【閲覧・CP注意】 「お前の人生はハッピーエンドにはならねぇと思ってた」 Part4

  • 1スレ主26/06/04(木) 02:03:15

    それでもできうる限りの幸せを与えて
    やりたいと思ったんだ……





    ※初心者のSSです
    ※ゴア系の描写が出ます
    ※日下部✕日車です

  • 2二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 02:20:41

    このレスは削除されています

  • 3二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 02:32:23

    このレスは削除されています

  • 4二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 02:34:40
  • 5二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 02:36:52

    【注意】
    この先、日下部さん・日車さん双方にとって非常に辛く、残酷な描写が続き、結末に向けて救いのない描写や、場合によっては強い不快感を覚える展開が含まれます。

  • 6二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 03:19:23

    立ておつ
    どんな展開になっていくのか楽しみだ

  • 7二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 05:43:12

    スレ立て乙です
    日車は自分の為に日下部の立場が悪くなるようなこと受け入れられないよね…

  • 8二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 07:14:52

    たておつ保守
    日車自身何もしてないのに日下部がどんどん自分に堕ちてきてるみたいで怖いだろうな
    そうなれば自分がいるのがいけないって思考になって逃げ出したくもなるだろう

  • 9二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 07:33:32

    新スレ待ってた!ありがとうございます!!

  • 10二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 07:34:38

    結末が見たいけど終わってほしくない気持ちもある〜

  • 11二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 11:37:02

    新スレありがとう!
    あ〜終わりに近づいているのは寂しいけどハッピーエンドも見届けたい

  • 12二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 14:30:27

    >>5

    この先、日下部さん・日車さん双方にとって非常に辛く、残酷な描写が続き、結末に向けて救いのない描写や、場合によっては強い不快感を覚える展開が含まれます。


    こんなに最初から最後まで救いのない注意書きあるかよ…

  • 13二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 14:57:01

    でもダイス神がそう望まれたし…スレ主は啓示に従い文章を綴って…スレ民は見守ることしかできなくて…
    せめて日下部が思い描いてしまった最悪のアンハッピーエンドからは逃れられるといいね…
    どうして日車は周囲を派手に巻き込む曇らせがこんなに似合ってしまうんです?

  • 14二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 22:58:10

    ほしゅ 

    続きが気になりすぎる

  • 15二次元好きの匿名さん26/06/04(木) 23:59:42

    king〇nuさんの「The hole」聴きながら読むのたまらん

  • 16二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 00:16:05

    >>15

    MV見てきた

    曲とMVの印象が違うなって思った

    MVだけ見たら日車視点だなって思ったし歌詞を読んだら日下部かもなって思った

    自分的には日車視点寄りかな

    MVで言うと女性の役割は日車が守ろうとしていた人間で、男性の役割は今の日下部なんだろうなって

  • 17二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 00:39:42

    スレ主が次のスレ(このスレ)の最初の方で終わるって言ってたけどこの救いのない状態そのままで完結まで持っていくのか…辛い…辛すぎる…しかもまだ地獄がありそうで…

  • 18二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 06:52:27

    救いは…救いはないんですか…

  • 19二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 08:50:25

    >>17 次スレ(このスレ)じゃなくて次々スレの最初の方で終わるかもって書いてるから救いがない状態では終わらないと思う。だってそこまで悪いENDじゃないって書いてたしそう信じたい

  • 20二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 09:41:41

    >>19

    ほんとだ!ありがとう勘違いしてた

    そっか…つまりここからまた丁寧な地獄が…

  • 21二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 15:47:47

    言い方が難しいけど現状を提示されてから過去に何があったか回想する構成にされてるの天才だよな

    子供化するのは確定なのにそれがなぜか分からない
    記憶に蓋をした方法が分からない
    日下部と引き離された理由が分からない
    その後の鬱展開の展望が見えない

    他にもまだまだあるけど結果を知っているぶん考察が捗る
    ニュアンス伝わるかな

  • 22二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 17:04:57

    >>21

    とても分かる

    『何が』『どうなって』『こうなった』の『どうなって』しか分かってない状態

    『何が』の部分は今語られてるけどどんどん重くなる未来しか見えないし

    『どうなって』の部分にもまだ追加展開(重い・暗い)がありそう

    それらが最後どんな『こうなった』に辿り着くか楽しみだけど不安だ

  • 23二次元好きの匿名さん26/06/05(金) 23:37:29

    今更ながらスレ画はどの場面なんだろう再会したとこかな?

  • 24二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:13:36

    日車を連れてきて1週間がたった。その日は朝から雨が振っていた。窓を叩く雨音を聞きながら、俺は日車のベッドに伏せて微睡んでいた。一瞬だった。いや、思っているよりも長い時間寝入っていたのかもしれねぇ。雨音に混じって甲高いカラスの声がして、俺は目を開けた。
    慣れたようにベッドへ視線を向ける。

    日下部「日車?」

     布団だけが不自然に窪んでいた。
     一瞬にして目が冴える。ベッドの中に日車がいない。

    日下部「日車!!!」

     立ち上がった拍子に椅子が倒れる。寝室を見渡しリビングに駆けつけ台所に視線を走らせる。
     いない。 心臓が嫌な音を立てる。誰?誰が日車を? 見つかった? 日車が? 
     吐き気に似た動悸に頭が割れそうだ。早く見つけねぇと――はやる思いでリビングを出ると、玄関の前に蹲る人影が見えた。

    日下部「――日車!」

     細い身体が玄関の壁に手を突いて蹲っていた。靴箱の引き戸が半分開いており、床には靴が散乱していた。
     居た……それだけで膝から力が抜けそうになった。なのに、次の瞬間には腹の底がじわりと熱を持った。

    日下部「外に出ようとしたのか」

    荒くなる息を整えて問うと、日車は振り向いた。振り向いた顔は、悪戯を見咎められて怯える子どものようだった。

  • 25二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:20:48

    日車「……すまない」

     日車は目を伏せて壁に突いていた手をゆっくり下ろし、指先を頼りなく握りこんだ。

    日下部「別にいい、戻るぞ」

     なるべく普段通りに言ったつもりだった。だが声は思った以上に硬い。自分でも苛立っているのを自覚した。日車にもそれが伝わったのか、その場から動こうとしなかった。
     何か言いたげに唇を開いては閉じる。数度それを繰り返し、やがて観念したように口を開いた。

    日車「電話を……探していたんだ」
    日下部「電話?」
    日車「高専に連絡しようと思った。迎えに……来てもらおうと……」

     一瞬、意味が分からなかった。理解した途端、全身の血の気が引く。連れ戻される。日車がいなくなる。その考えだけが嫌に鮮明に頭を埋めた。

    日車「……迷惑を掛けているから。これ以上は駄目だと思った」

     迷惑? 何言ってんだ。 お前は俺に連れてこられたんだぞ。俺が望んで此処へ連れてきた。迷惑な訳がねぇだろ。玄関に落ちる雨音だけが妙に大きく聞こえた。

    日車「探したが、見つからなかった。だから外に出ようと」
    日車「……ごめんなさい」

     日車は俺を向いている。なのに視線が絡まない。直視するのが怖いのか、視線だけが俺の肩口の向こうを彷徨っていた。

    日車「うっ……ごめっ……ごめんなさい……」

     息を切らし、しゃくりあげているのに涙が落ちねぇ。そういえばこいつはずっと泣いていない。泣き方を忘れたみてぇに、泣くことが許されねぇみてぇに……。

    ――何やってんだ、俺は。言わなきゃならねぇことはいくらでもあった。勝手に出て行こうとするなと、俺から離れようとするなと。しかし上手く喉が動かねぇ。
     玄関の床に蹲る日車は叱られるのを待つ子供みたいだった。腹の底に宿った熱が少しずつ冷えていく。

  • 26二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:24:41

    日下部「……怒ってねぇよ、心配したんだ、外は危ねぇから」
    日車「っ……」
    日下部「とりあえず戻るぞ」
    日車「……しかし……」
    日下部「いいから」

     強引にならないよう気を付けながら、膝をついてにじり寄ると、日車はびくつくように距離を取った。

    日下部「日車」
    日車「だめだ……」

    俺が近づくたび、日車は僅かに後ろへ下がる。

    日車「だめなんだ……これ以上は……」
    日下部「日車」
    日車「迷惑を掛けている……仕事にも行っていないだろう」
    日下部「気にしなくて――」
    日車「俺の世話ばかりしている、食事も、着替えも、何もかも……ずっと側にいてくれて……」

    日車は自分の腕へ巻かれた呪符を引っ掻いた。

    日車「俺は何もしていない、何も返せない、なのに、君の時間だけ奪っている」
    日下部「違う、そんなもん気にしてねぇ、俺は――」
    日車「俺のせいで……だから……戻らないと……」

     違う。そうじゃねぇ、そう言いたかった。だが日車は俺の言葉なんか聞いていなかった。
     俯いたまま、自分へ言い聞かせるように呟いている。まただ。こいつはいつだってそうだ。勝手に一人で結論を出す。俺の言葉なんか最初から届いていない。

  • 27二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:36:43

    このレスは削除されています

  • 28二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:38:20

    日車「これ以上は駄目だ、十分迷惑を掛けた、だから――」

     それ以上聞きたくなかった。
     戻る? 本当にそうか? 違うだろ。その先に何を考えている。何を諦めている。嫌な想像ばかりが頭を埋めた。
     チカリと白い首元が脳裏を過ぎる。痕は残っていなかった、それでもこいつは――首を――

    日下部「日車」
    日車「これ以上は……」
    日下部「いい加減にしろ」

     掴んでいた理性が少しずつ指の間から零れ落ちていく。
     これ以上押し問答を続ける気はなかった。日車は俺の声に弾かれたように身を強張らせた。後退ろうとして背中が玄関扉へぶつかり、逃げ場がないことに気付いたのか、顔色が変わった。追い詰められた獣みてぇに俺と玄関を何度も見比べる。

    日下部「来い」

     日車の表情が揺れた。膝を立て、よろめきながら腕を伸ばす。倒れ込みそうになりながら、それでも懸命にドアノブへと手を伸ばした。

    日車「あ……」

     指先が届く前に手首を掴んだ。空を切った手が震え、それでも日車は諦めなかった。掴まれたまま身を捩り、なおも指先を伸ばそうとする。その指ごと握り込んだ。

    日車「っ……!」

     逃げようとする身体を押さえ込むように引き寄せる。日車は必死に抵抗した。なおもドアノブへ手を伸ばそうとする。

    日車「やだっ!やめっ、やめてくれ!」

     悲鳴に近い声だった。腕を振り、もがき、ばたつかせた足が玄関の床を引っ掻いた。だが、それは片手で簡単に封じることができる。腰に腕を回し、そのまま担ぎ上げた。

  • 29二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:45:51

    日車「降ろしてくれ!」

     掴まれた服が引かれた。腕が背中を押そうとする。だが力は弱く、俺の身体を揺らすことすらできない。

    日車「戻らないと……! 俺は――」
    日下部「黙れ」

     日車が言葉を止める。それでも抵抗だけは続いた。
    浅く乱れた呼吸が背中越しに伝わってくる。玄関を去り、リビングを抜け、寝室に向かう。もがく身体をベッドに下ろし、そのまま押さえ込んだ。日車の怯えがはっきりとした恐怖へ移り変わり、歯がカチカチと鳴った。

     日下部「迷惑だと思うなら勝手に消えようとすんな、黙って決めるな」

     目だけが大きく見開かれている。涙は出ない。押さえ込まれたまま、日車の口から掠れた声が零れる。

    日車「ごめ……うっ…ごめぅなさぃ……ゆるして……」

     ろれつの回らない謝罪だけが途切れ途切れに零れる。肩が不自然に上がったまま、短い息だけを繰り返している。吸っているのか、吐いているのかも分からねぇ。俺は舌打ちを飲み込んだ。
     違う。こんな顔をさせたかったわけじゃねぇ。怯えさせたかったわけでもない。こんなに手荒に扱うつもりも、傷つける気も……なのに。

    日車「ゆるして……いぅこと……ききます……ゆるぃて……」

     目の前の日車は、まるで命乞いをしているみてぇだった。

    日車「うぅ……くさか……」
    日下部「いい……俺が悪かった」
    日車「ごめぅ……なさ……」
    日下部「謝んな、お前何にも悪くねぇ、俺が全部悪い」

     震える瞳は俺を見ていた。しかし、その目は何も映していなかった。分かったのは、こいつが今、まともに俺の声を聞ける状態じゃないこと。そして、そこまで追い詰めたのは俺だということだった。
     それでも、手放す気になれなかった。こいつを安心させることすらできねぇくせに。

  • 30二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:55:20

    日車は殺人の罪悪感+監禁のトラウマの再演+日下部の時間を奪っている罪悪感がぐちゃぐちゃになってるっぽい?
    最初の殺人と監禁のトラウマは日下部にはどうしようもないし、日下部に対する罪悪感の払拭も難しい
    詰んでるなぁ

  • 31二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 00:58:51

    日車は元々一方的に大事にされるだけだと弱っていくタイプだよね
    根っから奉仕型っていうか
    退行してても頭良いから誤魔化しも通用しないしこの現状を打破するの無理ゲーでは

  • 32二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 01:02:53

    言葉が幼くなって呂律が回らなくなる日車は本当に癖、ここまでごめんなさいが似合う男はいない
    待って~~~~~本当に待って…
    あの日車が呪詛師ごときに命乞いをするとは思えない…
    つまり自分を本当に傷つけることはしないと信じてる、信じてた日下部相手だからこそ
    甘えにも似た乞う言葉が出てきたってこと…?
    …ハァ~~~~~待て待て…

  • 33二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 01:09:32

    上に歯向かうのに他の人を巻き込まなかったこと、独りで日車のために出来るだけのことをしてること、それを全部俺が悪いって言う日下部も違うだろ……悪いのは呪詛師と上層部だよ……
    似たもの同士じゃん独りで戦うなよ……

  • 34二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 05:52:00

    うぁ〜!待って… 待ってくれ…
    といいながら何回も読み返している…
    涙が出ないのがまた…日車…こっちは号泣だよ…

  • 35二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 10:15:15

    ゴメン2人の幸せを願ってるはずなのに怯えて拙い謝罪しかできない日車と怯えてさせてしまった自分自身に対する無力感に苛まされてる日下部に悪い笑みが浮かんでしまった

  • 36二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 17:44:19

     あの後、日車はずっと舌っ足らずに「ごめんなさい」と繰り返した。謝って、謝って、謝り続けて。やがて身を守るように布団に潜り込んだ。
     下手に手を出せばパニックを起こしそうで、好きなようにさせてやった。だが布団の中からは、時折くぐもった呻き声が聞こえてくる。そのたびに全身が引き裂かれそうだった。

     あの日以降、日車は妙に聞き分けが良くなった。
     元々従順ではあったが、それとは違う。起きろと言えば起きる。横になれと言えば横になる。食べろと言えば食べる。着替えろと言えば着替える。水を飲めと言えばコップを手に取る。すべてが機械的だった。

     横になってろと言えば、起きろと言うまで起き上がらない。
     自分から何か言い出すこともなかった。

     まるで言いつけを守ろうとしているみてぇだった。違う。そんな風にしたかったわけじゃねぇ。俺が見たかったのはこんな姿じゃなかった。こんなふうに怯えて従う姿じゃねぇ。だが、離れることもできなかった。 

     目を離した隙に何かするんじゃないか。気付いた時には手遅れになっているんじゃないか。そんな考えばかりが頭に浮かんだ。

     寝室の隅にもたれて日車の様子をうかがった。日車が気にしないようスマホを弄る。本を読む。書類を眺める。何をしていても意識だけは日車に向いていた。
     呼吸の音が聞こえるか。魘されていないか。寝返りを打ったか。そんなことばかり気にしていた。

     日車もまた、俺の存在を気にしているようだった。
     時折こちらを見る。目が合うと、すぐに逸らす。びくついて肩を竦めることもあった。

     そのたび胸の奥が重くなる。怖がられている。
     分かっていた。分かっていて、それでも離すことができなかった。

  • 37二次元好きの匿名さん26/06/06(土) 23:31:30

    未遂直後とはまた違うヤバ展開だ…!
    ふたりともお互いを思ってるのにどうしてここまですれ違う…!
    日車の心が壊れたり直ったりを繰り返しすぎて取り返しのつかないことになりそう

  • 38二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 00:26:37

    もういいだろ!!その傷つけたくない気持ちとやらはどこからくるんだよ!!早く日車を抱きしめて「お前が好きだから側にいるんだよ」くらい言えよ!!

  • 39二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 00:32:24

    読んでて辛くなってくるし2人には幸せであってほしいんだけどこの想い合ってるのにすれ違ってどうしようもないとこまで堕ちていきそうな雰囲気も大好きでぇ…

  • 40二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 09:46:50

    従順が隷属になってしまった…
    痛めつけられることがないだけであの呪詛師と変わらないと日車が思ってたらどうしよう
    全然違うのに密室で全ての自由を奪われてることは一緒だから救いがない

  • 41二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 09:48:06

    救いを
    救いをください…

  • 42二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 17:12:39

    >>38

    攫う時にほぼ言ったようなもんだと思ってたけど日車にはやっぱ伝わってないのかなぁ

    伝わったところで救いになるのかも俺には分かんないんだけど

  • 43二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 17:15:31

    >>42

    日下部の庇護欲に恋愛感情も含むとして、日車が同じ気持ちを持てないならそれも罪悪感になりそうだしね

    日車も平時なら芽生えてたかもしれないけど今は恋愛どころじゃないし

  • 44二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 20:50:30

    日下部の機嫌を損ねることをしたくなくてビクついてるけど言うことを聞いていれば痛いことはされない文呪詛師よりマシだなとか思われてたら日下部泣いちゃうよ

  • 45二次元好きの匿名さん26/06/07(日) 23:03:08

     最近、やけにカラスの声が多かった。

     最初は無理やり気のせいだと思った。住宅街とはいえ珍しいことじゃねぇ。だが一日に何度も聞こえる。朝も、昼も、夕方も。
     カァ、と鳴くたび意識が窓へ向いた。

     今日も寝室の隅で日車を眺めていた時だった。カァ。低い鳴き声が聞こえる。そっと腰を上げる。閉め切ったカーテンの隙間から外を覗いた。
     電柱の上。一列に並んだ黒い影が見えた。

    背中を嫌な汗が伝う。脳裏に見慣れた女の姿が浮かんだ。
     日車は布団に包まっている。布団が静かに上下しているのを確認し、俺はひっそりと寝室を出た。扉を閉め、リビングへ移動してスマホを取り出すと、見計らったかのように画面が淡く光った。


     着信――冥冥。


     出たくねぇ。無視するか、一瞬本気で考える。
     だが相手が相手だ。着信を無視したところでどうにかなる女じゃない。それに、おそらくこの女は今まで俺等を見逃し続けてくれていた。

     スマホは執拗に震え続け、視線だけで寝室を確認し、観念して、通話ボタンを押した。

    冥冥『やぁ』

  • 46スレ主26/06/08(月) 04:13:10

    すいません、流れが切れます。

    色々書いていたら自分でもしんどくなってきたので、箸休めで短編を書きました。

    元気だった頃の日車さんの話です。

    二人は仲良しでした。


    Writeningwritening.net
  • 47二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 04:15:00

    こんなに仲が良かったのに…?こんなに…?そりゃあスレ主も辛くなるよ

  • 48二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 05:42:22

    同僚から更にもう一歩踏み込んだ距離感のふたり
    軽口を叩いてくるしらしくない姿も見せる、何より遠慮なく頼ってくる日車を日下部は知ってたのか
    こんなことしてくる日車を日下部が好きにならないわけがないし、逆もまた然りなんだよな
    幸せな記憶だ…

  • 49二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 07:41:28

    仲が良過ぎるー!!
    日車もめっちゃ甘えてる…日下部も相変わらず優しい…お互いがお互いをよく分かってる
    そんな至近距離でチョコミントパフェスマイルくらったら惚れてまうやろーッッ!!!あっもう惚れてたか

    こういう2人の記憶を声に出してこ!!またパフェ食べに行こうって!あの時だって頼ってくれただろって!そりゃ頼るの重みが違うけどさ〜!

  • 50二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 08:38:38

    こんな…こんな陽だまりみたいに穏やかな時間があったのか…
    ダメだ涙腺が緩む

  • 51二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 16:47:14

    保守

  • 52二次元好きの匿名さん26/06/08(月) 23:51:01

    またこんな会話できたらいいよね…

  • 53二次元好きの匿名さん26/06/09(火) 03:16:51

     相変わらずだった。こっちの胃が痛くなるような状況でも声色一つ変わらねぇ。

    日下部「何の用だ」
    冥冥『つれないなぁ。久しぶりじゃないか』
    日下部「用件を言え」
    冥冥『あまり急かすもんじゃないよ、想像はついているだろう?』
    日下部「……何の話だ」
    冥冥『率直に言おう。日車くんのことだ。いつまでそうしているつもりだい?』

     全身が強張り思わず寝室の方へ目が走る。

    日下部「……何のことだ」
    冥冥『惚ける意味があるのかい?』

     変に艶めかしい語りだった。逃げ道を与える気は欠片も感じられない。

    冥冥『病院から連れ出して、誰にも知らせず匿っている。違うかな?』

     どこまで知っている、そう考えて、すぐに馬鹿らしくなった。こんな状況で日車を連れ出した人間なんざ俺一人しかいねぇ。誰にでも分かることだ。

    冥冥『安心したまえ。君の家を今すぐ誰かに報告するつもりはない、にしても本当に都合のいいトコがあったねぇ。伊地知くん困り果ててたよ」

     それがどうした、伊地知に迷惑を掛けていることくらいとうに理解している。全部承知の上で日車を連れ出した。それよりも引っ掛かったことがある。

    日下部「……俺の家を知っているのか?」
    冥冥「その家のことならずっと前から知ってたさ、それこそ渋谷事変の前から」
    冥冥『元々は君のセーフハウスだったはずだ。本当の自宅は死滅回遊の範囲内にあって、使い物にならなくなって住民票を道場に移した。だから今実際に住んでいる場所は記録に残っておらず誰も知らない、こういうことを見越していたのかい?』

      つまり、この女は俺が誰にも言わず隠していた場所を何年も前から把握していたことになる。
     それ自体はいい、正直、セーフハウスについては最初から冥冥にはバレる前提で選んでいたし、冥冥の紹介で選んだ場所もある。問題はそこじゃねぇ。

  • 54二次元好きの匿名さん26/06/09(火) 10:46:01

    こっちの家を選択して正解だったな。自宅ならすぐに上層部の捜査が入ると思っていたからバレてなかったのはそういうことだったんだな
    冥冥が来たってことは上層部からの依頼で日車を探せってなったのかな…

  • 55二次元好きの匿名さん26/06/09(火) 11:46:49

    拠点複数持ちの日下部は任務に生きてるって感じがしていいな
    誰も知らない隠れ家に大事なものを隠してるんだ
    世界から隔離されたふたりって感じだったけど、長くは続かないよね

  • 56二次元好きの匿名さん26/06/09(火) 20:07:01

    シリアスぶった斬って申し訳ないがやっぱ箸休め編の2人の話好きだな何回も読んで癒された
    こういう話もまた見てみたいな!
    チョコミントパフェのところは脳内で「チョコミント!よりもあ・な・た」で再生されたよあっちゃん

  • 57二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 00:52:12

    ほしゅ

  • 58二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 03:44:06

    日下部「なんで今まで黙ってた」
    冥冥『君が隠したがったんだろう?無理やり連れ戻したところで意味がないとも思っていたしね」

     まるで値踏みでもされている気分だった。脅しているわけでもない。責めているわけでもない。だが俺の行動を肯定しているようにも聞こえねぇ。
     この女は信用に足る人間ではある。金に汚いが義理堅い。だからといって見返りもなく善意だけで人を庇ったりする人間ではない。

    冥冥『だがそろそろこれからを考えなければいけない、君がどうしたいのか聞きたい』

     だから警戒した。
     わざわざこの女がここまで踏み込んでくる理由が見えなかった。

    冥冥『君はこれからもずっと一人で日車くんを抱え込むつもりかい? それともいいかげん誰かを頼るかい?』

     胸糞悪かった。冥冥の言わんとすることが察せたからだ。要するに誰かを頼れと言うのだろう。
     嫌だと、本能に近い叫びが沸き上がる。
     頼った先で取り上げられたらどうする。上の連中から見れば俺は日車を拐った犯人だ。引き渡せと命じられたら俺には止める権利がない。

     隠し続けるのは現実的じゃないことくらい分かっていた。
     日車は本調子どころか衰弱から回復しきってすらいない。今では俺に怯えて縮こまってる。一人じゃ限界だ。分かっている。それでも駄目だった。奪われたくなかった、誰にも渡したくなかった。

    日下部「……今は無理だ」

     誰に向けた言葉だったのか、よく分からなかった。

    冥冥「……そうか」

     冥冥がため息混じりに呟いた。そのひと言が妙に重かった。

    冥冥『日下部君、君は少し視野が狭くなっている』

  • 59二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 12:46:15

    冥冥は自分を頼れって言いたいのかな?
    今のままでは日下部も日車も共倒れになってしまうしな

  • 60二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 12:55:40

    日下部「……説教なら切るぞ」
    冥冥『説教じゃない、純粋に心配しているんだ」 
    日下部「お前が? ハッ! らしくねぇな」
    冥冥『私を何だと思っているんだい? だが君とは長い付き合いだ。何か裏があるんじゃないかと勘ぐってるようだが今回ばかりは打算はない』

     冥冥がここまで言うのは珍しい。
     利益にもならないことに首を突っ込む人間ではないし、面白半分で他人を振り回す時とも空気が違う。だからこそ警戒した。
     だからこそ気味が悪かった。

    冥冥『一度顔を合わせて話したい。君の家に行ってもいいか?』
    日下部「断る」

     冥冥が何を考えているのかは分からない。
     だが、この女はもう居場所を知っている。
    その気になれば無理やり此処に押し入ることも、俺を外へ引っ張り出している間に日車に接触することだってできる。
     冥冥なら日車を手荒に扱うことはないだろう。だが、その先はどうだ。日車が誰の管理下に置かれるのか、俺には分からない。誰かの目に触れた瞬間、俺の手から零れ落ちてしまう気がした。

    冥冥『そう言うと思ったよ」
    日下部「用があるなら電話で済ませろ」
    冥冥『済まないから困っているんだ。君は今、正常な判断ができているかい?』

     正常な判断。そんなものとうにできていない。
     衰弱している日車を無理やり連れ出した。安心して過ごしてほしかったのに怯えさせた。
     日車のために何かしてやりたい。
     なら、怯えられている以上、誰かの手を借りるのが一番だ。分かっている。そんなことは最初から分かっている。
     それでも誰にも触れさせたくない。誰かの手を借りるという話になるだけで、腹の底が掻き回される。誰かに任せる未来を想像しただけで、日車が遠ざかっていく気がした。

    冥冥『……ありえないとは思うが、彼を手籠めにしようとしているんじゃないだろうね』

  • 61二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 15:40:26

    急に肉欲の話が出てきてドキッとしてしまった
    元々親しげで、事件のせいでズブズブになってしまったふたりの距離感だけど
    そこに性を匂わすものはなかったんだよな

    性欲ってとてもポジティブなものだと思う
    生きることに密接に関係してて、今のふたりはそこまで意識が回ってない

  • 62二次元好きの匿名さん26/06/10(水) 18:56:59

    日下部からしたら信じられるのは自分だけだよね
    こんな状況なら何もかも疑心暗鬼になるよ
    でも冥冥が直接会って話さないといけないくらいマズイ状況なのか?だからってそれが本当なのか分からないしな〜
    手籠なんて元々頭になさそうだけど冥冥からそんな話されるってことは日下部の日車に対する気持ちも気づいてる?

  • 63二次元好きの匿名さん26/06/11(木) 01:06:13

    冥冥にここまで言わせるって相当だぞ外では今何が起きてるんだろう

  • 64二次元好きの匿名さん26/06/11(木) 05:47:49

     何を言われたのか、理解できなかった。言葉だけが鼓膜に引っ掛かる。
     手籠め、彼を――日車を、誰が――俺が。
     遅れて意味が繋がった瞬間、目の前に火花が散った。

    日下部「何言ってんだ!!!」
    冥冥『だから怒らないでくれと言っているじゃないか』
    日下部「確認で済む話か!! ふざけるなよ……」

     声が抑えられなかった。冗談でも笑えねぇ。発想自体が不快だった。  
     歩くこともやっとで、骨の浮いた痩せた身体。血の気のない顔。今にも壊れてしまいそうな相手だ。そんな相手に何を言ってやがる。

    冥冥『ふざけてなんかいないさ、だが人間は追い詰められると、自分でも予想しなかったことをする。現に君は病院から彼を連れ出した……傍から見るとおかしいのが分からないか? 高専でもなぜ君が日車君にそこまで執着するのか持ちきりだ』

     違う。そんな理由じゃない。あいつを傷つけたいわけじゃなかった――ただ、守りたかった。

     『やだっ!やめっ、やめてくれ!』

     外へと伸ばす手を握り込んで、もがく身体を抑え込んだ。

     『戻らないと……! 俺は――』

     此処から逃げ出そうとする声を遮った。無理やりベッドへ引き戻した。逃げないよう覆い被さって。

     『ごめ……うっ…ごめぅなさぃ』

     怯えさせた。

    『ゆるして……いぅこと……ききます……ゆるぃて……』

     怖がらせた、何度も謝らせた、命乞いのように……

  • 65二次元好きの匿名さん26/06/11(木) 05:48:51

    冥冥『もちろん私は、君がそこまで愚かだとは思っていない。しかし、それで問題がなくなるわけでもない』

     返事はしなかった。できなかった、の方が正しいかもしれねぇ。

    冥冥『今日は無理にとは言わないが、一度顔を合わせたい。できれば三日以内に答えが欲しい』
    日下部「……」
    冥冥『それじゃあね』

     あっさりと、通話は切られた。耳からスマホを離し、真っ黒になった画面に自分の顔が映る。酷ぇ面だった。

    日下部「……クソが」

     頭を掻きながらスマホをマナーモードにしようとする。指が滑った。もう一度画面を叩く。今度は別の画面が開いた。

    日下部「……っ」

     スマホをソファへ放り投げる。クッションに当たって跳ねたスマホが床へ落ちた。ガツン、と大きな音が鳴る。反射的に寝室へ目を向けた。

    日下部「……日車?」

     呼び掛けた後で気付く。さっきから声を荒げていた。冥冥とのやり取りに頭がいっぱいで、余裕が無かった。寝室の扉へ足を向ける。

    日下部「うるさかったな……起きてないか……」

     扉に手を掛ける。ドアノブを回し、少し押すと途中で何かに引っ掛かった。

    日下部「あっ……」

     少しだけ開いた隙間から部屋を覗き込む。 
     日車がいた。床に座り込んだまま、扉にもたれ掛かっている。

  • 66二次元好きの匿名さん26/06/11(木) 09:21:08

    手篭めにしたわけではないけど日下部がやってることは同じことじゃないのかって考えたのかな
    続きが気になってしょうがない

  • 67二次元好きの匿名さん26/06/11(木) 15:42:59

    このレスは削除されています

  • 68二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 00:39:32

    冥冥はどんな協力をするつもりなんだろう
    ここで日車の記憶に関する話が出てくるのか?

  • 69二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 02:57:55

    日下部「日車! おい!」

     半ばゾッとして声を上げると、日車の体がビクついた。

    日下部「悪い、大きい声を出したな……少し押すぞ」

     なるべく低く、刺激しないように意識しながら声をかけ、ゆっくり扉へ力を掛ける。押し返していた重みがわずかに動いた。日車に扉をぶつけないよう、慎重に押し開く。
     扉の先の日車は両手をついてへたり込んでいた。額が床につきそうなほど頭を下げている。

    日下部「……大丈夫か?」

     その場にしゃがみ込み、顔を覗き込もうとして思いとどまった。床についた指先が白み、小さく、震えている。

    日下部「悪ぃ、俺が怖いよな……触ってもいいか? 床は冷える、ベッドに戻ろう」

     日車は首を縦に振らない。ただ、浅い呼吸だけを繰り返している。
     手を伸ばしかけて止めた。怯えきっている。勝手にベットから抜け出したとでも思っているのだろうか。そして、あの時のように、無理やりベットに組み伏せられるかもしれないと恐れているのだろうか。手が宙に浮いたまま行き場を失う。

    日下部「……分かった、無理強いはしねぇ」
     
     行き場を失った手を下ろす。何をしても強要になる気がした。だが、その場を離れることができなかった。硬い床の上で、半ば蹲るように頭を垂れる日車が痛々しい。何もできねぇくせに、放って置くことすらできなかった。

    日車「……っ……ら……った」 

     日車が何かを呟く。聞き取れない。

    日車「う……だっ……た」

     聞き取れないが、日車が俯いたまま、言葉を探すみたいに何かを伝えようとしていることだけは分かった。
     はぁ、はぁ、と、ひび割れた呼吸が狭い隙間に満ちていく。その必死な様子に、俺の胸の奥が嫌な音を立てて波打った。これ以上、こいつを追いつめたくない。俺のせいで、これ以上――。

  • 70二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 03:04:03

    日下部「日車……無理して喋らなくていい」

     遮るように紡いだ俺の声に、日車の身体がまたびくりと跳ねた。俺の足元の、何もない床の一点を見つめたまま、何かに取り憑かれたように懸命に唇を動かす。

    日車「……誰から……だった」

     掠れた声は、けれど明確な意志を持って、俺と床の間の狭い空間に落とされた。

    日下部「……気にしなくていい」

     そう返した瞬間、自分でも逃げているのが分かった。日車の必死の問いかけを正面から受け止めるだけの度量が、今の俺にはなかった。

    日車「……やめてくれ……」

     日車の口から零れ出たのは、明確な拒絶だった。日車の頭がゆっくりと持ち上がり、俺の顔をおずおずと見上げた。

    日車「……もう、そういうのは……やめてくれ……」

     差し向けられた瞳は日車らしくもなく細められていた。まともに俺を見据えるのが怖いのかもしれない。それでも目を逸らさないのは、こいつなりの抵抗なんだろうか。

    日車「分かって、いる……上層部か……高専か……だろう?」

     日車は喉を詰まらせながら、必死に言葉を絞り出す。

    日車「君を、探している……戻らなければ……もう君を……」
    日下部「言っただろ、お前が気にする必要はねぇんだよ」
    日車「そうではない!!」

     日車が突然、叫ぶように声を荒らげた。すぐに自分の声に驚いたように肩を震わせる。それでも視線だけは逸らさなかった。

  • 71二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 07:36:14

    怪我が治って大分経つのにこんなにも動けないのか日車
    立つこともできなければ声も上手く出せない、このままじゃ間違いなく生死にかかわる…
    間違いなく精神面と環境が原因なんだけど改善しそうな気配は皆無だし
    ここからどうなるの…

  • 72二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 16:06:53

    目を細めて日下部を見る日車の必死さよ
    例の『君の目すらまともに見れない』とは全く異なる感情なんだろうな
    見ることすら恐ろしいけれど目を離したら何が起こるか分からないし逸らしたら気持ちが伝わらないと思ってるんだろうか

  • 73二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 19:55:59

    日車「もう、いいんだ……。私は、十分に……君に、もらった、から……。これ以上は、君が……君の、時間が……」

     何を言おうとしているのかは分かった。自分のせいで俺の時間を消費させているのが申し訳ないと、日車は言いたいのだろう。目の前の日車の姿に、不甲斐なさと焦燥感ばかりが膨れ上がっていく。すべてが裏目に出て、日車を追い詰めている事実が、重くのしかかってくる。

    日車「お願いだ……君は戻ってくれ……私のことは……」

    日車は目を閉じて、深く頭を下げた。

    日車「捨て置いてくれ……」

     見ているだけで吐き気がする。なんでこいつにこんな真似をさせなきゃならねぇんだ。
     『傍から見るとおかしいのが分からないか?』冥冥の言葉がリフレインする。胸の奥が、暗い感情で満たされていく。分かっている。こんな状態の日車を閉じ込め、手元に置き続ける俺の行動はおかしい。だが、ここで「分かった」と引き渡せば、こいつは二度と戻ってこない。総監部に利用され、ボロ雑巾のように使い潰されて……分かっている、これは妄想だ。冥冥だって何か考えてくれてんだろう。悪いようにはされねぇのかもしれねぇ。

    日下部「……嫌だと言ったら、どうする」

     それでも、了承できなかった。頭のどこか冷めた部分が、今の自分の身勝手さを激しくなじっている。俺がやってることはただの自己満足なのかもしれねぇ。日車の望みを叶えてやりたい、その気持ちはある。でもそれが、「捨て置け」なら、どうしても受け入れられねぇ。

    日車「…………どうして」

     途方に暮れたように呟くと、日車はゆっくりと崩れるように床へ突っ伏した。張り詰めていた糸がぷつりと切れたように、ただ床に身を投げ出す。

    日下部「おい、日車……!」

    ​ 崩れ落ちた身体に心臓が跳ね上がった。怖がられることも、拒まれることも忘れ、気づけば力なく伏した身体を抱き起こしていた。

    ​日車「もう……どうして、いいのか……わからない……」

     腕の中の日車は抵抗しなかった。抱きすくめられたまま、ぽつりぽつりと声だけが落ちる。

    ​日車「わからないんだ……どうしたら……君の時間を……君を俺から……解放できる……?」

  • 74二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 20:39:51

    こんな状態でも自分より日下部のことを案じてるのが切ない

  • 75二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 22:51:43

    こんな日車が「日下部と幸せに暮らしていた」「日下部は俺にずっと優しかった」って言うようになるんでしょ
    ひろみって呼ばれて普通に返事するようになるんでしょ
    どうやったんだよどうすれば期間限定でも幸せになれるんだよ

  • 76二次元好きの匿名さん26/06/12(金) 23:51:03

    もしかして記憶封じる提案をしたのは冥さんなのか…?じゃないとこんな状態の日車が日下部と穏やかに暮らせるわけないって

  • 77二次元好きの匿名さん26/06/13(土) 00:08:46

    今まで日下部に対して「俺」って言ってた日車が必死に懇願する場面で「私は十分に君にもらったから」「私のことは捨て置いてくれ」って「私」に変わってるのがもう…
    糸が切れた後はまた「君を俺から解放できる?」って「俺」に戻ってる
    日車の胸中や葛藤がさぁ…ここだけで見て取れるのしんどすぎだろ

  • 78二次元好きの匿名さん26/06/13(土) 08:21:39

    この日車が元に戻るにはどれくらい時間がかかるんだろう、そもそも戻れるか?
    日下部に囲われるのは嫌かもしれないけど誰かの介助がないと生きていけないだろ
    術師生命も大分危ういぞ
    高専には残ってほしいけど現場に出ない後方担当とかになってもらわないと心配で仕方ないって…

  • 79二次元好きの匿名さん26/06/13(土) 15:49:55

     そんなこと考えなくていい。俺の時間だの責任だの、そんなものはどうだっていいだろ。そもそも俺は縛られていない、捕らわれてるのは日車の方だ。お前が元気になれば――駄目だ。そうじゃねぇ――俺は日車をどうしたい?

    日下部「日車」

    ​ 深く、重い息を吐き出した。頭上に手を翳すと、日車は怯えたようにギュッと目を閉じる。

    日下部「悪かった……」

     このままだと日車を潰してしまう。感情に任せて日車を閉じ込めてても何も進まねぇ。日車を失いたくない。それは日車の意思ではない。
     翳した手を目蓋に添えると、日車の目蓋がゆっくりと持ち上がる。
     大きな目の、小さな瞳孔。その奥に映っていたのは、ひどく情けない顔をした自分だった。俺は日車の瞳を鏡にして、強引に口元を持ち上げた。

    日下部「……少し時間を置いてから、ちゃんと話し合おう。お前の話も、ちゃんと聞く。頭ごなしに否定しねぇ。だから、一回、頭を冷やさせてくれ」

     目蓋に添えていた手をゆっくりと離す。
     そこにはまだ、俺を見上げる瞳があった。映り込んだ自分の顔は笑顔と言うには強張っていて、もう一度、口元を緩め直す。

    日下部「な?」

     日車はくしゃりと目尻を下げ、頷いた。

  • 80二次元好きの匿名さん26/06/13(土) 22:09:32

    あぁ、辛い…辛いよ…

  • 81二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 00:00:58

     夕方の喧騒が耳についた。ベランダに出れば子どもらがはしゃぎながら家路についている。
     見える範囲にカラスの姿はない。あの不吉な鳥どもが周囲をうろついていないということは、今のところ冥冥の目はここに向いていないということだろう。

     だからどうしたという話だ。
    日車をどうするかは何も決まっていない。考えれば考えるほど袋小路に入り込む。結論が出ねぇ。
     窓を引いて部屋に戻る。これ以上考えても同じところをぐるぐる回るだけだ。一度頭を冷やすと決めたんだ。これ以上煮詰まっているのはよろしくない。そう自分に言い聞かせ、台所へと向かった。

     冷蔵庫を開く。最近の宅配サービスは便利でいい。外へ一歩も出なくても食材が揃う。前日までに注文しなくても、その時の気分で食材が揃う。ここ数日は雑炊だのうどんだの、日車が食いやすそうですぐに作れるものばかりを並べていた。だが、今の俺が求めているのは、そんな手軽さとは真逆のものだった。

     冷蔵庫から、昼に届いた魚を取り出す。話し合いをしようと言ったのは俺だ。お前の話を聞くと言ったのも俺だ。なのに、今の俺は、あいつと向き合うその瞬間を少しでも遅らせたくて仕方がなかった。

     鱗を引き、内臓を抜く。手間と時間の要る作業を己に課す。包丁を握る手に意識を集中させていれば、あの大きな目の小さな瞳孔も、己の情けない顔も、少しの間だけ忘れられるような気がした。

  • 82二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 00:19:31

     トツ、トツ、と静かに、執拗なほど丁寧に魚に包丁を入れる。己の往生際の悪さに笑ってしまった。
     三枚におろした身から腹骨をすき、小骨を骨抜きで一本ずつ引き抜いていく。無心になるには丁度いい単純作業だった。無心になろうとしてる時点で無駄だと分かっているのに、手だけは律儀に動き続ける。

     白身に軽く塩を振り、しばらく置く。滲み出た水気を丁寧に拭き取り、熱湯を回しかけた。白く浮いた汚れを冷水で洗い流す。指先に伝わる冷たさが、少しだけ熱を持った頭を冷やしてくれる気がした。

     下処理を終え、小鍋に醤油、みりん、酒、そして薄切りにした生姜を入れて火にかける。コトコトと鍋が鳴り始めると、生姜の利いた甘辛い匂いが徐々に台所へ広がっていった。
     火加減を調節した、その時だった。背後で微かな足音がした。誰なのか確認するまでもない。振り返ることなく、鍋を見つめたまま口を開く。

    日下部「……できたら持っていく、向こうで待ってろ」

     背中に視線を感じる。魚を鍋に入れ、落としぶたをした。鍋の中で煮汁が静かに泡立ち始める。コト、コト、と規則正しい音だけが狭い台所に響いていた。だが、日車が動く気配はない。

    日車「ここで、見ていても、いいか?」

     反射で、寝てろよと言い返そうとして思いとどまる。
     これは気遣いなのか、それともただの身勝手か。少し前まで、いや、立つことすら怪しかった男に無理をさせたくない。その気持ちは本当だ。
     だが、俺の都合であいつにこうしろと押し付けるのは、頭ごなしに否定しないと言った傍からその意思を無視することになるんじゃねぇのか。 
     振り返れば、問答無用で寝室へ戻れと言ってしまいそうで、鍋を見つめたまま言った。

    日下部「……もう少しかかるから、そこに座ってろ」
    日車「……あぁ」

     気の抜けたような返事だった。日車はすまない、と小さく呟く。背後で、食卓の椅子を引く控えめな音が響いた。
    ​ 落としぶたの隙間から湯気が立ち上る。薄切りにした生姜の香りと、醤油の匂いが狭い台所に広がっていく。時間を稼ぐために繰り返した下処理の甲斐あって、煮汁は濁ることなく、美しく澄んだ琥珀色をしていた。
    ​ 俺は一度も背後を振り返らないまま、煮えていく白身の魚をただじっと見つめ続けていた。
     これ以上、引き延ばせる工程はもう残っていない。

  • 83二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 09:41:06

    どうしたらいいのか分からないのは日下部もずっと同じなんだよな
    冥さん達を信頼しきれないのも分かるし
    彼女達の人格どうこうじゃなくて呪術界そのものがね……

  • 84二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 09:46:30

    手作業は丁寧だし優しいんだ日下部、料理に対しても日車に対しても
    でも心が伝わらないんだ、死んだ魚は喰らうしかないし壊れかけた日車には受け取ってもらえない
    魚の煮付けみたく日車の事も全部胃の中に納められたらいいのにな、誰にも触れられない日下部だけの場所だよ

  • 85二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 18:30:16

    優しくて臆病でそれでも背負っちゃう難儀な男だよ日下部は…
    できるだけ話し合いを先にしたいのもあるだろうけど小骨を丁寧に抜いたりする手間からは愛情を多分に感じる

  • 86二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 18:53:14

    ち○かわ島編の時に煮付けBLが話題になったけどこの話もまた煮付けBLだよな煮付けの立ち位置は違うけど
    前者は煮付けそのものが罪の象徴だけど後者は先延ばしにしていた答えや結末のような区切りからもう逃げられないところに来ている事の象徴というか
    でも煮付けBLの概念として「想い人への想いが強すぎるあまり、助けるためなら人の道さえ外してしまう」は同じみたいな

  • 87二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 19:16:29

    >>86

    新しい概念を知った、ありがとう

    篤寛は煮付けBL

  • 88二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 22:56:23

    勉強になった
    CPシチュは底がないな

  • 89二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 23:24:39

     不意に、背後で椅子が小さく軋んだ。

    日車「……随分と、久しぶりだな」

     ぽつりと零れた声に返すべきか迷う。独り言か、問いかけか、分かりかねていると、日車がとつとつと言葉を続けた。

    日車「こうして食卓につくのは……」 

     いつ以来だろうな。そんな続きが聞こえた気がした。 

     そうだ……そうだよな。
     日車は、何ヶ月もの間ベッドで生活していた。俺の家に来てからも、リビングまで来ることはあったが、食事はベッドで取らせていた。それが当たり前になっていた。
     気遣いのつもりだった。体力もない、立つのも辛いあいつに、無理をさせないためだと信じていた。だが、それは日車をありふれた日常から遠ざけていただけだったのかもしれねぇ。

    日下部「……煮付けを作ったんだ」

     鍋の火を止めた。同時に、ピーと炊飯器の音が鳴る。

    日下部「雑炊だのうどんだの、味気ねぇもんばっかりだっただろ。飯も炊けた……一緒に食おう」

     


     俺たちは同じ食卓を囲んだ。やたら手の込んだ煮付けに反して、即興で作ったお浸しとみそ汁が並ぶテーブルを見ても、日車は「美味そうだ」と微笑んだ。

     日車は煮付けの身をほぐし、口に運んだ。猫背気味に、時折テーブルに腕をつきながら食べている。
     背筋を伸ばし、綺麗に食べる奴だったのに。まだ完全に体力が戻りきっていない証拠だ。無理をさせているんじゃないかという思いがよぎるが、俺は口を出すのを堪えた。

  • 90二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 23:28:07

     静かに咀嚼音が響く。

    日車「ずっと思っていたんだが、君は料理がうまいな」

     思いがけない言葉に、箸を持つ手が止まった。

    日下部「……そうか?」
    日車「あぁ、簡単なうどんでも、店で出てくるもののようだった」
    日下部「そりゃ褒めすぎだ。独り身が長けりゃ、嫌でも覚える」
    日車「私は覚えられなかった……忙しくて、余裕がなくて……」

     思いのほか、日車は普通に話した。たどたどしさはあっても、極端に怯えた様子もない。だが、日車はそれ以上、箸を進めようとしなかった。ほぐされた魚の身を見つめたまま、その大きな目が、じわじわと陰っていく。

    日車「……美味い、と思う。温かい、と、感じてしまう」

     日車の喉が、耐えかねたように小さく上下した。

    日車「これほど温かく、安らかなものを……私は、得ていいはずがないんだ……」

     日車は、視線を落としたまま動かない。かける言葉が見つからねぇ「気にするな」は日車の口を塞ぐ台詞になりかねない。慰めは、今のあいつにとっては綺麗事の欺瞞にしか聞こえないだろう。

    日下部「その話は……食い終わってからにしようぜ」

     俺も半分も減っていない深皿に視線を落とし、往生際悪く話を先送りにしようとした。

    日車「……食べ終えたら、この温かさは消えてくれるのか?」

     しかし、日車は止まってくれない。

    日車「頭をよぎるんだ……私が奪った者たちのことが。もう二度と……温もりも、安らぎも、感じることのできない者たちが……」

  • 91二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 23:29:09

    このレスは削除されています

  • 92二次元好きの匿名さん26/06/14(日) 23:34:42

    テーブルについた腕が、自分の体重を支えきれないように微かに震えていた。

    「私は奪った……」

     重い沈黙が落ちる。逃げたかった。適当な言葉で誤魔化して、先送りにしたかった。だが、それはもう駄目だ。話し合おうと言ったのも、こいつの話を聞くと決めたのも、他の誰でもない俺だ。
     聞きたくなくても、怖くても、知らなきゃならねぇ。俺は、カツンと箸を置いた。

    日下部「……なぁ、一つ聞いていいか」
    日車「……何だ」
    日下部「お前……」

     喉の奥が重い。薄々察してはいる。それでも、聞かなきゃならなかった。

    日下部「なんで死のうとした」

     瞬間、部屋の温度が一段下がったような気がした。
     日車はすぐには答えなかった。細い手からじわじわと力が抜け、持て余した箸先が皿の縁に触れて、かすかな音を立てる。その小さな音だけが、やけに耳に残った。

    日下部「……俺の、せいか?」

     日車は弾かれたように顔を上げた。
    大きく見開かれたその目の中には、あからさまと呼べるほどの動揺が混じっている。

    日車「違う!」

     激しい拒絶だった。日車は小さく、だが頑なに首を横に振る。

    日車「違う、日下部。君のせいなどでは、断じてない」

  • 93二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 00:04:19

    日車って呪詛師の監禁事件の時からすでに意識障害起こしてる気がしてきた
    大江事件直後の意識と今の意識が入れ代わり立ち代わりしてて、一人称の違いもこのせいとか
    死にたかったのは大江事件直後の意識で、病室で日下部に生きていてほしいと
    言われたのタイミングでスイッチしてしまって凶行に及んだのかな
    今はふたつの意識がぐちゃぐゃに入り乱れてそう

  • 94二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 02:25:50

    まだ…まだ話せている…日下部、頼むから対応を誤るなよ…

  • 95二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 08:43:46

    ずっと薄氷の上を歩いているよう
    人並み以上の倫理観を持ってる人が突発的に人を殺したら壊れかけない方がおかしいんだよなぁ
    本編の日車は死ぬべきって思い詰めてたのを法の裁きを受けねば、って真っ当に持ち直したけど、それを奪われた上に身体的にもめちゃくちゃにされたら……
    ちゃんとコミュニケーションとれてるだけで偉いと思ってしまうよ

  • 96二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 17:21:49

    思ったより日車が話せて動けていることに驚いた
    日下部が良かれとおもってしていたことはやはり日車にとっては制限されてしまって無気力になってしまってたんだな
    今なら2人はちゃんと向き合って話せそう

  • 97二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 18:08:41

     ならば何故……
     独占欲と歪んだ執着を、心配だの支えたいだの……少しでも幸せにしてやりたいだの……そんなもんで綺麗き包みこんで、日車の気持ちも考えず突っ走った。
     日車が何を望んでいたのか知っていたのに、軽率に『普通に、生きてほしい』などと言ったから……
     だからお前は……首を括ったんじゃねぇのか?

    日車「むしろ……逆なんだ。私は、君の言葉に縋ろうとした」
    日下部「……縋る?」

     問い返した直後、日車の指先が、自身の喉元へと伸びた。
    ――やめろ。心臓が嫌な跳ね方をする。そんなつもりはないんだろうが、日車の指が喉仏のあたりを輪のように滑る。まるで、無い痕をなぞるようで、見ていて堪らなく嫌だった。

    日車「……嬉しかったんだ」

     その言葉を口にすることすら自分に許せないかのように。日車の顔が苦々しく歪む。

    日車「俺んちに来るかと、支えさせてくれと……言ってくれただろ……嬉しかったんだ……本当に、嬉しかった……君が差し伸べてくれた手が……温もりが……あまりにも……」

     言葉を重ねるたびに、声は途切れ、次第にたどたどしくなっていった。日車は喉元を這わせていた指を、今度は衣類の襟元へときつく食い込ませる。

    日車「だから、甘えてしまいそうになった…」

    襟元を締め上げる指先が、白く強張っていく。

    日車「君の元へ……行きたいと思ってしまった……」

     望んでいた答えが、あの日欲しかった答えが、胸を突いた。喜んでくれていた。俺の元へ来ようとしてくれていた。自分の意思で……
     歪んだ執着を向け、独占欲に背中を押されて独りよがりに突っ走っていたはずの俺の手を、こいつは、あろうことか「縋りたい」と望んでくれていた。
     ならば……尚更……何故……

    日車「清水のことを忘れて……」

  • 98二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 18:16:19

    甘えていいんだよ………
    そりゃ人として許されない罪を犯してしまったけど、日車だけの罪ではないだろ……

  • 99二次元好きの匿名さん26/06/15(月) 23:56:33

    もう忘れろ!!!!(号泣)

  • 100二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 00:06:11

    日下部の言葉は嬉しかったけどそれを嬉しいそうしたいと思った自分が許せなくてあんな事したのか…
    日車も日下部も苦し過ぎるよ

  • 101二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 00:18:55

    もういいよ許されろよ
    そりゃあ結界入る前に人として越えてはいけない一線を越えたのは否定できないし
    コロニー侵入後も少なくとも20人は得点に変えてるわけだけど、後者にしてはもう仕方ないじゃん…正当防衛だよ…
    でも仕方ないとはいえ逃す選択肢もある中で得点にするって選択をしたのは日車なんだよなってことに今気づいてしまった
    あれだけの能力があるなら相手が逃げ出すまで多少痛めつけるくらいの手加減はできそうなもんなんだよなぁ

    あと自分の理解力が乏しいだけだと思うんだけど、清水ちゃんに申し訳が立たないような考えになるのはどういう意味でなんだろう
    自分が裁かれたくて後輩弁護士の清水ちゃんが健闘してくれたのにそれが叶わず呪術師として活動することに後ろめたさがある?
    そんな中であんなことがあって、死にたいまでは思わないけど罰せられたいと思っていたのに安心できる日下部に俺のところに来いって打診されて喜びを感じてしまったから?
    続きを期待…

  • 102二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 09:11:17

    日車の根幹にはいつも法に裁かれなければ罰を受けねばって考えているからその思いを託した清水を裏切ることになると思ってるんだよね「自分は人を殺しておいて幸せを得ようなんて烏滸がましい」って
    そりゃ遺族側からしたら不起訴で納得いかないかもしれないけどさ、元はと言えば有罪ありきの裁判に加担したのそっちじゃんって思う〜話逸れたけど

    もっと日車は幸せに生きることに貪欲になって欲しい…

  • 103二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 10:44:25

    日車を本気で裁判にかけたいなら全部の情報を開示しないと公平性保たれないよな
    大江事件の真相、第二審の裏側、呪術、死滅回游、人外魔境新宿決戦
    人殺しの元弁護士の全てをつまびらかにしないと正しい裁判にはならないよ
    裁かれたがってる日車だけどお前大分情状酌量の余地あるぞ

  • 104二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 12:43:19

    >>101

    後者は気に病んでないんじゃないか?20人以上を返り討ちって明言されてるし羽場以外にも逃がしてるやついると思う

    悪夢の原因にはなってるかもだけど

    普通は死滅回游放り込まれて襲われる記憶だけでもトラウマもんだよねぇ

  • 105二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 12:52:56

    日車は普通の人間より全然メンタル強いんだけど36年間耐え続けた理不尽にとうとう太い芯折られて虎杖のおかげで持ち直して宿儺戦後も清水ちゃんのおかげもあって持ち直したのにまた折られたらそりゃこんなんなりますわな……という説得力

  • 106二次元好きの匿名さん26/06/16(火) 19:17:07

    日車が歩んできた足跡そのものが日車を苦しめている現状が辛くて仕方ない
    あそこまで他者に寄り添う性格でなければ、自罰的な性格でなければ、人の穢れを尊ぶべきだと思えるような信念がなければ、絶望の縁に立たされる経験がなければ、術式が開花することがなければ、って思ってしまう
    身も蓋もないことを言えば弁護士になれるだけの才能がなければこんな目にはあわなかったのに

    お前の人生はハッピーエンドにはならないと思ってたなんて日下部から思われるような生き方を選ばざるを得なかったのがさ…

  • 107二次元好きの匿名さん26/06/17(水) 01:57:42

    少しづつ2人の想いの答え合わせをしていく感じがドキドキする…
    日車が嬉しかったって言ってくれたの日下部良かったね、間違ってなかったんだよ

  • 108二次元好きの匿名さん26/06/17(水) 09:56:23

    日車から日下部に向ける感情は深い信頼のある友情なのかな
    同僚はとうに超えていて、友人と言うにも随分と深入りしてるけど親友と言うのは恥ずかしい
    日下部も本当は同じ気持ちで、こんなことがなければちょっと込み入った友情を続けていくつもりだったのかも
    結局は何もかもが変わった上におかしくなってしまったけど

  • 109二次元好きの匿名さん26/06/17(水) 19:00:44

    保守

  • 110二次元好きの匿名さん26/06/17(水) 23:59:15

    ほしゅ

  • 111二次元好きの匿名さん26/06/18(木) 07:03:58

    早めの保守

  • 112二次元好きの匿名さん26/06/18(木) 13:59:54

    罪も責任も手放して幸せになって欲しいと思ってしまうけどそれを手放せるような人間なら日車はこんな状態になるまで追い詰められる事ないからなぁ

  • 113二次元好きの匿名さん26/06/18(木) 22:15:16

    記憶を消された間は束の間の安らぎを得たのかもしれないけど、
    それでも高専に帰りたい仕事に戻りたいとは言ってたんだよな
    苦痛となる記憶だけをピンポイントで消したのか?
    記憶の整合性が取れなそうだ

  • 114二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 00:48:00

    もうこんな辛い記憶思い出さなくていいよ
    いや本当にさ…
    自分が日下部だったら記憶に蓋をしている罪悪感より心穏やかに過ごしてくれていることへの安心感の方が何倍も強くなってしまう

  • 115二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 09:59:26

    保守

  • 116二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 12:48:25

    このレスは削除されています

  • 117二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 12:51:34

    清水。今ここで聞くとは思っていなかった名前だった。

    日下部「……嬢ちゃんを?」

    日車はゆっくりと頷いた。

    日車「彼女は……今も私を法廷へ立たせようとしている……私が奪った命に、きちんと向き合えるように……刑に服して償えるように……」

     その目は、目の前にいる俺を見ているようで、その実、ここではないどこか遠くを見つめているかのようだった。
     それは日車が凶行に及んだ裁判所か、20人もの命を散らした東京第一結界か、それとも高専に戻る前に立ち寄った部下の嬢ちゃんが引き継いだ自分の名を冠する弁護士事務所か……

    日車「それなのに私は……」

     日車は唇を噛み締めた。箸を握り込んだままの手が、固く、握りしめられている。

    日車「入院中、一度も、彼女のことを思い出さなかった……」

    その響きは痛々しく、懺悔にも似ていた。

    日車「清水は今も戦っているのに、私のために……それなのに私は忘れてしまって……いたんだ」

     言葉を重ねるたび、胸の奥に溜まった澱をすべて吐き出そうとするかのように、日車の声は削れていった。

    日車「だから……のうのうと、彼の目を……虎杖の目を見て……君のそばで……安らぎを得て……」

    虎杖も言っていた。日車が変わったみたいで辛いんだと。それは――

    日車「自身の罪を……忘れてしまっていた……」

     そういうことかと……腑に落ちた。日車らしいと思った。同時に、何を言っているんだとも思った。

  • 118二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 12:54:30

     忘れていた? あんな目に遭って、生きるだけで精一杯だっただろ? 仕方ねぇじゃねぇか。それでも責めるのか、自分自身を。

    日下部「……それは単に余裕がなかっただけだろ……仕方ねぇだろ……あんな……目にあったんだ……」

     日車の言いように、あえて、今まで言及せずにいたことを匂わすと、日車はヒッと喉を鳴らし、自身の耳を塞いだ。カタンッと箸の落ちる音がやけに大きく響く。
     一瞬で後悔した。言わなきゃよかった。
    ​ 日車が地下室で施されていた、おぞましい仕打ち。呪具の力で無理矢理に生かされながら、尊厳を徹底的に破壊され続けたあの暗闇。あの地獄。未だ日車の……俺の……記憶にこびりついている……。
    ​ 日車は酷く身体を強張らせている。そんな自身の無様な行動を信じられないといったように、絶望に濡れた顔で耳から手を外した。
     罪に濡れて尚、法の前で、「正しくあろう」と足掻く日車寛見という男が、恐怖そのものより、その恐怖に屈した自分自身に絶望しているようだった。

    ​日下部「悪い、思い出させ……」
    ​日車「それでも! 一瞬でも! 忘れてしまったことが許せない……許せなかった……!」

    ​ 張り詰めていたものが決壊したような叫びは、己の不潔さを呪うような苛烈さだった。
     あんな、人間が正気でいられるはずもない地獄を味わわされ、心身ともに限界まで摩耗しきっていたというのに。それでもこの生真面目すぎる男は、「余裕がなかった」という当然の言い訳すら自分に許さず、贖罪を忘れた時間をただ大罪として数えていた。

    ​日車「生きていてはいけないと……思った……だから……」

    ​ その先を聞きたくなかった。分かっていた。分かっていたからこそ聞きたくなかった。願いが通じたのか、日車はその先を口にはしなかった。

     「少しくらい普通に生きてほしい」、その台詞が日車にプレッシャーを与え追い詰めたのだと思っていた。間違ってはいないんだろうが、本質は少し違った。
     日車が許せなかったのは、一瞬でも罪を忘れてしまった自分自身だった。
     そして何より――嬢ちゃんを忘れていたこと。

     希望と呼ぶにはあまりにも危うい。それでも、あの嬢ちゃんは日車を罪から目を逸らさせないための拠り所であり、かつて「大丈夫だ、俺は壊れないと言った」根拠であり、その象徴が清水という嬢ちゃん――自身の志を託したかつての部下だったのだろう。

  • 119二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 15:01:48

    あの地獄の詳細は誰にも分からないままなのだろうか、発見時ではなく最中の方
    日車の記憶を封じる際誰かが見てしまったりしないのだろうか

    暗い展開を見ているとより暗い方に引きずられてしまう…
    救われてほしいけどそこに至るまでの落差が好きだから…

  • 120二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 15:43:54

    >>119

    日車さんが補助監督のお手伝いをした上でフラグを踏むか、Part1の174にあった分岐で2が選ばれていたら日車さんが地獄の詳細を知る展開がありましたが、その場合日下部さんの回想はありませんでした。

    需要があるなら番外編としていつか書きましょうか?

  • 121二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 16:17:12

    >>120

    そんなルートがあったんですね!

    正直めちゃくちゃ気になりますがゴアもゴアでは…?

    でもいつか拝見したいです、どうかよろしくお願いします

  • 122二次元好きの匿名さん26/06/19(金) 18:03:47

    >>120

    Part1の時のルートから地獄を知る可能性があったんですねー!ヒェッ

    今となってはこの時は1の選択で良かったなと個人的には思う

    番外編として見てみたいな、俺のSAN値ピンチになったらチョコミントパフェ食べている在りし日の2人を思い出すから大丈夫だ

  • 123二次元好きの匿名さん26/06/20(土) 01:07:40

    >>120

    みみみ見せていただけるんですか!?とても…とても見たいです…涼しい部屋であたたかい布団にでもくるまって精神統一しながら見ますので、なにとぞ伏してお願いいたします!!

  • 124二次元好きの匿名さん26/06/20(土) 10:24:02

    番外編で別分岐も見せてくれるんですか!?

  • 125二次元好きの匿名さん26/06/20(土) 18:27:16

    保守

  • 126二次元好きの匿名さん26/06/21(日) 00:48:59

    どうか2人とも幸せになって保守

  • 127二次元好きの匿名さん26/06/21(日) 09:41:27

    ほしゅ

  • 128二次元好きの匿名さん26/06/21(日) 19:02:48

    日車っていつも自分を度外視するよな
    日車だって人間なんだから弱く醜くなる時だってあるし救われるべきなのに
    助けの求め方を知らなかったのかもしれないけど、天才すぎて自分を人間だと思えなかったのか?

  • 129二次元好きの匿名さん26/06/21(日) 23:49:31

    おやすみ前保守

  • 130二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 07:13:24

    このレスは削除されています

  • 131二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 07:14:48

    パスワードは日付です
    日数が空きましたが、今日からまた更新していきます。

  • 132二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 07:19:17

    このレスは削除されています

  • 133二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 07:26:50

    (再掲)

    パスワードは日付です

    別ルートで日車さんが閲覧する可能性があった資料3つです。Part1の174にあった分岐で2が選ばれていた場合は、資料①を閲覧していました。


    資料①本校所属一級術師失踪及び監禁事件についての調査報告書

    Writeningwritening.net

    資料②患者診療録

    Writeningwritening.net

    資料③対象術師聞き取り記録

    Writeningwritening.net

    資料②と③が黒塗りされていないのはこの2つは高専ではなく日車さんが入院していた病院に保管されているからです。

  • 134二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 07:50:32

    ありがとうございます……!
    日車さんほんっとうにギリギリのところで助かったんだな
    ……助かったとか生きててくれて良かったとか簡単に言える状態ではないけど……辛いな……

  • 135二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 07:57:47

    医療従事者も、ってか関わった人達みんなトラウマになるレベル
    こんなことがあったのに自分の罪を忘れてたって自責の念にかられるのは精神が高潔過ぎるよ日車…

  • 136二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 08:03:55

    はーーーーー…つらぁ…
    ありがとうございます秘匿情報開示…いや、辛い…
    これはもう助かったとは言えないよ…
    弁護士の日車寛見も呪術師の日車寛見も死んでしまって、今日下部が必死に守っているのは
    かつての残滓をかき集めてなんとか形を整えた弱く醜いただの人間の日車寛見だよ
    いっそ完全に壊れてしまえば良かったのにとすら思ってしまう
    そうすれば罪からも呪いからも上層部からも逃れられたのにね

  • 137二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 13:58:30

    犯人の呪詛師はなんなんだよ…私利私欲で日車を日車の周りの人達をこんなに傷つけてそのくせ自分はさっさと呪霊化して今も日車を付け狙ってさ…
    現在の日車が補助が必要とはいえ自分で動いたり喋れたりするの奇跡みたいだ

  • 138二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 23:00:13

    保守

  • 139二次元好きの匿名さん26/06/22(月) 23:05:38

    報告書の開示ありがとうございます!

    これは本当に辛い…よくこんな状況で生きててくれたよ…こんな状態でまだ呪霊もいる、上層部も油断ならないなんて詰みすぎる
    日下部がいてくれて良かったよ

  • 140二次元好きの匿名さん26/06/23(火) 04:22:34

     だからこそ日車は、俺が差し出した生活を受け入れてしまう前に、自分で終わらせようとしたのだ。
     あいつにとってあれは救いじゃない。罪から目を逸らすための誘惑だった。その誘惑から逃れるために、日車は自分の首に縄をかけたのだ。
     頭が沸騰したように熱かった。こいつがどれほど崇高な信念を抱き、どれほど償いを命綱にして生きようとしていたか、痛いほど分かってしまった。その上で、認められなかった。

     日下部「だから何だよ」

     目の前の日車が、言葉を失ったように俺を見た。裏切られたとでもいうような眼差しだった。君だけは分かってくれると思っていたのに――そんな思いが、小さな瞳にありありと浮かんでいた。

     ――そんな目で俺を見るな。
     お前のその、自分を罰することでしか形を保てない歪な誠実さに、俺がどれだけハラハラさせられてきたと思っている。俺は深く、肺に溜まった熱を吐き出すように息を吐き、前髪を乱暴に掻き上げた。

     日下部「悪い、お前を軽んじるつもりはねぇ。お前なりに筋を通そうとしてるんだろうよ。気持ちは理解できる」

     だがよ、と俺は続けた。

     日下部「理解できるのと、納得するのは別の話だ」

     吐き出したはずの熱は、少しも消えなかった。胸の奥で重く燻り続けている。

     日下部「お前は許せねぇんだろうな。ずっと罪を背負って生きてきたのに、それを忘れてしまった自分が……」

     視線が、日車の前に置かれた深皿へ落ちる。そこには、あいつが不器用な手つきでせせった食いかけの魚の骨が残っていた。ついさっきまで箸を動かしていた痕跡だった。脳みそでは拒絶していても、こいつの身体は俺の作った飯を、温もりを、確かに受け入れたんだ。その動かぬ証拠が、目の前にある。

     日下部「俺はどうなるんだよ……」

     なのに日車は、それすら否定する。間違っているのだと。

     日車「だから君は俺のことなど……見捨てればいい。いや、見捨てるべきなんだ」

     ぽつりと、けれど断固とした意思が日車の薄い唇から零れ落ちた。

  • 141二次元好きの匿名さん26/06/23(火) 04:27:02

    日車「私は取り返しのつかない罪を犯した。君がどれほど心を砕いてくれようと、私が罪人である事実は変わらない。君のその善意を、私が消費していい理由にはならないんだ……」

     日車はまるで他人の犯行記録でも読み上げるように、淡々と自分を切り捨てていく。その口調には怒りも悲しみもなかった。ただ判決を受け入れた被告人のような諦めだけが滲んでいた。

    日下部「やめろ……やめてくれ……」

     そんな風に、自分を切り刻むための理屈を並べるな。お前がそうやって静かに心を閉ざしていくのが、一番きつい。
     俺の周りの人間は、そういう奴が多すぎた。妹も。夜蛾さんも。俺が何をしようが関係なく、俺の手の届かないところで死へと向かい、死を受け入れてしまった……もうたくさんなんだよ。 

     日下部「お前にとっちゃ、普通の生活に甘えて、背負ったものから逃げてしまうのが怖いのかもしれねぇ。だけどなぁ……」

     俺はテーブルに両手を突き、じりじりと日車へ顔を近づけた。卓上に残された煮付けの甘辛い醤油の匂いが鼻腔を突く。脳味噌がどれだけ拒絶しようと、こいつが今さっきまで俺の作った飯を咀嚼し、その飯を腹に収めて生きているという事実が、否応なしに突きつけられた。

     日下部「そもそもお前、逃げたことなんかねぇだろ」

     日車は息を呑み、わずかに上体を引いた。淡々としていたあいつの瞳の奥に、激しい動揺の火が灯る。

     日下部「裁判所で人を殺したことも、死滅回游で背負ったもんも、お前はずっと抱えたまま生きてきたじゃねぇか。嬢ちゃんのことだってそうだ。忘れた忘れたって言うけどな、本当に忘れてた奴が、そんな顔で名前を呼ぶかよ」

     日車「違う……!」

     日下部「罪悪感に押し潰されそうになりながらも、嬢ちゃんとの誓いを守ろうと、術師として人を助けて、ずっと張り詰めて生きてきたんじゃねぇのかよ。お前は忘れたんじゃねぇ、精一杯だっただけだ」

     リビングの空気が、俺の荒い呼吸だけで満たされていく。日車はただ、言葉を失って俺を見つめ返していた。日車の瞳が激しく揺れる。

     日下部「俺が身勝手に世話を焼いたり、病院から連れ出して閉じ込めたり……お前にとって重荷になっていたんだろうな。でもな……それでも……」

  • 142二次元好きの匿名さん26/06/23(火) 04:34:53

     あの凄惨な地下室で、ボロ雑巾のように衰弱したあいつを見た時。もう無理だと、助からねぇと、確信するほど破壊し尽くされていた、あの痛々しい姿を見た時。そして……呪具が埋め込まれた胸に触れ、確かな熱を感じた時、強く思ったんだ。

    「生きてほしい……」

     低く呟いた言葉がやけに大きく響いた後、日車が小さく息を吸い込んだ、そして――。

     日車「君がそこまで想ってくれること自体が間違いなんだと何故わからない!」

     わななく唇から絞り出された声は、怒鳴り声というより悲鳴に近かった。

    日車「ただ生きて、時間が過ぎるのを待てというのか? 君に寄生して、そうやって過去を濁らせていけと……? そんなことは許されない! 見てみろ! これを!」

     そう叫ぶなり、日車は息を切らせながら立ち上がり、乱暴な動作で両腕を突き出した。
     包帯のように巻き付いた呪符。震える指先。力の入らない細い腕。救出から何ヶ月も経った今なお、元には戻りきらない身体を、日車はまるで己自身を証拠品として法廷へ突き出すように、俺の前へ晒した。

     日車「見ろ……! これが今の俺だ……! まともに歩くことすらままならない! 術式も制限されている! いつ元に戻れるかも分からない! 法廷に建つことすら叶わないかもしれない!!」

     突き出された細い腕は震えていた。
     呪符に覆われた前腕も、骨ばった手首も、何もかもがあの日の地下室を思い出させた。あれだけ冷静だった男が、息を荒げながら声を張り上げている。その姿が痛々しくて、締め付けられる。

    日車「こんな有様で!! 何ができる!! 術師として誰かを救い! 罪滅ぼしをすることさえできない! いや……そもそも俺は……君は……」

  • 143二次元好きの匿名さん26/06/23(火) 04:36:25

     日車は言葉を詰まらせ、そのまま激しい憎悪にも似た、けれど縋るような鋭さで俺を正面から睨みつけた。今まで何度も見てきた理性的な男の目じゃなかった。行き場を失い、どこにも向けられなくなった感情だけを抱えた目だった。

     日車「どうして俺に構う! 俺は罪滅ぼしがしたいんじゃない!! 刑に服して償いたいんだ!! そのためなら生きていけた……しかし……こうなっては……」

     日車は言葉を失ったように、激しく上下する胸を押さえた。その指先が、布地の上からかつて呪具を埋め込まれていた胸元を、抉り取るかのように強く、強く掻き毟る。

     日車「君に……君に、こんな風に救われてしまっては……俺はもう、どうやって自分を裁けばいいのか分からない……!」

     そう叫ぶあいつの顔には、涙一滴すら流れていなかった。その目は酷く乾いていて、だからこそ、内側で燃え盛る自罰の熱がそのままこちらに伝わってくるようだった。

     日下部「関係ねぇよ」

     俺はテーブルを両手で突いたまま、さらに低く、遮るように声を絞り出した。

    日下部「お前がどうやって自分を裁くかなんてな俺の知ったこっちゃねぇ。そんなもん後回しにして生きろって言ってんだ!!」

     日車は自分を罰する理由ばかり探している。そして、その理屈に合わないものを全部突き返そうとする。俺の差し出した手も。俺の作った飯も。かろうじて繋ぎ止めた命も。自分を許さないために。自分を憎み続けるために。ふざけるな。

     日車「君には関係ないだろう? 俺が死のうが生きようが……」
     日下部「関係ねぇならお前をここに連れてきてねぇんだよ!!」
     日車「さっきは関係ないと言った!!」
     日下部「それはお前の自罰感情の話だ!!!」
     日車「俺が死のうが生きようが、君の人生には何の影響もないはずだ! それなのに……俺に生きてほしい? なぜだ……! 」

     狂おしいほどの焦燥を孕んだあいつの悲鳴が、狭いリビングの空気をビリビリと震わせる。
     日車は激しい呼吸のまま、はっきりと俺を糾弾するように叫んだ。

     日車「君は俺のことをどう思っているんだ!! 俺をどうしたいんだ!!」

  • 144二次元好きの匿名さん26/06/23(火) 04:38:40

     叫びきった瞬間、日車の膝ががくりと折れかけた。
     日車は倒れそうになる自重を支えるように、胸元を押さえていた両手を、テーブルの端へ肘ごと強引に叩きつけた。ガタ、と苦しげな音がリビングに響く。完全に体力の限界だった。まともに息も吸えていない。激しく上下する肩と、テーブルに預けられた細い腕が、ミシン糸のように細かく、ガタガタと震えている。

    日下部「おい、座れ」

     俺はテーブルを回り込み、崩れ落ちそうになっていた日車の肩を掴む。力の入らない身体がぐらりと揺れた。日車は振り払おうとしたのかもしれない。だが、その腕はわずかに震えただけだった。

    日下部「無茶すんな」

     どの口が言う。こんな状態になるまで叫ばせたのは誰だ。椅子に座らせてもなお、日車の荒い呼吸はちっとも収まらなかった。テーブルに預けられた細い腕は痙攣みたいに震え、息はまともに整わない。顔色は紙みてぇに白かった。

    日車「なぜ……なぜ……」

     消え入りそうな、けれど呪いのように重い呟きが、青白い唇からこぼれ落ちる。まともに焦点すら合っていない目で、それでもなお、日車は俺を見上げていた。答えを求めるように――なぜ、と。

     そんなもの、俺が一番聞きてえよ。
     脳裏に、冥冥の声がよみがえる。『ありえないとは思うが、彼を手籠めにしようとしているんじゃないだろうね』思い出すだけで反吐が出る。
     手籠め? そんな下卑た真似ができるかよ。こいつはボロ雑巾みたいに壊されて、苦しんでるんだ。俺がやってんのは、ただの身勝手なエゴだ。

     ……そのエゴはどこから来るものだ?
     自分の手の届かないところで死なれるのがもう嫌だ。だから目を離したくなかった。そばにいてほしかった。こいつを他人に預けるのが嫌だった。毎日顔を見ないと落ち着かなかった。生きている姿にホッとした……笑って欲しかった……少しでも幸せになって欲しい……………愛おしかった
    あぁ、そうか……俺は……

    日下部「好きなんだ」

     自分でも驚くほど素直に言葉が零れ落ちた。

    日下部「お前のことが、どんな形であっても生きてほしい」

  • 145二次元好きの匿名さん26/06/23(火) 06:04:50

    行動でしか示せなかった思いをついに言葉にしたな日下部
    でも日下部自身もその言葉に辿り着くまで随分時間がかかったな
    死なせたくない理由も世話を焼きたい理由も攫ってしまった理由も分からないままここまできて、
    分かり合えない怒鳴り合いを経てやっと形になったのか
    日下部も難儀だよなぁ、どれだけ失っても誰かを愛することをやめられない、愛を与える行為に飢えた男だ

  • 146二次元好きの匿名さん26/06/23(火) 14:24:25

    あぁああ〜!!!!
    明け方の怒涛のスレ投下と日下部の告白で眠気飛びました、スレ主ありがとう…!!!
    日車の葛藤と吐露された内容を見ててこちらまで凄い苦しかったけど日下部の告白を聞いて言ったぁぁあって布団の上で暴れたね
    日車どう思うんだろう…何だか日下部の想いも拒否りそうだな…

  • 147二次元好きの匿名さん26/06/23(火) 22:03:31

    結果がさあ!!日車が返す言葉が前スレの142で明かされちゃってるからこの告白がどうなるかさあ!!わかっちゃうんだよ!!ここからどう穏やかな2ヶ月が過ごせるんだよ!!(号泣)

    以下、パート2の142
    『どうして俺に構う! 俺は罪滅ぼしがしたいんじゃない!! 刑に服して償いたいんだ!! そのためなら生きていけた……しかし……こうなっては……』
    『君には関係ないだろう? 俺が死のうが生きようが……俺に生きてほしい? なぜ?』
    『君は俺のことをどう思っているんだ!! 俺をどうしたいんだ!!』

    ???『好きなんだ、お前のことが、どんな形であっても生きてほしい』
    (めちゃちゃ長い意味深の改行)
    『すまない……日下部……』

  • 148二次元好きの匿名さん26/06/24(水) 07:01:13

    流石の日下部も道を踏み外しそうだよこの日車の強情さには
    お前が我を通すなら俺もそうするわって冥冥に大金はたいて記憶をどうこうしてもらいそう
    下手するとどんな形であれ日車を生かすことができたからって理由で
    上層部からこの誘拐をめちゃ軽い処分にしてもらった可能性すらあり得る
    どの人も理由はどうであれ日車を失うのは惜しいと思っているから許されてしまった日下部の犯行

  • 149二次元好きの匿名さん26/06/24(水) 15:42:28

    好意と善意と思いやりで傷付け合ってる篤寛ヤマアラシのジレンマすぎる
    お互いを傷つける針は生まれてから今まで自分を守ってきたものだからそう簡単には手放せない
    でもこのままじゃ平行線なんだよなぁ
    自分からは手放せないし相手に辛い思いをさせてまで手放させたくもないだろうし
    このふたりに救いはあるんですか

  • 150二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 00:05:13

    俺はどうしたらいいんだ…どうしたらこの2人を幸せにしてやれるんだ…

  • 151二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 09:14:07

    ほしゅ…

  • 152二次元好きの匿名さん26/06/25(木) 19:05:40

    やっぱり冥冥が記憶を消す方法教えたんだろうなぁ、でも日車が了承したとは思えないんだよなぁ…
    続きが気になる…

  • 153二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 01:41:18

    早めの保守

  • 154二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 10:53:37

    昼の保守

  • 155二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 12:01:02

    このレスは削除されています

  • 156二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 12:11:04

     日車は目を見開いたまま、凍りついたように静止していた。
     まともに焦点すら合っていなかったはずの瞳が、今はただ、俺の顔を途方もない戸惑いと衝撃を宿して凝視している。

    日車「……は……」

     唇が言葉にならない形に小さく震えた。聞き間違いだとでも思っているように、日車は瞬きすら忘れた顔で俺を見つめている。

    日車「何を言っているんだ……」

     責めるような響きはどこにもない。ただ、己の常識が全く通用しない怪異でも前にしたかのような、芯の抜けた声だった。

    日下部「お前のことが、好きなんだ、だから……ずっと側に居た……側に居て欲しかったから」

     言い切った後で、空気が一気に希薄になったような気がした。もう引っ込められない。誤魔化しようもない。
     俺は日車からそっと手を離すと、刺激しないようにゆっくりと膝をついた。自然と見上げる形になった俺の眼差しに、頭上の日車が小さく息を呑むのが分かった。

    日下部「……お前とどうこうなりたいわけじゃねぇんだ……上手くいえねぇけど、何か返して欲しいわけでもない」

     ただ、日車の命が続いてほしかった。
     膝をついたまま、俺は微かに戦慄いている日車の指先へ、恐る恐る己の手を重ねる。白んだ肌は冷たくて、壊れてしまいそうだった。その脆さが、たまらなく胸を締め付ける。

     滅茶苦茶に壊されて、地獄のような惨状の中で、かろうじて繋ぎ止めた命だ。毎日、息をしている姿を見るだけで、俺の胸を焼いていた焦燥は少しだけ静まった。日車がどんなに自分を呪おうと、俺にとっては、尊く、大切に守りたいものだった。

    日下部「無理に前を向かなくていい。お前を縛り付ける罪を手放したくないなら、引きずったままでいいから。その重みに耐えかねて倒れそうになった時は、支えてやるから……」

     俺は日車の細い片手を、こぼさないように両手で掬い上げた。指先を包み込み、そのまま祈るようにして己の額を日車の掌に押し当てる。

    日下部「どうか生きてください……お願いします……」

     もう、何を差し出せばいいのか分からなかった。神も仏も信じちゃいない。だけど、口から出たのは格好のつかない、ただの祈りの言葉だった。

  • 157二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 12:42:49

    日車がかつて抱いていた弁護士の心を今も持ち続けているのなら日下部の手を払うなんてできないよな
    弱く醜く尊い人間だよ、愛してくれとも言えず手放すこともできない、一心に相手を思う人間だよ
    日車はその気になれば別の誰かに救ってもらえるかもしれないけどこの日下部は日車にしか救えないよ

  • 158二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 13:03:45

    日車「……君は……正気なのか?」

     額に押し当てた掌の中で、細い指先が躊躇いがちに俺の髪をかすめる。髪を伝うあいつの震えは、ひどく弱々しく、頼りなかった。

    日下部「正気じゃねえよ、もうずっと、じゃなきゃ強引に病院から連れ出して囲ったりしねぇよ。もう訳わかんなくなってんだよ。気付いた時には……いやその前から手遅れだったんだよ……」

     絞り出した本音が、静まり返った床に重く落ちていく。

    日車「日下部……」

     俺の名を呼ぶ声は、今にも消え入りそうなほど掠れていた。それを最後に、とうに限界を超えていたあいつの身体が、支えを失ったようにゆっくりと傾いた。

    日下部「――おい、日車!」

    ​ 慌てて額を離し、倒れ込んでくる身体を正面から両腕でしっかりと受け止める。胸元に預けられた頭はじっとり濡れており、背中に回した手のひらからは、浮き出た骨の感触が痛々しいほどに伝わってきた。

     これ以上の対話は無理だ。俺の独りよがりをこれ以上ぶつけるわけにはいかない。

     俺は日車の膝裏に腕を回し、軽い身体を静かに抱え上げる。ぐったりと預けられた頭が揺れないよう、重心を確かめながら奥の寝室へと歩を進め、薄暗い部屋のベッドにそっと横たえ布団をかけてやる。 
     枕に沈んだ日車の顔は、生気が薄く、酷く疲弊していた。だが、引き攣るような呼吸は、布団に包まれながら少しずつ落ち着いていった。

  • 159二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 13:06:23

     そのまま枕元を離れようとした時だった。ゴソッ、と衣類が擦れる音がして、袖口が柔く引かれた。見下ろすと、日車は重い瞼を辛うじて数ミリだけ開け、朧げな視線で俺を見上げている。意識が完全に途切れる寸前の、酷く頼りない、だけどどこかひたむきな瞳だった。

    ​日車「……日下部」

    ​ 青白い唇から、形をなさない吐息のような声が零れ落ちた。

    日車「……君は……何も望まないと言った。だが、それでは……釣り合わない……」

     言葉を探すように息を整え、一度だけ目を伏せる。やがて、逃げ場を失ったような瞳が、再び俺を捉えた。

    日車「……俺で、何かしたいことはないか?」

     あまりにも無防備で、そしてどこまでも不器用な問いかけだった。自分にはもう差し出せるものなど何もない。そう思い込んでいるからこそ、何かを返さなければと焦っているのだ。その自暴自棄にも見える歩み寄りが、俺の胸を締め付けた。

    日下部「……ねぇよ。そんなもん」

    ​ 俺は日車の細い手を両手で包み直し、冷え切った指先を温めるようにそっと力を込めた。

    ​ 日下部「俺はお前がいればそれでいい。……できれば笑ってほしいとは思うがな」

     だから、と俺はもう片方の手を伸ばし、額にかかった乱れた髪を優しく払ってやる。

    ​日下部「でもどんな面しててもいい、どんなお前でも俺は好きだ」

    ​ その言葉が耳に届いた瞬間、日車の長い睫毛が細かく震えた。

    日車「そう……か……」

     日車は何かを必死に堪えるように、ぐっと一度だけ口を引き結んだ。だが、それを最後にとうとう限界を迎えたのだろう。抵抗する術を失った身体から静かに緊張が抜け、ゆっくりと瞼が閉じられていく。
    ​ 静まり返った寝室に、穏やかな寝息だけが残った。俺は繋いだ手を離さないまま、毛布の中から伝わってくる日車の微かな鼓動をただ確かめるように、暗闇のなかでその白い横顔を見つめ続けた。

  • 160二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 18:33:31

    もぅすっごい日下部の祈るような告白が本当にささる…ただ日車に生きてて欲しいんだよね…
    時に日車、俺でってそういうこと?そういうこと??
    ドキッとしたわ

  • 161二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 19:27:41

    差し出せるものは自分の体しかないと思ってる日車…コラ~~~!!
    日下部が絶対口にしない心の奥底で欲しがってるのはお前の心だよ!!

  • 162二次元好きの匿名さん26/06/26(金) 23:28:24

    日車お前さぁ!!
    あの日下部が柄にもなく「どうか生きてください……お願いします……」なんて祈るように思いを伝えてるってのにさぁ!!
    「俺『で』何かしたいことはないか」じゃねえんだわ!!自分をそんな粗末に扱うな!!お前を好きになった日下部はそんな状態のお前に無体をはたらく男じゃねえんだよ!!(号泣)

  • 163二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 07:55:58

    死にたくなくてのらりくらりしてて斜に構えてる日下部から出てくる真っ直ぐな言葉の重さよ
    死んでもお前を守るぞに匹敵するじゃん
    でも日下部の力をもってしてもどうにもならないから神に祈るように日車に祈るしかないのさぁ…

  • 164二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 12:48:36

    やっとここまで追いついた
    日下部のせめてもの祈りは日車にちゃんと届いたのかな
    自分が好意を寄せられていることに対してまたパニックになったりはしてなかったけど、単純に体力の限界で反応できなかったのか、ちゃんと日下部の気持ちのほんの一部でも届いたから錯乱しなかったのか…
    でもその後に出てくる言葉が相手のために自分を差し出すような言葉なのが…心身的に限界だからその発言に至ったのか、単にそれ以外のアウトプットの仕方を知らないのか…
    こんなにいい意味で心が引き摺られる作品に出あえてよかった

  • 165二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 19:56:21

    いま追いついた
    もうさ…ボロ泣きしながら読んでるよ…
    2人とも幸せになって…

  • 166二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 20:35:07

    ――――――――――
    ――――――――
    ――――――

    日車(朝……か)

    日車(身体が重い。指一本動かすだけで、ひどく疲れる)

    日車(それでも……昨夜のことだけは、妙に鮮明だ)
    日車(そうか……日下部は……俺を……)
    日車(何も望まない。ただ、生きていてくれ。それだけでいいと……)

    日車(……そんなものは、あまりにも重い)」

    日車(何を返せばいい……この身くらいなら、好きに扱ってくれて構わない。だが……彼はそんなことは望まない)
    日車(俺には返せるものが何もない)
    日車(このまま生きている限り、彼は俺に縛られ続ける)
    日車(ならば、どうすればいい……彼を……どうすれば解放できる)

    日車(日下部が望んだことは……)

    日車(……そうだな……最後くらいは……)

    ――――――
    ――――――――
    ――――――――――

  • 167二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 22:14:18

    本格的な結末に向かう前に載せる機会を逃したかつての2人をここでお出しします。

    前から意識はしていましたが、この日を境に日下部さんは無意識に強く日車さんに惹かれるようになります。


    no title | Writening 最悪だ  原因は家入だった。正確には家入と庵だ。  任務終わりに日下部と飲みに行っただけだったのだ。旨い酒がある居酒屋があると誘われノコノコついて行ったのが駄目だった。  居酒屋へ入り、適当に席…writening.net
  • 168二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 22:48:29

    >>167

    お互いに傷を見せ合ったんだな、そして約束をして、日車がその約束を破りかけた

    破られた縛りの扱いになってそうだなこの約束


    今現在ぼろぼろでよわよわの日車だけど、日下部が日車の本質的な脆さを知ったのは宿儺戦前後だと思ってる

    そこから世話を焼いている内に信頼関係が生まれて、167の告白があってお互いがお互いの弱さを知った、みたいな

    ちゃんと時間をかけて築き上げてきた関係だったんだな

  • 169二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 23:42:38

    あぁ〜言いたいことはたくさんあるけどまとまらない
    この時の話は以前チラッと出てたね、全貌が知れて良かった
    それで今現実になってる状況がこの時とは立場逆なんだな…この時日下部は救われたから今度は日下部が救う番なんだろうけど
    あとこの時はちゃんと日車重かったのに今は軽いんだよね…泣ける
    後本格的な結末が近づいているのも泣ける

  • 170二次元好きの匿名さん26/06/27(土) 23:51:18

    >>167

    きっっっっつ…進んで死にたいとは思っていないって酒の席での話しかと思ってたけど、こんな重い場面で言われたセリフだったのかよ…

    お前らどっちも重いんだよイノタクのアレ貼らないだけ優しいと思えよ

  • 171二次元好きの匿名さん26/06/28(日) 09:00:52

    ほしゅ

  • 172二次元好きの匿名さん26/06/28(日) 09:01:14

    「最後くらいは」って何だ日車、日下部の望みを聞いてもその言葉が出てくるのか
    罪を犯してでもお前の命を繋げようとする日下部に餞を押し付けて自分が去るつもりか
    絶対に許さんぞ…希死念慮で凝り固まった頑固者め…

  • 173二次元好きの匿名さん26/06/28(日) 18:22:37

    前はこんなにテンポいい掛け合いしていたんだね…
    そして最後が不穏すぎる…日車また余計なこと考えてない?心配だよ

  • 174二次元好きの匿名さん26/06/28(日) 22:35:12

    ここからどうやって穏やかな2ヶ月になるのか本当に想像できない
    壊れるのはどっちなんだ

  • 175二次元好きの匿名さん26/06/29(月) 07:25:36

    前回の短編もだけどかつての2人のやり取りの穏やかさ軽快さ好きだなぁ
    すぐに元どおりにはいかなくてもまたこうして過ごしてほしいな…

  • 176二次元好きの匿名さん26/06/29(月) 16:11:20

    保守

  • 177二次元好きの匿名さん26/06/29(月) 23:35:16

     携帯の画面を眺める。画面に表示されているのは冥冥の連絡先だ。あいつは3日以内に返事が欲しいと言っていた。多分、いや、十中八九、俺が連絡を入れようと入れまいと、明後日にはここへ押しかけてくるんだろうな。その前に日車を……駄目だ、分かってんだよ、俺一人じゃもう無理なことくらい。日車を一度ちゃんと病院に診せてやりたい。腕に巻かれた呪符だって取り払ってやりたい。助けが必要だ。ウダウダと悩んで、つくづく女々しいやつだ。日車のためを思うのに、結局自分の都合ばかり考えてやがる。
     小さく舌打ちをして携帯をポケットに放り込み、椅子の背を蹴るようにして立ち上がる。ぐるぐると回る最悪な想定を振り払うように、手荒く頭を掻きむしる。ここに居て一人で悩んでいたって何も変わりゃしねぇ。自分の足音すら鬱陶しく感じながら、俺は逃げるようにリビングを後にした。

     白み始めた光がカーテンから滲む寝室に足を踏み入れる。寝顔を見たかった、ただ呼吸音を聞いて、このまま時が止まればいい――安っぽいドラマのようなことを思っていた。が、俺の思いに反して、ベッドの上の日車はのそりと上体を起こしていた。布団を退け、細い足をベッドの縁から床へ下ろそうとしている。

    日下部「おい、何してんだ。無理すんな」

     自由にさせてやればいい、のに、逐一止めてしまう。この期に及んでも一瞬、逃げようとしているのかという考えが浮かんだ。嫌な想像だけが勝手に膨らむ。そんな自分に嫌気が差しながら、それでも目だけは日車から離せなかった。
     だが、俺を見返す日車の顔には、引き攣るような強張りが消えていた。気を張って、縮こまっている様子はなく、どこか遠くを見つめるような、酷く穏やかな瞳が俺を捉える。

    日車「……口の中が気持ち悪くて、歯を磨きたいんだ」

     反応するより先に、日車は口元に手を当てて眉を寄せた。昨夜は歯磨きどころではなくそのまま寝かせてしまった。口の中が気持ち悪いのは当然だ。あまりにも当たり前の訴えに、当たり前のことだからこそ、拍子抜けした。

    日下部「だったらそこに居ろ。洗面器と歯ブラシ持ってきてやるから」

     日車は一瞬言葉を失ったように動きを止め、それから本当にいつぶりかも分からないくらい、ふっと頬を緩めて笑った。どけないとすら思えるほど力の抜けたその表情に、息が止まる。

  • 178二次元好きの匿名さん26/06/29(月) 23:37:05

    日下部「日車……お前……」
    日車「過保護だなぁ、君は」
    日下部「……あ?」

     日車は、呆れたような、まるで仕方がないなとでもいうように、小さく肩を竦めてみせた。過保護、か。当たり前だろ、自分がどんな状態か分かってんのか。喉元までせり上がった言葉は、日車の笑みを前に、砂に水を撒くように霧消した。

    日車「自分で行く、心配なら付いてきてくれ」

     そう言って、日車は困ったように、右手を差し出した。俺は何も出来ず突っ立ってその手を見つめ返す。
     困惑が頭の中を占めていた。昨日と今日で態度が違いすぎる。昨日と今日で、あいつのなかの何がどうひっくり返ればこんな態度になる。あまりの豹変ぶりに思考が追いつかない……それでも。

    日車「ほら、早く」

    日車が笑っている……。

    日下部「あぁ、わかった。ゆっくりな……」 

     拒めなかった、いや、拒む必要などない。差し出された手を取る。昨夜は酷く冷たく感じたその手が、今は不思議なくらい温かく感じた。

    日下部「大丈夫か?」
    日車「大丈夫、知っていると思うが、その気になれば1人でも動けるんだ」

     そう嘯いて日車は俺を支えに立ち上がる。だが、数歩も進まないうちに、その身体は半ば俺へ預けられていた。

    日下部「あまり無理をするなよ」
    日車「大丈夫だと言っているだろう。さっきも言ったが、俺はその気になれば普通に歩けるんだ」

     日車は俺に身体を預けたまま、ふう、と小さく息をついた。

    日車「だから今は君に甘えている」

  • 179二次元好きの匿名さん26/06/30(火) 00:05:52

    最後くらいは…で日下部の言った中で叶えられそうな笑っていてほしいをやってるのか?
    普通に生きてほしいお前がいればいいも聞いてくれよ日車…

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