赤スパを止めるな!
某アニメのKちゃんが赤スパに困惑してるアレが大好きで、日車さんにパロっていただきました。
現パロ的な全員生存平和世界です。
五条先生、夜蛾先生のキャラ理解の深度が浅いので口調など色々おかしい点があるかもしれませんが、目を瞑ってノリで読んでください⭐︎
息を吸うように当たり前に篤寛は付き合ってる設定です。よろしくお願いします。
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生放送開始まで3……2……1……
「やっほー! みんなのごじょせんだよ〜♪ 今日も高専の空き教室からお送りしてまーすっ」
『かっこいいー!』
『すぐ来れたラッキー!』
パッと切り替わった画面に映るのは真っ白の髪に宝石のような蒼い瞳を持つ美しい男。呪術高専の教師である彼の都合で不定期に行われる突発的生放送にも関わらず、視聴者数は指数関数的に伸びていく。
「いやー仕事がひと段落したし久しぶりに放送始めたのはいいんだけどさぁ……何を放送しようかなーんも考えてないんだよねぇ」
ほっそりした顎に指を添え、首を傾げる。それだけでコメント欄には様々な色の投げ銭が飛び交う。
『ドッキリは?w』
「ふはっそれもいいよね! この前の日下部さんに仕掛けたキャンディのドッキリ、あれは面白かったな〜。コーラ味と見せかけて激ニガ薬草キャンディにすり替えたやつ! 後でめちゃくちゃ怒られたけど、ちゃんと食べ切ってくれるあたり優しいよね日下部さん」
以前、悪戯心を止められなくなった五条が2年担当の日下部に行ったバラエティ番組もどきのドッキリ。日下部の反応に味を占めた五条が他の教師陣にも似たようなドッキリをしかけた結果、ブチ切れた七海によって五条が高専の廊下に逆さ吊りにされたのは良い思い出である。
「たまには珍しい人に声かけてみよっか。誰かいないかな〜……あ、ちょうど良い人はっけーん! おーい日車さーん!」
撮影しているスマホを机の上に置きざりにした五条が画面外へ消える。視聴者は五条が連れてくる人物の想像を思い思いに描きながらコメント欄を埋めていく。
『向日葵?ってすごい名前だ』
『これは美人の予感』
『ごじょせんがちゃんと〝さん付け〟で呼ぶくらいだし結構上の人かな』
画面から離れたせいで声は遠いが、五条と件の人物の声が放送に乗る。
「ちょっとこっち来て〜僕に付き合って〜」
「珍しいな。どうした」
知性を滲ませる落ち着いた低い男性の声にコメント欄がにわかに湧き立つ。
『うおビビったすっげイイ声』
『男で向日葵って可愛いな』
コツコツと二人分の足音が近付いてくるが、映っているのはまだ教室の壁と椅子だけだ。
「日車さんって僕が学校のこと動画配信してるの知ってるよね?」
「あぁ。たしか学校紹介と広告を兼ねてだったか? だが、内容が目的に沿っていない事が多いと夜蛾学長が苦言を呈していたぞ」
今までの放送内容を追ってきている視聴者からすれば「でしょうね」としか言えないのだが、当の五条はといえば心外だと大袈裟に声を上げた。
「えー!? ひっど! 学生の皆にも好評だし日車さんは知らないかもだけど、放送したら毎回ランキングトップはザラなんだよぉ?」
僕のおかげで、と視聴者に見えないところで日車に渾身のキメ顔を披露する五条。これを放送していればそれだけでウン十万の投げ銭が来ただろうが、日車は「そうなのか」と関心の薄い反応だ。
「だが、ランキング上位になる事が夜蛾学長の指摘した点を払拭する免罪符にはならないと思う」
「もぉ〜お堅いんだから。あぁそれでさ、今日放送のネタがなくって〜日車さんにゲスト出演してほしいんだよ。ね、お願〜い」
「まぁ、少しなら時間もあるし構わないが……だがこれを見ているのは君のファンがほとんどだろう?」
五条のファンに気を遣い、お呼びでない自分は早々に退散する腹積もりの日車。だが五条は嬉々として「だいじょーぶだいじょーぶ」とにこにこ笑顔で日車の肩に後ろから手を置く。
「たしかに僕のファンが多いのは事実だけど、たまには味変もいいでしょ? はいはーい、それじゃあこっち座ってくださーい♪」
五条は細い見た目の割にぐいぐいと強い力でスマホの正面にある椅子へ日車を座らせる。ついに姿を見せた〝向日葵〟さんにコメント欄が一気に熱を帯びる。
『ふぁ!?』
『くっそイケメンじゃねーか!!!』
『ごじょせんと違うタイプのイケメンだ!』
怒涛の勢いで流れていく文字を見て、ニヤリと日車に笑みを向ける五条。
「いいねぇ、みんな日車さんがイケメンだって言ってるよ〜良かったね♪」
稀代の美男子である五条悟に言われてもいまいちピンと来ないのだが、実際に流れていくコメントを垣間見れば日車の容姿を絶賛するものばかり。
「……あまり揶揄わないでくれ」
日焼けもシミひとつもない白い頬をじわりと赤く染め、視線をふいと画面から背ける日車。先程までの五条と交わしていたマニュアルのようなやり取りや抑揚の薄い低い声から、一見無感情そうな彼。そんな彼の、恥じらいを控えめに表した一連の仕草は視聴者一同へ大きな衝撃を与えた。
『まって???』
『奥さんこれはいけませんよ』
『新しい扉開いた奴ら正直に言え、まず俺な』
視聴者の食い付きにニヤニヤ笑いが止まらない五条。
「いいねぇ〜楽しくなりそう♪ さて、それじゃトークテーマは何に……」
日車の横の椅子に腰かけた五条が司会よろしく話し始めたその時。
「五条! どこにいる!」
遠くから聞こえるのは夜蛾学長の明らかに不機嫌……を通り越して怒っている時の声だ。
「なんか学長すんごい怒ってなーい? やだぁ〜」
「君が何かまたやらかしたのでは?」
「全然心当たりないんだけど。仕方ないなぁ。ちょっと行ってくるから日車さんあとはよろしく〜♪」
軽く丸投げのセリフを寄越して席を立つ五条を勢いよく見やる日車。
「おい待て、一体これは何をどうすれば」
「適当にトークで繋いでて〜。お悩み相談とか何でも良いから。あ、そうだみんな」
だんだん遠ざかっていた五条の声が戻ってきて、ヌッとカメラを横から覗き込んだ。
「日車さんはガチの弁護士資格持った先生でもあるから、コメントはお上品にね♪」
ウインクをして、今度こそ五条は手を振りながら教室を出て行ってしまった。
「どういう意味だ?」
『あっぶね〜』
『↑こいつなに聞こうとした?』
スマホと取り残された日車は、頼まれた以上は任務を完遂するか、と椅子に座り直した。
「五条は悩み相談とか言っていたな。では、彼が戻るまで私が答えられる範囲であれば質問してもらって構わない」
スッと背筋を伸ばし質問を促す日車。まるで学術発表会で学生の発言を静かに聞く教授のようだ。勢いよくコメントが流れていくので追うのが大変だが、とりあえず目に止まった簡単な質問のひとつを読む。
『先生は何の科目担当なんですか?』
「主に社会だ。場合によっては他の科目の代理も務めている。あぁ、体育だけは別だが」
『高校の範囲の全科目を教えられる弁護士資格持ちのイケメン???』
『しかもイケボ搭載』
『どういうことなの』
あまりのハイスペックにざわつくコメント欄を日車は気にも留めず淡々と質問に答えていく。
「では次の質問にいこうか」
『あんさ、これマジの人生相談とかでもいい感じ?』
『チャンネルの主旨とだいぶ違うけど』
『ひぐるませんせがオケなら可?』
「私は構わないが、プライバシーは守るように。君自身や他の個人を特定できるような内容は書かないように気を付けてくれ」
『ちゃんとしてる……』
『えっとじゃあ、すんません、ガチで職場であったトラブルの相談なんですけど……』
数十分後。
「は〜疲れた。夜蛾先生怒りすぎじゃない? 昼休みにキッチンカー呼ぶくらい良いじゃん。お金も僕持ちだから学校に迷惑かけてないし、なにより虎杖達もみーんな喜んでたし」
不機嫌に頬を膨らませ、大股で廊下を歩く五条は日車を置き去りにした教室へようやく戻ってきた。まああの人が怒りっぽいのはいつものことだからな、と気分をあっさり切り替え教室の扉を勢いよく開ける。
「おっまた〜! みんなのごじょせんが帰ってきたよー!」
「五条、戻ったか」
「ごめんね〜日車さん、夜蛾さん本当口うるさくて……ってすご!?」
日車の横に座った五条は配信画面を見て驚きの声をあげた。
「どうした」
「赤スパの量! 僕ぐらいになればよくある事だけどさ、初めてのソロ配信でこんだけ貰えるって何したの?」
「何もしていない。君の言った通り、コメントに寄せられてくる質問に答えていただけだ」
それにしてもさぁ、と五条が続けようとしたところで日車がす、と配信画面を指差す。
「君が戻ってきたら聞こうと思っていたんだが、この赤色の金額が表示されている部分は何だ? これが君の言う赤スパとやらか? 他にも違う色のもあるようだがどう違うんだ?」
「え、日車さん、まじで知らなかったの?」
「知らない」
こてん、と首を傾げる日車。彼は知らない事は知らないと正直に言える、とっても賢い大人だった。
「これは投げ銭って言って〜……」
─五条先生による説明タイム─
「っていうシステム」
一通り説明を終えた五条の前で、日車の顔がどんどん赤から青になり、顔面蒼白になっていく。
「こ……これは……これはそういう意味だったのか!? きっ君たちはこんな事にお金を使うなんて何を考えているんだ!」
投げ銭システムについて教えられた日車は、それはもう焦って、慌てて、わなわなと体を震わせた。
『怒ってるせんせーも素敵です(10000円)』
「また来た!? やめるんだ! このお金は君たちが労働の対価に得た大切なものだろう!? なぜそんなほいほいと……!」
『先生の質問者に寄り添う姿勢に感銘を受けました(10000円)』
『耳と目が幸せでした感謝代です(10000円)』
『今後もゲスト出演きぼんぬ(20000円)』
「あぁっやめなさい! 返金……! そうだ、返金をしなければ!」
『受け付けませーん(10000円)』
『諦めてこれで美味しいもの食べてください(10000円)』
「止まらない! どうすれば止まるんだ!?」
「うわーこんな焦ってる日車さん見るの初めて」
荒れ狂う赤スパの暴風に、冷静な判断ができない日車はあわあわと両手をスマホの前で彷徨わせる。
「あっはは! 日車さん何やってんの!」
「五条っ! 笑ってないで返金の仕方を教えてく、あぁまた送られてきた! やめてくれと言っているだろう!?」
『ひぐるま先生涙目じゃんやめてやれよ(12345円)』
『おっそうだな(10000円)』
「俺はこんなつもりじゃなかったのに!」
なんとかしようとスマホを引っ掴む日車だが悲しいかな、カメラが近くなった事で放送に彼の泣きそうな顔がアップで流れ、それがさらに視聴者を煽る。
『ドアップごちです(10000円)』
『普段の一人称は俺なんですねぇ(25252円)』
『っふぅ……(10000円)』
『なんて美しい鼻筋と三白眼なんだ国宝に指定しよう(50000円)』
「あ、あぁ……」
プッチン
焦りと混乱で制御できない高速回転する日車の脳回路。それは、放送終了ボタン押したら良くね?という簡単な判断とはほど遠い答えを弾き出す。
「こ、壊す……!」
「『『『え?』』』」
「スマホを壊せば止まるだろう!? 皆の大切な資産がこんな事に使われていいはずがない!!!」
ぐるぐるお目目の日車に五条も流石に慌てて静止に入る。
「待ってだめだよ日車さん! これ僕の私物だからやめてよね!?」
「後日弁償するから許せ五条!」
「そういうことじゃないから〜っ!」
日車の手からスマホを奪い取り、離れた机に避難させる。諦めずに手を伸ばそうとする日車を背後から羽交締めにした五条は、ちょうど教室の前を通りかかった助っ人に声をあげた。
「日下部さーん! 日車さんちょっと確保しててー!」
「何騒いでんだよこっちは忙し、ってどうした日車。落ち着けってほら、どうどう」
暴れる日車を日下部に託した五条はスマホ破壊の危機がとりあえず去り一息つく。一方で、日下部の腕の中に彼と向き合った状態で抱き締められた日車は泣きそうな顔で日下部に訴える。
「助けてくれ日下部! 赤いのを止めて返金する方法を教えてくれ!」
「は? 赤いのってなに? なんでこんな可愛……ご乱心なのうちの弁護士先生は」
「後で説明するからさっ、はいっというわけで今回の放送はおしまいね! みんな楽しんでもらえたかな? それじゃまたねー!」
コメント欄にはまだまだ投げ銭砲撃し足りない視聴者達の惜しむ声が流れていたが、とりあえず無事に(?)放送は終了した。
「で、投げ銭とやらはどうなったんだ?」
「いや〜あれは向こうから払い戻し申請してもらわないと基本無理だからさ〜。まぁでも安心してよ! このお金は学生に還元できるように手配するから♪」
「はぁ〜わかった。日車にはそうだな……下手に返金できたって嘘言ってもバレた時に厄介だし、正直に伝えるか」
「うん。ところでさ、なーんで僕こんな目に遭ってんの?」
職員室の床に直に正座させられた五条の頭には大きなたんこぶがひとつ。それをこさえたのは一連の事情を聞いた夜蛾だが、日下部はこの騒ぎの主犯ともいえる五条を冷たい目で見下ろしていた。
「日車にいらんストレスかけんじゃねーよ。ただでさえあいつは有能すぎてあちこち引っ張りだこなの分かってんだろ? 貴重な空き時間に何やらせてんだ」
「だって〜日車さんが少しならいいよって言ってくれたんだもん〜」
ぶぅ、と子供のように唇を尖らせる五条。本人の許可があったんだからいいじゃん。それにめちゃくちゃ盛り上がってたし、やっぱりランキング上位になったし。
色々反論材料を披露しかけたが、日下部の、有事でもあまり見せない鋭い視線に口を噤む。
「こちとら数日まともに一緒に昼休憩入れてねぇんだよ。今日は絶対ぇ被せられると思ってたのに職員室にいねぇから探してたらお前といやがるし。つか今日のアレな、日車を巻き込むのガチで今後一切禁止。しょーもねーことでもなんでも自分のせいでって背負い込みやすいんだぞあいつは」
日下部のほぼ文句のようなお説教を右から左へ聞き流し、とりあえず謝っとくかーと誠意ゼロの謝罪を述べかけた五条はおかしな点に気付く。
「はいはいごめんなさ〜……待って、そこ一緒に休憩取らなくてもよくない? 忙しいなら別で入ればいいじゃん」
「どうやら俺の話は一切聞いてねぇし拳骨は夜蛾さんのだけじゃ足りなかったようだなぁ」
血管がバキバキに浮き出る拳にはぁーっと息をかける日下部。
「暴力反対〜っ!」
「人聞き悪い事言うんじゃねーよ。鉄拳制裁と暴力は別だろーが」
「日下部さんなんか怖いんですけどー!?」
数々のドッキリでもここまで怒んなかったのにおかしくなーい?と五条は周囲に同意を求めるが、彼を助ける者はここにはいない。近くの席で黙々と仕事を進める七海は「自業自得です」と一瞥もくれず、誰もが優しいと評する伊地知ですら「仕方ないですよ五条さん……」と憐れみの視線を向けるだけ。
「俺の寛見を、俺の許可なく勝手に公衆の面前に晒しやがって……覚悟しろよ、五条」
「いい大人が激重独占欲ましましなのどうかと思いまーす!!」
その後、日車が(不本意ながら)稼いだ赤スパは教室の壊れかけていたエアコンの買い替えや、学生が使う備品の購入に充てられましたとさ⭐︎
おわり!