元朝日新聞記者・今野忍氏

元朝日新聞記者・今野忍氏

 この曰く付きの男と接点を持った高市事務所も無傷ではない。2つの問題で窓口となった木下剛志秘書は、地元奈良県の高市事務所を所長として取り仕切る人物で、高市氏の信頼も厚い。その木下氏が現代の取材に松井氏との接点を文書で認めた。にもかかわらず、総理は「面識はない」「接点もない」と国会で否定し、後に答弁を修正。事務所の危機管理もお粗末だ。

 つまり、たった一人の男に文春も共同も高市事務所も振り回された。

 そもそも松井氏は1日に100~200本の中傷動画を作ったと言うが、裏づける物証は未だ出てこない。語っているのは、ほぼ本人だけだ。

 選挙ドットコムの試算では、その本数が事実なら、総裁選と衆院選の関連動画の10分の1ほどを彼が作った計算になる。選挙後にアカウントを消したとしても、痕跡もなく消えるのは妙だ。

 では、本丸はどこか。関係者に取材を進めると、こんな構図だ。松井氏の狙いは、中傷動画で高市事務所の信頼を得て、その看板でトークンを売り、ひと儲けする。それが本当の絵図だったのではないか。現に彼は、玉木雄一郎・国民民主党代表にも接近し、「タマキトークン」を持ちかけたとされる。

 国会で野党は言わないが、中傷動画は入り口にすぎない。本丸はサナエトークンだったのだ。

【プロフィール】今野忍(こんの・しのぶ)/1975年、神奈川県出身。外資系コンサルを経て、2003年に朝日新聞社に入社。約20年間にわたり政治部に所属し、菅義偉元首相、岸田文雄元首相の番記者などを務めた。2026年1月に独立。現在は、フリーの政治記者・解説者として活動している。

※週刊ポスト2026年7月10日号

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