『ひつじ探偵団』羊飼いの死と、目覚めた羊たちが暗示する宗教的寓話
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徹底したリアリズムが生む羊の演技
羊たちの視覚表現を担ったのは、世界的VFXスタジオのFramestore。彼らがこの映画で提示した技術力は、驚異的の一言に尽きる。 再現が難しい羊毛を3Dで表現するために、全く新しいレンダリング手法を開発。羊たちの動きや表情は、クリエイターがCGのモデルをコマ送りで少しずつ動かし、手作業で演技をつけていくという、気の遠くなるような職人技によって作られた。 本作に登場する羊たちはすべてCGだが、動物たちをゼロからデザインしたわけではない。VFXスーパーバイザーのグラハム・ペイジらは、登場する羊のキャラクターそれぞれの個性や性格を視覚的に表現できる特徴を求め、「この役柄には、どの品種の羊が最もふさわしいか?」を徹底的に吟味した。つまりFramestoreのスタッフは、観客の目を欺くほどのリアリティを追い求め、イギリス各地の農場を巡り、羊のキャスティングまで敢行してしまったのだ。 そして、役にぴったりの羊を見つけ出すと、その個体をあらゆる角度からスキャンし、CGの基盤となるデータを作成。実在する羊の骨格や外貌をベースに据えることで、本物の羊と見紛うほどの生々しいリアリティと、観客が感情移入できるキャラクターという、相反する要素の絶妙なバランスを実現している。 さらに特筆すべきは、撮影現場における工夫。俳優が空虚な空間に向かって演技をするのを避けるため、現場には「スタフィー」と呼ばれる精巧な等身大パペットが用意された。この物理的な羊の代役を相手にすることで、人間とCGの境界を感じさせない、真に迫る芝居が生まれたのである。 俳優/声優のキャスティングにも、映画ファンをニヤリとさせる巧妙な仕掛けが用意されている。被害者ジョージを演じたヒュー・ジャックマンと言えば、『X-MEN』シリーズの無敵のヒーロー(ウルヴァリン)でおなじみだが、本作では物語の冒頭であっけなく殺されてしまう。 そして、長老羊リッチフィールド卿の声を演じているのは、パトリック・スチュワート。不死身のウルヴァリンが真っ先に命を落とし、プロフェッサーXが羊となってその謎を追うという、思いがけない形での『X-MEN』コンビ再共演が実現した。スーパーヒーロー映画の文脈を逆手に取った、映画ファンの心をくすぐる心憎い配役なのである。
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