« 2023年11月 | トップページ | 2024年1月 »

2023年12月の記事

2023年12月31日 (日)

機関車工学:中巻(その201)フレーム:鋼板製フレーム

【 鋼板製「フレーム」 】

11041105

 第 1104及び 1105図は本邦における英国形 4-4-0 機関車に属する鋼板製「フレーム」の一例にして、その主要なる部分は左右に厚さ1インチの2枚の鋼板を有し、「クロス・ステー」をもってこれを横に連結しあり。

 その前部「シリンダー」の取付けらるる個所は強固なる箱形の鋳鋼製または鋼板製「ステー」を有し、その後部には「フート・プレート」と称する強固なる鋳鉄または鋳鋼製の「ステー」を有し、これに「ドローバー」を取付けあり。また中間及び前後両端は鋼板の「ステー」を用ゆ。その両端の「ステー」は「バッファー・ビーム」と称し「バッファー」を取付くる横梁とす。この梁は木材を使用することあり。木梁は「バッファー」より伝達する衝撃を調和するに有効なりと称せらる。

 前記のごとく「フレーム」の主要部分は鋼板の組合せたるものなれば、その組立強固ならざれば運転中の撃動により自然に弛緩するを免れざるものなり。故に「リベット」または「ボルト」孔は「リーマ」をもって精密に穿孔し、「ボルト」は旋盤にて削り上げ固く孔中に打込むを要すべし。

 「リベット」はかなり機械力をもってかしめるを要すと言えども、器械を応用しあたわざる個所は「ボルト」と同じく旋盤にて削り上げ固く孔中に打込み、熱を加ふることなくしてその頭部を打据へるを良とす。いわゆる生かしめとなすと要す。この場合における「リベット」は特別に柔軟なる鉄を選択するを例とす。

 「フレーム」はこれに取付くべき付属品の位置形状により、またはその強さを支持する上に、もしくはその重量を軽減するの必要上、多少不規則なる形状をなすを免れず。例へば「シリンダー」を取付くべき部分は大なる面積を要すと言えども、その重量を軽減せんがためその内部を切抜きたるがごとく、また「アクスル・ボックス」を容るべき部分は大なる凹形をなすをもってその上部を突起せしめ、且つ「ホーン・ステー」をもって下部を連結しもってその強さを補足するかごとし。

 またその形状は機関車の種類によって各異なるはもちろんなりと言えども、英国及び欧州各国における機関車の「フレーム」は皆この種に属し大体において大差なく、両側における主要「フレーム」の厚さは 8分の7 インチないし1インチ 8分の1 なり。

 

111p421_20231226092001
111p422
111p423

2023年12月30日 (土)

機関車工学:中巻(その200)フレーム:概 要

第11編 「フレーム」(Frame)炭水車(Tender)「タンク」(Tank)「キャブ」(Cab)及び連結器(Coupling)

第1章 「フレーム」(Frame)

【 概 要 】

 「フレーム」は汽缶、器械部、その他総ての付属品を支持する機関車の骨格にして、車輪の媒介によって「シリンダー」内の蒸気の圧力を変じて牽引力となし、これを「ドローバー」に伝達する任務をなすものなり。昔は汽缶が「フレーム」の任務を兼ね、器械部を始めその他あらゆる付属品は皆な汽缶によって支持せられたるものなりしが、近来は汽缶と「フレーム」とは全く離別して各その任務を異にせり。

 機関車の「フレーム」は元来二途に分れて発達し来りたるものにして、一つは英国及び欧州大陸において用ひらるるもの、すなわち鋼板を基礎として製したるもの。他は米国において採用せらるる太き棒形の鉄枠を基礎としたるものこれなり。

 

111p421

2023年12月29日 (金)

機関車工学:中巻(その199)制動機の構造:ブレーキブロック

【 「ブレーキ・ブロック」 】

 「ブレーキ・ブロック」は通常鋳鉄をもって製せらるるものなれども、その摩擦の係数を増大せんがため、またはその摩滅を減少せんがため、種々の合金または鋳込をなすものあり。その大きさは大なれば大なるほど1平方インチ上の圧力を減少し、第1章に述べたるがごとくその摩擦力を有効ならしむるものなれども、余り長きものは屈曲作用のため折損するの恐れあるをもって、1フィートないし1フィート6インチとなすを普通とす。

10861088

 第 1086ないし 1088図は本邦機関車に属する「ブレーキ・ブロック」及び「ブレーキ・ハンガー」の取付方法の一例を示し、第 1089ないし 1102図はその他「ブレーキ・ブロック」の2~3の形状を示す。

10891092
10931095
10961102

 「ブロック」が「タイヤ」の形状に沿ひ、その踏面(tread)ならびに「フランジ」を圧するものは摩擦面積を増大し得るのみならず、「ブロック」は「フランジ」に支へられその横振を防止せらるるをもって、「ブロック」と「タイヤ」とは常に正確なる位置を保持することを得べし。

1103

 英国ならびに欧州大陸においては、「ブレーキ・ブロック」を直接「ハンガー」に取付くるもの多しと言えども、米国にては第 1103図に示すがごとく一般に「ブレーキ・ブロック」を取付くべき座を設け、これを「ハンガー」に取付け「ブロック」はこの座に取付けられ、その滅摩したるときは「ブロック」のみを取換ゆるよう装置せらる。

 

104p417
104p418
104p419
104p420

2023年12月28日 (木)

機関車工学:中巻(その198)制動機の構造:ブレーキシャフト

【 「ブレーキ・シャフト」 】

 「ブレーキ・シャフト」 は「ブレーキ」の力を車輪に伝達する媒介をなすものにして、第 1084及び 1085図のごとく「ブレーキ・ロッド」が1本にして「シャフト」の中央に連結せらるるものにありては、「シャフト」に加はる屈曲作用ははなはだ大なるものにして今その内力を計算せんに、第 1084及び 1085図において S を「ブレーキ・シャフト」、C を「シリンダー」とし、「ピストン」上の総圧力を P と仮定すべし。

10841085

 しかるときは P が「アーム」A に働き、「シャフト」を捻回せんとする力は「アーム」B に伝はり、「ロッド」D を牽引すべし。この力を Q とし、図に示すがごとく「アーム」A の長さを a とし、B の長さを b とせば

P415_20231224101501

にして、「シャフト」は P または Q に帰因する捻回作用と、Q に帰因する屈曲作用とを受くべし。

 R 及び R₁ は両側「ジャーナル」における Q の反動力にして、ℓ 及び ℓ₁ をこれら「ジャーナル」の中心間の距離とせば

P415_20231224101502

 故に R または R₁ に帰因する屈曲「モーメント」を M とせば

P415_20231224101601

 今 d を「シャフト」の直径とせば、M に帰因する「シャフト」の受くる内力 f₁ は左のごとく表はさる。

P415_20231224101701

 また a を「アーム」A の長さとし、P に帰因する捻回「モーメント」を M₁ とせば M₁ = Pa にして、M₁ に帰因する内力 f₂ は左のごとく表はさる。

P415_20231224101702

 この屈曲及び捻回「モーメント」に帰因する内力を合同して、屈曲「モーメント」に帰因する内力と等しき性質を有する内力 f₃ として表はさんには、第 251ページに記載せる「ランキン」氏の公式により

P416_20231224101701

 この場合における鋼の安全内力 f₃ は 8000ポンドないし 12000ポンドなるを普通とす。


■ 例60

 真空制動機にして「シリンダー」の直径 21インチ、空気の圧力 10ポンド(1平方インチに付き)とし、ℓ = 15“、ℓ₁ = 19“、a = 24“、b = 4“、d = 5 ¹/₂“ なるとき、「シャフト」の受くる内力を計算せんに

P416_20231224101801

 すなわち f₂ は前記の安全内力の範囲にあることを知る。

 

104p413_20231224095701
104p415
104p416
104p417

2023年12月27日 (水)

機関車工学:中巻(その197)制動機の構造:ボギートラック制動装置

【 「ボギー・トラック」制動装置 】

 「ブレーキ」装置は従来動輪及び「テンダー」車輪にのみ施されたれども、近来列車の速度ますます増加するに従ひ「ブレーキ」の力ますます強大なるを要し、「ボギー」車輪にもその装置を有するものはなはだ多し。

 「ボギー・トラック」に「ブレーキ」装置を有するものは、別に「ブレーキ・シリンダー」を取付け動輪と全くその関係を区別し単独の装置を有するもの多し。第 1081ないし 1083図は本邦においてこれを応用したるものの一例を示す。

10811083

 

104p412
104p413
104p414

2023年12月26日 (火)

機関車工学:中巻(その196)制動機の構造:手用制動機

【 手用制動機 】

 第 1068ないし 1073図は、米国製機関車に属する手用制動機の部分図を示す。

10681073

 1は「ブレーキ・シャフト」、2は「ブレーキ・スクリュー」5に属する「ナット」6の取付けらるる「アーム」にして、3及び3は左右2個の「ブレーキ・シリンダー」に属する「アーム」とす。

 第 1074ないし 1080図は、英国製機関車に属する手用制動機の部分図を示す。

10741080

 

104p412
104p413

2023年12月25日 (月)

機関車工学:中巻(その195)制動機の構造:構造の概要

第4章 制動機の構造

【 構造の概要 】

 「ブレーキ・ブロック」に力を伝達する方法は種々ありと言えども、最も普通なるは第 1061ないし 1063図に示すがごとし。

10611063

 この図は蒸気制動機(steam brake)の場合における一例にして、「ブレーキ・シリンダー」1の「ピストン」に加はる圧力は「ブレーキ・シャフト」2の一端における「アーム」3に働き、「シャフト」を回転せんとする力は「シャフト」の中央における「アーム」4に伝はり「ブレーキ・ロッド」5を牽引し、7及び8なる「ロッド」によって2個の「クロス・ビーム」6及び6に達し、これより「ブレーキ・ハンガー」10及び10を経て、「ブレーキ・ブロック」9及び9に及ぶものとす。

 しかして各車輪に属する「ブレーキ・ブロック」は、いずれも同時に同一圧力をもって車輪を圧すべし。「ブレーキ・ブロック」は「ブレーキ・ハンガー」10によって吊され、「ブレーキ」を使用せざるときは、その内面と車輪の外面とは 8分の3 インチないし 2分の1 インチの間隔を有するを普通とす。

 「ブレーキ・ロッド」5は「カップリング」C を有し、これによって「ロッド」の長さを加減し、もって常に「ブレーキ・ブロック」と車輪との間隔を一定に保持せしむ。この間隔小に失するときは、「ブレーキ・ブロック」の一部が車輪に接触して機関車の抵抗を増加する事となるべく、大に失するときは「ブレーキ」の敏活を欠くの恐れあり。

 11は手用制動機の螺旋にして、その力は「アーム」12及び13を経て「ロッド」14に伝はり、「アーム」15に達しもって前と同一の「シャフト」2に働くものとす。

 しかしてこの両装置は同時に作用せしめ、または別々にも作用せしめんがため、図に示すがごとく「ピストン・ロッド」の下端及び「ロッド」14の一端に長穴を設け、手用または真空いずれか一方の制動機が作用するときは、この長穴内の「ピン」は徒らに滑動し得るよう装置せらる。

 第 1064及び 1065図は、米国において多く採用せらる「ブレーキ」装置の一例にして 4-4-0 形機関車に属する設計なり。

10641065440

 また第 1066及び 1067図は、フランス東部鉄道において採用せる「ブレーキ」装置の一例を示す。

10661067

 

104p408
104p409
104p410
104p411

2023年12月22日 (金)

機関車工学:中巻(その194)ウェスティングハウス自動空気制動機:ウェスティングハウス空気制動機の沿革/ブレーキ実験

【 「ブレーキ」実験 】

 1903年5月米国「ニュージャージー」州「アブセコン」地方にておいて、「ニュージャージー」中央鉄道会社において施行せられたる実験の結果は第 56表に示すがごとし。

P40756

 この時の列車は機関車1両と普通客車6両と特別車1両とより成れるものにして、機関車の「ボギー」動輪及び従輪ならびに炭水車に皆「ブレーキ」の装置をなせり。

 全列車の重量に対する制動力の割合は 72.8「パーセント」なりし。その内訳は機関車が 48.3「パーセント」にして、6両の普通客車は 92.9「パーセント」、特別車は 68.9「パーセント」なり。しかして全列車の重量は 774650 ポンドにして、その内訳は機関車及び炭水車 294700 ポンド、6両の普通客車は各 62000 ポンド、特別車 107600 ポンドなり。客車及び炭水車には普通の鋳鉄製「ブレーキ・ブロック」を取付け、機関車には鋼鉄の「シュー」を入れたる「ブレーキ・ブロック」を使用せり。列車は最も平常の状態に保たれ平坦の線路において施行せられたり。

 試験は 70ポンドの圧力を有する速働自動空気制動機と、110ポンドの圧力を有する高速度自動空気制動機との装置を有する二種の制動機に付き相互停止距離を比較したるものなり。

 

103p406
103p407

2023年12月21日 (木)

機関車工学:中巻(その193)ウェスティングハウス自動空気制動機:ウェスティングハウス空気制動機の沿革/高速度自動空気制動機

【 高速度自動空気制動機(High Speed Automatic Air Brake) 】

 列車の速度1時間 50マイル以上のものに対しては速働自動制動機をもってなお不足なりとし、近来高速度自動制動機の発達を促がせり。この主もなる改良は圧力削減弁(reducing valve)を各「ブレーキ・シリンダー」に付加したるにあり。この「レデューシング・バルブ」は常に「ブレーキ・シリンダー」と連絡し、「シリンダー」内に圧搾空気が進入したるときは、その空気は同時にこの「バルブ」内にも進入すべきものとす。

 この「バルブ」はその内に蔵せる弾機の作用により、空気の圧力1平方インチに付き 60ポンドに達するまでは依然として動作することなく、60ポンド以上に至れば、その「スライド・バルブ」動きて圧搾空気のいく分を徐々に大気中に放出せしめ、60ポンド以下に下るに及べば、またたちまちその作用を止むるものなり。

 第1章において陳べたるごとく車輪と軌条との間における摩擦の係数は、列車の速度いかんに関せずほとんど同一なりと言えども、車輪と「ブレーキ・ブロック」との間における摩擦の係数は、列車の速度増加するに従い漸次減少するものなり。

 例へば列車が1時間に 50マイルの速度にて進行しつつあるときは、その車輪と「ブレーキ・ブロック」との間における摩擦の係数は、列車が始めて動き出したるときの速度の場合における摩擦の係数に比すれば約 2分の1 に過ぎず、故に 50マイルの速度にて運転しつつあるときは列車が進行し始めたるとき、もしくは停止せんとする場合におけるよりも、約2倍の力をもって「ブレーキ」を加ふるにあらざれば同一の摩擦力を得る事あたわず。

 故に高速度の列車の速度を緩めんとするときは、第一に充分の圧搾空気を「ブレーキ・シリンダー」に送入し、同時に徐々この「レデューシング・バルブ」の作用によりてその圧力を減殺するの方法を取るべし。しかるときは車輪の滑走する恐れなくして充分の制動力を得べく、「ブレーキ」の原理を活用したる面白き方法にして近来の最大急行列車もしくは高速度の電車に利用せらる。

 速働自動空気制動機にありては主要貯蓄器内の空気の圧力はこれを 90ポンドに保ち、列車管内の圧力は 70ポンドに保つことは前にも陳べたるがごとし。しかるに高速度自動空気制動機においては強圧力の圧搾空気を要するをもって、主要貯蓄器内の空気の圧力はこれを 120ポンドに高め、列車管内の圧力はこれを 110ポンドに高むるを常とす。しかしてまた高速度自動空気制動機を利用する列車においては、客車の各車輪に「ブレーキ」を加ふるはもちろん、機関車の「ボギー」車輪にも「ブレーキ」を加ふるを常とす。

 

103p404_20231220095701
103p405
103p406

2023年12月18日 (月)

機関車工学:中巻(その192)ウェスティングハウス自動空気制動機:ウェスティングハウス空気制動機の沿革/速働自動空気制動機

【 速働自動空気制動機(Quick Acting Automatic Air Brake) 】

 前に陳べたる自動空気制動機になお不備の点あり。すなわち急に長き列車を停止せんとする場合に、列車管の全長を通じて同時に空気の圧力を減殺する事あたわざるがゆえに、前部の車両は早く「ブレーキ」の作用を受けて停止せんとし、後部車両の隋力により圧迫を受くる事はなはだしく時として危険の恐れあるを免れず。

 この不便を改良したるものはすなわち速働「トリプル・バルブ」にして、その作用は急に列車管内の空気の圧力を除くときはその反動により、列車管内の圧搾空気をも補助貯蓄器内の圧搾空気と共に「ブレーキ・シリンダー」に送入するものなり。ために「ブレーキ・シリンダー」内の力を増すと同時に、列車管内の空気の圧力を殺減すること速かなり。この速働「トリプル・バルブ」を取付けたるものを速働自動空気制動機と称し 1887年より世に行はる。

 直通空気制動機は今日は既にその跡を絶ちて全く過去のものに属せり。単式自動制動機は機関車及び「テンダー」に使用せられ、間々旧式客車に装置せらる。しかして客貨車用として現今採用せらるるものは速働自動制動機なり。

 

103p404_20231213095801

2023年12月16日 (土)

機関車工学:中巻(その191)ウェスティングハウス自動空気制動機:ウェスティングハウス空気制動機の沿革/自動空気制動機

【 自動空気制動機(Automatic Air Brake) 】

 この式においては前の直通式の装置に加ふるに、「テンダー」及び各車両に各1個の補助貯蓄器、及び単式(plain)「トリプル・バルブ」をもってしたり。この結果は「ブレーキ」の作用を一変したり。

 すなわち直通式においては運転中には列車管内には何らの圧搾空気を填充せずして、必要の際にこれを送入してもって「ブレーキ」を加へたりしも、この自動空気制動機においては運転中には必ず列車管内に圧搾空気を保ち、必要の際にその空気のいく分を排除せば却って「ブレーキ」を加ふる事となりたればなり。要するにこの式においては列車の長短に拘はらず、必要なる制動力は各車両に付属する補助貯蓄器に貯へらるるものにして、列車分離するときは「トリプル・バルブ」の働きによりて自然に全列車に「ブレーキ」を加ふることを得べし。

 しかして平常は「ブレーキ」は単に列車管内の空気の圧力を変更することにより加減せらるるものにして、圧力を減ずれば「ブレーキ」加はり、圧力を増せば「ブレーキ」緩むの結果を呈す。

 

103p403
103p404

2023年12月15日 (金)

機関車工学:中巻(その190)ウェスティングハウス自動空気制動機:ウェスティングハウス空気制動機の沿革/直通空気制動機

「ウェスティング・ハウス」空気制動機(Air Brake)の沿革

【 直通空気制動機(Straight Air Brake) 】

 「ウェスティング・ハウス」空気制動機は、1869年に「ジョージ・ウェスティング・ハウス」氏の案出したるものに基づく。初めは直通空気制動機と称し構造簡単にして、機関車には空気「ポンプ」、主要貯蓄器、機関手「バルブ」、空気験圧計及び列車管を備へ、「テンダー」及び客車には「ブレーキ・シリンダー」、列車管及び蛇管ありしのみ。

 しかしてその機関手「バルブ」も単に三途を有する「コック」に過ぎずして、その「バルブ」の取柄の位置は「ラップ」「サービス」及び「リリース」の三種に区別せられ、「ラップ」の位置にあるときは総ての通路遮断せらるる場合とし、「サービス」の位置にあるときは主要貯蓄器と列車管と相通ずる場合とし、「リリース」の位置にあるときは列車管と大気と相通ずる場合となせり。

 この式においては「ブレーキ・シリンダー」は直接に列車管と連続するをもって、「ブレーキ」を加へんとするときは機関手「バルブ」の取柄を「サービス」の位置に置き、主要貯蓄器より圧搾空気を列車管に送り、さらにそれより直接に「ブレーキ・シリンダー」に入れてその内にある「ピストン」を推進せしむ。また「ブレーキ」を緩めんとするときは、機関手「バルブ」の取柄を「リリース」の位置に転じて、「ブレーキ・シリンダー」及び列車管内の圧搾空気を大気中に排出するを要す。

 この式においては列車が分離したるときは、圧搾空気は逃出するをもって「ブレーキ」は効用を失すべし。また長き列車において「ブレーキ」を加へんとするときは、全列車に空気の到達はなはだ遅く、且つ後部の車両に至るに従ひ空気の圧力も次第に低減するをもって「ブレーキ」の効用はなはだ少なし。

 その他常に前部車両には割合に強く「ブレーキ」を加へ、ために後部車両の圧迫を受くる等種々の不便あるにより、1873年にこれを改良していわゆる自動空気制動機(automatic air brake)なるものとなせり。

 

103p402
103p403

2023年12月14日 (木)

機関車工学:中巻(その189)ウェスティングハウス自動空気制動機:リリースバルブ

【 「リリース・バルブ」(Release Valve) 】

 各車両には「リリース・バルブ」ありて補助貯蓄器に取り付けらる。この「バルブ」の取柄に鎖を付し、これを引くときは補助貯蓄器及び「ブレーキ・シリンダー」内の空気を大気中に排除し得べし。

 「ブレーキ・シリンダー」内空気の圧力

 実験によるに列車管内圧力の減少に伴ひ、「ブレーキ・シリンダー」内における空気の圧力は大略左のごとし。

  列車管内圧力の減少       同上に相当する「ブレーキ・シリンダー」内の圧力

  1平方インチに付き 7 ポンド   1平方インチに付き 4 ポンド
      同     9 ポンド        同        19 ポンド
      同    11 ポンド          同      26 ポンド
      同      13 ポンド          同    40 ポンド
      同    15 ポンド       同    46 ポンド
      同    17 ポンド       同    50 ポンド

 

103p401_20231212091201
103p402

2023年12月13日 (水)

機関車工学:中巻(その188)ウェスティングハウス自動空気制動機:列車管

【 列車管(Train Pipe)(8)  】 

1060_20231210112901

 列車管は鉄管にしてその直径1インチなり。ただし列車の長さ 1500フィート以上にわたるものにありては1インチ 4分の1 のものを用ふることあり。各車両の列車管は蛇管(hose pipe)にて連結し、前後に各1個の「コック」(15)を備へ必要のときはこれを閉鎖す。

 

103p401

2023年12月12日 (火)

機関車工学:中巻(その187)ウェスティングハウス自動空気制動機:速働トリプルバルブ

【 速働「トリプル・バルブ」(Quick Acting Triple Valve)(14)  】 

1059_20231210112901
1060_20231210112901

 前に陳べたる炭水車に付属する「トリプル・バルブ」は1個の「ピストン」を蔵するものにして、単式(plain)「トリプル・バルブ」と称す。これにては列車の車数多きときは迅速に「ブレーキ」を動作せしむる事あたわず。故に近来客貨車にはさらに速働「トリプル・バルブ」を採用せり。

 この式においてはその内に2個の「ピストン」を有す。その1個は単式「トリプル・バルブ」の「ピストン」と同様の働を成さしめ、他の1個は前の「ピストン」が急にその極端に押し下げられたるときに、初めて補助貯蓄器より来れる圧搾空気の作用を受け下降し、その結果これに付属する「バルブ」を開き、列車管より直接に圧搾空気を「ブレーキ・シリンダー」に呼ぶものなり。すなわちこの方法によれば、第1に列車管内の圧搾空気を利用し、第2には速に列車管内の空気の圧力を殺減するの便利あり。
 

 

103p401

2023年12月11日 (月)

機関車工学:中巻(その186)ウェスティングハウス自動空気制動機:単式トリプルバルブ

【 単式「トリプル・バルブ」(Plain Triple Valve)(13)  】 

1058_20231210112901
1059_20231210112901
1060_20231210112901

 空気制動機をして自動的の動作をなさしむるは主として「トリプル・バルブ」の働なり。「トリプル・バルブ」に単式と速働との二種あり。単式は機関車及び炭水車に供せられ、速働は客貨車用に供せらる。

 「トリプル・バルブ」は3個の目的を有す。第1は列車管と補助貯蓄器とを連絡せしめて、補助貯蓄器内に圧搾空気を填充すること。第2は補助貯蓄器と「ブレーキ・シリンダー」とを連絡せしめて、圧搾空気を「ブレーキ・シリンダー」に送入すること。第3は「ブレーキ・シリンダー」を直ちに大気と連絡せしめて、その内にある圧搾空気を排除することなり。

 機関車の主要貯蓄器(4)の内にある圧搾空気が「ブレーキ・バルブ」(7)を経て、列車管及びその支管を経て「トリプル・バルブ」(13)に来るや、「トリプル・バルブ」はその空気を直ちに補助貯蓄器(12)に送り、補助貯蓄器と「ブレーキ・シリンダー」との連絡を絶ち、且つ「ブレーキ・シリンダー」をして大気に通ぜしむ。これ実に運転中、列車に制動機を加へざるときに保つべき状態にして、「ブレーキ・シリンダー」は圧搾空気の作用を受けざるなり。けだし「トリプル・バルブ」内には直径2インチ半または3インチの1個の「ピストン」ありて、列車管内の空気の圧力と補助貯蓄器内の空気の圧力との差により常に昇降し、その運動を数個の「バルブ」に伝へて種々の作用をなすものと知るべし。

 列車管内の空気の圧力減少するときは、「トリプル・バルブ」内の「ピストン」は補助貯蓄器内の圧力に打勝たれて下降し、補助貯蓄器と列車管との連絡、及び「ブレーキ・シリンダー」と大気との連絡を絶ち、補助貯蓄器内の空気をして「ブレーキ・シリンダー」内に進入せしむ。

 補助貯蓄器内の空気が「ブレーキ・シリンダー」に進入し、その「ピストン」を推進して「ブレーキ」を加ふるときは、勢ひ補助貯蓄器内の空気の圧力は減少せざるを得ず。故にこれに乗じて「トリプル・バルブ」内の「ピストン」は、列車管内の圧力によりまた幾分か上昇し初むるを常とし、同時に補助貯蓄器と「ブレーキ・シリンダー」との通路を絶ち、なお「ブレーキ・シリンダー」と大気との連絡をも閉ぢるの状態を保つことあり。故にこの場合には「ブレーキ・シリンダー」には一定の圧搾空気が閉ぢ込められ、その膨張力によりてその「ピストン」を圧し「ブレーキ」を加へ居るなり。

 機関手はこれに満足せざるときは、さらにまた列車管内の空気の圧力を殺減すべし。しかるときは前同様の方法により、さらに補助貯蓄器より「ブレーキ・シリンダー」に空気を送入すべし。普通の場合においては列車管内の圧力を殺減するの程度は、第1回目は7ポンドの圧力を削減し、第2回目以後は5ポンドずつをもってすべし。

 しかして列車管内の空気の圧力の各削減ごとに「ブレーキ」を強くするの効能ありと言えども、これ補助貯蓄器内の圧力が「ブレーキ・シリンダー」内の圧力よりも高き間においてのみ応用せらるるものにして、この双方の圧力が同一に至りたるときは「ブレーキ」はその極点に働きたるものとす。しかしてこれより以後は如何に列車管内の空気を排除するともさらにその効能なきものにして、通常列車管内空気の圧力の削減 20ポンドに至るときはこの極端に達するものなり。

 急遽列車を停止せんとするときは一時に 20ポンドの圧力を削減すべし。しかるときは「トリプル・バルブ」内の「ピストン」急に下降し、補助貯蓄器と「ブレーキ・シリンダー」との通路を平常よりも増大して、補助貯蓄器より一時に多量の空気を「ブレーキ・シリンダー」に送入すべし。

 「ブレーキ」を弛むるには列車管内の圧力を補助貯蓄器内の圧力以上に増加すべし。または補助貯蓄器内の圧力を列車管内の圧力以下に削減すべし。しかして普通の方法は機関車の主要貯蓄器にある圧搾空気を急に列車管に送入するにあり。しかるときは「トリプル・バルブ」内の「ピストン」は上昇せられ、同時に補助貯蓄器に空気を補充し、補助貯蓄器と「ブレーキ・シリンダー」との縁を断ち、「ブレーキ・シリンダー」内の空気は大気中に放出せらる。

 

103p398_20231210111801
103p399_20231210111801
103p400

2023年12月 8日 (金)

機関車工学:中巻(その185)ウェスティングハウス自動空気制動機:補助貯蓄器

【 補助貯蓄器(Auxiliary Reservoir)(12)  】 

1059_20231206093001
1060_20231206093001

 補助貯蓄器内には常に圧搾空気を貯へ置き、「トリプル・バルブ」の働きにより必要に応じてその空気を「ブレーキ・シリンダー」に送り、もって「ピストン」を圧せしむ。

 

103p398

2023年12月 7日 (木)

機関車工学:中巻(その184)ウェスティングハウス自動空気制動機:ブレーキシリンダー

【 「ブレーキ・シリンダー」(Brake Cylinder)(11)  】 

 「ブレーキ」を加ふる直接の機関としては機関車、炭水車、及び客貨車に各々「ブレーキ・シリンダー」(11)、補助貯蓄器(auxiliary reservoir)(12)、及び「トリプル・バルブ」(13)及び(14)の三種の器械を備ふるを必要とす。

 「ブレーキ・シリンダー」内には「ピストン」及び「ピストン・ロッド」ありて、その「ピストン・ロッド」は直接に「ブレーキ・レバー」に連接し、「ブレーキ・ロッド」を介して「ブレーキ・ブロック」を動かすものなり。「ピストン」の一方には螺状弾機ありて常に「ピストン」を「シリンダー」の一方に圧して、もって車輪と「ブレーキ・ブロック」とを隔離せしむ。制動機を使用せんとして列車管内の空気の幾分を排除するときは、「トリプル・バルブ」の働きにより補助貯蓄器内の空気は「ブレーキ・シリンダー」に入り、螺状弾機に逆って「ピストン」を圧し、もって「ブレーキ・ブロック」を車輪に触接せしむべし。

 「ブレーキ・シリンダー」に1個の「ピストン」及び1個の「ピストン・ロッド」を備ふるものと、2個の「ピストン」及び2個の「ピストン・ロッド」を備ふるものの二種あり。各々2個の「ピストン」及び「ピストン・ロッド」を有するものは、「シリンダー」の中央において2個の「ピストン」相面するものにして、圧搾空気はその中間に入り「ピストン」を同時に左右に動かすものなり。手用制動機を必要とせざる車両には、この2個の「ピストン」を有する「シリンダー」を装置すれば「ブレーキ・ロッド」の配置を簡約にすることを得べし。

 「ブレーキ・シリンダー」の直径は通常6インチまたは8インチなり。機関車には左右に各1個を備ふるを普通となすと言えども、時としては 10インチまたは 13インチのものを1個備ふることあり。

1059_20231206093001
1060_20231206093001

 第 1059図に示せる炭水車用の「ブレーキ・シリンダー」の直径は8インチのものにして、第 1060図に示せる客車用のものは 10インチの分なり。

1058_20231206093101

 機関車には炭水車に備ふるものと同じき「ブレーキ・シリンダー」補助貯蓄器、及び「トリプル・バルブ」を取付くるものなれば第 1058図にはそれらの配列を省けり。

 




103p397_20231206092201
103p398

2023年12月 4日 (月)

機関車工学:中巻(その183)ウェスティングハウス自動空気制動機:機関手ブレーキバルブ

【 機関手「ブレーキ・バルブ」(Engineer’s Brake Valve)(7)  】 

1058_20231203114101
1060_20231203114101

 これ圧搾空気の出入りを加減する「バルブ」にして、機関手は常にこの「バルブ」の取柄の位置を変更して制動機を操縦するものなり。この「バルブ」は一方は主要貯蓄器(4)に通じ、他方は列車管(8)に通ずるものにして、取柄の位置により圧搾空気を主要貯蓄器より列車管に送入し、または列車管より空気を大気中に排除す。

 その送入または排除する空気の分量は機関手が随意に加減し得るものにして、取柄の位置を(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)に区別してその動作を挙ぐれば左のごとし。

 (ロ)の位置
 運転中には取柄を常にこの位置に据へるものにして、この場合には主要貯蓄器より少量の圧搾空気が列車管内に進入すべし。ただしこの際「ブレーキ・バルブ」内にある1個の「バルブ」を押し上げて通過するを要するものにして、この「バルブ」は弾機にて圧せらるるをもって、これに打勝つには1平方インチに付き 20ポンドの力を要せしむ。すなわち主要貯蓄器内の空気は列車管内の空気と比して、1平方インチに付き 20ポンドだけ高圧なるをもってこの装置を設くるなり。

 (ニ)の位置
 この位置にあるときは列車管内の圧搾空気は、「ブレーキ・バルブ」を経て放出口(exhaust)(22)より大気中に逃出すべし。ただし取柄が(ハ)の位置に近づくに従ひ逃出空気の分量漸次減少す。

 (ホ)の位置
 取柄がこの位置にあるときは、列車管内より多量の空気が急に大気中に逃出すべし。故に急遽の際に迅速に列車を停止する場合に限り使用す。

 (イ)の位置
 この位置にては主要貯蓄器より多量の空気が列車管内に進入すべし。一時に列車管内に空気を満たすにはこの位置においてす。

 (ハ)の位置
 この場合には空気の通路は一切途絶せらる。

 (ハ)と(ニ)の中間の位置
 制動機を使用するときに多く利用する位置にして、普通の場合には(ニ)の位置を超えて使用することなし。

 「ブレーキ・バルブ」に付属する1個の小なる貯蓄器(9)あり。これを「ブレーキ・バルブ」貯蓄器(reservoir)と言う。常にこの内の空気の圧力と列車管内の空気の圧力とにて、「ブレーキ・バルブ」内にある1個の「ピストン」を平均せしむるものなり。

 制動機を加ふるため列車管内の空気を排出せんとするときは、まずこの小貯蓄器内の空気の幾分を排出するの装置にして、しかるときは「ブレーキ・バルブ」内の「ピストン」は平均を失して列車管内の空気の圧力に打勝たれ、「ピストン」は上昇するに至るべし。しかるにこの「ピストン」に属する「ピストン・ロッド」は1個の「エキゾースト・バルブ」なるをもって、この「バルブ」開くときは列車管内の空気はそれより大気中に逃出するなり。

 列車管内の空気減少しその圧力低減し小貯蓄器内の空気の圧力と同じきに至れば、「ピストン」は自然に平均を得て自己の重量により降下し、従って「エキゾースト・バルブ」を閉鎖するに至る。ただし取柄の位置(ホ)にあるときは、列車管内の空気はこの「エキゾースト・バルブ」より出づるのみならず、他の大なる通路を得てそれより一時に逃出するものと知るべし。

 「ブレーキ・バルブ」貯蓄器内の空気は、前述のごとく常に列車管内の空気と同一の圧力を保つべきにより、空気験圧計(10)はこの小貯蓄器内の空気に連絡して取付けあり。

 

103p395_20231203113601
103p396
103p397

2023年12月 1日 (金)

機関車工学:中巻(その182)ウェスティングハウス自動空気制動機:主要貯蓄器

【 主要貯蓄器(Main Reservoir)(4)  】 



1058_20231129172901
1060_20231129055901

 これ1個の空虚なる「シリンダー」にして、その形状及び効用は真空制動機の「バキューム・チャンバー」に類せり。その容積は 10ないし 15立法フィートにして、貨物列車用には旅客列車用のものよりも大なるものを使用するを常とす。空気「ポンプ」より流れ来れる圧搾空気を直にここに貯へ、必要に応じて「ブレーキ・バルブ」(7)を経て列車管(train pipe)(8)に送出せしむ。この器内の空気の圧力は 90ポンドにして、列車管内の圧力よりも 20ポンドだけ常に高からしむるは圧搾空気の流通を助くるがためなり。

 

103p394
103p395

« 2023年11月 | トップページ | 2024年1月 »

2026年6月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        

最近のコメント

252282