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ドナルド・トランプ≒橋下徹説

割引あり

 トランプが再び大統領に就任して1年半ほど経った。この間、彼は関税で貿易を滅茶苦茶にしてから戦争を吹っかけて秩序も滅茶苦茶にした。第一期とは比べ物にならない「成果」を挙げていると言えるだろう。

 今回紹介する書籍は、そんなトランプを支持する「信者」たちに潜入し取材した一冊だ。著者はユニクロやアマゾンに潜入し取材も行った横田増生氏。彼はトランプがバイデンに敗れた大統領選挙に共和党のボランティアとして潜入し、議事堂襲撃の現場にも居合わせた。

 本書を読み、トランプの既視感の正体が少しわかった気がする。ドナルド・トランプという人物は、日本でいうところの橋下徹とほとんど同じだったのだ。

書誌情報

横田増生 (2025). ルポ「トランプ信者」潜入一年 小学館

トランプの維新性

お騒がせ経営者

 トランプが維新の会や橋下徹的だといえる最大の共通点は、アメリカ人にとっての彼のイメージがマスメディアによってつくられた虚像であるというところだ。

 著者も指摘するように、ここは日本にいるだけではわかりにくい。アメリカにおいて、トランプが世間からどのような扱いを受けてきたのかという歴史を理解する必要がある。

 トランプは不動産業を営む父のもとに生まれ、彼の商売を引き継いだ。しかし、住宅の売買において人種差別を禁じる公正住宅法に反したとして州から訴訟を受け、最終的な訴訟の数は3500件を超えたともいう。映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』で日本における知名度上げた弁護士ロイ・コーンと出会ったのもこのころだ。

 トランプはその後もカジノを作っては破産し、破産回数は6回に至る。その反面、『プレイボーイ』誌に取り上げられるようなイケメンのプレイボーイとしても扱われた。要するに、80年代前後のドナルド・トランプはお騒がせで無軌道な経営者という扱われ方で、日本でいうところの堀江貴文みたいなものだった。当時のアメリカ人に彼が大統領になると言っても冗談としか思われないだろう。

 だが、トランプの大統領への野心は87年から始まっていたと著者は指摘する。共和党から演説を依頼された彼は大々的な宣伝をうって世間を騒がせた。本人は大統領になる気はないと嘯くが、翌年に大統領選に勝利するブッシュに自身を副大統領として売り込んでいる。もっとも、ブッシュはこれを冗談だと思ってまともに取り合わなかったらしいが。

 ちなみに、この時の宣伝の時点で、トランプは日本がアメリカに国防力を投じさせるなどの搾取をしているという主張を行っている。アメリカが日本を搾取している、ではない。現在の彼の妄想は加齢によるものではなく、根っからのものだということが伺える。

 なお、もうひとつのちなみにだが、さらに翌年の89年には「セントラルパーク・ジョガー事件」が起こる。セントラルパークで白人女性が強姦され瀕死の重傷を負った事件で、逮捕されたのは4人の黒人と1人のメキシコ系の少年だった。この事件は後に冤罪とわかるが、トランプはこのとき死刑の復活を求める新聞広告を掲載する。

 冤罪と判明しNY市が5名と和解した後も、トランプは事実を認めなかった。むしろ和解が恥辱であるという広告まで出した。2014年のことだ。妄想にしがみつく癖も加齢のせいではないらしい。

 トランプの周囲で暗躍した人物には、ゼロトレランス政策で著名な元NY市長のルドルフ・ジュリアーニもいる。トランプが副大統領に名乗りを上げたブッシュはマイケル・デュキカスと戦ったが、このときの死刑存廃論争もまた著名である。政治と治安は切っても切れないため、大統領選の周囲を掘り下げると犯罪関係の話題も多い。いつかまとめて書きたい。

メディアが作った虚像

 さて、大統領への野心を露わにしつつもまともに扱われなかったトランプだが、そんな彼のイメージを変える出来事が起こる。リアリティーショー番組『アプレンティス』への出演である。

 先述の映画の題名の由来ともなったこの番組は、若者が見習い生 (アプレンティス) としてトランプの下で様々な課題に挑戦するという建付けだ。トランプはここで、若者が憧れその下で働きたいと思うカリスマ経営者として扱われ、「お前はクビだ!」と出演者を追放する決め台詞も人気になった。

 もちろん、番組に出演しても事実は変わらない。彼は破産を繰り返しており、番組出演時も会社経営はギリギリの火の車だった。しかし、番組は構成上その事実を扱わない。出演者たちはトランプのキャラクターを守るためひたすらに彼を褒めちぎった。番組は大ヒットを果たし、トランプのイメージは番組の作り上げた虚像に塗り替えられた。

 トランプがあれほど無軌道な言動を繰り返してもなお、彼の能力に期待する人々がいなくならないのは、この番組のイメージの影響もある。

 この来歴に、私は既視感があった。そう、橋下徹である。

 彼は『行列のできる法律相談所』に出演し、弁護士らしからぬ風貌で耳目を引いた。そのイメージを武器に大阪府知事選に乗り込んだ。大阪地方自治、ひいては日本の民主主義の終わりの始まりである。彼にはトランプの野心が冗談として扱われたような前段こそないものの、無軌道で反射的に文句を並べるだけの人間がマスコミのイメージで権力者になってしまったという点では類似する。

 メディアがトランプに作り上げた虚像はカリスマ経営者だったが、橋下徹に作り上げた虚像は「インテリや既得権益と戦うレジスタンス」だった。橋下を始めとする維新議員は二言目には既得権益ガーといい、それを批判されるとインテリにはわからないとか現場を知らないとかいう。実際には、早稲田大学を卒業し弁護士資格を持つ橋下こそ、彼自身が非難するインテリそのものだったが、マスコミはそれを無視した。橋下もそれを無視した。

 現在、橋下が初めて大阪府知事になったときから20年近い時が流れている。維新はもはや新興政党ではなく、はっきりと既得権益を貪る側にいる。それは、維新の圧倒的な不祥事の多さからも伺い知れるというものだ。だが、やはりマスコミはそれを無視しているし、橋下もそれを無視した。

 『行列のできる法律相談所』の出演者からはその後、丸山和也と北村晴男も国会議員となる。前者は自民党、後者は日本保守党に属しており、維新の橋下と合わせて日本政治の終わっているところを煮詰めたような結果になっている。同時に、メディアのイメージに踊らされて投票する愚かな有権者は世界共通なのだとも思わせられる。

 さておき、トランプはメディアで得たイメージと経験を武器に大統領選へと再び身を投じる。その後、オバマの出生地に関する陰謀論を流布してかえって彼から徹底的に嘲笑されたりという出来事はあるが、あとはおおむね我々の知る通りである。

ディープステートというゴミ箱

 トランプと橋下を重ね合わせるのは、何もマスコミのイメージによって政治家になったという点が似ているからというだけではない。もうひとつ重要な共通点として、その言説のスタイルがある。

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