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2025年10月17日 (金)

機関車工学:口語変換作業の終了にあたり

 「機関車工学」には現在の工学書の基本体裁から見て幾つか指摘できる事項があります。まず共著でありながらもその分担を明示していません。また現在の工学書であれば必須の索引が略されています。それ以外にも印刷直前の原稿差替えを想像されるページ構成、本文にある表番号と掲示されている表番号の不一致、ページ間違いや空白ページの存在等、これらは当時の印刷作業の大変さを想起させるものであります。あるいは筆者自身による手書き原稿部分と、弟子に書き取らせただろう口述筆記部分の長い話言葉の違いにも気付きます。なお口語変換に際しては主流であるスマホ画面での閲覧を配慮し原書より適宜短く文章の段落分けを行っております。

 さて一部で伝説にもなっている設計思想に係る森彦三と島安次郎の争い話ですが、全編をお読みになっていただければ森自身は「機関車工学」中にその主張を一切展開いないと知ります。非常に遠回し的にトップの考え方がそのまま組織運営に影響する点に触れている個所が見られるので、読者様の取り方によってはそれが特定の人物を指していると感じるかもしれません。

 一方で鉄道の現場実務に関してはかなり手厳しい指摘を記しています。口述筆記時での感情の現れそのままなのか、弟子が師をおもんばかって気持ちを誇張したのか、二人著者のどちらの手によるのかさえも定かではありません。本書では度々鉄道現場にはびこる安直な思考手法に関して、安全への強い戒めが多々出て来るのは鉄道実務書という立位置からなのでしょう。これらの指摘は今の鉄道業界にも通ずるところがあるものです。

 戦前から昭和時代中頃までは、蒸気機関車が国内ではまだ主役の乗り物でありました。そのため蒸気機関車が主役となる鉄道入門書籍が幾つも発行されており、読者の皆様もそれらを手に取ったご記憶があろうかと思います。しかしその多くが「機関車工学」をベースにしていたとは、現在の様なアーカイブで書籍を俯瞰できる環境だからこそ気付くのであります。専門書である本書が後世多くの青少年に影響を与えたとは著者達が知れば驚きでしょうが、鉄道入門書籍のコンテンツも新幹線登場前後からガラリと変わってまいりました。

 最後に本書には鉄道の父と称された井上勝の影響が見られる部分があります。井上勝も森彦三も共に英国人技術者に直接教わった過去を有し、英語を介する業務上で接点があったかもしれませんから、執筆に際し何らかの影響を受けていた可能性は否定できません。偶然にも井上の没年と「機関車工学」上巻発行年は同じ明治43年という巡り合わせです。英国で客死した渡欧直前の井上に本書は届けられたのでしょうか。「機関車工学」口語訳作業の本旨とは外れるため、どこか別の場所にて触れることがあるかもしれません。

 なおAIによる無断コンテンツ収集が進み「機関車の構造及理論」も含め、AIによる回答として自動生成されている実情が出てきています。デジタル口語化した公開サイトである以上現状では避け得ない事態でしょうが、訂正していない間違いも当然そのまま引用されており、また管理人の雑文までもがAI回答に混同されているため該当削除したりと、何やら関係者一同忸怩たる思いで口語訳作業の終了日を迎えました。「地上にある銀河鉄道を探す旅」と活動を名付け、天上にあるものを地上で探すかの様な私どもの終始珍妙なる活動にふさわしい終わり方でありましょうか。

 あまりに一連の口語化作業に時間が掛かったため、旧きGSRメンバーの多くが待ち切れず先に銀河鉄道に乗車してしまいました。それでも未だ地上にて徘徊しているメンバーも多く残っております。今後は地上にいる者の使命としてソフトコンテンツだけではなく、蒸気機関車を日本の未来へ継承するという目指すべき活動へと進んでまいります。

 

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