個の動輪に止めておく事とする。

(1)回転部分の釣合せ方

156_20201015222901

 釣合せを行うに当たり回転部重量は全てクランク半径rの上に換算したものとする。第156図においてYYを動輪1対の中心線、EFを車軸の中心線、rをクランク半径、ABおよびCDを釣合錘を取り付ける面とし

 W =クランクハブおよびクランクピンの根元の重量(キロ)
 W₁=クランクピンに掛かる回転重量およびピンの重量(キロ)
 X₁=釣合錘(キロ)
 X₂=補助の釣合錘(キロ)

とすれば、遠心力が釣合うためには

P229

 また、モーメントが釣合うためには(H点に関心してモーメントを取り)

P229_20201015222801

(a)および(b)式を解き

P229_20201015222802

 X₂は互いに反対側の車輪に取り付けられるもので、すなわち右側回転部の補助釣合錘は左側車輪の右側クランクに相当する位置X₂に取り付けねばならぬから、左側車輪に取り付ける釣合せ錘の位置は第157図のごとくなる。

157_20201015222901

 

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2020年11月20日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その184)機関車の釣合せ

8.機関車の釣合せ

 機関車においては回転部は完全に釣合せることができるが、往復部分は前述のごとく十分にこれを釣合せることができなく、わずかにその一部分を釣合せるのみで、他の大部分はそのまま不釣合せとして残されている。回転部は各軸独立に全部を釣合せるもので、米国においてはふつう単にクランクピンの反対側に釣合錘を取り付けて釣合せを行うのが普通であるが、この様にすると回転部と釣合錘とが同一の回転平面内に無いためモーメントが残り動揺を与える原因となる。

 故に鉄道省ではさらにこのモーメントをも釣合せるため、反対側の車輪にさらに釣合錘を取り付け、完全な釣合せを行っている。かくのごとく反対側に釣合錘を取り付ける方法をクロス・バランシング(補助釣合錘)と称する。

 往復部分を釣合せるには釣合錘をクランクピンの反対側に取り付け、モーメントを釣合せるためさらに反対側車輪に補助の釣合錘を取り付けて行うのであるが、単に主動輪に釣合錘を取り付けるのみでは釣合せる量が極めて僅少であるから、他の動輪にも釣合錘を取り付け、全部の動輪にて釣合せる方法を採っている。

 この様にすれば6輪連結の場合は、主動輪のみにて釣合せる場合に比し約3倍、また8輪連結機関車の場合は約4倍の量を釣合せることができる様になるが、この様な方法を用いても、なお最大速度におけるレールの槌打力が片側動輪上重量の15%以内なるためには、わずかに往復部重量の20~30%の量を釣合せ得るに過ぎなく、現在鉄道省にて釣合せを設計するには次のような条件に基づいて行っている。

(1)回転部分は各軸独立に釣合せること。

(2)往復部分は各シリンダー系についてできる限り同じ割合で釣合せること。

(3)往復部分に対する釣合せはその釣合せ重量による各動輪のレール槌打力が最大速度において片側動輪重量の15%以内なること。

(4)各軸とも左右輪心は同一形にすること。

(5)各動輪はできる限り同一形とすること。

 以上の条件中(4)および(5)は車輪の製作を容易にし、且つ互換性を持たせんがためである。

 

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2020年11月19日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その183)往復部の釣合せ

7.往復部の釣合せ

155_20201012225301

 往復部の慣性力は行程の前半部ではピストンの運動と反対方向に、行程の後半部では同方向に働き、第155図において死点からxなる点に関し次の式で表わされることは前にも述べた通りである。(第67式)

P226

 次にクランクピンに取り付けられている回転体の遠心力を考えてみるに、その重量をWとすればこれが回転するとき生ずる遠心力(Fc)の大きさは

P226_20201012225201

である。いま第155図に示すがごとくクランクピンが死点Aからxなる点の直上Cにあるものとすれば、遠心力FcはOCの方向に作用し、この力をOAに対し、平行と垂直な2力 F₂,F₁とに分解して考えると

P226_20201012225202

しかるに OC=r,  OD=r-x

で、これを前の遠心力の式に入れると

P226_20201012225203

 この式と往復部の慣性力を示す式とを比較してみるに、式が全く同じであるから往復部の慣性力は、クランクピンに往復部と同じ重量を取り付けたとき生ずる遠心力の水平方向の分力と等しいことがわかる。それ故、クランクピンと正反対の位置に往復部と同じ重量の釣合錘Bを取り付ける時は、その遠心力の水平方向の分力はF₂往復部の慣性力の大きさに等しく、且つ力の方向が反対であるからこれによって慣性力は打ち消され、従って往復部を釣り合わせることができる。

 往復部はこの原理に基づいてクランクピンの反対側に釣合せ錘を取り付け、それによって釣合せを行う。

 かようにクランクピンの反対位置に回転重量を取り付け水平方向の慣性力を釣り合わせると、これがため新たに直角な方向に遠心力の垂直分力F₃が残ることとなり、その大きさは往復部の慣性力と全く同じであるから、往復部の釣合せはいわば力の方向を単に90度回転させ水平な力を垂直に変えただけの事になり、この垂直分力は全然過剰な不釣合い力で機関車に上下動を与え動輪を持ち上げたり、あるいはレールを激しく槌打ちする悪作用を生ずるものであるから、往復部に対する釣合錘は過剰釣合錘とも称せられる。

 すなわち往復部は釣合せの点から見ると、できる限り多くの重量を釣合せるのを望むのであるが、釣合せる量を多くすると、これがためレールの槌打ちが激しくなるのでこの点から釣合せる量に制限を受け、全く相反した2つの条件の下に釣合せを行うものであるから、往復部の慣性力はこれを完全に釣合せることができなく、単にその一部を釣合せるに過ぎない。

 鉄道省の設計標準によると、往復部を釣合せる程度は機関車が最大速度で運転する時、釣合せ重量によってレールを槌打ちする力が片側動輪上重量の15%以内と定められ、この程度の釣合せにより往復部は大体20~30%位が釣合せられ、残り80~70%の重量はそのまま不釣合の重量として残されている。

 

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2020年11月18日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その182)回転重量の釣合せ方(3)

【例】機関車の動輪あり。クランクピンに掛かる連結棒の重量とクランクピンの重量との和が60キロにして、その重心は動輪1対の中心より730ミリの点にありという。この部分に対する釣合錘の大きさを計算せよ。ただし釣合錘の取付位置は動輪1対の中心より600ミリとする。

【解】機関車の連結棒は車輪の外側にあるから、第154図のごとく、反対側の車輪にも釣合せ錘を取り付けて釣合せを行わねばならぬ。

154_20201011144901

 いまXXを動輪1対の中心線、OOを車軸の中心線、AAおよびBBを釣合錘を取り付ける面とし、釣合錘W₁およびW₂の回転半径を何れもクランク半径rとすれば、これは第153図の乙の場合であるから、(70b)式により

P225

 また仮にピストン行程を660ミリとし、釣合錘を車輪の中心から650ミリの点に置くものとすれば、前に述べた通りマス・モーメントの大きさは等しくなければならぬから、W₁に代わる実際の釣合錘をx、W₂に代わるものをyとすれば第68式により次のごとくなる。

P225_20201011144901

 また

P225_20201011144902

 

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2020年11月17日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その181)回転重量の釣合せ方(2)

 しかしながら実際においては構造の関係上取付場所が無いとか、あるいはその他の理由でちょうど正反対の位置に釣合錘を取り付ける事ができない場合がある。機関車の動輪はその一例で、もしクランクピンに集中している不釣合いの回転部分を釣合せるため、その反対位置に釣合錘を取り付けるときは、釣合錘の位置が著しく外方に突出するため、車輪が回転する際、釣合錘が主連棒および連結棒等にぶつかり、車輪の回転ができぬ事となる。それ故かような場合には止むを得ず、少し内側か、または外側に片寄せ取り付けに都合の良いところに置く。

 かように正反対の位置より片寄せて取り付ける時はモーメントを生じるから、遠心力とモーメントの双方を釣合せるため少なくとも2個以上の釣合錘を取り付けねばならぬ事となる。

 第153図においてWを回転重量とし、これをW₁とW₂の2個の釣合錘によって釣合せるものとすれば、釣合錘の取付位置は甲のごとく置く場合と、乙のごとく置く場合とあるが何れの場合においても、これが完全に釣合うためには遠心力とモーメントがゼロとならねばならぬ。

 いま回転重量Wおよび釣合錘W₁およびW₂の回転半径をr,r₁およびr₂とし、取付位置を図のごとくℓ,ℓ₁とすれば、甲の場合は、遠心力がゼロなるためには

P223

また、モーメントもゼロなるため

P223_20201011143601

でなければならぬ。

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 この(a)(b)二式を連立方程式に取り、これを解いて未知数を求めるのであるが、式中(W₁r₁)(W₂r₂)(ℓ)および(ℓ₁)の4個の未知数に対し式の数が2つしかないから、未知数のうち2つだけは適当の数値を与えねばならぬ。よって仮に取付位置を定めたものとすれば、ℓとℓ₁の長さが知れているから

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 同様の方法により乙の場合は

P224

 これを解き

P224_20201011143801

である。釣合錘を計算する場合、回転半径が種々に異なっている場合は(68)式を使って等しい半径に重量を換算しておけば、単に換算重量の計算をするのみであるから非常に便利である。

 それ故機関車の釣合錘を計算する場合には、計算を便利にするため回転重量はいずれもクランクピンの上に集中している重量に換算して行うのが普通である。この様にすれば全ての物体の回転半径が等しくなるから、(69a)および(69b)式は次の様な極めて簡単な式になる。

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 ただし(70a,b)式中W₁およびW₂はクランク半径の位置に換算した釣合錘とする。

 

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2020年11月16日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その180)回転重量の釣合せ方(1)

6.回転重量の釣合せ方

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 第151図のごとく半径rなる薄い円板の一点にWなる重量を取り付け、この円板を回転すれば前に述べたごとく遠心力を生じ、その大きさは

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である。遠心力は軸Oを物体の方へ引くから、これと反対側に同じ大きさの遠心力を生ずる様にW1なる物体をr1なる半径に取り付ければ、2つの遠心力は反対方向に作用し、互いに打ち消し合い釣合いが保つから

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すなわち

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 このWrおよびW₁r₁をマス・モーメントといい、反対側へ釣合錘を取り付ける場合には、単に物体の重量と半径との積が等しい様に釣合せ、重量と半径とを定れば良い。例えば遠心力を与える物体の重量を50キロ、その半径を1.5メートルとすれば W×r=50×1.5=75キロメートルで、これを釣合せるためにはやはりマス・モーメントを75キロメートルとすれば良いから、釣合錘を20キロとすれば、取付位置は中心から半径 75÷20=3.75メートルの点である。また釣合錘を100キロとすれば、その半径は 75÷100=0.75メートルに付けねばならぬ。

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 要するに、両者の積が一定でさえあれば半径と重量との大きさは場合に応じ、都合の良い様にいずれか一方を自由に定める事ができる。もし第152図のごとく多数の物体が同一の平面内に回転する場合は、各物体の合成マス・モーメントに等しい釣合せ錘をその反対に取り付ければ良い。

 

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2020年11月15日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その179)釣合せに関する理論

5.釣合せに関する理論

 力学上、力を釣合せるにはその合力を求め、これと大きさの等しい力を合力が作用する点に反対の向きに加えれば、これらの力は互いに打ち消し合い全く力が作用しない状態となって釣合を保つものである。もし釣合せ力を合力が作用する点に働かせる事ができなく、合力が作用する点より離れた位置に作用させると、力だけは釣合うがモーメントが残り、このモーメントによって、物体に回転運動を与えるから、さらにモーメントも打ち消さしめゼロとなる様にすれば、物体は静止の状態を保ち完全な釣合いを保つ。

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 例えば第149図に示すがごとく物体のA点にRなる力が作用するとき、これを釣合せるにはA点にRと同じ大きさの力を点線のごとく正反対の方向に作用せしむれば、2力は打ち消し合い力が全然働かない状態となるが、もしこの釣合せ力をA点にRと反対の方向に作用させることができなく、これよりaだけ離れたB点に働かせたとすれば、FとRとは大きさ等しく向きが反対な力であるから F+R=0 となり力は釣合うが、任意の点Oに関してモーメントを考えるに、Rは物体を右回りに回転させ、Fは左回りに回転せんとするから F×OB-R×OA=R×(OB-OA)=Ra なる偶力が残り、物体は左回りに回転運動を起こす事となる。

 それ故、この様な場合には単に一つの力のみをもって釣合せることができないから、さらに他の力を適当なところに作用させ、力もモーメントもゼロとなる様にせねば完全な釣合いは保たない。

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 第150図は釣合せ方の一例を示したもので、これが完全に釣合うためには力の和がゼロでなければならぬから R=F+P またはモーメントもゼロでなければならぬから、任意の点Oに関してモーメントを取ると P×OC+F×OB=R×OA でなければならぬ。

 これを一般的には次の様に書く。

 R+F+P=O    P×OC+F×OB+R×OA=O

 かように力もモーメントもその代数和がゼロの場合を、力が釣合っているといい、力とモーメントの代数和がそれぞれゼロとなる様にすることを力を釣合せるという。

 

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2020年11月14日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その178)往復部分の慣性力とその作用(2)

 往復部分の慣性力を精確に計算するには主連棒の傾斜を考えに入れなければならぬが、それでは非常に複雑で難解なものとなるから、簡単にするため、ここでは主連棒は傾斜しないものとする。

147

 第147図において主連棒が傾斜しないものとすれば、ピストンはクランクの位置から下した垂線の足H点にある事になるから、EHの長さはピストンが行程の左端から動いた距離に等しく

 W =往復部分の不釣合重量(キロ)
 v =機関車の速度(メートル/秒)
 R =動輪の半径(メートル)
 F =不釣合往復部分の慣性力(キロ)
 r =クランクの半径すなわち行程の半分(メートル)
 x =ピストンが行程の左端から動いた距離(メートル)
 ω=動輪の角速度(ラジアン)
 g =地球の重力に基く加速度=9.8メートル/秒/秒

とすれば

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 式中

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は往復部分、すなわちピストンの加速度(メートル/秒/秒)である。

〔注〕車輪やクランク等のごとく回転する物体の回転速度を表すにその円周上の一点が、単位時間すなわち1秒または1分あるいは1時間に通過する距離をもって表わすよりも、回転する角度にて表す方が便利であるから、学問上では角速度を測るにのにラジアンという単位を用いている。

 1ラジアンというのは半径の長さに等しい弧を中心で挟む角の大きさで、円周は2πrであるから、1回転すなわち360度はちょうど 2πr÷r=2πラジアンである。

148_20201010092501

 いま第148図において物体がA点を出発しt秒間にB点まで回転したとすれば、その速度vはt分の弧ABである。円においては弧の長さは中心角θ(シータ)の大きさに比例するものであるから、弧ABの長さは

P219

よって

P219_20201010092801

となり、このt分のθは角速度といい通常ω(オメガ)なる記号で表わし

P219_20201010092901


 この式は線速度vと角速度ωとの関係を表すもので、もし1秒間の回転数をnとすれば ω=2πnラジアン/秒である。

 いま機関車の速度をvメートル/秒、動輪の半径をRメートル、1秒間の動輪の回転数をnとすれば

P219_20201010093001

である。

【例】ピストン行程660ミリ、動輪の直径1750ミリ、往復部の不釣合重量100キロの機関車が毎時80キロメートルの速度で運転している時、次の位置における往復部の慣性力を求めよ。

(1)ピストンが左側死点から動き始める時

(2)ピストンが左側死点から100および500ミリの点に来た時

【解】(1)1秒間の速度

P219_20201010093101

 ピストンが左側死点から動き始めんとする時は x=0(第147図参照)、

W=100キロ、r=0.33メートル、R=0.875メートルであるから(67)式により

P219_20201010093201

(2)ピストンが左側死点から100ミリの点へ来た時は x=0.1メートルであるから

P219_20201010093202

 次にピストンが500ミリの点へ来た時、この場合は

P220

 ここに「-」は力の方向が前と反対、すなわちピストンと同じ方向に動く事を示す。

 

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2020年11月13日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その177)往復部分の慣性力とその作用(1)

4.往復部分の慣性力とその作用

 往復部分とはピストンと共に前後に運動する部分を言い、ピストン、ピストン棒、尻棒、クロスヘッド、主連棒および偏心棒の一部、結リンク、合併テコの一部等である。これらの部分は例えば車両が等速度で回転しているものとしても、絶えずその速度が変化するから加速度を有し、これがためシリンダーの中心線上に沿って慣性力が生じ、この力は第145図のごとく動輪の回転方向には関係なくピストンが加速される場合、すなわち行程の前半部においてはピストンの運動方向と反対に作用し、減速される場合すなわち行程の後半部ではピストンの運動方向と同方向に作用するから、ピストンの運動に伴い力が交互に前後の方向に作用し、これがため機関車を前後に動揺せしめる。

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 往復部の慣性力は第146図に示すごとく死点において最大で、ピストンが進むに従って段々小さくなり、行程の中央辺りでゼロとなる。それより力の働く方向が反対になり、反対側の死点に達したとき最大となる。「-」はピストンが矢の方に働く場合ピストンと反対方向に、「+」は同方向に作用する力となる事を示す。

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 片側往復部重量が機関車(除く炭水車)運転整備重量の如何ほどになっているかを例示すると右表のごとくである。

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 B分のAの値を200以内に収めるためには往復部分品の材料等をも吟味し、強くて軽いものを選定せねばならぬ。

 

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2020年11月12日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その176)回転部によって生ずる遠心力の作用

3.回転部によって生ずる遠心力の作用

 【例2】にて知るがごとく回転部のために生ずる遠心力は、高速度の場合は極めて大なるものである。機関車においては回転重量はクランクピンに集中しているものと考えられるから、遠心力は常に動輪の中心とクランクピンとを結ぶ線上に外方に向かって作用し、クランクピンと共に方向が絶えず変化するから、クランクピンが車軸より上方にある時は、機関車を上方に持ち上げて、一時的に動輪上重量を減少せしめ、車軸の下方に来た時は遠心力が下向きに作用するため激しくレールを槌打ちし、クランクピンが前方または後方に来た時はそれぞれ機関車および列車を前方または後方へ押す。

 各1回転中、遠心力の働く方向がクランクピンと共に絶えず回転するから、これがため絶えず機関車に激しき上下動と前後動を与え、動輪上重量が周期的に増減し、激しくレールを槌打ちする悪作用を成すものである。

 

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2020年11月11日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その175)遠心力

2.遠心力

 糸の一端にナットのごとき物体を結び、これを手にて回転する時は手は絶えず糸の方向へ引かれるもので、この手を引く力を遠心力という。この様に遠心力が作用するのは、物体が糸のため絶えずその運動方向を変化するためで、いま

 F =遠心力(キロ)
 m =物体の質量(キロ)
 W =物体の重量(キロ)
 α=加速度(メートル/秒/秒)
 r =半径(メートル)
 v =物体の円周速度(メートル/秒)
 ω=角速度(ラジアン/秒)
 g =地球の重力に基く加速度(9.8メートル/秒/秒)

とすれば、遠心力

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【例1】重量100キロの物体が500センチメートルの半径をもって1分間に300回転する時の遠心力を求めよ。

【解】1分間に300回転する時の角速度ω(オメガ)は

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よって、遠心力

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【例2】C53形式機関車は動輪の直径1750ミリ、ピストン行程660ミリなり。主動輪の外側クランクピンに掛かる回転部の重量360キロなりという。この機関車が毎時85キロメートルの速度で運転する時、回転部によって生ずる遠心力の大きさを求めよ。

【解】1秒間の動輪の回転数nは

P216

よって、角速度

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故に、遠心力

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2020年11月10日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その174)釣合せを必要とする理由

第12章 釣合せ

1.釣合せを必要とする理由

 機関車はピストンを前後に動かしクロスヘッドを介し、主連棒にて動輪を回転するものであるから、これらの運動部は回転運動をする部分と往復運動をする部分の2つに分けることができる。

 回転部とはクランクと共に回転運動をする部分の総称を言い、クランク、クランクピン、連結棒、返りクランクおよび主連棒のクランク寄りの一部等である。これに対しピストン、ピストン棒、尻棒、クロスヘッド、主連棒細端寄りの一部、クロスヘッド腕、結リンク、合併テコの一部等のごとくピストンと共に前後に運動する部分を往復部と言う。

 回転部はこれが回転するとき遠心力を生じ、この遠心力によって機関車を前後および上下に動揺せしめ、動輪上重量に変化を与え、レールを槌撃し、かつ列車に前後動を与えるものである。

 往復部はこれが前後に運動する際、慣性力を生じ、これによって機関車に前後動を生じ、列車をも前後に動揺せしむ。

 かように機関車の運動部はこれが運動の際、力を生じ、この力によって機関車および列車に動揺を与え、かつレールを槌撃する悪影響を与えるものであるから、これを防ぐため動輪に釣合錘を取り付けて反対の力を作用せしめ、互いに打ち消し合うごとき状態となし、機関車および列車の動揺とレールに対する槌撃を防ぐ必要がある。

 

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2020年11月 9日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その173)白メタルとその効用

2.白メタルとその効用

 減摩用白メタルは、ひとり軸箱受金に限らず、クロスヘッド滑金、主連棒受金および連結棒ブッシュ等にも一部使用され、一般減摩用メタルの具備すべき条件であるところの

(1)摩擦係数が比較的小さく馴れやすく、発熱または剥奪しないこと

(2)摩耗量少なく、耐久力大なること

(3)相当な圧力に対しても破壊しないこと

(4)容易に鋳造し且つ工作し得ること

等の特長を併有しているから広く採用されているのである。しかしながら一面、白メタルを用いることによって生ずる弊害も皆無ではなく、万一、発熱事故を起こした場合、白メタルは直ちに熔解して油道を塞ぎ、かえって損傷の程度を大ならしめ、また加工不良の場合には破壊または剥脱することがある。

 

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2020年11月 8日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その172)軸箱(動輪用)(2)

 以上は普通の動輪用軸箱の構造の概要であるが、3シリンダー式機関車の主動輪軸箱は構造上多少異色がある。すなわち中央シリンダーが傾斜している関係上、車軸を介して受ける主連棒よりの衝撃が普通の受金面よりも多少下方に及ぶから、車軸水平中心線以下の位置に特に補助受金が使用してある。

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 この補助受金は受金自身の摩耗はもちろん、上方の主動軸受金の摩耗に対しても同時に加減できる様に、下部からナットで締め上げる加減方式を採ったもの(C52形式)と、クサビボルトで受金を上下せしむる装置としたもの(C53形式のもの)とがある。しかしこの補助受金は調整を誤ると直ちに軸箱の発熱を招来し、しかも大した効果も認められないので最近はこの装置を取り外した向きが多い。

 しかして軸箱は担バネを軸箱上部に置くものと、下部に設けるものとあるが、軸箱の構造には大した相違はなく、後者に対しては軸箱下部の担バネ釣のピンを挿入する穴が開けられている点が違っている位のものである。

 


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2020年11月 7日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その171)軸箱(動輪用)(1)

第11章 軸 箱

1.軸 箱(動輪用)

 軸箱は軸箱頂部の油溜と、軸箱守または軸箱守滑金およびクサビと接触する前後両側とが一対となる П 形(下記図参照)の主体と、車軸ジャーナルに接する受金および給油具を包容する油受の3部より成り立っている。

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 軸箱主体は担バネより受ける機関車の重量を車軸に伝え、且つ運転による衝撃を受ける関係上、丈夫な鋳鋼材(SC41)で作られるのが普通である。軸箱の片側はクサビに、他側は軸箱守または軸箱滑金に接している。その部分の摩耗(片側の摩耗量は機関車走行1万キロあたり0.1ミリ内外)に対する取り替えに便宜なるよう断面 [ 形(下記図参照)の砲金をこの部分に裏張りしてある。

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 軸箱の頂部は油溜を形成し、その底部に鋼製油管を植え込み通綿によって受金および前後両側の摺動面に給油される様になっている。しかし最近においては受金に対する給油はこの油溜からせず、第143図に示す軸箱のごとく油受のパットで給油するいわゆるパット式給油の方法を採用する様になったため、油穴を使用せずまたは全然油穴を有しないものが使用せられている。

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 普通の軸箱では前後面の裏張に給油する油管は、頂部油溜の前後側やや上方に別に植え込まれており、通綿によって給油されるのであるが、近来のパット給油式軸箱では別に油壺を設けて油管を導き給油する構造のものもある。またこの式の軸箱では砲金裏張を設けず軸箱滑金およびクサビを砲金製とし、軸箱は鋳鋼製一体のものとして丈夫に作られている。

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 受金は砲金で作られ、車軸との接触面には焼損を軽減するため白メタルが填充されている。白メタルの装填も従来は全面張りのものもあったが、今日では部分的に填充されている。また受金の下面には油の廻りを良くするため油溝が設けられている。

 しかして受金を軸箱に取り付けるのに、受金の背面を仕上げて軸箱にはめ込むもの(背面五角形の一部)、鋳込むもの、および圧入するもの(いずれも背面丸形)の3種あるが、仕上はめ込みは費用高く工作困難で、発熱すれば弛緩がはなはだしいため今日ではほほとんど顧られない。鋳込むものは前者よりも工作費用は安いが、保守が割合面倒であり弛緩も割合早いし、白メタル張りの付近から割れが入ることもあるので一般には歓迎されない。

 圧入式は軸箱の仕上げに多少手数を要するが、受金の弛緩が少ないのと修繕その他が前二者よりも簡便であるから、現在ではこの方式が広く用いられているのである。これが圧入は軸箱および受金の大きさ等によって多少の相違はあるが、大体10トン内外の水圧力によって圧入されるのが通例であって、締まりを良くするために受金には内側にツバを設けてあるものもある。

 油受は中鋳鉄で作られその内部に油を浸したパットを包蔵した箱で2本のピンで軸箱下部に取り付けられ、動輪下部より油を補給するのである。しかして油受の内側方面は給油具の出し入れ、発熱の手当てに便利な様に、フタが押ネジで止められている。

 

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2020年11月 6日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その170)左右のクランクピンが直角に取付けられる理由

17.左右のクランクピンが直角に取り付けられる理由

 クランクピンが前方または後方の死点にある場合には、その側のピストンの圧力は全部車軸を圧する力となって回転力はゼロである。この位置からクランクピンが回転するに従って、回転力は漸次増大し、クランクピンが車軸の直上または直下付近に来たとき、ピストンの圧力はほとんど全部が回転力となって、しかもその最大値となるのである。しかし蒸気締切が小さな場合には、車軸の直上または直下に達する以前にて回転力は最大となるのである。また車輪の1回転中にピストンは1往復するから、車輪回転力の最大と最小とは各2回ずつ起こるわけである。

 いま左右のクランクピンを同じ位置または180度を隔てた位置に取り付けると、両側において同時に最大最小の回転力を発生し、機関車を浮き上がらしめ、またはレールを強く槌打ちするところの上下方向の動揺を著しく大きくするのみならず、瞬間的に空転を誘発することとなり、また両側同時に死点にあって停車した場合には、左右のクランクピンには回転力が働かないから、車輪は回転し得ない。

 かかる不利を除くために2シリンダー機関車においてはクランクピンを左右直角に取り付け、いずれか一方が死点にある場合に他方は車軸の直上または直下に在らしめて、その回転力をできるだけ均一ならしめるのである。

 

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2020年11月 5日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その169)クランクピンの大きさと受ける力(2)

(2)主動輪クランクピン

 主動輪の主連棒部のクランクピンについては、ピストン面に働く総圧力が全部クランクピンに作用するものとして、そのベアリング面積を定めるのである。故に

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 K =許し負担圧力=180キロ/平方センチメートル
 P =シリンダー内径の拡大限度におけるピストン面に作用する総蒸気圧力(キロ)
 d₁=主連棒部クランクピンの直径(センチメートル)
 ℓ₁=主連棒部クランクピンの長さ(センチメートル)

 連結棒部のクランクピンに対しては、他の連結動輪全部をも滑走せしむる力が作用するものとして上述同様計算するのである。

P207_20201004151402

 P₁=主動輪以外の動輪を全部滑走せしむる力(キロ)
 d₂=連結棒部クランクピンの直径(センチメートル)
 ℓ₂=連結棒部クランクピンの長さ(センチメートル)

 次に曲げモーメントに対する強さの点を考えてみると、主連棒部と連結棒部との境界点(第141図断面BB)および連結棒部のボス嵌入際(断面AA)の2つの断面について計算しなければならぬ。

141_20201004151701

 まずクランクピンの断面AAにおける強さを考えるに、この場合には2つの異なった曲げモーメントが考えられるわけで、1つは主連棒部に働くピストン面に作用する蒸気圧力によるもので、他の1つは連結棒部に作用する主動輪以外の動輪を滑らすに要する力によるものであって、この2つの力の作用方向は全く正反対に働くものであるから、その曲げモーメントの合成は次の様になる。

P208_20201004151501

 この曲げモーメントが断面AAに働くのであるから、これを断面係数で除せば許し内力が得られる。

P208_20201004151502

 k₂=許し内力<1200キロ/平方センチメートル
 P =シリンダー内径の最大限度におけるピストン面に作用する総蒸気圧力(キロ)
 P₁=主動輪以外の動輪を滑らすに要する力(センチメートル)
 ℓ₁=主連棒部クランクピンの長さ(センチメートル)
 ℓ₂=連結棒部クランクピンの長さ(センチメートル)
 d₂=連結棒部クランクピンの直径(センチメートル)

 また断面BBにおいては、単に主連棒部クランクピンの中央部にかかる、ピストン面に作用する蒸気圧力(P)による曲げモーメントのみを考えれば良いから

P209_20201004151601

 K₁=許し内力<1200キロ/平方センチメートル
 ℓ₁=主連棒部クランクピンの長さ(センチメートル)
 d₁=主連棒部クランクピンの直径(センチメートル)

 しかして前述しておいた様に、ベアリング圧力と強さの両方面から計算されたクランクピンの直径は、いずれも摩耗限度の場合の大きさを表すものであるから、これに一定の摩耗量(例えば15ミリ)を加算して、新製の場合の直径としなければならぬ。

 

11016p207
11016p208
11017p209

 

2020年11月 4日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その168)クランクピンの大きさと受ける力(1)

16.クランクピンの大きさと受ける力

 クランクピンは主連棒によって伝達せられるピストンの圧力、または各動輪を滑走せしむる圧力を連結棒から受けながら、その各々の受金またはブッシュと接触回転するから、曲げ作用を受けても破損しない様に作られるのはもちろんのこと、回転摩擦に対して発熱しない程度の大きさに決める必要がある。

 しかして摩擦による発熱防止の点から、その負担圧力が次の許し負担圧力を超過しない様に、その直径を長さ、すなわちベアリング面積を決めるのである。しかしてその直径と長さの割合は構造上必ずしも一定はしておらないが、長さは直径に対し約20%小さいのが通例である。

 主動輪クランクピン  主連棒嵌入部 180キロ/平方センチメートル(許し負担圧力)
            連結棒嵌入部 150キロ/平方センチメートル(  〃   )
 連結動輪クランクピン        150キロ/平方センチメートル(  〃   )

140_20201004104601

(1)連結動輪クランクピン

 連結動輪クランクピンの受ける力は、連結棒の大きさと受ける力の項で説明した通り次式で示される。

P206_20201004104401

 P₀=動輪を滑走せしめ様とする力(キロ)
 μ=粘着係数=0.3
 W =一対の動輪上重量(キロ)
 R =車輪半径(センチメートル)
 r =クランクの長さ(ピストン行程の2分の1)(センチメートル)

 この力と許し負担圧力の関係は次式で表わされる。

P206_20201004104501

 d =クランクピンの直径(センチメートル)
 ℓ =クランクピンの長さ(センチメートル)
 K =許し負担圧力=150キロ/平方センチメートル

 クランクピンの受ける曲げモーメントは、上述のクランクピンに働く最大の力(P₀)が、ピンの中央に作用するものとして求められる。

P206_20201004104502

 M =曲げモーメント(キロセンチメートル)
 ℓ =クランクピンの長さ(センチメートル)

 この曲げモーメントに反抗するのは材料の強さであるから、結局クランクピンの直径は次の算式で得られるわけである。

P207_20201004104601

 クランクピンの大きさは、以上の様に負担圧力すなわち摩擦面積と、強さの点の両方面から適当に決定されるのであって、この計算の結果による値は摩耗限度の場合の直径であるから、これに許容摩耗量を加算したものを新製の場合の直径とするのである。

 

11016p205_20201004103801
11016p206
11016p207

2020年11月 3日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その167)クランクピン

15.クランクピン

 クランクピンは良質の鍛鋼材(SF54)で作られるのが通例であるが、新製車には表面を炭素焼きしたものが多く、また特殊鋼(ニッケル・クロム鋼)を用いる場合もある。これを輪心に嵌入するには、車軸の場合と同様にボスの穴径よりも、クランクピンの直径をその1000分の2~1000分の3位大きく削正し、その直径100ミリに付き30ないし50トン位の水圧力で圧入し、その尾端をハンマーで叩き締め、またはボルトで締め付けてある。

 さらに時としてはキーを両者の間に挿入することもあるが、最近の主要形式機関車のクランクピン嵌入部にはキーを用いていない。またボスの嵌入際に特にツバを設けたもの(8620形式)もあるが、他のC50,C53,C55,D51形式等最新の機関車には、全て嵌入際のツバを設けていない。

139_20201002225901

 クランクピンの形状は、主動輪用のものは主連棒ジャーナルと、連結棒ジャーナルの2部分を有するのに対し、連結動輪用のものは連結棒ジャーナルのみを有するの相違がある。前者すなわち主動輪用クランクピンの先端には返りクランクを1本の太いボルト、または2本の植ボルトで止めて、座金の代用としているが、後者すなわち連結動輪のクランクピンは、先端の座金を2個のナットで締め付けたものと、1本のボルトによってボス内側から締めたもの、または外側から座金を押ネジで取り付けたものの3種類あって、主連棒との接触、その他の構造上、一様に簡単な二重ナット式にすることはできないから、外側から自由に取り付け取り外しのできるもので、あまり弛緩せず製作も比較的簡単な押ネジ式のものが現在広く使用されている。

 3シリンダー機関車の主動輪に対する中央のクランクピンは、前述のものと全く趣きを異にしたもので、クランク・ウェブを介して車軸と連結され、輪心とは直接関係がないのである。この種のクランクピンについては別項車軸の項でクランク軸として多少述べておいたが、クランク軸が組立式であるから余計の内力を見込まなければならぬこと、および保守上多分に削正余裕を見込む必要があるから、外側のクランクピンよりもはるかに太いものにしなければならぬ事である。

 

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2020年11月 2日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その166)車軸の疵検査法

14.車軸の疵検査法

 車軸が折損すれば、これにより起こる事故は相当大きいから、その折損の一原因である疵の発見には各所とも相当留意されているのである。従来の事実に徴するに、車軸の折損する箇所は主としてボスの際であって、しかもクランク側に多い様である。

 これが検査法は一般には燻(いぶ)し検査をなすか、あるいはペイントの亀裂、赤サビの出たところ、その他疑いのある箇所をタガネで削って探査するのであるが、近来は科学的にこれを検査する方法が案出され、既に実用に供しているところもある その方法は電気的に疵の発生の有無を検査するもので、この検査装置を車軸電磁探傷装置と称している。

 その理論は車軸を交流の電流によって磁化し、磁化により生ずる磁束がもし疵があれば部分的に不均一となって、検出液(揮発油に鉄粉と赤粉とを混じたもの)中の鉄粉が不規則な凝集をすることによって疵の潜在を知るというのである。

 しかしてこの装置にA形とB形の2種があって、第136図はA形を車軸に応用した場合を示したものである。この式は変圧器とコードとから成り立っていて、変圧器の二次コイルには相当大きな電流が流れる様になっており、このコードを車軸に巻き付けて磁化するのである。

136a

 この場合、車軸に検出液を注ぐと、もし疵があればその部分が磁石の極となるから、そのところに鉄粉が集まって疵を鮮明に表わすのである。

137_20201001225201

 B形は装置そのものものが大磁石であるが、さらに電灯線より電流を通じていっそう強力に磁化したものを車軸に接触せしめこれを磁化し、前述の様に検出液を注ぐのである。これを車軸に応用したものが第138図である。

138b

 この様にして全然肉眼で認められない程度の疵が、本装置によっていとも易々と発見できるのである。しかも電源としてわずかに交流100ボルトを使用すれば足り、簡単に取り付け取り外しができるから非常に便利なものである。ちなみにこの装置の発明者は、元官房研究所長松縄博士と同所の現第六科長池田博士である。

 

11014p202_20201001224801
11014p203

 

2020年11月 1日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その165)車軸に与える横遊び量(4)

 描き方(例)

(イ)まず(59)式によりεを適当なる寸法(25,50,75ミリのごとく)を与えてЧの値を求めれば中心線 n-n が求められる。この場合 b=2,n=20,R=100メートル等の寸法はもちろん決まっているはずである。

134_20200930130901

(ロ)次に中心線(n-n)を基本として内外側レールの位置を決めるのであるが、フランジとレールとの隙間(G)は内外側に等分に振り分けられ、内側レールに対してはさらにスラックの寸法が付加されるわけである。しかして b=2 に取っているから描面に表わされる内外側レールと中心線(n-n)との幅は次のごとくなる。

P201

(ハ)曲線ができたら軸距の寸法による直線を入れるのであるが、曲線の中心線(第134図YY'線)に機関車全軸距の中心が合致するごとくする。ロイ氏の場合は曲線が円弧であるからかかる注意は必要としないが、ホーゲル氏の場合には放物線であるからこの点特に注意を要する。

135_20200930131001

 第1動輪が外側レールに接し第3動輪が内側レールに接している場合の偏倚を示したもので、第135図は曲線半径150メートル、フランジとレールとの隙間10ミリ、スラック18ミリの場合にして、縮尺関係は軸距(C)を40分のx(すなわち b=2,n=20)とし、偏倚寸法は現寸の2分の1で描面に表わされる。

 

11013p201
11014p202

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