今朝、目を覚まして最初に何を手にしましたか。「スマートフォン」という方も多いのでは。
スマホのアラームで起き、ニュースやSNSをチェック、ほとんどの路線ではスマホで駅の改札を通り、電車の席では全員が四角い板切れとにらめっこ。こんな日常は今や珍しくありません。
写真撮影、音楽や動画の視聴、ゲームにとどまらず、買い物、決済から、結婚相手を探す婚活、就職活動、投資まで…。すべてがスマホで可能になりました。
代表的機種iPhoneが日本で初めて発売されたのが2008年。それから20年足らずでスマホは急速に普及しました。
政府による25年の各種調査によれば、約92%の世帯がスマホを所有。調査によってはテレビの保有率を上回っています。100世帯当たりのスマホ保有数は約229台。国勢調査(速報値)では1世帯の平均人数は2・15人ですから、国民1人当たり1台以上のスマホを持っている計算です。
◆社会と関わる「窓口」に
統計上の「1人1台以上」は1人で複数のスマホを所有する人が多いからですが、そのこと自体、スマホが社会に広く深く浸透している証左でしょう。スマホは個人が社会と関わる「窓口」役を一手に担い、スマホなしでは生活に困る「1億総スマホ依存」とも呼べる世の中になりつつあります。
もちろん利点ばかりではありません。スマホを悪用する詐欺が横行し、スマホで知り合う匿名・流動型犯罪グループ(匿流)による強盗や殺人も相次ぎます。運転中の「ながらスマホ」による死亡事故も後を絶ちません。人類の英知の結晶である「板」が、人間の悪意や欠点も増幅させています。
スマホを入り口とするネット空間が「未開の大票田」だと政治家が気付き、選挙戦が変質したのも必然の成り行きでした。
スマホを駆使した戦術を最初に成功させた主要政党は国民民主党でした。玉木雄一郎代表は18年の結党後に「永田町のユーチューバーになる」と宣言し、24年の衆院選で議席を4倍増させました。
玉木氏はSNS選挙に関し「数打ちゃ当たる」と言い切ります。単純かつ明確な言葉で次々に発信し、閲覧数や「いいね」が多かった政策を前面に打ち出したそうです。SNS選挙の核心は、発信や反応の「量」なのです。
25年の参院選では参政党が排外主義的な主張を誤情報も含めて発信し、議席を伸ばしました。
SNSでは憎悪や怒り、偏見が拡散されやすいと指摘されます。「偽ニュースは事実よりも20倍のスピードで拡散する」という米大学の研究結果もあります。
◆資金力が発信量を左右
今年2月の衆院選では、自民党がSNS選挙のノウハウをフル活用して大勝しました。
高市早苗総裁(首相)が出演したネット動画広告の再生回数は投開票日までに約1億6千万回に上りました。資金力に勝る自民党がネット空間の発信量で他党を圧倒したのです。候補者による選挙期間中の有料ネット広告は禁止されていますが、資金力が選挙の勝敗を左右しないよう、政党や政治団体も禁じるべきでしょう。
首相陣営が中道改革連合の候補者を中傷する動画を作成し、拡散させたとの週刊文春報道が事実なら、民主主義の根幹である選挙の公正が揺らぎます。与野党は選挙中のSNS利用の法規制を議論していますが、まずは高市氏ら政治家自らがSNSを悪用したか否かを明らかにすべきです。
それを怠り、誤情報や誹謗(ひぼう)中傷への対策をSNS事業者任せにするのは釈然としません。閲覧数が増えるほど投稿者に広告収入が入る仕組みも見直しが必要です。
ただ、法規制だけでデマや中傷は根絶できません。特定の政党や候補者に有利になるよう誤情報や中傷を発信する個人や組織は広告収入だけが目当てではないからです。情報操作の専門家は人工知能(AI)も駆使して、法に触れないよう巧妙に発信します。
◆情報読解力を鍛えたい
結局、私たち有権者に問われるのは情報を読み解く力です。
スマホで目にする情報は閲覧数や「いいね」、再投稿が多くても正しい情報とは限りません。実名の団体や人物が虚偽や誤情報を投稿することもあります。発信元が不明なら、なおさらです。
膨大な投稿をすべて事実確認することは誰にもできません。スマホで接する情報には悪意が潜む可能性を常に疑い、真偽不明の刺激的な情報は受け流す習慣も身に付けたほうが得策です。
スマホに触れないのは寝ている時だけという人が増える昨今、スマホに操られない、強くしなやかな心が欠かせなくなっています。
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