社説(5月27日)カンヌで女優賞 映画文化耕す後押しに

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 静岡市が姉妹都市提携を結ぶフランス・カンヌ市で開かれた第79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で、濱口竜介監督の「急に具合が悪くなる」に出演した岡本多緒さんが、ベルギー出身のビルジニー・エフィラさんと共に女優賞に選ばれた。

 ベルリン、ベネチアと並ぶ世界三大映画祭の一つとされるカンヌで日本人俳優が女優賞に輝くのは初めて。2004年の柳楽優弥さん(是枝裕和監督「誰も知らない」)、23年の役所広司さん(ビム・ベンダース監督「パーフェクトデイズ」)の男優賞に続く快挙だ。高市早苗首相は自身のX(旧ツイッター)で祝意を示し、「世界と協働し、新たな価値を創造する一つのモデルになる」と称賛した。  政府は映画、ゲーム、アニメなど「コンテンツ産業」を日本成長戦略17分野の一つに位置付けている。同産業全体の海外売上高を23年の約5兆8千億円から10年間で20兆円に高める目標も定めた。海外映画祭での高評価は、こうした取り組みの後押しになる。  同産業に対する25年度政府予算は、前年度の倍以上に当たる550億円超に上った。今後も増加が見込まれる。  支援拡充は評価すべきだが、気になるのはコンテンツの輸出や民間投資の促進に主眼が置かれている点だ。規模の大きさや投資効率に目を向けるだけではなく、製作現場に多くの利益が還元される仕組み作りにも注力するべきだ。文化の土壌を地道に耕す支援の在り方が求められる。  18年に「万引き家族」でカンヌ最高賞に選ばれた是枝監督は「コンテンツ産業官民協議会」4月会合で、3月に公募が始まった国の新制度が製作費8億円以上の大型作品に支援を限定していると疑義を呈した。比較的低予算の作品の公的支援が減っているとも訴えた。懸念はもっともだ。作り手のニーズに応える制度であってほしい。  次代を担うクリエーター育成を掲げるのであれば、作品を見せる場の確保も欠かせない。国内の映画館の近況を見ると、スクリーンの数が増えた一方、小規模館の閉鎖が相次ぐ。若い監督の意欲作を積極的に取り上げるミニシアターは観客の映画を見る目を育て、地域の文化コミュニティーとして重要な役割を果たしている。政府主導で支援を充実させてもいいはずだ。  コンテンツの作り手は一朝一夕には育たない。今回のカンヌのコンペティション部門に作品が選出された是枝、濱口両監督と深田晃司監督は、いずれもミニシアターを足がかりにキャリアを積み重ねてきた。海外で受け入れられる作品を生み出すには、国全体の文化力底上げが必須であることを忘れてはならない。

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