【MLB】「常に新しい引き出しを増やす」山本由伸を進化させる探究心
【MLB最新事情】 ドジャースの山本由伸が圧倒的な投球を続けている。現地時間6月13日のホワイトソックス戦では8回の二死まで完全試合。6日のエンゼルス戦から続いていた連続アウトは45人。ムーキー・ベッツの失策がなければメジャー記録に並んでいた。 【選手データ】山本由伸 プロフィール・通算成績 だが、今季の山本を語る上で重要なのは結果だけではない。実はその投球内容は、メジャー3年間で着実に変化している。「彼は常に新しい引き出しを増やそうとしています。とにかく打者を翻弄(ほんろう)したいと考えているんです」とホワイトソックス戦で捕手を務めたダルトン・ラッシングは語った。 山本はメジャーに来た当初、直球、スプリット、カーブによる縦方向のコンビネーションで打者を圧倒していた。2024年の球種割合は直球40%、スプリット24%、カーブ23%である。ところが26年は直球28%、カーブは11%まで減少。その代わりにカッターは6%から14%へ、ツーシームは3%から12%へと大幅に増えた。背景には「縦だけでは足りない」というメジャーでの学習があるように見える。 マーク・プライアー投手コーチは「バックドアのツーシームやカッターを自在に操る能力は、私がこれまで見てきた中でもトップクラス。単に球種が多いだけでなく、それを4つのコーナーに高い精度で投げ分けられる」と評価する。 興味深いのは、山本がアームアングルも変えていることだ。24年に46度だったのが、26年には41度まで下がった。その結果、直球、カッター、ツーシームの横変化の幅が広がった。中でも興味深いのがカッターの存在である。結果だけを見ると被打率.310と決して優秀な数字ではない。 それでも使用率を増やしている理由は別にある。カッターが加わったことで、打者は直球に対して真っすぐ振れなくなった。同じリリースポイントから飛び出し、球速帯も近い。最後の瞬間まで見分けがつかないのである。今季、直球の空振り率が25年の19.2%から32.3%へ急上昇し、被打率も.169に抑えられている背景には、カッターの効果があると考えられる。 もちろんスプリットも依然としてメジャー最高クラスだ。被打率.156、空振り率34.4%を記録している。ただし、空振り率は前年の42.1%から低下している。打者が慣れ始めたからこそ、山本はカッターやツーシームを増やしているのだろう。そして今年最大の収穫がツーシームだ。 平均95マイルを超えるこの球は被打率.105。直球は伸び、ツーシームは沈み、カッターは切れ、スプリットは落ちる。同じリリースポイントから異なる軌道を描くことで、打者の判断を狂わせている。よく知られているように山本は抜群の制球力を誇る。 今季は投球の45.5%がストライクゾーンの境界線付近に集まっている。メジャー平均の39%を大きく上回る数字だ。その一方で、四球率は25年の8.6%から今季は4.6%へとほぼ半減した。 打者は境界線付近の微妙な球に手を出さざるを得ず、結果として不利な打席に追い込まれているのである。ホワイトソックス戦で見せた支配的な投球は偶然ではない。山本はメジャーで毎年進化を続け、今季は縦、横、斜めのすべてを操る投手へと進化。スライダーも含めると、6球種で、打者の読みを惑わせ続けている。 文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール