【宿泊記】秋山郷結東温泉『かたくりの宿』へ。廃校リノベの秘境宿で温泉と山里料理を満喫
温泉ライターの泉よしかです。
先日新潟県と長野県にまたがる秋山郷(あきやまごう)の「秋山郷結東温泉 かたくりの宿」を訪ねました。
ここは、秋山郷の結東集落にある廃校リノベーションの温泉宿。校長室を利用したお風呂や地元の山菜料理、棚田散策など、秋山郷らしい体験ができる宿でした。
宿泊して体験した秘境のこの宿をじっくり紹介します。
秘境秋山郷の結東集落と、廃校をリノベした元校舎の「かたくりの宿」
秋山郷はまさに現代の秘境といってよい土地で、苗場山と鳥甲山に挟まれた谷あいを中津川が流れ、その川筋に沿って伸びる国道405号線周辺に集落や温泉施設が点在。豪雪地帯でもあり、冬季は秋山郷の長野県側にアクセスするにも新潟県側からしか行かれないような特殊なエリアとなっています。
それだけに人口減少の問題にも直面しており、秋山郷の新潟県側の最後の小学校も閉校し、現在集落の小学生は乗り合いタクシーとスクールバスを乗り継いで津南町の小学校に通っています。
この秋山郷の中で一番大きな集落である新潟県津南町の結東に、元小学校の建物をリノベーションした温泉宿「かたくりの宿」があります。
豪雪に耐えてきた木造の建物は、かつては津南町立中津峡小学校として子どもたちの集う学び舎でした。
津南町立中津峡小学校の前は津南町立秋成小学校結東分校だった時代もあり、「かたくりの宿」の入口にも、分校時代の名称が書かれた板が飾られています。
ロビーにも元小学校らしい備品などがいろいろ。まあ都会の学校に熊の毛皮は飾っていないとは思いますが。
チェックインの際に宿泊者名簿に名前などを書く時も、小学校のイスと机を使います。座ってみると「こんなに小さかったっけ!?」と大人になった自分のサイズとのギャップに驚かされます。
「かたくりの宿」の客室は元教室?
客室は階段を上って2階。廊下に1年1組から1年5組までの表示が見え、さらに奥にもう2室あります。客室数は全部で7室で、内訳は定員3名の8.75畳が2室、定員4名の10畳が3室、同じく定員4名の14畳が2室。1人泊もできます。
もっといかにも小学校の教室らしいお部屋かと思いましたが、スタンダードな和室でした。そりゃそうですよね。教室の造りは少人数で快適に泊まるには適しません。
ちなみに1年生のクラスがこんなにたくさんあったんですか?と伺うと、元あった教室などを分割して今の客室にしていると教えてくださいました。
廃校になる前は、全学年で2クラスしか残っていなかったそうです。
温泉は何故か校長室に!?
温泉は1階。何故か元校長室が男女別のお風呂になっています。
秋山郷の各地で温泉が湧いていますが、結東で湧く結東温泉は、弱アルカリ性のナトリウム・カルシウム―塩化物・硫酸塩泉。橋のたもとで湧出しているという45.7度ほどの源泉が、宿までの引き湯で少しぬるめに。そのため湯口からは源泉を入れ、浴槽内で少し加温しています。
この温泉は保湿に優れた泉質で、ゆっくり入っていると包み込まれるようなリラックス感を感じます。
内湯のドアの向こうにはなんとなく露天風呂がありそうな雰囲気でしたが、民具などが展示してあるだけでした。実は元はここに露天風呂があったのだそうですよ。いかにもそんな感じです。
泊まれる「越後妻有 大地の芸術祭」の宿
小学校時代の体育館は、今も天井などはそのまま。そして現在は「越後妻有 大地の芸術祭」の会場の一つとなっています。つまり、アート作品が展示されている体育館なのです。
全体が「妻有双六」という作品になっていて、制作したアーティスト(ユニット)名は原倫太郎+原游さん。触ってOK、歩いてOK、実際に双六として遊ぶことができます。お子さん連れで泊まって遊んでも楽しいと思います。
秘境の地産地消料理を味わう
一昔前は、山の中の宿でも海の魚の刺身を出すのがお約束とされた旅館の料理ですが、昨今は山なら山らしい食材など、地元食材にこだわるお宿も増えてきました。
「かたくりの宿」のお料理は、ちょっと地元産の野菜を使いましたというレベルではありません。スタッフが摘んできた山菜をいろいろ取り揃えました、お米は裏手の棚田で育てましたという手の掛け方。これこそ秘境のディナーです。
例えば食前の一杯はイタヤカエデの樹液、前菜はこごみ、葉わさび、わらびの甘酢漬け、いも餅、干柿・胡瓜・胡桃・酒粕クリームチーズ和え、熊肉の味噌煮込み……く、熊肉!
主菜には妻有ポークとウドのハンバーグ。近隣の妻有のブランドポークに春のほろにが食材ウドを合わせる素晴らしいセンス。爽やかな山の味わいに肉汁が絡みます。
デザートは新潟県のイチゴ越後姫のソースをかけた豆乳プリンで、添えられた蕎麦の実のぷにゅっとした食感と栃の実煎餅のザクッとした食感の違いが面白い。
一方、朝食は洋食プレートのようでいて、さりげなくマタタビの塩漬けのポテトサラダや自家製で未着色の沢庵などこだわりがたっぷり。農家の女将さん手作りのえごま味噌・自家製ふきのとう味噌・自家製神楽南蛮味噌の3種の味噌の食べ比べは、結東の石垣田米のご飯をこれでもかというほど進ませます。
※食材やメニューは季節やプランで変わります。
自由参加の朝のお散歩が楽しい
「かたくりの宿」は宿泊者自由参加の「朝のお散歩」を実施しています。スタッフがガイドとして近くの「見倉橋」や「結東の石垣田」を案内してくれるのです。
5月末のこの時は、ちょうど田んぼに水が入っている時期だったので、「石垣田」を案内してもらいました。
空は晴れて水を張った水田は青空と山々を映しこみ、静かな鏡のようです。「全国農村景観百選」や「つなぐ棚田遺産〜ふるさとの誇りを未来へ〜」にも選ばれているこちらの水田は、全国でも非常に珍しい石垣で作られた棚田です。
開けた広い土地の無い、秘境の山間の集落で米を作るために、当時の人々はどれだけの労力を費やして棚田を作り上げたのでしょうか。石垣の材料は柱状節理の溶岩が崩れ落ちたものを、一つ一つ積み上げて作られました。
それでも米を作りたかったという強い想いを感じます。朝ごはんの一粒一粒の貴重さが改めて実感できます。
「朝のお散歩」は、スニーカーや歩きやすい靴での参加がおすすめです。
「秋山郷結東温泉 かたくりの宿」のアクセス
首都圏から車なら関越自動車道 石打I.Cより約80分、または上信越自動車道利用 飯山I.Cより約2時間。
公共交通機関なら、南越後観光バス「見玉バス停」から、予約制の森宮交通の予約型デマンドタクシーを使う方法があります。
「秋山郷結東温泉 かたくりの宿」のまとめとして
現代の日本で秘境と呼ばれる秋山郷。狭い谷あいの小さな集落で石垣を積み上げ、米を作ってきた人々の歴史が刻まれています。人口減少にも悩まされていますが、一方で、若い移住者の存在感も大きく、「かたくりの宿」もそうしたパワーに支えられていると感じます。
秋山郷観光の拠点として利用できるのはもちろんのこと、元小学校だった校舎に泊まってノスタルジーに浸りつつ、温泉を楽しみ、山里のごちそうに舌鼓を打つ旅はこの宿で叶います。ぜひお出かけしてみてください。
秋山郷結東温泉 かたくりの宿
所在地:新潟県中魚沼郡津南町結東子450-1
電話:025-761-5205
公式サイト:秋山郷結東温泉 かたくりの宿(外部リンク)
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