夢の国の白
私は、また夢の中で王子様と出逢った。その名は白(ハク)。私は順子という名であるが、白と釣り合う関係になるであろうか。相応しい関係とでも云う関係になるであろうか。私は、一度願いを込めて夢を見る習慣を二、三ヶ月続けていた。(白様と遊園地で出逢う)ということを一週間、いや二週間は続けて願っていた。白という存在は現実には存在しないものだと思っていたが、昨日の白は、明日君の家に現れる、と豪語しているように感じた。現実では出逢うことなどできない。当然
、お化粧をして待機していたが、白は今日も現れることはなかった。お化粧をしていたのを有意義なものにしようと、私はコンビニに向かった。店員は白と全然似ても似つかない顔をしていた。白のことを思うと、早く逢いたくなる。今日は遊園地デートがいいね、とテンションを上げた。コンビニでは、酒とつまみを買った。白と一緒に食べることはできないが、自分自身のためということを忘れてはならない。自分自身のために行為することが大事だ、と白は夢でそう話していた。私は家に帰ると、今日の願いを込めようとした。
夢の中で、いきなり遊園地に私と白は並んでいた。メリーゴーランドに乗る予定が勝手に出来てしまった。でも白と一緒に乗りたかった。白……愛してる。心から愛してる……。
白は、気を付けて乗るんだよ、と言ってくれた。きゃあ素敵。気配りをすてくれる白が好き。白のことが大好き。今度逢ったら手を繋ごう。
なんやかんや、白との出逢いというものは一時間にすぎないものだと思った。精確にタイム計算したわけではないが、夜中に起きることが私のルーティンであった。白と一時間にすぎない関係に困るわけではなかった。今思うと会話ばかりしていたのだと振り返ることもあった。自分自身を信じて生きること、白の愉した内容は、現実の私のためになっていた。白と手を繋ぐ、私はそう信じていた。
白と遊園地でデートをして二日目。今度は手を繋ぐことに成功した。他愛もない話、何気ないフォローが嬉しくて、嬉しくて、楽しかった。白、実は黙っててごめんね。私の父親は恋愛否定してね、現実では恋人をふたりも破局してしまったことがあるの。父親が私の恋人一人目と別れるように言ってね、ふたり目も別れるように言われた、二度と付き合うな、とも言われたの。白、夢の中でしか逢えないけれど、逆にそれでいいと思うの。父親に夢の中まではバレないから……。父親は優しいときもあるけど、大事な娘を取られたくないんだろうよ。きっと可愛くて可愛くてしょうがないんだろうよ。私が性的なことに振り回されて欲しくなかったんだろうよ。男が近づくなんて悔しかったんだろうよ。触れて欲しくなかったんだろうよ。誰にも大事な娘を取られたくなかったんだろうよ。白、私はこの恋愛でいいよね、大好きな白と関われるこの距離が幸せだもん。いつか白が迎えに来てくれる、なんて一ミリも考えなかったよ。白は私のこと好き?どう思う?素直に聞かせて。
白は一呼吸置くと、父親の言うことを聞く君が好きだ。お父さんの言うことを守り、苦しみ、僕に打ち明けた、そのどれもが美しい。僕のことを愛してくれる君が好きだ、と言った。
白、なんか説法ある?と訊いた。白は、「父親を重んじて。大事なお父さんなんだから」と言った。私は、お父さんは優しいときがあった、と言った。白は、「優しいお父さんでよかった」と言った。
それから白とデートすることが続いた。王子様、と呼ぶのはなんだか恥ずかしい。白、お父さんが恋愛してもいいって言ってくれたよ。私、恋愛は白としかしない、って言ったよ。
お父さんは「その白とは夢の中で逢うのか」と言ってたよ。夢の中でもいい、異性と付き合うことがいい感じがしたんだ、と言ってたよ。お父さん、良かった、恋愛を赦してくれるの、ナイスだよ!!
白は、夢恋愛というんじゃないかと言っていた。夢で恋愛するから夢恋愛、ね、いい響きじゃない?もちろん、夢恋愛と言い出したのは白様だよ。自分の意見のように言ったのは、しょうがないのかもしれない。白は、「そなたは美しい」と言ってくれた。白、ありがとう。私は悦びを噛み締めた。私の顔は、白と逢うたびに美的になっていったのかもしれない。恋愛する女性は美しくなる、だったっけ。そんな格言があるものだと考えることもあった。私は、美しい、という言葉が私に当て嵌まりそうな、そんな予感がした。白、今日も一日が終わる。23時の白は美しい、いや、何時の白だろうと、美しいっちゃ美しい。夢で逢うたびに嬉しくて、楽しくて……。忘れられない思い出が大事だよ、って言ってくれてありがとう。白とのすべての時間が、私の宝物です。結婚はできないかもしれない。でも私は少しずつ、成長したと実感している。白とのすべての時間が愛おしい。頭を撫でてくれたこと、忘れないよ。白、今日も目が覚めます。また夢の中で逢うときまで、私は働きます。仕事場に自分の弁当を持っていきます。酒とつまみは帰ってきてからいただきます。そんなルーティンが私の人生です。


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