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セクハラ行為に対する教授らへの損害賠償請求(令和3年10月13日宮崎地裁)

概要

九州保健福祉大学の大学院生兼助手(原告)が、指導教授である被告教授から継続的なセクハラ等を受けたとして、教授と大学を運営する学校法人に損害賠償を求めた事案である。
大学院生兼助手は、大学院入学後、指導教授との研究室の飲み会や二次会に参加していたが、教授から身体を触られたり、抱き付かれてキスをされたりした。また、学会出張時に大学院生兼助手が距離を置いたところ、教授から不満を示す発言を受けた。大学院生兼助手は、教授が大学院入学や研究指導に大きな影響力を持つ立場であったため、すぐに強く拒絶できず、研究活動への悪影響を恐れていた。その後、大学院生兼助手は精神的に苦痛を感じ、相談を経て大学にハラスメント申立てを行った。大学は調査委員会を設置し、教授の一部行為をハラスメントと認定し、停職1か月の懲戒処分を行った。大学院生兼助手は、教授個人の不法行為責任に加え、大学側にも使用者責任があるとして請求し、さらに大学の事後対応が不十分であったとも主張した。

結論

一部認容、一部棄却

要旨

裁判所は、被告教授の行為について、研究室の飲み会やその後の二次会において、大学院生兼助手の身体に触れたり、抱き付いてキスをしたりしたことを認定した。特に、抱き付いてキスをする行為については、大学院生兼助手の同意を得ない直接的な身体接触であり、強制わいせつ行為とも評価し得る違法性の強い行為であるとした。また、仙台出張時に、原告が教授と距離を置いたことに対して「恩を仇で返すような裏切りは許さない」などと述べたことも、指導教授としての優位性を背景に、大学院生兼助手に精神的苦痛を与え、教育環境を悪化させる不適切な言動であると評価した。

被告側は、大学院生兼助手が教授に親しげなメールを送っていたことなどを根拠に、同意があった、または同意があると誤信してもやむを得なかったと主張した。しかし裁判所は、大学院生兼助手がそのような態度を取った背景には、教授が指導教授であり、大学院入学や研究指導に大きな影響力を持つ立場にあったこと、また大学院生兼助手が教授に恩義や後ろめたさを感じていたことがあると判断した。大学院生兼助手が毅然と拒絶できず、教授の機嫌を伺うような態度を取ったとしても、それはハラスメントの渦中にある被害者の心理として不合理ではなく、大学院生兼助手の過失とはいえないとして、過失相殺も否定した。

被告学園の使用者責任について、裁判所は、教授の行為が単なる私的交流の場で行われたものではないと判断した。問題となった飲み会は、研究室の忘年会や新年会、研究進捗報告会後の飲み会など、教職員や学生が参加し、親睦だけでなく研究上の助言を得る機会でもあった。特に、日中フルタイムで働いていた大学院生兼助手にとっては、指導教授から研究指導を受ける貴重な機会であった。したがって、被告教授の行為は、大学の教育・研究活動と密接に関連する場面で、指導教授としての地位の優位性を背景に行われたものであり、被告学園の事業の執行について行われたものといえるとして、学校法人の使用者責任を認めた。

他方、大学の事後対応については、裁判所は大学院生兼助手の請求を認めなかった。大学院生兼助手は、平成29年4月以降、大学関係者に相談していたにもかかわらず、大学が速やかに調査しなかったと主張した。しかし裁判所は、当時、大学院生兼助手自身が事実関係の調査や正式な申立てを望んでいなかったことを重視した。被害者の意向に反して調査を進めることは、かえって被害者への配慮に反する可能性があるため、正式なハラスメント申立てまで大学が調査を実施しなかったことを直ちに違法とはいえないとした。

さらに、大学は申立て後、調査委員会を設置し、事情聴取等を行い、教授のハラスメントを認定したうえで、停職1か月の懲戒処分を行っていた。また、教授を指導教授から外す方向で対応し、教授に注意を行うなど、大学院生兼助手と教授を分離する措置も講じていた。調査結果や処分の進捗についても、大学院生兼助手からの問い合わせに対して一定の回答をしていたため、大学の対応に環境整備義務違反があったとはいえないと判断した。

この裁判例は、被害者が加害者に表面上親しげな態度を取っていたとしても、それだけで同意があったとはいえず、指導・評価・進路への影響を恐れて拒絶できない心理状況を重視した点に特徴がある。また、飲み会や二次会であっても、研究室・職場の延長としての性質があり、地位の優位性を利用したハラスメントであれば、学校法人や使用者の責任が認められ得ることを示している。

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