214: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/08/01(金) 01:33:44.19 ID:/NWhJ0i10
純「新王も立ったしこの国も変わっていくだろうさ。…なぁ、主上ってどんな感じの人なんだよ?」
咲「え?」
突如、純に問われた内容に咲は口籠る。
改めて隣に座る純を見上げると、その瞳には明らかに期待の色が浮かんでいた。無意識に咲の額に汗が滲む。
純「咲ならここの官吏として朝廷に出てるだろうし見たことあるよな。やっぱ威厳とかすげぇんだろ?」
咲「い、威厳…?」
思わず返す咲の言葉が震える。
全く持って自分に備わってないだろう資質を問われ素直に落ち込みそうになったが、
向けられる期待の眼差しに何かしらの返答をしなければなるまい。
しかし、今この場で純に本当の事を話すのは躊躇われた。
新王に期待を寄せる彼女の気持ちを壊したくなかった。
咲「実は私もここには上がったばかりで。ま、まだ見習いの身なんです。だから朝廷に出廷できるのなんて先の話で……」
声が揺れているのは心の不安が滲み出ているからだ。だけどそれは違う意味で純を納得させたようだった。
咲の言葉を疑いもせずに純は「なんだ」と表情を緩める。
純「お前も新参者なのか、なら俺と一緒じゃねぇか」
咲「…はい」
純「なら色々知らねぇのも仕方ねぇよな。まぁ可笑しいと思ったんだよ、初めてぶつかった時もすぐに謝ってくるし」
純「ここの官吏みたいに垢抜けてねぇ奴だなぁって」
鋭い指摘に咲は笑みを浮かべながらも内心ヒヤリとしている。
咲「え?」
突如、純に問われた内容に咲は口籠る。
改めて隣に座る純を見上げると、その瞳には明らかに期待の色が浮かんでいた。無意識に咲の額に汗が滲む。
純「咲ならここの官吏として朝廷に出てるだろうし見たことあるよな。やっぱ威厳とかすげぇんだろ?」
咲「い、威厳…?」
思わず返す咲の言葉が震える。
全く持って自分に備わってないだろう資質を問われ素直に落ち込みそうになったが、
向けられる期待の眼差しに何かしらの返答をしなければなるまい。
しかし、今この場で純に本当の事を話すのは躊躇われた。
新王に期待を寄せる彼女の気持ちを壊したくなかった。
咲「実は私もここには上がったばかりで。ま、まだ見習いの身なんです。だから朝廷に出廷できるのなんて先の話で……」
声が揺れているのは心の不安が滲み出ているからだ。だけどそれは違う意味で純を納得させたようだった。
咲の言葉を疑いもせずに純は「なんだ」と表情を緩める。
純「お前も新参者なのか、なら俺と一緒じゃねぇか」
咲「…はい」
純「なら色々知らねぇのも仕方ねぇよな。まぁ可笑しいと思ったんだよ、初めてぶつかった時もすぐに謝ってくるし」
純「ここの官吏みたいに垢抜けてねぇ奴だなぁって」
鋭い指摘に咲は笑みを浮かべながらも内心ヒヤリとしている。
215: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/08/01(金) 01:37:15.06 ID:/NWhJ0i10
纏うものが良くなっても自分の中身はまだそのままなのか、純の注意力が人一倍優れているのか。
どちらにせよ、この話をこれ以上続けていればいらぬ事を言ってしまいそうだったし
時間も時間だったのでその旨を咲は純に伝えた。
純は疑いもせずに気安く頷くと、じゃあまたなと笑った。
後日、また会う約束を交わして彼女とはそこで別れたのだった。
人気のない通路を歩きながら咲は先ほど純に教えてもらった話の内容を思い出している。
彼女がかつて在籍していたという軍の内情。
出世するのも金次第で、私利私欲のために理不尽な命令をも強要される。
王とか平民とか関係なく素直に怖いと感じた。
なぜなら状況は変われど咲自身にも理不尽な境遇には身に覚えがあるからだ。
今の純の話も、即位してから見てきた宮中も……そして、かつて自分が下働きとして働いていた商家も。
結局全て同じではないか。理不尽に、筋が通らないと分かっていながら物事が進んでいってしまう。
肌が粟立ったと同時に、再び自分の途方もない立場に気付き後れしそうになる。
正せるだろうか、今でさえ周りからは何もできないだろうと見縊られているのに。
自分に、今までこの国を蝕んできた歪みを正していく事が果たしてできるだろうか。
どちらにせよ、この話をこれ以上続けていればいらぬ事を言ってしまいそうだったし
時間も時間だったのでその旨を咲は純に伝えた。
純は疑いもせずに気安く頷くと、じゃあまたなと笑った。
後日、また会う約束を交わして彼女とはそこで別れたのだった。
人気のない通路を歩きながら咲は先ほど純に教えてもらった話の内容を思い出している。
彼女がかつて在籍していたという軍の内情。
出世するのも金次第で、私利私欲のために理不尽な命令をも強要される。
王とか平民とか関係なく素直に怖いと感じた。
なぜなら状況は変われど咲自身にも理不尽な境遇には身に覚えがあるからだ。
今の純の話も、即位してから見てきた宮中も……そして、かつて自分が下働きとして働いていた商家も。
結局全て同じではないか。理不尽に、筋が通らないと分かっていながら物事が進んでいってしまう。
肌が粟立ったと同時に、再び自分の途方もない立場に気付き後れしそうになる。
正せるだろうか、今でさえ周りからは何もできないだろうと見縊られているのに。
自分に、今までこの国を蝕んできた歪みを正していく事が果たしてできるだろうか。
224: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/08/08(金) 00:06:25.62 ID:AgaGssca0
咲は深く考え込んでいた。だから注意力は散漫になっていたのだろう。
それでも続く通路を黙々と歩いていて、先の角を曲がった瞬間。
突如として飛び出してくる人影が視界を掠めた。反射的に足を止めて咲はビクリと体躯を揺らす。
眼前に飛び出してきた姿を認識する前に、ぶつからないために背後に下がろうとする。
が、その前に眼前の姿は背後に下がろうとする咲の足元に飛び付き、平伏した。
そのまま腕が伸びてきて下がろうとする咲を逃がさぬように服の裾を掴まれた。
咲「!?」
平伏しているせいで顔は見えないが、官吏特有の格好をした中年ぐらいの男性に見えた。
咲には見覚えはなかったが、きっと朝廷に集まる多くの官吏の中の一人なのではと思う。
男「どうか、奏上する事をお許し下さい」
咲「あの…」
返す言葉が詰まる。
迷いも無く咲へと飛びついてきた姿から想像するよう、この官吏はやはりここを通る咲を待ち伏せしていたのだろうか。
とりあえず手を差し出しながら咲は上体を屈め、まずは顔を上げてくれと声を掛けようとした。
だがその前に、足元に平伏する姿の声は続く。
男「ご察しの通り。御前を無作法に穢す行為は許されない事です」
男「ですが、どうしても主上に奏上したい旨がありまして…恥を偲んでお待ち申し上げておりました」
それでも続く通路を黙々と歩いていて、先の角を曲がった瞬間。
突如として飛び出してくる人影が視界を掠めた。反射的に足を止めて咲はビクリと体躯を揺らす。
眼前に飛び出してきた姿を認識する前に、ぶつからないために背後に下がろうとする。
が、その前に眼前の姿は背後に下がろうとする咲の足元に飛び付き、平伏した。
そのまま腕が伸びてきて下がろうとする咲を逃がさぬように服の裾を掴まれた。
咲「!?」
平伏しているせいで顔は見えないが、官吏特有の格好をした中年ぐらいの男性に見えた。
咲には見覚えはなかったが、きっと朝廷に集まる多くの官吏の中の一人なのではと思う。
男「どうか、奏上する事をお許し下さい」
咲「あの…」
返す言葉が詰まる。
迷いも無く咲へと飛びついてきた姿から想像するよう、この官吏はやはりここを通る咲を待ち伏せしていたのだろうか。
とりあえず手を差し出しながら咲は上体を屈め、まずは顔を上げてくれと声を掛けようとした。
だがその前に、足元に平伏する姿の声は続く。
男「ご察しの通り。御前を無作法に穢す行為は許されない事です」
男「ですが、どうしても主上に奏上したい旨がありまして…恥を偲んでお待ち申し上げておりました」
225: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/08/08(金) 00:10:20.99 ID:AgaGssca0
咲「私に、わざわざですか?」
顔を伏せていてもその声や雰囲気で官吏の必死さが伝わってくるようで、思わず咲も続く彼の言葉に耳を傾ける。
男「私は夏官を務めておりますが、主上にお耳に入れたい事がございます」
男「保身のためかと思われるかもしれませんが、そうではなくて、これは…」
声に必死さが増す。彼の話を聞きながら、夏官の役割を咲は思い出している。
確か国府の中で軍や警備、土木事業を担う官吏だ。
その官吏の中の一人がわざわざこんな宮中の奥まった場所で待ち伏せしてまで咲に話したい事とは一体何なのだろうか。
途切れた官吏の言葉の先を咲は待つ。彼は意を決したように伏せていた頭を上げようとする。
酷くやつれた顔が見えた。が、そのままに官吏の顔が不自然に上下に揺れた。「がっ、」と掠れた声がする。
一瞬の事で、咲は何が起きたのか理解できなかった。
いつの間にか、眼前の官吏は咲の服の裾を掴んだまま床に倒れ込んでいた。
やつれた顔は再び伏せられ、倒れ込む背はピクリとも動かない。
咲が呆然とその姿を見つめていると、更に長い柄の棒が何本か伸びてきて倒れ込む姿を抑えつける。
官吏「ご無事ですか、主上」
気が付くと何人かの守衛にこの場は囲まれていて、その中央を割ってまた咲には見知らぬ官吏が出てきた。
気のせいでなければ、床に倒れ込む姿と似たような色の服装だったと思う。
ただ、状況が目の前でどんどん変わっていく咲は状況が正確に把握できていなかった。
突然意見を述べようと飛び出してきた官吏にも驚いていたが、その話を聞く前に突如として床に打ち倒されてしまったのだ。
言葉を失った咲を前に、目の前の恰幅の良い官吏は守衛達に迷いなく指示を送る。
顔を伏せていてもその声や雰囲気で官吏の必死さが伝わってくるようで、思わず咲も続く彼の言葉に耳を傾ける。
男「私は夏官を務めておりますが、主上にお耳に入れたい事がございます」
男「保身のためかと思われるかもしれませんが、そうではなくて、これは…」
声に必死さが増す。彼の話を聞きながら、夏官の役割を咲は思い出している。
確か国府の中で軍や警備、土木事業を担う官吏だ。
その官吏の中の一人がわざわざこんな宮中の奥まった場所で待ち伏せしてまで咲に話したい事とは一体何なのだろうか。
途切れた官吏の言葉の先を咲は待つ。彼は意を決したように伏せていた頭を上げようとする。
酷くやつれた顔が見えた。が、そのままに官吏の顔が不自然に上下に揺れた。「がっ、」と掠れた声がする。
一瞬の事で、咲は何が起きたのか理解できなかった。
いつの間にか、眼前の官吏は咲の服の裾を掴んだまま床に倒れ込んでいた。
やつれた顔は再び伏せられ、倒れ込む背はピクリとも動かない。
咲が呆然とその姿を見つめていると、更に長い柄の棒が何本か伸びてきて倒れ込む姿を抑えつける。
官吏「ご無事ですか、主上」
気が付くと何人かの守衛にこの場は囲まれていて、その中央を割ってまた咲には見知らぬ官吏が出てきた。
気のせいでなければ、床に倒れ込む姿と似たような色の服装だったと思う。
ただ、状況が目の前でどんどん変わっていく咲は状況が正確に把握できていなかった。
突然意見を述べようと飛び出してきた官吏にも驚いていたが、その話を聞く前に突如として床に打ち倒されてしまったのだ。
言葉を失った咲を前に、目の前の恰幅の良い官吏は守衛達に迷いなく指示を送る。
226: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/08/08(金) 00:14:18.06 ID:AgaGssca0
その光景を呆然と眺めていた咲が「あ」と声を上げたのは守衛に打ち倒された官吏がそのままに引き摺られていこうとしたからだ。
彼は結局、何を咲に意見したかったのだろうか。
それが気になったから思わず体躯が前屈みになるが…その動作を制するように、目の前の官吏が咲に向かって言った。
官吏「御前をお騒がせしました、主上。お怪我はございませんか?」
咲「え?はい、私は何も。ただあの人は大丈夫なんでしょうか?気を失っているようですが」
その問いに、官吏は殊更丁寧に言葉を返してくる。
官吏「主上が気に留める価値もない輩です。…間にあってよろしかった」
咲「?間に合って、とは」
咲が再び言葉を返した先で、官吏は改めて咲に拝礼すると身分を名乗る。
官吏「王の身辺警護を纏めております射人でございます 。実は主上が即位してから宮中にはよからぬ噂が蔓延っていまして」
官吏「主上に無理に取り入ろうとする、などと。……先ほどの輩も、その一味でございましょう」
咲「………」
官吏「主上を守るべき同じ夏官よりそのような輩が出た事、恥じればこそ返す言葉もございません。ですが詮議の程は責任を持って執り行います」
恰幅の良い体躯が眼前で感極まったように震える。その迫力と切々とした声に咲は反射的に頷いた。
事実、咲には彼の意見に反論する要素が何も無かった。
守衛を引き連れた目の前の射人の役目として、それは慣例に従っているのだろうと思ったし。
すると、拝礼より顔を上げた射人は先ほどとは撃って変わって人の良さそうな笑みを浮かべる。額が滲む汗で光っていた。
官吏「お許し頂けて感謝の言葉もございません。…ただこうして直にお側に馳せる事ができたのは不幸中の幸いと申し上げましょう」
そこまで射人が言って、咲もふと疑問が沸いた。
彼は結局、何を咲に意見したかったのだろうか。
それが気になったから思わず体躯が前屈みになるが…その動作を制するように、目の前の官吏が咲に向かって言った。
官吏「御前をお騒がせしました、主上。お怪我はございませんか?」
咲「え?はい、私は何も。ただあの人は大丈夫なんでしょうか?気を失っているようですが」
その問いに、官吏は殊更丁寧に言葉を返してくる。
官吏「主上が気に留める価値もない輩です。…間にあってよろしかった」
咲「?間に合って、とは」
咲が再び言葉を返した先で、官吏は改めて咲に拝礼すると身分を名乗る。
官吏「王の身辺警護を纏めております射人でございます 。実は主上が即位してから宮中にはよからぬ噂が蔓延っていまして」
官吏「主上に無理に取り入ろうとする、などと。……先ほどの輩も、その一味でございましょう」
咲「………」
官吏「主上を守るべき同じ夏官よりそのような輩が出た事、恥じればこそ返す言葉もございません。ですが詮議の程は責任を持って執り行います」
恰幅の良い体躯が眼前で感極まったように震える。その迫力と切々とした声に咲は反射的に頷いた。
事実、咲には彼の意見に反論する要素が何も無かった。
守衛を引き連れた目の前の射人の役目として、それは慣例に従っているのだろうと思ったし。
すると、拝礼より顔を上げた射人は先ほどとは撃って変わって人の良さそうな笑みを浮かべる。額が滲む汗で光っていた。
官吏「お許し頂けて感謝の言葉もございません。…ただこうして直にお側に馳せる事ができたのは不幸中の幸いと申し上げましょう」
そこまで射人が言って、咲もふと疑問が沸いた。
227: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/08/08(金) 00:19:04.47 ID:AgaGssca0
確かにその立場は王の身辺警護が役目ではあるが…目の前の官吏の姿を咲は見た記憶が無い。
頭を傾げると、そんな自分の疑問を悟ったのだろう、射人は言葉を返してくる。
官吏「直にお目にかかるのは初めててございます。私は確かに王の警護を任されておりますが…」
官吏「主上は即語から今まで朝議以外は内宮に籠られておられました。射人と言えと、内宮の守備はまた勝手が違います」
官吏「大僕がその役目かと存じますが、その前に台輔がきっと主上の事を考え何かと気をお配りになっていらっしゃったのでしょう」
咲は目を見開く。射人の言葉を聞き、確かに自分は即位よりこの方内宮より外に出た記憶が無い事を思い出している。
そういえば数日前に智美とて言っていたではないか。自分では気づかなかったが、無謀にも踏み込もうとした輩がいたと。
王朝の初期は混乱が付き物で…先見の無い、馬鹿な奴らが凶行に走る事もあるでしょう、と。
今にして思えば周囲で支えていてくれた官吏達は、あの半身である麒麟も含め自分よりも遥かに高い危機感を抱いていたに違いない。
ならば今、飛び付き、進言しようとした官吏もその一人だった?
ヒヤリとしたものが背筋を走る。気をつけろと言われていたのに無謀だったのは自分の方だ。
ほっと息を吐いて、改めて眼前の射人を見返すと咲は礼を言った。
咲「そうだったんですか。あの、助けてくれてありがとうございました」
官吏「臣下として当然の事でございます。ささ、内殿までご案内致しましょう。どうぞこれよりは私の事もお見知りおき下さい」
再び上げた顔には、人の良さそうな笑顔が浮かんでいた。
釣られるように咲も微笑むと、もちろんです、と射人に言葉を返したのだった。
■ ■ ■
頭を傾げると、そんな自分の疑問を悟ったのだろう、射人は言葉を返してくる。
官吏「直にお目にかかるのは初めててございます。私は確かに王の警護を任されておりますが…」
官吏「主上は即語から今まで朝議以外は内宮に籠られておられました。射人と言えと、内宮の守備はまた勝手が違います」
官吏「大僕がその役目かと存じますが、その前に台輔がきっと主上の事を考え何かと気をお配りになっていらっしゃったのでしょう」
咲は目を見開く。射人の言葉を聞き、確かに自分は即位よりこの方内宮より外に出た記憶が無い事を思い出している。
そういえば数日前に智美とて言っていたではないか。自分では気づかなかったが、無謀にも踏み込もうとした輩がいたと。
王朝の初期は混乱が付き物で…先見の無い、馬鹿な奴らが凶行に走る事もあるでしょう、と。
今にして思えば周囲で支えていてくれた官吏達は、あの半身である麒麟も含め自分よりも遥かに高い危機感を抱いていたに違いない。
ならば今、飛び付き、進言しようとした官吏もその一人だった?
ヒヤリとしたものが背筋を走る。気をつけろと言われていたのに無謀だったのは自分の方だ。
ほっと息を吐いて、改めて眼前の射人を見返すと咲は礼を言った。
咲「そうだったんですか。あの、助けてくれてありがとうございました」
官吏「臣下として当然の事でございます。ささ、内殿までご案内致しましょう。どうぞこれよりは私の事もお見知りおき下さい」
再び上げた顔には、人の良さそうな笑顔が浮かんでいた。
釣られるように咲も微笑むと、もちろんです、と射人に言葉を返したのだった。
■ ■ ■
228: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/08/08(金) 00:22:47.29 ID:AgaGssca0
その日の夜に自室の片隅で燭台を灯し書物を読んでいると、控えめに扉が数回叩かれた。
次いで「よろしいか?」と半身の麒麟の声が聞こえてきたので咲は驚いて顔を上げる。
毎朝義務のよう咲の元へ顔を出してくる菫だが、こうして夜も遅くに突如としてやってくる事は今まで一度もなかった。
咲は驚きより立ち直ると「どうぞ」と入室を促した。
机の上に広げていた書物を綴じて、椅子より立ち上がるのと自室の扉が開くのとは同時だったと思う。
振り向くと、開いた扉の隙間より菫がその身を滑らせて入ってくる所だった。
そして、改めてこちらへと向き直った半身は待っていた自分と視線とが合うと軽く会釈をしてきた。
次いで「よろしいか?」と半身の麒麟の声が聞こえてきたので咲は驚いて顔を上げる。
毎朝義務のよう咲の元へ顔を出してくる菫だが、こうして夜も遅くに突如としてやってくる事は今まで一度もなかった。
咲は驚きより立ち直ると「どうぞ」と入室を促した。
机の上に広げていた書物を綴じて、椅子より立ち上がるのと自室の扉が開くのとは同時だったと思う。
振り向くと、開いた扉の隙間より菫がその身を滑らせて入ってくる所だった。
そして、改めてこちらへと向き直った半身は待っていた自分と視線とが合うと軽く会釈をしてきた。
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