1987年のUSナインボール。
マイクシーゲル33才。
ホセ・パリカ(フィリピン)のブレ
イクノーインからマイク・シーゲ
ル(アメリカ)の第1球目。
このシーゲルの最初の1番のエース
ボールを入れる時に撞く音が典型
的な1980年代の優秀なキューの音
だ。
「コン」とも「キン」とも違う透
き通るような澄んだ高音。野球の
金属バットでヒットを打つのとも
違う音。
このキューの音質、音程こそがか
つての最優秀なキューが奏でるサ
ウンドだった。
ザ・サウンド・オブ・プールキュー
とはこれ。
このシーゲルのキューはJossキュー
だが、TADもザンボッティも他の
アメリカンカスタムビルダーのキ
ューも、すべてこの音質だった。
先角=フェルールはすべて象牙で
ある。
勢いよくではなく静かに緩く撞く
と「ズピン」という音がする。
だが、象牙ではなく化学樹脂の先
角であろうと、こういう音を奏で
るキューが時たまある。
スッと撞くとキュイーンという高
音の澄んだ音がするような。
それは国産のマスプロラインのキ
ューでも時々存在する。
いわゆる「アタリ」のキューだ。
そうした音質は、キュー全体の総
合的なバランス、木材の種類と個
体ごとの質性差、接着密度の精度、
シャフトの質性、先角の密着度と
材質、タップの種類、等々多くの
条件が複合的にピタリとベストマ
ッチの状態にある時にこの音が発
生する。
そして、1980年代のアメリカン・
プール・キューは、カスタムに近
いマスプロラインの製品(ジョス
やショーン等)であってもこの音が
した。
良好シャフトの打撃音。
こうした音質を奏でるシャフト、
バットに繋いでもこの音が出る
キューに外れはない。まず無い。
こうした音質を持つキューは、
ほぼすべてが素晴らしい撞球性
能の実力をみせる。
ただし、キューを選ぶ時には、
店舗で現物を見ても試し撞きが
できない事が殆どであるので、
キュー購入というのは一か八か
の冒険でもある。
カスタムキューなどでは、その
ギャンブルに50~100万円を投
じるのはかなりリスクもある。
キューの世界は恐ろしいものが
あり、3万円台の廉価キューで
あろうとも、「嘘でしょ?」と
いうような100万円のカスタム
キューの性能と同種の能力を持
つ個体もあったりする。ハギや
インレイの技巧細工にこだわら
なければ。
どんなに美しく見事な木工細工
が施されたキューであっても、
撞いてみてまったく撞球能力が
低い物だったら価値はゼロに等
しいので、やはり対戦武器とし
てのビリヤードキューは質性能
力=性能が命だ。日本刀と全く
一緒。
かといって、個体ごとの均一性
や一定レベルの性能保持特化重
視に偏重し、大量工場生産を工
業力で為したキューは所有欲や
使用意欲を削ぐ。単なる「用具」
でしかないからだ。
能力の高い工業製品の箒にはあ
まり魅力は無いだろう。
あくまでも使い捨ての消耗品、
次から次へと新商品が出たら交
換するという実用具という物体
でしかないからだ。