悪徳精神科医を野放しにした「自殺対策」という矛盾
子どもや若者の自殺が深刻だ。国や自治体は、悩みを抱える子どもや若者を早期に精神科につなげることを自殺対策の柱としている。しかし、精神科未受診者ではなく、既に受診につながっている若者の自殺未遂・既遂が目立つ。
たとえば、2022年12月1日から2024年12月31日に全国78の救命救急センターを自傷・自殺未遂で受診した39歳以下の症例のうち、精神科受診歴があったのは69.1%だった(参考:令和7年版自殺対策白書)。
受診につなげることが目的となり、つなげた先で起きている不適切な状況に目を向けていない疑いがある。
その典型例が東京都による「妊産婦こころの医療機関ナビ」である。
「都では、精神科受診を要する妊産婦や、連携先を探している産科・区市町村が迅速に精神科へアクセスできるよう、地図や条件などで検索できるサイト『妊産婦こころの医療機関ナビ』を開設しています。」として、東京都は3月19日に同サイトを開設した。「都内で精神科を標榜している病院・診療所に調査を実施し、Webサイト掲載に承諾いただいた医療機関」が約390か所掲載されている。
私が驚いたのは、そこに東京クリニックが含まれていたことだ(現在は削除)。東京都は昨年8月に「『指定医療機関として著しく不適当』に該当すると認められる」として指定医療機関の指定を取り消す行政処分を下していたにもかかわらず、その情報は共有されていなかった。別の行政機関職員がそれに気付いて指摘したことで削除されたようだ。
これでは、安全な避難所だと説明して人々を地雷原に誘導するようなものだ。悪徳精神科医という地雷を取り除き、安全を確保した状態で人々を誘導するならまだしも、野放しのままであれば事故が起きるのは必然だ。
同じ歌舞伎町では、他人に譲り渡すために睡眠薬サイレース等を124錠所持していた中3女子が3月12日に書類送検される事件があったが、全て病院で処方されていたものだった。オーバードーズや救急搬送歴のある少女にサイレースを漫然と出す医療機関が存在するという闇にこそ切り込む必要がある。
今回の悲劇は、女性がネット検索で東京クリニックにたどり着いたことから始まった。精神科医療機関を紹介する公・民のサイトは数多くあるが、それが質を担保するわけではない。口コミも信用できない。東京クリニックも今回の事件が報じられるまでGoogle口コミでは5.0だった。
残念ながら、一定数のヤブ精神科医が存在するという事実を認めて警戒するしかない。2026年度の診療報酬改定により、精神保健指定医の資格を持たない医師による通院在宅精神療法の診療報酬が大きく減算される。
乱立する一方で質が問われてこなかった精神科クリニックについて、ようやく厚生労働省もメスを入れ始めた。とはいえ、指定医の資格も安全や優良を保証するわけではない。これまでにも指定医の資格を持つわいせつ精神科医が摘発されてきたからだ。
伊沢医師を特殊な事例として切り捨てて終わらせるのではなく、そのような存在を許してきた原因に向き合うべきだ
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