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2020年12月の記事

2020年12月31日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その225)空気圧縮機(4)

【作用の説明】

 『高圧蒸気ピストンおよび低圧空気ピストンの下り行程ならびに低圧蒸気ピストンおよび高圧空気ピストンの上り行程(第202図参照)』

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 高圧蒸気ピストンの上り行程の終わりでは単式圧縮機と同様に、逆転板は逆転棒の肩に当たり、逆転棒を逆転弁共上方へ押し上げる。従って逆転弁下端の通路は開かれ、蒸気は f 室に入り蒸気ピストン弁を左方に移動する。

 小ピストン弁シリンダーの周囲には1個の脇溝があって、ピストン弁が左に向かって押され始めたときは、b 室の蒸気の一部はこの脇溝をくぐって a 室内に流れ込む。しかしピストン弁がさらに左方へ移動すると、小ピストンはこの脇溝を閉め切り、同時に a 室内にある蒸気を圧縮して、蒸気の弾性によりピストン弁が左方の小ピストン蓋に突き当たるのを防ぐ。

 ピストン弁が左方極端に移動したため、先に述べたるごとく高圧蒸気ピストン上部へ高圧蒸気を送り、低圧蒸気ピストン下部へ高圧蒸気ピストン下部にて一度使用せる低圧蒸気を送り、且つ低圧蒸気ピストン上部にて使用せる蒸気を大気へ排出する。

 かくして高圧蒸気ピストン(低圧空気ピストンも)下り行程を、また低圧蒸気ピストン(高圧空気ピストンも)は上り行程を成し、その終端に達した時、高圧蒸気ピストンにある逆転板は逆転棒のボタンに当たり、逆転弁を伴って引き下げ、従って f 室へ通じる蒸気の通路を塞ぎ、同時に逆転弁中の溝により f 室の蒸気は大気へ排出される。

 この際、大ピストンの内面に働く蒸気総圧力は、小ピストン内面に働く蒸気総圧力よりも大きいから、ピストン弁は第203図のごとく右方に移動する。第一、第二、第三中間ピストンはその直径がいずれも等しいので、これらピストンの両面に働く総圧力は釣合いの状態にある。

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2020年12月30日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その224)空気圧縮機(3)

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 第202図および第203図はその作用を示したもので、ピストン弁室のピストン弁は左から小ピストン、第一中間、第二中間、第三中間ピストンおよび大ピストンから成り立っている。第一、第二、第三中間ピストンはその大きさが等しい。ピストン弁室は以上5つのピストンにより、左より a,b,c,d,e,f の6室に分かれ、各室はピストン弁の位置に係わらず、次の通路を持っている。

 a 室  大気に通じる。

 b 室  蒸気入口に通じる。

 c 室  低圧蒸気シリンダーの下部に通じる。

 d 室  低圧蒸気シリンダーの上部に通じる。

 e 室  蒸気入口に通じる。

 f 室  逆転弁の上下運動により f 室内へ蒸気が供給排出されることにより、e 室と圧力差を生じ、ピストン弁を左右に動かす。

ピストン弁の左右運動により、次のごとく蒸気の給排を成す。

 ピストン弁が左方極端にあるとき
  (高圧蒸気ピストンの下り行程・低圧蒸気ピストンの上り行程)。

 e 室の高圧蒸気を高圧蒸気ピストン上部に供給する。

 c 室は低圧蒸気(高圧蒸気シリンダーにて一度使用したもの)を高圧蒸気ピストン下部より低圧蒸気ピストン下部へ送る。

 d 室は低圧蒸気ピストン上面の蒸気を大気へ排出する。

 ピストン弁が右方極端にあるとき
  (高圧蒸気ピストンの上り行程・低圧蒸気ピストンの下り行程)

 b 室の高圧蒸気を高圧蒸気ピストン下部に供給する。

 d 室は高圧蒸気ピストン上部で一度使用した低圧蒸気を低圧蒸気ピストン上部へ送る。

 c 室は低圧蒸気ピストン下部で使用した蒸気を大気へ排出する。単式空気圧縮機と同様、高圧蒸気シリンダーの上部にある釣合穴は、逆転棒の上下に働く圧力を平均させるために通じたものである。

 



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2020年12月29日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その223)空気圧縮機(2)

(2)複式空気圧縮機

 機関車の牽引力が増大するに伴い、列車の連結量数が多くなるから、制動筒元空気溜および制動管の容量が増加すると共に漏洩量も大となるので、経済的に多量の圧力空気を作る必要を生じた結果、複式空気圧縮機の実現をみるに至ったもので、複式空気圧縮機の高圧蒸気シリンダーの直径は215ミリであるが、蒸気は2段に作用するから、240ミリ単式に比し3倍以上の圧縮能力を有している。また蒸気消費量は単式に比し非常に経済的で、試験の結果によれば同量の圧力空気を作るに要する蒸気量は約3分の1にしか達しない。

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 その外観は第201図に示す通り、蒸気シリンダーと空気シリンダーとは中間体で連結せられ、その組み合わせは高圧蒸気シリンダーと低圧空気シリンダー、低圧蒸気シリンダーと高圧空気シリンダーとを直結したものを2組備えたもので、この2組のピストンは互いに反対の方向に上下運動する。

 蒸気ピストンと空気ピストンとは、ニッケル・クロム鋼製のピストン棒によって直結され、高圧蒸気ピストン棒には逆転棒が挿入されてあって、逆転弁の運動により蒸気ピストン弁の運動を支配し、蒸気を高圧蒸気ピストンの上下へ、また高圧蒸気シリンダーより低圧蒸気シリンダーへ、低圧蒸気シリンダーより大気へと交互に給排する。

 

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2020年12月28日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その222)空気圧縮機(1)

2.空気圧縮機

 空気圧縮機は単式のものと複式のものとある。複式はその容量が単式のものに比較して約3倍以上もあるので、大形機関車に使用することになっている。

(1)単式空気圧縮機

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 単式空気圧縮機は次の3つの主要部分から成っている。すなわち空気シリンダー、蒸気シリンダー、蒸気弁部がそれであって、蒸気は蒸気弁の作用によって蒸気ピストンの上面または下面に交互に供給され、ピストンを上下に動かせば、これとピストン棒によって連結されている空気ピストンは同時に上下運動をする。

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 いま第200図によってその作用を説明すれば、圧縮機を運転する蒸気は運転室内にある蒸気弁を開くと、蒸気管を経て圧縮機の蒸気入り口に進入し主弁室および逆転弁室に入る。蒸気シリンダーへの蒸気の供給は主弁室内のD形滑り弁(14)により行われ、この滑り弁の背面は大小両ピストンを連結せるピストン棒によって支えられ、このピストン棒と同時に適当に運動するものである。ピストン棒の運動は蒸気ピストン(6)、逆転板(8)および逆転棒(9)の作用により動かされる。

 しかして蒸気シリンダーの上部には釣合穴があり、逆転棒上下における圧力を釣合わせて、逆転棒の自動を防止している。なお主弁室の小ピストン(13)の左側の室は常に大気に連絡している。

 第200図(ピストン上り行程)において、蒸気は蒸気入口より逆転弁室および滑り弁室に入り、大小両ピストンの内面に作用するが、大ピストンに加わる総圧力が大きいので、ピストンは右方に押され、同時に滑り弁も右方に移動し、蒸気シリンダーのピストン下面に蒸気を供給し、同時にピストン上面の蒸気を突出口へ導き大気中に排出する。これがためピストンは上り行程を成すのである。

 蒸気ピストンが上り行程の終端に至ると、逆転板は逆転棒の肩(逆転棒の直径大なる部)に突き当たり、逆転棒と共に逆転弁(10)を押し上げる。これがため逆転弁室内の蒸気は第200図(ピストン下り行程)のごとく大ピストンの背面に導かれ、大ピストン両側の蒸気圧力が等しくなるので、小ピストン内面の圧力によって大ピストンならびに滑り弁が左方に移動し、蒸気ピストンの上面に蒸気を供給し、ピストン下面の蒸気を大気へ排出し下り行程を成すのである。かくして蒸気ピストンが下り行程の終端に至ると、逆転板は逆転棒下端のボタンに当たって、逆転棒を引き下げ、従って逆転弁を下げて大ピストン背面の蒸気を排出し、大ピストンを右方へ動かすのである。

 かくのごとき方法を繰り返して上下の行程を行い、同じピストン棒に取り付けてある空気ピストンを上下に運動せしむるもので、蒸気ピストンの上り行程ではピストン上部の空気が圧縮され、ピストン下部へは大気を吸い込む。

 上り行程で圧縮された空気ピストン上面の空気は、図のごとく吸込弁をその座に押し付け、その圧力が元空気溜の圧力以上になれば繰出弁を押し上げて、圧力空気を元空気溜へ送る。この間において空気ピストンの下面は吸込弁より大気を吸い込む。この場合、元空気溜内の圧力のためにその座に押し付けられ、空気の逆流することを防ぐ。

 ピストンの上り行程が終わると同時に、繰出弁は自重と元空気溜圧力によってその座に落ち付き、元空気溜空気の逆流を防ぐ。

 ピストンの下り行程においては、ピストン下面の空気を圧縮してこれを元空気溜へ送ることは、上り行程の場合と同様である。かくのごとき方法を繰り返して空気の圧縮を行うものである。

 単式空気圧縮機には次表のごとき2種類あり、蒸気シリンダーの直径で言い表わされるが、鉄道省で使用しているものは大部分240ミリのものである。

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2020年12月27日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その221)ET6形空気ブレーキ 管装置および各主要部分品(4)

 自動制動弁には次の7本の管を連絡する必要がある。

 (1)給気弁管

 (2)制動管

 (3)弛め管(単独制動弁を経て分配弁に至る)

 (4)元空気溜管

 (5)釣合空気溜管

 (6)作用筒管

 (7)圧力加減器低圧頭管

 元空気溜管の必要な理由は、制動管へ空気を送る場合に給気弁管から来る5キロ/平方センチメートルに減圧された圧力空気では、列車を貫通する制動管を所定圧力まで込めを行うに長い時間を要する欠点があるので、必要に応じて元空気溜管から直接制動管へ高圧空気を入れて、込めの時間を短縮せんとするためである。

 釣合空気溜管の必要な理由は、自動制動力と釣合空気溜を連絡し、釣合空気溜の減圧を行えば釣合ピストンの作用により、制動管も同様な減圧を自動的に行い得る様にするためで、かくすれば直接制動管の空気を自動制動弁によって排出する場合の不都合を除くことができる。

 作用筒管の必要な理由は、非常制動の場合に元空気溜の空気を自動制動弁から直接に分配弁の作用筒に送るためで、なるべく早く制動効果を得たいためである。

 圧力加減器低圧頭管の必要な理由は、自動制動弁ハンドルの位置によってこの管の連絡を絶ち、あるいは通じ、元空気溜内に保有している圧力を二様に調整せしむるためである。

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 以上の説明により主要なる部分品として

 (1)空気圧縮機

 (2)元空気溜

 (3)減圧弁

 (4)給気弁

 (5)単独制動弁

 (6)自動制動弁

 (7)釣合空気溜

 (8)分配弁

 (9)制動筒

等の必要である理由は理解できたはずであるが、なおこの他に

 (10)圧力加減器

 (11)空気圧力計

 (12)渦巻塵取

 (13)無火装置

 (14)重連コック

 (15)各種コックおよび空気ホース

が必要である。これらの部分品ならびに管装置が適当に連絡されてET6形空気ブレーキ装置を形成するもので、この関係を示せば第197図および第198図の通りである。

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2020年12月26日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その220)ET6形空気ブレーキ 管装置および各主要部分品(3)

 次に自動空気ブレーキ関係のものは

 (1)空気圧縮機・・・直通空気ブレーキと共通

 (2)元空気溜・・・直通空気ブレーキと共通

 (3)元空気溜管・・・直通空気ブレーキと一部分共通

 (4)給気弁

 (5)給気弁管

 (6)自動制動弁

 (7)制動管

 (8)制動管支管

 (9)分配弁・・・直通空気ブレーキと共通

 (10)制動筒管・・・直通空気ブレーキと共通

 (11)制動筒・・・直通空気ブレーキと共通

で、その作用の大略は空気圧縮機で圧力空気を作り、これを元空気溜内へ貯えておく。元空気溜よりの圧力空気は元空気溜管によって給気弁に至り、ここで圧力を5キロ/平方センチメートルに減圧され、次いで給気弁管を経て自動制動弁へ導かれる。

 制動が弛んでいる時、すなわち普通の運転状態では自動制動弁ハンドルを運転位置に置く。この場合、給気弁管から来た5キロ/平方センチメートルの圧力を持った空気は、自動制動弁内の穴を通過して制動管に入り、これより牽引車両の制動管へも流れて行くが、この機関車の制動支管の方へも入って分配弁に達している。故に自動空気ブレーキ装置に関係なく、制動管および分配弁の一部に5キロ/平方センチメートルの圧力空気が充満されている。

 次に制動を行おうとする場合は、自動制動弁ハンドルを制動位置に移す。この結果、制動管内の空気の一部は自動制動弁より大気中へ排出されて減圧するので、分配弁の作用によって単独制動弁によった場合と同様に分配弁の作用筒に圧力空気が入り、従って制動筒圧力ができるのである。

 この場合、制動筒圧力の加減は制動管の減圧力に関係するもので、減圧量が少なければ制動筒圧力は低く、大きな減圧を行えば高い制動筒圧力が得られる。この場合の空気の流れを示せば第195図の通りである。

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 この制動を弛めるには自動制動弁ハンドルを運転位置に移せば、給気弁管から来た空気は制動管に進入し、分配弁に至るので分配弁の作用によって、分配弁作用筒内にある圧力空気を排出するので、同時に制動筒圧力もゼロになり、かようにして制動を弛めることができる。この場合空気の流れる状態を示せば、第196図の通りである。

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 以上に述べたところにより、単独制動弁には減圧弁管および作用筒管が必要であることは了解できるが、なおこの他に分配弁弛め管および自動制動弁に至る弛め管が必要である。

 その理由は、補助機関車等のごとく重連運転をする場合に、本務機関車で操縦する緩解作用に無関係に、その機関車だけの制動を保っている必要がある際等には、この機関車の制動を保つために単独制動弁ハンドルを重なり位置に置き、その通路を遮断すれば良いのである。

 

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2020年12月25日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その219)ET6形空気ブレーキ 管装置および各主要部分品(2)

 ET6形は先に述べた自動空気ブレーキの作用を有するのみならず、機関車1両のみで運転する場合の便宜を考慮し、直通空気ブレーキの作用をも成し得るようになっている。いまこれらの諸装置を構成する主要部分品を挙げれば次の通りであり。

 直通空気ブレーキ関係のものは

 (1)空気圧縮機

 (2)元空気溜

 (3)元空気溜管

 (4)減圧弁

 (5)減圧弁管

 (6)単独制動弁

 (7)作用筒管

 (8)分配弁

 (9)制動筒管

 (10)制動筒

で、その作用は空気圧縮機で圧力空気を作り、これを元空気溜内へ貯えておく元空気溜より、元空気溜管によって単独制動弁へ導かれるが、この間に減圧弁を装置し空気の圧力を3キロ/平方センチメートルに減圧する(もし減圧しなければ空気の圧力は元空気溜と同一で6.5~8キロ/平方センチメートルの高圧であるから、小刻みに軽い制動を成すことが困難であるのみならず、その取扱い方を誤ると制動力が強過ぎる欠点がある)。

 制動を掛ける時は、単独制動弁ハンドルを制動位置に移すと、元空気溜管減圧弁および減圧弁管を通過した圧力空気は、単独制動弁内部の穴を経て作用筒管に入り、次に分配弁の作用筒に入る。しかるときはこの圧力と同一圧力の空気が作用ピストンの作用により、元空気溜管より制動筒へ進入するもので、制動筒圧力の加減、すなわち作用筒内の圧力の加減は単独制動弁ハンドルを制動位置に置く時間によって異なるが、減圧弁で3キロ/平方センチメートルに調整されているので、いかに長時間置いても最大圧力は3キロ/平方センチメートルである。この場合の空気の通路は第193図の通りである。

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 適当な制動筒圧力が得られた時は、単独制動弁ハンドルを重なり位置(制動を掛けたまま保つ位置)に移せば、制動筒圧力はそのまま保たれる。

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 次に制動を弛める場合は、単独制動弁ハンドルを弛め位置に移すと、作用筒内ピストン左側の空気は作用筒管を経て単独制動弁から大気へ排出され、その空気圧力が低くなるので、ピストンは左方へ動き、その結果制動筒の空気が分配弁から大気へ排出される。この場合の空気の通路を示せば第194図の通りである。

 

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2020年12月24日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その218)ET6形空気ブレーキ 管装置および各主要部分品(1)

第4章 ET6形空気ブレーキ

1.管装置および各主要部分品

 機関車用の空気ブレーキとしては、一般に使用されているものはET6形であって、Eは機関車(Engine)を、Tはテンダー(Tender)を意味して命名したもので、この装置の特長を列挙すれば次の通りである。

(1)いかなる大きさの制動力を必要とする機関車でも、まったく同一装置を取付け、ただ制動筒の大きさのみ変えれば良いこと。

(2)列車の長短にこだわらず、あるいは機関車でも、または機関車のみが単独に運転するときでも、その操縦が便利であること。

(3)この装置で使用する全ての弁類は管取付座を介して管と連結するから、弁類をその管に関係なく取り外すことができること。

(4)この装置は牽引車両と同時に機関車にも制動および緩解を成し得ることはもちろん、牽引車両に関係なく機関車のみに制動を行ったり、またはこれを弛めたりすることができる。

(5)制動筒の漏洩があっても常に自動的に一定の制動筒圧力を保つことができる。

(6)制動筒のピストン行程の長短に無関係に同一制動圧力が得られる。

(7)非常制動の場合は高い制動筒圧力が得られる。

 

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2020年12月23日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その217)三動弁の作用

3.三動弁の作用

 三動弁は制動管、制動筒および補助空気溜の三方に連絡する空気通路を持っているため、三動弁と命名されたもので、その作用は第190図に示す通りで、ピストン(C)は制動管と補助空気溜の圧力差によって、ピストン棒(A)および滑り弁(B)を伴って左右に動くもので、これにより各部空気通路の連絡ができて制動または弛めが行われるものである。

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 制動が弛んでいるとき、すなわち制動弁のハンドルを弛め位置に置いたとき、空気は制動管から三動弁ピストン左側室に込められるので(C)なるピストンは右端に動き、空気は矢の方向にピストン内壁の上部にある給気穴から補助空気溜へ進入するのである。この場合、制動筒は滑り弁(B)によって吐出口に連絡するので、制動筒の空気は大気に排出される。

 次に制動を成さんとする場合は、制動弁のハンドルを制動位置に移すと、制動管の空気は制動弁より排出され、三動弁のピストン(C)の左側の圧力が降下し、第191図に示すとおりピストンは左方に押され、ピストン棒(A)は滑り弁(B)および(A)を伴い左方に動くので、(A)および(B)の空気通路は補助空気溜と制動筒を連絡し、その結果、空気は補助空気溜より制動筒へ流入し制動が掛かる。

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 この場合、制動筒に流れ込む空気の量は、制動管から排出された空気の量に応じて一定の制限がある。すなわち補助空気溜内の空気が制動筒へ流れ込んだため、その圧力が降下するが、この圧力が制動管の圧力より少しでも低くなると、ピストン(CおよびA)は圧力差のため右方に動く。ピストンの動作は鋭敏で少しの圧力差でも動くから、ピストンは(A)のみを伴ってごくわずか右方に動くのであって、この関係は第192図に示す通りである。

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 これがため(A)は補助空気溜と制動筒との連絡を断つので、制動筒の圧力はこれ以上に上昇することができないが、さらに減圧を追加すると、ピストンは再び左方に動いて、補助空気溜と制動筒とを連絡し、制動筒圧力を高めることができる。かくのごとくこのブレーキ装置においては、制動管の減圧に比例して制動筒圧力を高めることができる。

 この装置では、列車分離の際、制動管のホースが破損すると、制動管内の圧力空気は急に排出されて、以上述べた原理により三動弁のピストンを自動的に作用させ、分離した両部分の車輪に対し制動を行うので、非常に安全なブレーキという事ができる。

 なおこの装置では、制動を行う際は、各車両に取り付けてある補助空気溜から直ちにその車両の制動筒へ空気を送るので、全列車を通じてほとんど同時に制動作用を行う事ができ、また制動を弛める際にも各車両の三動弁から制動筒の空気を排出するので、これまた全列車をほとんど同時に緩解する事ができる。

 ただ制動管の減圧および込めの際に、空気が列車の前後へ流動するのに、長大な列車では前後部で多少時間に相違があるので、多少の列車衝動は免れないが、直通空気ブレーキの場合の様に大量の空気を流動する必要が無いので、その時間差は極めて少ない。

 

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2020年12月22日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その216)自動空気ブレーキ

2.自動空気ブレーキ

 自動空気ブレーキは直通空気ブレーキの欠点を改良したもので、改良の主要点は列車分離の場合、自動的に列車全体に渡り制動作用を成すこと、ならびに全列車を通じてほとんど同時に制動および緩解作用を行い、列車を円滑に操縦し得ることである。しかしてその装置を構成せる主要部分品は次の通りであって、結局直通空気ブレーキの部分品のほかに、三動弁と補助空気溜を備えたものである。

 (1)空気圧縮機

 (2)元空気溜

 (3)元空気溜管

 (4)制動管

 (5)制動筒管

 (6)制動筒

 (7)三動弁

 (8)補助空気溜

 その作用は空気圧縮機で圧力空気を作り、これを元空気溜内に貯えておき、平常は制動弁ハンドルを弛め位置に置くもので、この場合は制動弁によって元空気溜管と制動管とが連絡するので、元空気溜内にある圧力空気は制動管を経て補助空気溜に込められる。従って運転中、制動が弛んでいる間は常に制動管および補助空気溜内に所定圧力を保っているわけである。

 制動を成さんとする場合は、制動弁ハンドルを制動位置に移すと、制動弁の作用によって元空気溜管の通路を絶つと同時に、制動管内の空気の一部を大気中に排出する。制動管が減圧すれば三動弁はその圧力と補助空気溜側との圧力差によって、自動的に運動して補助空気溜内の空気を制動筒に送り、かくして制動作用を成すもので、第189図はこの場合の空気の流動する方向を示したものである。

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 次に制動を弛めるには制動弁ハンドルを弛め位置に移すと、元空気溜管は制動弁によって制動管に連絡するので、元空気溜内の圧力空気は制動管を経て三動弁の個所まで流れて行く。この場合三動弁の両側の圧力を考えてみると、補助空気溜側の圧力は低下しており、制動管側の方が圧力が高いので、この圧力差によって三動弁は補助空気溜側に運動し、その結果、制動筒内の空気をその三動弁によって大気へ排出し、且つ同時に制動管と補助空気溜との通路を連絡し、先に消費した補助空気溜内の圧力空気を補充する。

 

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2020年12月21日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その215)直通空気ブレーキ

第3章 空気ブレーキ

1.直通空気ブレーキ

 空気ブレーキが初めて鉄道車両に利用されたのは西暦1848年で、サミュエル・リスター(Samuel C. Lister)氏によって初めて作られた直通ブレーキである。この装置は第188図に示す通りで、次の主要部分から成り立っている。

 (1)空気圧縮機

 (2)元空気溜

 (3)元空気溜管

 (4)制動弁

 (5)制動管

 (6)制動筒

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 その作用は空気圧縮機で圧力空気を作り、これを元空気溜に貯えておき、機関士が制動を行なわんとする際、制動弁のハンドルを制動位置に移すと、空気溜内の圧力空気は元空気溜管、制動弁および制動管を経て制動筒に進入し、その内部にあるピストンを押し動かし制動を掌(つかさど)るものである。しかして制動筒圧力が適当の大きさに達した場合は、制動弁ハンドルを重なり位置に置けば、制動管および制動筒に漏洩のない限り、制動筒圧力はそのままに保たれるものである。

 次にこの制動を弛(緩)めんとする場合は、制動弁ハンドルを弛め位置に移すと、元空気溜管の通路を絶ち、制動管ならびに制動筒の空気は制動弁から大気中に排出され、制動を弛めることができる。この場合、一部の制動筒圧力を残しておく必要があるときは、中途において再び制動弁ハンドルを重なり位置に戻せば制動はそのまま保たれる。

 この制動装置はその構造が非常に簡単で、価格も低廉であり且つ保守にも容易であるが、次の様な大なる欠点がある。

(1)列車分離の場合は制動管ホースも当然切断し、圧力空気はここから逃げるので、分離した後半部はもちろん、前半部に対しても制動が不可能となる。

(2)長大な列車では制動の際、圧力空気が後部の車両に到達するまで、ならびに緩解の際、後部車両の空気が逃げ出すまでに相当長い時間を要するので、列車の前後部において制動および緩解作用の時機に相違を来し、列車にはなはだしい衝動を起こす懸念がある。

 以上のうちで制動および緩解の場合に列車の衝動を起こすことも非常な欠点ではあるが、列車分離の場合に制動弁ハンドルを制動位置に移しても、全然制動作用を起こさないという欠点は、列車運転の安全を第一条件とする鉄道業務において耐え得られない欠点なので、現在においては単車運転の様な場合で分離の機会が無い場合以外は、かかる方式のブレーキは使用せられないのが普通である。

 

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2020年12月20日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その214)手ブレーキ(2)

 次表はC10形式機関車および各種炭水車の制輪子圧力、制動倍率およびその他を求めたもので、本表の重量は形式図記入数値を採り、制動率は空車の状態において算出し、全てネジ式ブレーキで一重ネジを使用しているものに付いての値である。

 制動力および制動率の算出は、ハンドルの端に加える手力を普通の使用状態を考慮し30キロとする場合と、部分品の内力計算に便ずるために、その最大力(ハンドルの構造および取付位置により異なる)とを求めたものである。

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 伝導効率とは心棒のネジおよび歯車等における効率をいう。

 制動倍率とは合成効率を考えないときの制輪子圧力と、ハンドルの端に加える力との比である。

 手ブレーキに付いて注意すべきことは、その締結に当たり空気ブレーキとの併用である。それは長時間停車する場合、空気ブレーキを掛けたままで手ブレーキを捲く事は、しばしば行われる事で、この場合空気ブレーキが自然に緩み、または意識的に緩めると、強い制輪子圧力の反作用が逆に手ブレーキに掛かり、手ブレーキ機構の破壊されることがある。

 

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2020年12月19日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その213)手ブレーキ(1)

16.手ブレーキ

 建設規程第75条によって、機関車には必ず手ブレーキを装置しなければならない事になっており、タンク機関車では機関車に、またテンダー機関車では炭水車にこの装置を成している。その主たる構造はハンドルを回転する時は、その軸に取り付けられているネジまたは傘形歯車が回転してその運動を制動軸に伝達するもので、その後は前に述べたとおり制動引棒、釣合梁、制動梁および制輪子釣を経て制輪子をタイヤに押し付けるものである。

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 制動軸は空気ブレーキと共用する場合が多い。第186図は、17および20立方メートル炭水車のこれらの関係を示したものである。

187_20201115112101

 第187図は、手ブレーキのハンドルに作用する手力Pから制輪子圧力Pを求めるまでの、計算方法を説明するために示した略図である。同図において

P269

 η=ネジまたは傘歯車等の合成効率

 m =ネジの刻み(ミリ)

 手動力Pの値はふつうは30キロとして計算するが、ブレーキ機構の内力を計算するときには、この力の大きい場合にも十分の強度を有するよう75キロとする。しかしC10形式機関車の様に縦巻きのものは50キロとする。

 ネジおよび傘歯車等の合成効率はふつう0.25を採る。その内容は傘歯車の効率が0.85、2か所の軸支への摩擦損失のための効率がそれぞれ0.8ずつ、ネジの効率が0.473でその合成効率は 0.85×0.8×0.8×0.473=0.257 となり、これを0.25と査定したものである。

 制動倍率(P÷p)は次式から求めることができる。

P270

【例】

  20立方メートル炭水車の制輪子圧力および制動倍率を求めよ。

 ただし、手動力 P=75キロ、ハンドルの半径 r₁=235ミリ、ネジの刻み m=9.5ミリ、合成効率η=0.25、ℓ₁=570ミリ、ℓ₂=260ミリ、ℓ₃=515ミリ、ℓ₄=235ミリ、制動軸4軸でその他に 100ミリ:295ミリ の釣合梁を使用している。

【解】

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2020年12月18日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その212)制輪子とタイヤ間の遊間加減装置

15.制輪子とタイヤ間の遊間加減装置

 制輪子およびタイヤが摩耗するに従い、その遊間は漸次増加するので、これをそのまま放置するときは制動筒ピストン行程、または手ブレーキハンドルの巻き数が増加して制動作用上不都合を生ずる。これがためこの隙間を調整できるよう、第185図に示す様な2種の調整装置がある。

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 このうちターン・バックルの張ネジ式のものはネジ部の摩耗が多く、且つ灰箱撒水等のため腐食して調整の困難を生ずる欠点があるが、スクリュー・ガジョン式(加減ネジ式)のものにはこの欠点なく最も適当なもので、近来製作せられる機関車の引棒にはこの方式のみが採用されている。

 

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2020年12月17日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その211)制輪子(4)

(4)単制輪子式と抱合制輪子式

 これは一車輪に対する制輪子の数により区別したもので、一輪に対し1個の制輪子を作用させるものを単制輪子式(Single shoe brake)と称し、2個の制輪子を抱合せ式に作用させるものを抱合制輪子式(Clasp shoe brake)と称す。機関車では一般に前者が採用されているが、場所的に余裕があれば後者を使用することが良い。

 抱合式は単式に比し2倍の制輪子を作用させる結果、制輪子自体の加熱が少なく、従って制動中の摩擦係数が大きいので、一定制輪子圧力に対し大なる制動力を得ることができる。

 また制輪子自体の摩耗量も少なく、試験の結果によれば大体3倍の寿命がある。すなわち2倍の制輪子を使用して3倍の寿命となるのであるから、3分の1だけその使用量を減じ得るわけである。

 

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2020年12月16日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その210)制輪子(3)

(3)偏心式制輪子

 本式は運転方向の一定せるテンダー式機関車のごときものに用いられるもので、偏耗防止装置を理論的に制輪子自体の形状によって解決したもので、時の宇都宮機関区長音羽技師の発案なるものである。

 一般制輪子の形状はピン穴が中央にあるが、偏心式ではピン穴を偏倚(へんい)させたものである。制輪子はタイヤに接着すると車輪の回転方向と同方向にピンを中心として回転せんとしうる作用を受ける。すなわち制輪子を圧する力をPとし、その摩擦係数をμとし、制輪子ピンの中心から制輪子の接触面までの距離をℓとすれば、摩擦力はμPであるから制輪子はμPℓの回転モーメントを受ける。

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 故にピン穴が中央にあれば回転方向の始端部の方は強い力で圧着されるから摩耗が激しく、これに反し終端部の方は摩耗が少なく、制輪子の偏耗を成すに至るものである。故にあらかじめ始端部の方の面積を増大し、終端部の方の面積を減少させ、回転モーメントの作用したる場合、制輪子面の各部がいずれも等しき圧着力を受けるごとく偏心させたものである。

 

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2020年12月15日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その209)制輪子(2)

(2)鉱滓(こうさい)制輪子

 鉄材資源の貴重なる折がら、これが代用品として鉱滓(スラグ)制輪子が考案された。これはセメントと鉱滓および溶滓等を配合して特殊のコンクリートとなし、これを鋳鉄の台に圧着したもので、試験によればタイヤに害なく、速度および重量大なる列車に用いるも不安なく、長途の下り勾配線に連続使用しても十分耐え得る良成績を収めている。試験成績の概要は従来の鋳鉄制輪子に比し次のごとき結果を示している。

(イ)平均摩擦係数が40%内外大きい。

(ロ)従って減速率が大きい。全制動の場合で70%、非常制動の場合で80%位恒定(恒常)減速率が大きい。

(ハ)制動によるタイヤ温度は大体20度(20%)位高くなる。

(ニ)制輪子の摩耗量は重量としては約50%減であるが容積では約50%増となる。(鋳鉄製の比重7.2に対し本品は2.4である)

 本品の成績は以上のごとく良好であり、経済的に考える時はさらに推奨に値すべきものとされているから、実用化されるのも近い事と思われる。

(付記)本品は直江津検車区長関根氏の考案で昭和14.11.29特許権が付与された。

 

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2020年12月14日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その208)制輪子(1)

14.制輪子

(1)制輪子一般

 制輪子は鋳鉄製で、その形状には第182図に示す様に甲形および乙形の2種がある。乙形はその重量が軽く取替えに便利であることが利点で採用されたものであるが、甲形の方が厚いため摩耗代が多いのと、その体積が大きいためブレーキ使用に伴う熱を放散しやすく、従って加熱される事が少なく、耐久力は乙形の2倍以上でその取替え回数を減少する便利があるばかりでなく、制輪子の費用についても2割程度の利益がある。乙形の方もいま少しその厚さを増せばこの欠点を緩和することができるはずですあるが、構造上甲形ほど厚くすることはできない。

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 制輪子の位置は前進を主とする機関車では車輪の前方、また後進を主とするものでは後方に置き、制輪子釣が引っ張りの状態となる様にするのが有利である。その理由はこの様にすればタイヤ冷却水が飛散して軸箱へ進入することも少なく、制輪子釣も引っ張り作用を受ける方が丈夫であること、ならびにバネの作用を邪魔しないためである。

 制輪子はタイヤとの摩擦力を応用するために設けたものであるから、摩擦の少ないことも必要ではあるが、その摩擦係数の大きいことが本来の目的からいって望ましいのである。

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 制輪子およびタイヤが摩耗すると制輪子はタイヤとの接触が悪くなって偏耗するので、これを防止するために使用しているものの一例は第183図に示す様なもので、加減棒と止ネジとを使用したものである。

 

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2020年12月13日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その207)制輪子釣の取付位置

13.制輪子釣の取付位置

 制輪子釣は車両の進行方向に対し、車輪の前位に置く場合と後方に置く場合と考えられるが、機関車としては一般に前位に置くを原則とし、客貨車のごとく進行方向の一定しないものは、前後両方に装置するのが普通である。

 制輪子を進行方向の前位に置いた場合は制輪子釣は、制輪子を圧する力Pと摩擦係数μとの相乗積、すなわち制動力に等しい力で下方に引っ張られる。この引っ張りを受けた力は車両の重量が増加したものと同じ結果となり、車輪は滑走しにくくなる利益がある。これは車輪の回転力がブレーキのため方向を変えて重量を増したごとく作用するためである。

 しかしながら、制輪子釣に傾斜角a(垂直線に対する角)のある場合には、この制動力にほぼ等しい力で制輪子ピンの箇所で下方へ引っ張ることになるから、その水平分力は制輪子を圧する力と反対方向に作用し、制動力を減じて不利益となる。

 これに対し制輪子釣を車輪の後方に設けた場合は、前位に置いた場合と反対で、制輪子釣には圧縮力が作用し、車体を浮き上げる力が働き滑走しやすい不利益を伴う。しかしもっぱら制輪子釣に傾斜角があれば、それによって生じた水平分力は制輪子を圧する力となり、制動力を増す利益がある。なお制輪子釣に圧縮力が作用する結果、ブレーキ使用中、車体にビリビリする振動を与え乗り心地が悪いので、本装置は一般に使用されない。

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 この両者の関係を図示すると第181図のごとくであり、その制動力を比較すると次表のごとくである。

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 故に制輪子釣はなるべく傾斜なく垂直に取り付ける事が有利であるが、作用中垂直にするためには、緩解している場合(ブレーキを緩めてる状態)は逆傾斜の恰好となり、緩解中制輪子釣に掛かっている重量の水平分力で制輪子がタイヤに接触する不都合を来すから、かかる不都合を来さない範囲内で傾斜の少ないことを要する。

 

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2020年12月12日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その206)制輪子釣

12.制輪子釣

 制輪子釣は制動梁から受けた力を制輪子に伝える装置で、上部は台枠に取り付けられている制輪子釣受ピンに、下端は制動梁に連絡し、その中間には制輪子が取り付けられている。その形は第178図に示すとおりで材料は鋼材(SS41)を用い、ピン穴には鋼材(SS34)炭素焼のブッシュを圧入している。

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 タイヤと制輪子の摩擦によって制動を行うに有効な制輪子圧力は、車輪の中心方向のものでなければならぬが、制動梁へ作用する力から求めたいわゆる制輪子圧力は水平方向であるから、これを真の制動圧力に直さなければならない。

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 制輪子釣はその取り付け方のいかんによって真の制動圧力に相当な相違を生ずる。第179図は制輪子釣が車輪の中心に向う線と成す角の相違によって、同じ制輪子圧力を与えても実際有効に作用する真の制動圧力に相違のあることを示したもので、この角は可及的(できるだけ)小さい方が制動圧力は大きくなる。

 図においてθ₂の場合が制動圧力が一番大きく、次にθ₂,θ₁の順序にその圧力が小さくなる。また一方、制輪子の摩耗方面から考察すると、この角は90度である方が望ましい。それはこの角は制輪子およびタイヤが摩耗するに従い大きくなるものであるからである。

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 第180図は制輪子釣と車輪中心線と成す角は、いずれも90度であるが、制輪子の位置が相違しているために、同一の制輪子圧力に対して真の制動圧力の変化する模様を示したもので、制輪子がAにある時は制輪子圧力は全部の制動圧力と一致するが、B,C,Dとその位置が下がるに従い真の制動圧力が段々小さくなる事がわかる。

 Dのごとく制輪子位置の低いものはバネがたわむと、制輪子と車輪間の遊間が著しく増加し、ひいてはピストン行程をはなはだしく延長する様な欠点を伴うものである。

 動輪の横動するものに対する制輪子釣は、その構造がその横動を許す様にしなければならない事はもちろんである。

 

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2020年12月11日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その205)制動梁

11.制動梁

 制動梁は左右の車輪に等しい制動圧力を与えるために設けたもので、両端は制輪子釣に支えられ、その途中は制動引棒またはリンクに連結せられ、これらから受けた力を制輪子釣に伝達する仲介を成すもので、曲げ作用を受けるから、これに対抗する十分な強度を持っていなければならない。

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 その材料は鋼材(SS34)を用い、ピン穴には鋼材(SS34)炭素焼ブッシュを圧入する。許し曲げ内力は1100キロ/平方センチメートルとされている。

 

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2020年12月10日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その204)制動釣合梁・リンク

9.制動釣合梁

 制動釣合梁は制動圧力を各車輪に平等に伝えるに必要な装置であって、その材料は鋼材(SS41)を用い、ピン穴には鋼材(SS34)炭素焼のブッシュを圧入し、梁の強度は力の曲げ作用に十分耐え得ることを要し、許し曲げ内力は1100キロ/平方センチメートルである。

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 なお釣合梁の構造は、第175図に示すように大体2種類あって、甲は左右ピン穴と中央ピン穴間の距離が相等しいもので、これは制動引棒から受けた力を左右へ二等分するに用いられ、また乙の様にその距離の相違するものは力を任意に左右へ分配するのに用いられる。

 

10.リンク

 リンクは釣合梁と制動梁とを連絡するもので、この両梁をはさんで上下に2枚使用する。材料は鋼材(SS41)を用い、ピン穴には鋼材(SS34)炭素焼のブッシュを圧入する。

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 その強度は曲げおよび引っ張りの両方面から計算し、そのいずれか寸法の大きい方を採用する。曲げ内力は1200キロ/平方センチメートルを超過してはならない。

 

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2211p259

2020年12月 9日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その203)制動引棒

8.制動引棒

 制動引棒の長いものは、その材料を鋼材(SS34)とし端部と棒とは鍛接するが、短いものは鋼材(SS41)を用い一つのもので作る。ピン穴にはいずれも鋼材(SS34)炭素焼のブッシュを用いている。

 制動引棒には1本式のものと左右2本式ものとあるが、2本式の方が有利である。その理由は1本式のものは重量大で制動行程の調整が困難であること、ことに張ネジ式(ターン・バックル)のものは自重のため引棒がたわみ、運転中振動のためネジを損傷することが多いこと、引棒が中央にあるため下廻りの点検に不便であること、引棒折損の場合、制動力を全然失う等の欠点があるからである。

 引棒の標準寸法は許し引張内力を1000キロ/平方センチメートルとして定めるのが普通であって、この場合における引棒の直径と伝達し得る力との関係は

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 従って

P258_20201105223902

 d =制動引棒の直径(センチメートル)
 P =制動引棒の伝達し得る力(キロ)

 次表は(89)式から求めた関係である。

P258_20201105223903

 

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2020年12月 8日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その202)制動腕

7.制動腕(制動軸腕)

 制動腕は鋼材(SS41)または鋳鋼(SC41)を用い、ピン穴および軸に対し廻るものは、軸はめ込み部には鋼材(SS34)の炭素焼きブッシュを圧入する。

 腕の形状は基礎ブレーキ装置の種類および制動軸との取付状態により種々あるが、近来の主要機関車に使用される方法は制動軸を固定し、腕のみが回転するものが多い。これを示せば第174図の通りである。

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 腕の強度は力による曲げ作用に十分耐え得るものでなければならないと同時に、軸にはめ込んだ部分のベアリング圧力が90キロ/平方センチメートル以下であることを要する。

 

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2020年12月 7日 (月)

機関車の構造及理論:中巻(その201)制動軸

6.制動軸

 制動軸の種類は第172図および第173図に示すように種々あるが、これを大別すると軸自身が回転するものと、軸は常に固定されていて腕のみが回転するものとある。また、制動筒の数によってもその構造が相違している。

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 近来新製される機関車は制動軸にねじり作用を起こさない利益から、いずれも軸を固定し腕のみが回転する方法を採用しているが、基礎ブレーキ装置を手ブレーキと兼用する炭水車およびタンク機関車では制動腕の数が増加するので、構造が複雑になるため、軸に腕を固定し、軸と腕とが同時に回転する形を採用している。

 腕を固定する方法は2シリンダーを使用した場合、1個に故障があっても左右の車輪にほぼ等しい制動力を与える点が有利であり、回転式の方は腕に無理な力を与えない利益がある。

 制動軸は機関車では鋼材(SS34)に炭素焼き入れし、炭水車では鋼材(SS50)を用い、その直径は制動腕に作用する力による曲げ作用ならびに制動腕、あるいは軸受との摩擦面のベアリング圧力に対し、十分耐え得る寸法を有することが必要である。

 

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2020年12月 6日 (日)

機関車の構造及理論:中巻(その200)客貨車の制動率

5.客貨車の制動率

 客車または貨車の制動率は制動筒圧力3.5キロ/平方センチメートルで、空車の際の軸重の80%と定めてある。この様にして基礎ブレーキ装置および制動筒の直径を決定すれば車両が積車になっても、制輪子圧力を増すことは現在我が国の装置では不可能である。

 従って積車になれば客貨車の重量は増加するから結局制動率は段々小さくなり、その程度は客車では大したことはないが貨車においてははなはだしい。これは積空の場合の重量の開きが客車では少ないが、貨車では大きいからである。その結果、実際の使用状態における制動率は客車の方が貨車より高くなるのである。

 かく設計された理由は、積空の別によって制輪子圧力を変化する装置が無いから、もし積車の場合に適当な制動率とすれば、空車の時には制輪子圧力が大となって滑走する恐れがあるためである。故に貨物列車でも高速運転せんとすれば、積空によって制動率の変化するごとき機構とすることが必要である。

 また高速旅客列車では高速の場合、制輪子とタイヤとの摩擦係数が小さいので所要の制動力を得るためには、制輪子を圧する力を増大し、タイヤが滑走を起こす限界に近い制動力を得ることを要する。

 すなわちこれがためには高速制動中には制動率を200%位と成し、低速となって摩擦係数の増加するに伴って漸次制輪子圧力を減少し、停止直前付近では80%位にする。換言すると、制動の掛かっている間、初めから終わりまで常に最高制動力(タイヤの滑走を起こさない範囲内の最大値)を与える構造とするもので、かかるブレーキ装置は外国で使用されている。

 

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2020年12月 5日 (土)

機関車の構造及理論:中巻(その199)制動率(2)

 機関車は旅客列車および貨物列車のいずれをけん引しても、運転の円滑を期するためにはその制動率をなるべく客車または貨車と同じ様にしておく必要がある。しかるに後に述べるごとく客車と貨車とでは実際運転の際の制動率に相当大きな相違があって、客車では積車の場合の制動率が70%以上となるのが普通であるが、貨車では積車の場合は40%以下になるものが多いので、機関車の制動率をいずれにも最も適当したものとするためにその中間を取って、制動軸率を機関車では60%、炭水車では空車の場合の90%に設計されたものが多い。

 次表は主要形式機関車および炭水車の制動率の一例を示すもので、各形式に対しては制動理論の項で詳述する。

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【注】軸重はテンダー機関車は運転整備の場合、炭水車は空車の場合において形式図記入数値を採り、制動率がこの状態における重量より算出する。ただしタンク機関車は炭水半減の場合を採るべきであるが、その数値詳ならざるため特に形式図記入の炭水空なる場合を採る。

 制動力は制動筒圧力に制動倍率を乗じたる値にして、制動効率を考えないものである。

 

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2020年12月 4日 (金)

機関車の構造及理論:中巻(その198)制動率(1)

4.制動率

 制動率とは制輪子圧力と軸重との比であって、制輪子圧力は

 (1)制動筒圧力

 (2)制動筒の直径

 (3)基礎ブレーキ装置の制動倍率

 (4)基礎ブレーキ装置の効率

に関係する。このうち制動筒の直径および制動倍率は設計された装置については定まった値であるが、制動筒圧力ならびに基礎ブレーキ装置の効率は制動管の減圧量に応じてその大きさが変化する。

 このうちブレーキ装置の効率は制動筒圧力の高いときは多少良くなるが、はなはだしい相違はない。しかし制動筒圧力の変化がはなはだ大で、0.4キロ/平方センチメートル位の制動管減圧の場合と非常制動の場合とは制動管圧力に非常な相違があるので、制輪子圧力もまた広い範囲で変化するものであるから、制動率もその場合により種々変化するが、ふつう一般に言われている制動率とは制動筒圧力を3.5キロ/平方センチメートル、基礎ブレーキ装置の効率を100%と考えた場合における制輪子圧力と軸重との比で、この場合、軸重としてブレーキを有する車輪上の重量だけを用いた場合、これを軸制動率と言い、また全車輪上重量を使用した場合を全車制動率と言う。国有鉄道で車両設計に使用している制動率を示せば次表の通りである。

 次表の制動率は基礎ブレーキ装置の効率を100%と考えた場合であるが、実際には制動筒から制輪子へ力が伝わるためにはそこに損失が伴うわけで、これらの損失を見込んで求めた制輪子圧力を軸重で除した商を特に正味軸制動率と呼んでいる。

P253

 手ブレーキでは手力に一定の限度があるのと、また取扱者は車輪が滑走しない様に注意して制動を行うことができるので、特に制動率として定めないで、制動倍率の方で設計上の標準を示していることは、前に述べた通りである。

 

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2020年12月 3日 (木)

機関車の構造及理論:中巻(その197)制動倍率の範囲

3.制動倍率の範囲

(1)空気ブレーキ

 機関車および炭水車の基礎ブレーキ装置設計の標準としては、制動倍率を6ないし9の範囲に定めている。その理由は、あまり大きな制動倍率を許すと制動筒ピストン行程の調整を度々行わねばならない。すなわち現行規程では機関車のピストン行程の調整範囲を80ないし130ミリとし、50ミリの差を許しているが、もし制動倍率15を採用したとすれば、制輪子とタイヤ間の隙間は 50÷15=3.3ミリ の摩耗範囲しか許されないことになり、もしこの調整を怠るとピストン行程の変化がはなはだしくなる欠点があり、時には全然制動作用を起こさない場合も生ずる。

 例えば制動倍率15を採用したとすれば、制輪子とタイヤ間の適当なる遊間10ミリを保つためにはピストン行程は 10×15=150ミリ となる。この場合、制輪子が摩耗してその遊間が5ミリ増加して15ミリとなった場合のピストン行程は 15×15=225ミリ となる。実際には装置各部のたわみ、および隙間のため、さらに20ミリ位増加するのでピストン行程は 225+20=245ミリ にもなり、かように大きな行程では機関車によっては他の部分に接触して制動作用を支障することになる。

 次に制動倍率が過小で、例えば5を採用した様な場合は、制輪子とタイヤ間の適当なる隙間10ミリを保つためには、ピストン行程は 5×10=50ミリ。これに各機構のたわみ、および隙間等を20ミリ計算に入れても 50+20=70ミリ となり、この行程ではあまりに小さ過ぎ、制動力の加減が困難になる。

(2)手ブレーキ

 タンク機関車は動軸のうち、少なくとも2軸以上

 テンダー機関車は炭水車車軸のうち、少なくとも2軸以上

 電気機関車は動軸のうち、少なくとも2軸以上

に制動し得る様に成し、制動倍率は一重ネジの場合は制動軸の軸重(タンク機関車および炭水車にありては運転整備のとき)をトンにて表した数の15倍以上とすること。ただし1200を越えてはならない。また二重ネジを使用した場合は、以上述べた一重ネジの75%とする事の制限がある。

 

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224p252

 

2020年12月 2日 (水)

機関車の構造及理論:中巻(その196)制動倍率(2)

ピストン行程から制動倍率を求める簡易な方法

 ピストン総圧力が制動倍率だけ倍加されて、制輪子総圧力となることは前に述べた通りであるが、次にピストンと制輪子の動く寸法との関係を知る必要がある。ピストンの成す仕事量と制輪子の成す仕事量とは理論的に等しいはずであるから

(ピストン総圧力)×(ピストン行程)
   =(制輪子総圧力)×(制輪子の動く平均寸法)
   =(ピストン総圧力)×(制動倍率)×(制輪子の動く平均寸法)

 この関係から

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 すなわち制輪子の動く寸法は、ピストン行程を制動倍率で除したものに等しい。この関係から制動の際、制輪子の動いた距離と、ピストン行程とを測って制動倍率を求めることができるわけであるが、しかしこれは全く理論的の話で、実際には各部のたわみ、または隙間によりかなりの相違を生ずる場合がある。

 かような理由から各部のたわみ、または隙間の影響を除去する方法を採る要がある。その方法として最も簡易で且つ正確な方法は次の通りである。

(1)最初全制動を行ってピストン行程を測定しておく。

(2)次にその制動を弛(緩)める。

(3)制動の弛んだとき、各制輪子と車輪との間に直径7~8ミリ位の鉄棒を2本ずつ制輪子の上端と下端とに差し込みおく。

(4)再び全制動を行いそのピストン行程を測定する。

(5)第1回目のピストン行程と第2回目の行程(丸棒を用いた場合)の差を、丸棒の直径で除した商(答)が制動倍率である。

 例えば第1回目の全制動におけるピストン行程が160ミリ、第2回目の行程が100ミリで丸棒の直径が8ミリとすれば、制動倍率は (160-100)÷8=7.5 であることがわかる。

 

 

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2020年12月 1日 (火)

機関車の構造及理論:中巻(その195)制動倍率(1)

2.制動倍率

 制動倍率とは制動筒内で発揮した総ピストン圧力、またはブレーキのハンドルに加えられた力が、いく倍になって制輪子の総圧力となるかという割合を称するもので、ブレーキ装置自体の摩擦および弛(緩)めバネまたは戻しバネ等の反力は無いものと仮定した場合のものである。

 例えば制動圧力が1平方センチメートルに付き3.5キロで、制動筒ピストン直径が30.5センチメートルのもの1個を使用する場合、この制動筒の作用を受ける制輪子の総圧力が20.44トンである場合の制動倍率を求めてみると次の通りとなる。

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 すなわち制動倍率は8である。換言すれば基礎ブレーキ装置の各部寸法がちょうどピストンの総圧力を8倍にして制輪子を押し付けている様な関係に設計されているわけである。かような理由から制動倍率は基礎ブレーキ装置の各部寸法から求めることができる。

 基礎ブレーキ装置の構造には二様の方式があり、制動倍率とテコ比の等しいものと然らざるものとがある。すなわち第171図(1)および(2)のごとくテコの支点となる部分が固定され、テコ比がそのまま制動倍率に等しいものと、(3)および(4)のごとくテコの支点が移動(1個の制輪子が作用したる後に次の制輪子が作用する機構になっている)するもので、テコ比に制輪子の数を乗じたものとがある。これら各場合における制動倍率の計算例を示せば次のごとくである。

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