一ヶ月間の恋人
恋をする司と恋愛感情が分からない類が一ヶ月間だけ恋人になる話
「大切なものとは失ってから気づくもの」
【attention】
・誤字脱字
・文才なし
・n番煎じネタ
・短め
皆さん大変お久しぶりでございます。
共通テストが大事故で浪人確定演出をくらいました、ねむりです。
現実逃避にちまちま書いていた小説をぶん投げます。
n番煎じネタですみません…
短いです…
いつか司sideも書けたらいいなと思ってます
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いつも通り屋上で司とショーの打ち合わせをしていた。練習がない日は恒例となったこの時間、普段と何も変わらないはずだった。
ただ、いつもと違うことがひとつ。やけに赤い夕日が司の金髪を梳いていた。日常の中のちょっとした非日常。人目を引く明るい髪色がさらにキラキラと輝いている。その美しさに、類は思わず言葉を失った。
「類?どうした?」
突然押し黙った類を不審に思ったのだろう、司がこちらを覗き込む。
「ああ、いや、なんでもないんだ。ただ君の髪の毛が綺麗だと思ってね」
類は素直にそう告げた。別に誤魔化したいことでもなかったからだ。
しかし、今度は司の方が黙ってしまった。
てっきり「当然だ!」だとか「スターたるもの!」だとか言い始めると思っていた類は拍子抜けした。
髪を褒めただけなのだが、何か司の気に触ることをしてしまったのだろうかと思考をめぐらせる。
「司くん、大丈夫かい?」
そう声をかけても、なかなか返事は返ってこない。
司の表情は逆光でよく見えなかった。
どうしたものか、と類は顎に手を当てる。しばらく司を見つめて考えていると、ようやく司が口を開いた。
「ああいうこと、誰にでも言うのか?」
「え?」
「髪が綺麗だとか…」
誰にでも言うのか、と言われても、類はただ思ったことを率直に言っただけだ。
「まあ、綺麗だと思ったものにはそう感想を言うと思うよ」
そう返答すれば、司は何か考え込み始めたようだった。
大人しい司が珍しく、類はその様子をじっと見つめる。
どれくらいの間そうしていたのか分からないが、司が突然顔を上げた。
「突然だが類、オレはお前が好きだ。だからオレと付き合ってほしい」
真っ直ぐすぎる瞳と真っ直ぐすぎる言葉。それが類を射抜いた。
突然の告白に何も言えなかった類の口から漏れたのは、「えぇ…?」という何の意味もなさない音だった。
「困惑するのは分かる。でもほんの少しでいいんだ。オレのことを考えてほしい」
彼の切実な願いに、真剣に受け止めねば失礼だと思う心が生まれた。
付き合ってほしいということは、司は恋愛的な意味で類のことが好きなのだろうということは明白だった。
類も司のことが好きだ。司はいつだって自分の期待に全力で応えてくれる。完璧なショーをするために努力を惜しまない姿も好ましかった。
しかし、司の「好き」と自分の「好き」がどのように違うのか、類には分からない。だが司の好意は妙に心地よく感じられた。
類は司と付き合いたいと思ったことはない。付き合って何が変わるのか見当もつかない。
「ひとつ質問していいかい?」
「なんだ?」
「付き合うって何するの?」
素直な疑問を司に投げかけると、彼は目をぱちくりと瞬かせた。
「何、か…考えたこともなかったな」
司は少し考えたあとに、ひらめいた!というように顔を上げた。
「じゃあ、一ヶ月だけオレと付き合ってみないか?恋人というものが分かるかもしれない。そして、あわよくば類がオレを好きになってくれれば嬉しい!」
「好きになってくれれば」か。類は既に司が好きなのだが、司の口ぶりから、彼が求める「好き」は今類が持っている「好き」とは違うのだろう。
一ヶ月。それで何か分かるかもしれないし、新しいショーの案が浮かぶきっかけにもなるかもしれない。
「うん、いいよ。一ヶ月ね」
そう返せば、司は心底嬉しそうな笑顔を浮かべた。その表情を見るのは悪くない。
・
その日から、類と司は所謂「恋人」になった。一ヶ月限定だけれど。
付き合って一日目は、特に変わったところはなかった。強いて言うなら、二人並んで歩く時にいつもは人一人分あいていた隙間が縮まったところだろうか。
距離が近いからか、類の方を向いて話す時、司がいつもよりも上目遣いになる様子が印象的だった。
自分と司はここまで身長差があっただろうか、と類はぼんやり考える。
普段の司の様子のせいか、類にはそこまで司の身長が小さく見えたことはない。172cmは日本の男性の平均身長なのだが、自分より目線が下の位置でコロコロと表情を変える司はいつもより幼く見えた。
本当に、思わず。類の手は自然と司の頭に伸ばされた。昔路上で小さなショーをしたとき、風船をねだった子供の頭を撫でたように、優しく司に触れた。
どれほどの間そうしていたのか分からない。数秒だったかもしれないし、数分だったかもしれない。
「子供扱いするな!」と怒ると思っていた司は大人しく類の手を受け止めていた。
「えっと…類」
ようやく声を上げた司の表情を伺う。
司の顔は、その日の夕日に負けないくらい真っ赤だった。
「い…今のは、恋人っぽいな」
司は照れたように笑った。普段の高笑いとは対照的な、思わず零れたという笑顔。
そんな司から、類は目が離せなかった。
恋人っぽい、と嬉しそうにする司。なるほど、これが恋人っぽいことなのか、と類は自分の脳に情報をインプットした。
・
それから一週間。司が言う「恋人っぽいこと」は徐々に経験していった。
手を繋ぐこと、ハグをすること、他愛のないメッセージを交わすこと、おそろいのストラップを買うこと。
世の中のカップルはこんなことをしているのか、と感慨深く思ったのもつかの間。よく考えれば、女の子同士ならば手を繋いだりハグをしたりすることは珍しくない。何かとおそろいにしたがることもある。
はてさて、これは本当に恋人らしいことなのか。
まだ類には恋愛感情も「恋人」もよくわからなかった。
しかし、一つだけ分かったことがある。それは、類が司と手を繋ぐこともハグも、その他諸々嫌ではなかったことだ。今までにない距離間にも関わらず、不快感は感じない。むしろ心地良さすら覚えている。
司の体温は人よりも高く、寒くなってきたこの季節にはありがたい温もりだった。
今日も司と並んで帰る。ここ一週間で、人気のないところでは手を繋ぐことが当たり前になった。手先が冷えやすい類にとって、司の手の温かさは手放せないものになりつつあった。
手袋いらずだな、などと考えている間に、もう別れのポイントに着いてしまったようだ。
「じゃあ、オレはここで。またな明日な、類!」
快活に笑う司にまた明日と返し、帰路につこうとしたとき、後ろから呼び止められた。
「…類!」
「なんだい?何か言い忘れたことでも…」
振り返ったその瞬間、目の焦点が合わないほど近い距離に司の顔、唇にやわらかい感触。
しかしそれを感じたのは一瞬で。その後司はゆっくりと体を離した。
「っ…引き止めて悪かった。また明日な」
司はそう言って走り去ってしまった。
類は小さくなっていく背中を呆然と見つめていた。
今のは、キスだろうか。
そういえば、どんなラブストーリーにもキスの演出はつきものだった。一ヶ月限定とはいえ、恋人なのだからキスは何らおかしいことではない。
加えて司のあの顔だ。自分から仕掛けておいて、茹でダコのように頬を真っ赤に染めていた司は可愛らしいと言えるだろう。
悪くない気分だ。
類は少しだけ浮ついた気持ちで踵を返した。
翌日の放課後。今日も二人は並んで歩く。それは変わらないはずなのだが、何か違和感がある。
そうだ、手を繋いでいないのだ。いつもは司から手を伸ばしてくれるのだが、今日は手を繋ぐどころか距離も遠い。
それがなんだか居心地が悪く、類は司の手をとった。
「ひぇっ!?」
素っ頓狂な声をあげたと思ったら、司は顔を火照らせ、類の手を振りほどいた。
「あ、ごめん。冷たかったかい?」
「えっ、あっ、それもあるが」
司はなんとか言葉を絞り出そうと躍起になっているようだった。
いつも通り手を繋ごうとしただけなのに、ここまで慌てるだなんて。何かあったのかと怪訝に思う。
「あの、類から手を繋いでくれたのは初めてだから、その、嬉しくて、びっくりしただけだ」
目を泳がせ、恥ずかしそうに言葉をこぼす司。
なぜか心臓の辺りがギュッと締め付けられる感覚がした。
「…司くん、手」
類は司へと手を伸ばす。司もおずおずといった様子で手を握り返した。
すっかり手に馴染んだ司の体温が心地良い。
「ふふ、司くんは温かいね」
司に触れていると心まで暖かくなるような気がして、類はそう呟いた。
その後、司は黙り込んでしまった。心做しかいつもよりもぎこちない動きで歩き進む。
なんだか自分が作ったロボットの動きに似ていて、見ていて飽きなかった。
そしていつもの別れ道。
司はパッと類の手を放し、軽く挨拶をして足早にその場を離れようとした。
「あ、待って司くん」
昨日の司のように、今度は類が司を呼び止める。
そして少し腰を折って、司に口づけた。
「忘れてるよ」
別れ際のキス。恋人はそうするものなのだと昨日学んだ。
今回は司からしてくれそうになかったので、自分から。
ポンと司の頭を撫でてから、類はまたねと司に手を振った。司は口をパクパクと開閉するだけで他に何もできないようだった。
照れている司はやはり可愛いな、と気分が良くなった。
・
それからは類から行動を起こすことがほとんどだった。類から手を繋ぎ、ハグをして、キスをする。自分は案外「恋人」というものにハマっているらしかった。
付き合い始めて二週間ほど経った頃、司からデートのお誘いがあった。デートといっても新しく公演が始まったミュージカルを見に行くだけで、それだけならば付き合う前にも行ったことがあるのだが、恋人同士ならばそれは「デート」になるのだと知った。
待ち合わせ場所に予定より十分ほど早く着いてしまった類は、今日見に行く公演について考えを巡らせていた。
あまり見たことのないラブストーリーの類。十二月のクリスマスシーズンになれば、フェニックスワンダーランドにもカップルの客が増え始める。ワンダーステージでもラブストーリーに挑戦してみようという話が出ていた。
今回の公演で何か刺激を得られればいいと、類の心は弾んでいた。
それから数分経って、司も到着したようだ。
「類!すまない、待たせてしまったか?」
「いや、今来たところだよ」
司の方に視線をやると、いつもと雰囲気の違う彼が立っていた。
オシャレ、というのだろうか。明るめのブラウンのコートに黒のニット、タイトなジーンズ。顔のいい司が着ることによって、まるでモデルのようだった。
「司くん、今日は随分とオシャレだね。かっこいいよ」
「ほ、本当かっ!?実は咲希に選んでもらったんだ!デートだからオシャレしたいと言ったらショッピングモールに連れ出されて…」
妹の話をする司は嬉しそうで、本当に仲のいい兄妹なのだと微笑ましく思った。
そして、少しだけ引っかかったこと。司は今「デートだからオシャレしたい」と言ったか?
つまりこの服は類のために着てきたということになるのだろうか。
そう考えると、心が少し擽られたような感覚がした。
デートはいつもよりオシャレをしていくもの。また新しいことを学んだ。
楽しみにしていたミュージカルも見終わり、帰り道で司と感想を交わす。
なかなか見応えのある作品だった。
一人の男を一途に想い続けるヒロインと、彼女を想いながらも恋の後押しをする青年。
三角関係を描いたこの物語は切なく、それでいてあたたかくなる。不思議な感覚だった。
「あの展開には驚いたな。オレはてっきりヒロインは最初の男と結ばれるのだと思っていた」
「そうだね。でもずっと彼女を支えていた青年が報われてよかったと思う人も多いんじゃないかな?」
「ああ、でも最初の男も最終的にはヒロインに恋していただろう?全員が幸せになれないのは少し切ないな」
司はよく物語の登場人物に感情移入する。人物ひとりひとりの気持ちを考えることで見る視点も変わる。司が書く脚本の登場人物がいきいきとするのも、司の観察眼と人の心を察する能力があってのことだろう。
「じゃあ次のワンダーステージでのショーは完全なハッピーエンドがいいかな?クリスマスシーズンだ、お客さんたちもそんなものを望んでいるんじゃないかな」
話題は次のショーへと変わる。二人で歩いた帰り道は、いつもよりもずっと短く感じられた。
「…おっと、もう着いてしまったね。話はまた今度にしようか」
「そうだな。…類」
司がこちらを見上げる。司のその表情からは、珍しくなにも読み取ることが出来なかった。
じっと司の言葉を待つ。何を言われるのか見当もつかず、心做しか鼓動が速くなった。
「類、好きだ…」
類のカーディガンの裾をきゅっと掴みながら司がこぼした言葉は、いつかの屋上での言葉と同じものだった。
それに類はほっとした。おそらく自分が言われたくなかっただろう「何か」ではないことに安堵した。
「うん、知ってるよ?ありがとう」
「…それだけか?」
「…それだけって?」
司は不服そうに口を尖らせた。
その顔、ちょっと可愛いかも、と思っている間に司はまた学校で、と手を振って行ってしまった。
・
手を繋いでハグをして、キスをして、度々司とデートをして、司から「好き」の言葉をもらう。
それを繰り返しているうちにあっという間に一ヶ月が経とうとしていた。
最近は「好きだ」と告げる司がどこか苦しそうで、悲しそうにも見えた。
なんとなくそんな司を見るのが嫌で、なんとか笑ってくれないかと抱きしめてみたりするものの、余計に辛そうな顔をさせるだけだった。
そして、約束の一ヶ月後。あの日と同じように、真っ赤な夕日が空に浮かんでいた。
十二月に入った時期の屋上は予想以上に冷え込んでいた。。
ここ一週間ほど辛そうな表情が目立っていた司だったが、今日は何か吹っ切れたような、諦めたような、なんとも言えない笑顔を浮かべていた。
「類、好きだ」
「…うん」
何度目かも分からない告白。それになんと返事をしていいのかが分からない。
数日前に、僕も好きだと返したことがあった。嘘はついていない。本当に類は司が好きだった。しかし、司は自分と類の「好き」は意味が違うと言った。
司が恋愛ならば、類は友愛。そう司は説明したが、類には二つの愛の違いがわからなかった。司が言うならそうなのだろうと、類はそれ以上考えることを放棄してしまった。
冷たい風が吹く。指先が冷えてきて、類はカーディガンの袖を引っ張って風から守ろうとした。
そんな類の手を司がとった。
司の手はいつも通り温かく、冷たかった類の指には徐々に熱が広がっていく。
温かい、そう告げれば、司は優しく微笑んだ。
見蕩れていたのだろうか、類はその笑顔を見て、少しも動けずにいた。
そのまま司に引き寄せられ、ゆっくりと唇が重なる。
それと同時に、下校を知らせるチャイムが鳴った。チャイムの終わりと同時に、司が離れていく。
「…時間切れだ。今まで付き合ってくれてありがとう」
俯きながらそう言う司を見ていると、心臓がギュッと痛んだ。
「類はオレを好きにならない。この一ヶ月で分かったことだ。でもオレは幸せだった。短い間だが、類の恋人になれて」
時間が止まったように体が動かない。なぜか痛む心臓と、指先が痺れていくような感覚。もう司と二度と話せないのではないかという不安。そうすれば、また自分は一人になるのだろうか。ワンダーステージを、司の隣を、失ってしまうのだろうか。
そんな類の不安を見抜いたかのように、司が言葉を続ける。
「明日から、オレと類の関係は一ヶ月前に戻るだけだ。何も変わらない。一緒にショーを作る仲間で、学校ではよき友人だ」
その言葉を聞いて、やっと類は呼吸ができた。
これからも、自分はひとりじゃない。司の隣にいられる、また彼に演出をつけられる。
そう安堵した。
・
司との関係は、特に変わったところはなかった。一緒に昼食をとるし、帰りは一緒に歩く。
なんだ、今までと同じじゃないか。
類は昨日あんなに不安を抱えていた自分が馬鹿らしくなった。
心がやっと穏やかになって、類はいつものように司の手を取った。いつも通り、司が類の手を温めてくれる。そのはずだった。
司は、類の手を振りほどいた。
「…え?」
「手を繋ぐのはよくないだろう。恋人じゃあるまいし」
司の言葉を飲み込むのに時間がかかった。
そうだ、手を繋ぐのは恋人だからだ。ただの友人は手を繋いだりしない。忘れていた。
振りほどかれた手に冷たい風が針のように突き刺さる。
手が痛い。なぜか、心も。
「でも、手が冷たいんだ…」
「…手袋でも着ければいいだろう。今度見繕ってやる」
先に行ってしまった司の背を追う。今までほとんどあいていなかった距離が、今日は二人分あいていた。
・
変わったのはそれだけではなかった。この一ヶ月間、昼食は毎日司と一緒だった。
しかし今はどうだ。一週間のうち数日は、司は委員会がある、他の友人との約束がある、といって断るようになった。
毎日一緒だったのは、司が何よりも自分を優先してくれていたからだ。
そしてそれは、「恋人」でないと得られないものなのだ。
ハグも、キスも。全部、恋人でないと。
司を独り占めしたい。何よりも自分を優先してほしい。笑顔を向けてほしい。彼と手を繋ぐのも、抱きしめるのもキスをするのも自分だけがいい。愛されたい。愛したい。
そんなことを思うこの気持ちは、なんと名付けられるものだろう。
人はそれを、「恋」というのではないだろうか。
・
ある日の放課後、司に話があると呼び止めた。
「すまない、今日は先約があるんだ。明日ではダメか?」
「ダメ、今がいい」
類はそう言うと、無理やり司の腕を引っ張った。
司は話を聞け、と怒っていたが、今の類には何も耳に入らない。
真冬の屋上の扉を開ける。二人の周りは冷たい空気に包まれた。
「一体なんなんだ!オレとしたことがドタキャンしてしまうことになっただろうが!」
「司くん」
思ったよりも堅い声が出てしまった。怒っていた司も真剣に聞いた方がいい話だと察したようだ。
「司くん…僕はやっぱり君が好きだよ」
「…だから、類のそれは友愛だと」
「違うよ!!」
突然の大声に肩を跳ねさせた司の体をグッと引き寄せる。
「ちょっ!?類、苦しいって…!」
「僕は恋愛感情で君が好きなんだ!やっとわかったんだ…君を独占したいしずっと僕のことだけ考えていてほしい!好きなときに抱きしめたいしキスだってしたい…」
抱きしめる力の強さと反比例して、類の声はどんどん弱々しくなる。
腕の中で、司が息を飲むのが分かった。
「どうすれば信じてくれる…?」
類は情けなく司にすがった。もう二度と離さないと言わんばかりに。
もしかしたら司はもう自分のことが好きではなくなってしまったかもしれない。
でも、それでも。司に自分を受け入れてほしかった。自分の初恋を受け止めてほしかった。
「…類、離してくれ」
「…やだ」
「頼む、息がつらい…」
だいぶ強く抱きしめていたようで、司は軽く酸欠気味だった。
類は慌てて身体を離す。
「ごめんっ…!あの、僕…」
体を離したのに、今度は司が類を抱きしめた。
この速い鼓動は、自分のものか、司のものか。
「…本当にオレのことが好きなのか?」
司の声は弱々しかった。少し湿り気を帯びた、泣きそうな声。
「うん、好きだよ」
「信じて、いいのか…?」
「君だけを愛してる」
そう告げれば、司が顔を上げた。類を見つめるその表情は、頬が紅潮し、瞳に薄く涙を浮かべた泣き笑いのような笑顔だった。
一ヶ月間の恋人を受け入れたときの笑顔とは全く違う、心からの喜びの笑顔。
この笑顔を一生手放さない。そう心に決めて、類は腕の中の太陽に優しく口づけた。
一ヶ月間の恋人