インタビュー

キュアアルカナ・シャドウの言葉、すべて真実? 東山奈央が誘う迷宮

聞き手・照井琢見
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東山奈央のキュアット解決!

 連載「キュアット解決!」では、放送中のアニメ「名探偵プリキュア!」(ABCテレビ・テレビ朝日系、日曜朝8時30分)のキャストが月に1度、思いを語ります。

 6月末は謎めいた少女・森亜るるか、そしてプリキュアながら怪盗団ファントムの一員であるキュアアルカナ・シャドウを演じる、東山奈央(とうやま・なお)さんが登場。

 「Go!プリンセスプリキュア」(2015~16年放送)で妖精パフを演じて以来、ふたたびプリキュアシリーズに関わるまでの道のりから、うかがいました。

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今年の私に、はなまるを

 昨年2月、私のワンマンライブ「わたしのかんがえたむてきのセトリ!」で、二つの夢についてお話ししました。一つは、日本武道館でのワンマンライブを実現すること。そしてもう一つは、「かなったらお話しするね」とお伝えしました。

 そのもう一つの夢というのが、プリキュアになりたいということでした。

 まさか、あんな風に語るつもりはなかったんです。お客様に「無敵」な気持ちを持ち帰ってもらいたいと思ってパフォーマンスをしていたら、自分の中でかせが外れたような感覚がありました。

 それまで、プリキュア役のオーディションを何度も受けて、不合格になることが続きました。結果につながらないことが、つらくて。毎年新しいプリキュアのお菓子が並ぶ、スーパーのお菓子売り場に足を踏み入れるのもつらくなるぐらい……。

 ここまで強い気持ちを抱く作品も、なかなかないんです。毎年オーディションがあって、何度も挑戦の機会をいただける分、思いが雪のようにどんどん積もっていく。ここがプリキュアシリーズの、希望でもあり、苦しいところでもあります。

 「Go!プリンセスプリキュア」で妖精のパフを演じさせていただいた経験がありまして、私にとってプリキュアの現場は宝物です。青春を味わわせてもらった大切な作品なんです。

 その大切な思い出を、この苦い思いで上書きするのも、やるせなかった。オーディションを受けるのをお休みした年もありました。

 それでも挫折を乗り越えて、もう一度夢を追おう。絶対にかなえよう。自分にとってプリキュアという作品が、ずっと大好きであたたかい思い出であるように、と。

 オーディションには皆さん、自分の中でのベストアンサーを持っていきます。

 こればかりは「努力」だとか、「センス」だとか、そんな一言だけで言い表せるものではなくて、自分が積み重ねてきた「年輪」みたいなものも、その場で表れるのだと思っています。

 緊張のあまり、声が思うように出せない年もありました。でも「名探偵プリキュア!」のオーディションは、今の自分に出せる全てを出せた感覚がありました。

 シリーズディレクターの川崎弘二さんから、「素晴らしかったです」という一言をいただきました。その時に、たとえ不合格でも今年の私には、はなまるをあげたいと思えました。後日、合格しました、というご連絡をいただいて、本当にうれしかったです。

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2周目で答え合わせを?

 プリキュアでありながら、敵側である怪盗団ファントムにいて、無口で、ミステリアス。そんなキュアアルカナ・シャドウが、見てくださるお子さんたちにとって、決して怖い存在ではなくて、気になる存在でいてほしいと思いました。

 そんなことを考えて、今のようなお芝居に落ち着いていきました。1次審査のテープを聞き返すと、今より重くて暗いお芝居でしたが、かわいらしいビジュアルに影響されて、少し幼さが残る、甘やかな雰囲気を乗せるようになりました。

 るるかちゃん、アイスをすごい食べますよね。そこに親近感がわいてきます。私自身の胃袋では、2段重ねが限界かと思いますが、日常の中でふとアイスを食べたいと思うことが増えました。好きな味も固定しているわけではなくて、るるかのように色々なアイスを食べます。

 クールな部分と、等身大の女の子らしい部分のギャップがあって、ずるいぐらいかわいらしい。そんなるるかには、秘めていることがあります。私はスタッフの方から教えていただきまして、他のキャストの方も知らないことを、私は知っている状態で演じています。

 一つ言えるのは、彼女にも使命があるということ。

 私はずっと、その使命に基づいたお芝居をしていますし、淡々とした口調の中にもにじみ出るものがあって、それが皆様の琴線に触れるといいなと思っています。

 るるかはセリフが限られていて、息だけの場面もあります。

 届けたい感情と違うニュアンスがつい口から出ることがあります。吐息一つでも、何げない場面のはずが、妙に悲しい雰囲気に聞こえてしまうことも。

 そんな時は、自分で「もう一度やらせてください」とリテイクを申し出ています。それぐらい細心の注意を払って、繊細な表現ができるように、お芝居をしているつもりです。

 色々とにじませているものも、今の時点では、わずかなヒントにしかなっていません。1年通して「名探偵プリキュア!」を見ていただいたら、ぜひ2周目をご覧いただきたいです。全てが分かった状態で見ていただくと、お芝居にこめたものを答え合わせしていただけるんじゃないかな、と考えています。

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決めつけちゃダメ!

 収録現場では、キャストの皆さんが物語の行方を推理していて、困ります(笑)。私の顔色をすごい見てくるんです。

 キュアアルカナ・シャドウやキュアエクレールに関する話になったら、私は一切言葉を発するのをやめて、聞き手に回っています。

 特にジェット先輩役の梶裕貴(かじ・ゆうき)さんと、ポチタン役の加藤英美里さん、ウソノワール役の日野聡(ひの・さとし)さんが、すごく色々な議論をしてくださいます。先輩方の経験値で、想像を膨らませて新たな物語を作ってくださるので、「その物語も見てみたい!」と思うぐらい面白いです。

 梶さんは、結構探りを入れるタイプで(笑)。キュアエクレール候補の役を演じている方にも、質問を投げて反応をうかがうことも。加藤さんは「奈央ちゃんは反応しなくていいから、いったん私の推理を聞いてくれる?」と優しく語りかけて、推理を聞かせてくださいます。

 ただ今のところ、皆さんから正解は出ていませんね。私は答えを知っているので考えが固まってしまいますが、周りのキャストさんも、視聴者の皆さんも、自由な発想で推理をしてくださっています。

 意味深にちりばめられたヒントを、こんな風に拾うと、そんな推理もできるんだ! そんな風にワクワクしながら聞いています。

 私から見ても、答えを推理するのは、結構難しいと思います。物語の中に、巧妙にヒントとミスリードがちりばめてありますから。ヒントを一つ一つ、忘れないように大事に拾い集めてほしいですね。

 実は時として、キュアアルカナ・シャドウの言葉は、真実の中に、少しウソが混ぜられています。ですから、私もシリーズディレクターの川崎さんに都度、「ここはウソで、ここは本当ですよね」と確認しながら演じています。

 だから、決めつけちゃダメだし、うのみにしてはダメダメ……かもしれません。

 「名探偵プリキュア!」の謎は、大人も楽しめる難易度ですよね。みんなで話し合いながら見ることで、コミュニケーションのきっかけにしていただくのもいいかな、と思います。

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夢の先で、伝えたいことは

 実際にこうして、プリキュアを演じることができて、ずっと夢の中を生きている感じがします。

 プリキュアになったら、たくさん素敵なことが待っていると思っていました。本当に素敵なことを、一つ一つかみしめながら、歩んでいる最中です。

 先日、プリキュアのショーも拝見しました。プリキュアの衣装をまとって「頑張れー!」「プリキュア!」と声援を送ってくれる子どもたちの姿、その目の前で踊っているプリキュアの姿……。

 その一つ一つが私の宝物で、本当に夢がかなったと感じます。こんな景色が見たかったんだって、幸せです。

 森亜るるか、そしてキュアアルカナ・シャドウは、一生一緒に歩んでいくキャラクターだと思っています。その確信は日に日に強まっています。

 夢をかなえて終わり、ではなくて、この夢を生き続けて、みんなで完走する。それが本当の意味で、夢が成就したと言えると思います。

 シリーズを見渡すと、どのプリキュア作品にも明確なメッセージがあります。「名探偵プリキュア!」の伝えるメッセージが、お子さんたちの原風景になって、いつか思い出してもらえるものになったらいいなと願っています。

 AI(人工知能)がどんどん発達して、「すごい動画がある!」と思ったら、実はAIが生成していた、ということが増えました。そうなると、向こう10年、何が本当で何がウソなのか、どんどん分からなくなっていきそうですよね。

 世の中は便利になっているのに、なぜか人の忙しさはどんどん加速していて、空いた時間に手っ取り早くつかめる答えを探しているような気もします。

 そうして、表面的な情報にしか触れなくなったり、情報の出所を確かめる努力をしなくなったり。それは自分にも当てはまることで、とても危ないことだとも思います。

 「名探偵プリキュア!」が届ける楽しい時間の中で、自分で答えを探すこと、そして自分の目や耳で確かめることが大切なんだ、と伝えていきたいです。

 今は色々なヒントがちりばめられていますが、きっと最後は大きなテーマに向かっていくはず。物語はどんな真実にたどり着くのか、私も皆さんと一緒に歩んで、確かめにいきたいと思います。

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この記事を書いた人
照井琢見
文化部|映画担当
専門・関心分野
エンタメ、性をめぐる常識・偏見

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