高円寺駅周辺を練り歩く田中氏
高円寺駅周辺を練り歩く田中氏

「杉並の経済界の“顔役”はだいたい僕の後援会に…」

 そんな女性のそばで弁舌を振るっていたのは、2022年まで3期12年杉並区長を務めた田中氏だ。真剣な面持ちで耳を傾ける一人の30代女性に声をかけると、「私、外国人で選挙権ないんですけど……」と返ってきた。台湾国籍をもつその女性は、YouTube動画で田中氏のことを知り、出産一時金をはじめ少子化対策に力を入れる姿勢に共感したという。

「子どもは国の未来ですから。今の(岸本)区長はLGBTQを大切にする政策をアピールしていますね。私の国は同性婚を認めているし、LGBTQも大切だけど、やっぱり子どもファーストで政策を進めてほしい」

 大和田氏や岸本氏の演説会場とは打って変わり、田中氏の話に足を止めたのはわずか数人だった。だが田中氏本人は、「187票差で負けた前回の区長選よりも、街頭の反応はいい。“アンチ岸本”の人は相当いる」と手応えを感じているようだ。

 今回の選挙戦は、大和田氏が自民党の推薦を受けているものの、一部の自民党関係者は田中氏の支持に回り、保守分裂の様相を呈(てい)している。“アンチ岸本”票を両者で取りあう形となるが、「杉並の経済界の“顔役”はだいたい僕の後援会に入っている」と田中氏は自信をのぞかせる。

 対抗馬として意識するのは岸本氏だ。同氏の「対話の区政」については、こう切り捨てた。

「本当の対話なんかしていないでしょう。税金を使って、職員を使って、時間のある区民を集めて、責任感のない“おしゃべり会”をやっているだけ。岸本区政のイメージアップのためですよ。本来のトップの仕事というのは、目標を決めて、その目標に向かって組織を運営していくことだと思います」

 なお、この日の取材では増田氏の演説を聴くことはできなかったが、夜に開かれたネット討論会で、同氏はIT企業・富士通で米国法人社長などを歴任したビジネス感覚や国際色をアピール。「みどりで稼ぐ」をキャッチフレーズに区の財政基盤を強化するビジョンを訴えた。

 来る29日、杉並区民はどのような民意を示すのか。

(AERA編集部・大谷百合絵)

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