- 掲載日
- 2024.1.15
定価とは?
希望小売価格やオープン価格との違いも解説
監修者
酒井 富士子 氏(経済ジャーナリスト)
日々の買い物や広告などでよく目にする「定価」や「オープン価格」などの意味をご存じでしょうか。商品に設定される「価格」は、複数の種類に分かれます。このコラムでは、価格について種類別に詳しく解説します。価格についての理解を深め、日々の商品購入に役立てましょう。
価格の種類について
商品を購入する際、選ぶ基準として重要な要素となるのが価格です。同じ種類の商品が棚に並んでいる場合、品質に大きな差がなければ価格が安い方を選ぶ人は多いはずです。
価格は大きく、「定価」「希望小売価格」「オープン価格」「参考小売価格」に分けられます。それぞれの意味や特徴を知ることで、日常生活の中で商品を購入する際に役立てることができます。以下に、それぞれの意味や特徴を解説します。
定価とは
「定価」とは、メーカーによって定められた価格を指す言葉です。定価には拘束力があるため、小売店は仕入れた商品を定価で販売しなければなりません。小売店が勝手に値上げや値下げをできないため、商品は全国どこでも同じ価格で販売されます。
しかし、商品の価格が一律に定められていると、業者間の自由な競争が妨げられる不利益が発生します。価格が統一されているのは、購入する側の消費者にとっても決して望ましいことではありません。そのため、現行の法制度ではメーカーが定価を設定することが原則として認められていません。
定価の設定ができるシステムは「再販売価格の拘束」と呼ばれ、独占禁止法で制限されています。そのため、図書や雑誌、新聞、音楽CDなど一部の例外を除いて、定価の設定は独占禁止法によって不公正な取引方法として禁止されています。
これらの例外の品目に著作物が多く含まれていますが、その主な理由に著作物の特質が挙げられます。著作物の種類や発行数は膨大であり、それぞれが固有の内容を持っています。再販売価格維持制度がなくなれば著作物の多様性が失われ、地域による価格差が生じかねません。
制度によって価格が安定し、文化や公共面に及ぼす影響を抑えられるという側面があるため、一部の品目には「再販売価格維持制度」が認められています。
希望小売価格とは
「希望小売価格」とは、メーカーが小売業者に対して「この値段で販売してほしい」と希望する価格のことです。定価との違いは、拘束力の有無です。定価の場合、小売店はメーカーが提示した価格で販売しなければなりません。
希望小売価格の場合、小売店はメーカーが提示する価格に従う必要はなく、自由に価格を設定できます。そのため、小売店はメーカーが設定した希望小売価格よりも商品に高い、または安い価格を設定して販売することが可能です。
メーカーが提示した希望小売価格は、多くの場合、商品の品質などが反映されているため、商品の水準を判断する基準として役に立ちます。消費者は商品を購入する際、店頭に表示されている販売価格だけでなく、希望小売価格も参考にすることが可能です。
希望小売価格を低く提示するほど消費者の購買意欲を向上させられる一方、かえってメーカーやその商品のブランドイメージ低下を招く恐れがあります。希望小売価格を高く設定した場合、実際の販売価格が低くなることで消費者に「お得に買える」と感じてもらいやすくなりますが、一方で常に安売りされている印象を与えてしまうかもしれません。
オープン価格とは
「オープン価格」とは、メーカーが小売店への卸値だけを設定し、実際の販売価格は小売店が決めるというものです。オープン価格では、メーカーは小売価格を表示しません。これが定価や希望小売価格と大きく異なる点です。
希望小売価格が提示されている商品の場合、小売店は販売価格と希望小売価格の差額を表示することが可能です。一方、オープン価格の商品では小売店が市場の動向やニーズを把握し、コストや利益を考慮したうえで販売価格を決めます。
消費者はメーカーが商品をどれくらいの価格で販売したいと考えているのかを把握できず、販売価格のみを参考にして買い物しなければなりません。これによって、メーカーにとってはブランドイメージを守りやすくなるというメリットがあります。
オープン価格が登場した経緯
近年、家電製品や食品、日用品など幅広い分野でオープン価格を目にするようになりました。オープン価格が登場する前は、希望小売価格での販売が主流でした。
1980年代の中頃から、家電製品を扱う大型量販店が急増しました。それに伴い店舗間の競争が激化し、消費者の購買意欲をあおるために値引き表示をするようになります。安さをアピールするため、希望小売価格から大幅な値引きを行うことも珍しくありませんでした。そのような中で問題化したのが「二重価格表示」です。
二重価格表示とは、実際の販売価格より高い価格を並べて表示することです。「〇〇の価格より××%引き」「△△△円安い」などと表示することで、実際の販売価格が安いというイメージを与えられます。
しかし、二重価格表示が常態化することで、消費者に「このメーカーはいつも安売りされている」「商品の価値は表示されている価格と同じなのか」と混乱を招いてしまいます。さらに、値引き幅を大きく見せようとして希望小売価格を偽り、実際よりも高く表示する店舗も出てきました。
このような流れを受け、景品表示法に基づいて整備されたのが「価格表示ガイドライン」です。本ガイドラインでは、消費者に誤認を与える価格表示を公表することによって価格表示に関する違反の防止と適正化が図られることを目的としています。
本ガイドラインでは二重価格表示についての基本的な考え方として、まず「不当な二重価格表示」が示されています。それは、「同一ではない商品の価格を比較して表示している場合」「比較に用いる価格が実際と異なっていたり、あいまいな表示であったりする場合」の2つの要件に該当することです。
次に、過去の販売価格、将来の販売価格、希望小売価格、競争事業者の販売価格と比較する場合の基準がそれぞれ示されています。過去の販売価格においては、「同一の商品であること」「相当期間にかけて販売されていた価格であること」の2つの要件を満たす必要があります。将来の販売価格と比較する場合は、表示する将来の販売価格が十分な根拠に基づいていなければなりません。
希望小売価格との比較では、メーカーがカタログなどで公表している価格を用いる必要があります。競争事業者の販売価格と比較する場合は、最近の販売価格であり、かつ競争関係にある多数の事業者の販売価格を正確に調査することが求められています。
その他にも、他の顧客向けの販売価格と比較する二重価格表示、割引率・割引額の表示、販売価格の安さを強調した不当表示などについて、事例を交えながら解説されています。
出典:消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」
出典:消費者庁|二重価格表示
二重価格表示は、適切に行われていれば違法ではありません。そのため、本ガイドラインが整備された後も基準内で値引きが行われてきました。
同時に、各メーカーはオープン価格に移行しつつあります。当初は型落ちや生産中止の商品が中心でしたが、次第に新発売の商品でもオープン価格で販売されるようになりました。特に家電製品では、2000年代に入るとほとんどの商品がオープン価格で表示・販売されるようになりました。
オープン価格のメリット
オープン価格のメリットは、消費者とメーカー、小売店それぞれにあります。
まず消費者にとっての大きなメリットは、商品の価格を正確に把握して判断できる点です。希望小売価格などによって二重価格が表示されていると、商品の相場が分かりづらくなります。
たとえ適正な価格であったとしても、「大幅な値下げがされているのでは」「不当な価格設定がされている」と感じるかもしれません。相場から見て安くない価格でも、安売りとアピールされていれば誤認して購入する可能性もあります。オープン価格が導入されることで、このような二重価格表示や安売りのアピールに惑わされる可能性が低くなります。
次に、メーカーのメリットとしてブランドイメージの維持が挙げられます。特定の商品に対して常に大幅な値下げや安売りがされている場合、「よほど人気がない商品なのだろうか」「何か問題があるのでは」と消費者が疑う恐れがあります。ひいては、商品だけでなくブランドやメーカーのイメージ低下にもつながりかねません。
しかし、メーカーが販売価格の希望を提示しなければ、小売店はメーカーが提示した販売価格との差額を表示できません。差額表示による値下げアピールがしにくくなり、ブランドイメージの低下を防げます。
小売店にとってオープン価格は、独自の判断で販売価格を設定できるメリットがあります。希望小売価格の場合、店舗間で二重価格のアピールによる値下げ競争が起こりかねません。大幅な値下げが常態化することにより、小売店が得られる利益も減ってしまいます。
しかし、オープン価格によってメーカーから販売価格の決定をゆだねられている場合、小売店は市場の動向などの要因を勘案したうえで自由に販売価格を設定できます。二重価格による値引き率のアピールがしにくくなるため、市場価格の安定も期待できます。
オープン価格のデメリット
オープン価格にはさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。こちらも、消費者・メーカー・小売店のそれぞれのデメリットを紹介します。
まず消費者のデメリットとしては、商品の相場がわかりにくくなる点が挙げられます。オープン価格表示では店舗ごとに販売価格が異なるため、相場よりも高く購入してしまうかもしれません。
販売価格を知るには、直接店舗に行って確認したり問い合わせしたりしなければならないため、時間や手間がかかります。できるだけ低価格で購入するには、消費者自身が情報収集能力をもっていなければなりません。情報の入手が難しい場合や手間が面倒だと感じる場合、購入をためらう消費者がいるかもしれません。
これは、メーカーのデメリットとも関係しています。先述のように消費者が商品購入をためらうケースが増えれば、売り上げの低下につながる恐れがあります。希望小売価格をカタログなどで確認できないという不透明性からメーカーに対するイメージが悪化すれば、機会損失を招くかもしれません。
また、小売店に商品を卸す際に販売価格の基準がないため、掛け率(販売価格に対する卸値の割合)の交渉がしにくくなることも想定されます。
小売店にとってのデメリットは、値引きによる販売戦略が立てづらい点です。希望小売価格と比較した値引き表示は、消費者に強いインパクトを与えられるというメリットがあります。商品をより安く購入したい消費者は、商品を安く販売している小売店を選ぶ傾向にあります。
しかし、オープン価格では希望小売価格からの具体的な値引き率や値引きの金額が表示できません。そのため差額による安売りのアピールができなくなってしまいます。「通常価格から〇〇%引き」「地域最安値」といった表示はできますが、差額による安売りのアピールに比べるとインパクトが弱くなります。そのため、大幅な値引きや安売り以外に、消費者を引きつける戦略が必要です。
また、掛け率(販売価格に対する卸値の割合)での交渉ができないことによりデメリットを感じるのは、メーカー側だけではありません。複雑な交渉になる可能性が高くなり、小売店にも手間や時間といった負担が増えます。
参考小売価格とは
希望小売価格と似た言葉に「参考小売価格(参考価格、標準小売価格)」があります。これは、メーカーや卸売業者、輸入総代理店など小売業者以外の業者が設定した価格に対して使われる名称です。多くは希望小売価格と同様の意味で用いられています。
先述の「価格表示ガイドライン」では参考小売価格を「希望小売価格に類似するもの」としたうえで、価格が広く示されている場合に限り二重価格表示に用いることが可能であるとしています。
まとめ
価格にはさまざまな種類があります。「希望小売価格」は小売店が決められますが、「定価」は価格変更ができず、一部の商品にしか認められていません。
現在では広く用いられている「オープン価格」は、不当な二重価格表示を抑えて消費者の混乱を防ぐことを目的に導入されています。オープン価格によって消費者は商品の価格を適切に理解でき、メーカーはブランドイメージが守られ、小売店は十分な利益を得られるといったメリットがあります。
監修者
酒井 富士子 氏(経済ジャーナリスト)
株式会社回遊舎 代表取締役
日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。
リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。「お金のことを誰よりもわかりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説する。近著に「知りたいことがぜんぶわかる!つみたてNISA&iDeCoの超基本」(Gakken)、「マンガと図解でよくわかる お金の基本 高校生から理解できる資産形成&金融知識」(インプレス)など。
執筆者
サイトエンジン株式会社
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