静寂の中に一人。
広すぎる部屋の中に在って、所在無く佇むしかなかった。
■ ■ ■
広すぎる部屋の中に在って、所在無く佇むしかなかった。
■ ■ ■
103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/11(金) 00:50:59.63 ID:HdAV1VQi0
やる気に目覚めた智美は、徹夜で処理し続けた書類の山を抱えながら意気揚々とやってきたのだが。
扉の外より声を掛けて、まずは反応が無いのを不思議に思った。
2度、3度と声を掛けても返事がないのを訝しく思う。
結局、書類を抱えたままの腕が上げた悲鳴に負けて、痺れを切らせて勝手に扉を開けて中に入って行ったのだが。
まずはキョロリと室内を見渡した限り姿は見えない。
きっと奥の個人的な執務室にいるのだろう。
何があったかは知らないが、こうも反応がないのならば彼女の機嫌は期待しない方がいい。
どうしたというのか。折角彼女が長く探し続けていた王も無事に見付かったと言うのに。
取り合えず、智美は入ってからすぐにある机台に抱えていた書類の山をドサリと預ける。
そうして開放された腕の痺れを払う意味も込めてぐるぐる廻しながら、奥に続く部屋へと向かった。
案の定、覗いた室内の先、奥に置かれた書斎机の向こうに。
こちらに背を向けて椅子に座り込むこの部屋の主の姿を確認した。
智美「何回も呼んでるんだがなー…どうしたんだ?菫ちん」
背中が怖いぞ、と軽い調子で声を掛けると、眼前の菫が纏う剣呑さが増したような気がした。
おっと、これはいらぬ火に油を注いでしまったか、と智美は苦笑いを浮かべながら更に奥へと進む。
重厚な書斎机に手の平を置き、その向こうで相も変わらずやってきた智美へ背を向け、
無言を突き通し続けるこの国の台輔に負けじと名を呼んだ。
智美「おーい、菫ちん。こんな近くで呼んでも気付かない程、耳が遠くなったのかな?」
菫「………煩いぞ、智美」
根負けしたのか、小さくではあるが返ってきた菫の声に満足して智美はにんまり笑みを形作る。
智美「どうしたんだ?これからやる事はたくさんあるってのに……」
智美「そんなに燻ぶってちゃ、物事も上手く進まないぞ?折角見つけた主上にも愛想尽かされちゃうかもなー」
菫「……っ!!」
扉の外より声を掛けて、まずは反応が無いのを不思議に思った。
2度、3度と声を掛けても返事がないのを訝しく思う。
結局、書類を抱えたままの腕が上げた悲鳴に負けて、痺れを切らせて勝手に扉を開けて中に入って行ったのだが。
まずはキョロリと室内を見渡した限り姿は見えない。
きっと奥の個人的な執務室にいるのだろう。
何があったかは知らないが、こうも反応がないのならば彼女の機嫌は期待しない方がいい。
どうしたというのか。折角彼女が長く探し続けていた王も無事に見付かったと言うのに。
取り合えず、智美は入ってからすぐにある机台に抱えていた書類の山をドサリと預ける。
そうして開放された腕の痺れを払う意味も込めてぐるぐる廻しながら、奥に続く部屋へと向かった。
案の定、覗いた室内の先、奥に置かれた書斎机の向こうに。
こちらに背を向けて椅子に座り込むこの部屋の主の姿を確認した。
智美「何回も呼んでるんだがなー…どうしたんだ?菫ちん」
背中が怖いぞ、と軽い調子で声を掛けると、眼前の菫が纏う剣呑さが増したような気がした。
おっと、これはいらぬ火に油を注いでしまったか、と智美は苦笑いを浮かべながら更に奥へと進む。
重厚な書斎机に手の平を置き、その向こうで相も変わらずやってきた智美へ背を向け、
無言を突き通し続けるこの国の台輔に負けじと名を呼んだ。
智美「おーい、菫ちん。こんな近くで呼んでも気付かない程、耳が遠くなったのかな?」
菫「………煩いぞ、智美」
根負けしたのか、小さくではあるが返ってきた菫の声に満足して智美はにんまり笑みを形作る。
智美「どうしたんだ?これからやる事はたくさんあるってのに……」
智美「そんなに燻ぶってちゃ、物事も上手く進まないぞ?折角見つけた主上にも愛想尽かされちゃうかもなー」
菫「……っ!!」
104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/11(金) 00:58:04.97 ID:HdAV1VQi0
短くだが息を呑む気配。仕草。
その姿を見逃さなかった智美は脳裏にピンとくるものがあった。瞬時に状況をある程度理解する。
だから、ワハハと軽く見せていた調子を解くと精一杯の呆れを滲ませ言ってやる。
智美「………菫ちん、昨日の今日で、もうやらかしたのか?」
菫「………」
無言は肯定と受け取る。
智美「主上に、何か言っちゃったのか?」
菫より返ってくる言葉は無い。
ただ見つめる先の背中を眺めながら、図星だと気付いた智美は浅く息を吐いた。
智美「不器用な癖に、人に誤解される事だけは器用なんだから。まさかいつもの調子で冷たくあしらったのか?」
さすがに、それは私も許さないぞと。智美にしては珍しく語尾を荒げる。
いくらこの国の神獣であろうとも、その菫が選んだ少女が王であり
つまる所、この才州国に属する智美の王でもあるのだから。
その王を蔑ろにするのなら智美とて怒る権利はあるはずだ。
だから再度、菫へと詰め寄ろうとした瞬間。
今まで背を向けていた菫がくるり、とこちらに向き直る。
突然の事だったから、詰め寄ろうとして大きく開けた口はそのままに、言葉だけが行き場を失った。
智美「………」
ああ。つまる所、眼前の少女は天帝より一つの国へと授けられた尊い神獣の癖に。
こうして人間臭く悩み、智美の目の前で途方に暮れそうになっているのだ。
額に手を当て、智美は天を仰ぎたくなってしまった。取り合えず抱いた怒りは急激に萎んでいく。
その姿を見逃さなかった智美は脳裏にピンとくるものがあった。瞬時に状況をある程度理解する。
だから、ワハハと軽く見せていた調子を解くと精一杯の呆れを滲ませ言ってやる。
智美「………菫ちん、昨日の今日で、もうやらかしたのか?」
菫「………」
無言は肯定と受け取る。
智美「主上に、何か言っちゃったのか?」
菫より返ってくる言葉は無い。
ただ見つめる先の背中を眺めながら、図星だと気付いた智美は浅く息を吐いた。
智美「不器用な癖に、人に誤解される事だけは器用なんだから。まさかいつもの調子で冷たくあしらったのか?」
さすがに、それは私も許さないぞと。智美にしては珍しく語尾を荒げる。
いくらこの国の神獣であろうとも、その菫が選んだ少女が王であり
つまる所、この才州国に属する智美の王でもあるのだから。
その王を蔑ろにするのなら智美とて怒る権利はあるはずだ。
だから再度、菫へと詰め寄ろうとした瞬間。
今まで背を向けていた菫がくるり、とこちらに向き直る。
突然の事だったから、詰め寄ろうとして大きく開けた口はそのままに、言葉だけが行き場を失った。
智美「………」
ああ。つまる所、眼前の少女は天帝より一つの国へと授けられた尊い神獣の癖に。
こうして人間臭く悩み、智美の目の前で途方に暮れそうになっているのだ。
額に手を当て、智美は天を仰ぎたくなってしまった。取り合えず抱いた怒りは急激に萎んでいく。
105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/11(金) 01:03:29.59 ID:HdAV1VQi0
大きく開けたままになっていた口をゆっくり閉じる。
できるだけ穏やかな口調を心掛けてから、智美は菫へと言った。
智美「何があったのか言ってくれ。私でやれる事はするから」
菫「………」
智美「菫ちん」
強い口調で名を呼ぶ。
菫はようやくその重い口を開けた。そして、ぽつりぽつり、言葉を返してくる。
菫「私はただ……主上に朝の挨拶と。そ…側に居たかっただけで」
智美「うんうん」
健気じゃないか、そう素直に智美も思うけれど。
むしろ、不遜な態度が有名な菫をここまで健気にさせる、王たる少女の末を頼もしく思った。
で?と先を促すと……更に、ぽつりぽつり、返ってくる言葉は続く。
菫「だけど、扉を開けて窺うよう外に出ようとした姿が見えたから。…どこか堅い様子も分かったし、だから」
菫「もしや突然心変わりしてまた去ろうとしてるんじゃないかと。そう思ってしまったらつい責める口調になってしまったんだ…」
聞きながら、その時の光景が鮮明に智美の脳裏に浮かぶ。簡単に想像できる。
ああ、やはり……なんとも不器用な少女だ。
智美「で、実際はどうだったんだ?…心変わりして去ろうとしてたのか?」
尋ねると、菫はゆっくり首を左右に振る。違う、という仕草に無意識に智美もほっと安堵の息を吐いた。
この傾きかけた国であって、やっとで見つけた王たる少女だ。
できるならば、無理矢理ではなくて、自発的に王として勤めを果たして頂きたい。その決意をして欲しい。
智美「じゃ、なんで?」
菫「なんでも部屋の掃除をしたかったと。そのまえに道具を探しに行こうとしていたらしい」
智美「………掃除?部屋の?」
菫はコクリと頷く。
できるだけ穏やかな口調を心掛けてから、智美は菫へと言った。
智美「何があったのか言ってくれ。私でやれる事はするから」
菫「………」
智美「菫ちん」
強い口調で名を呼ぶ。
菫はようやくその重い口を開けた。そして、ぽつりぽつり、言葉を返してくる。
菫「私はただ……主上に朝の挨拶と。そ…側に居たかっただけで」
智美「うんうん」
健気じゃないか、そう素直に智美も思うけれど。
むしろ、不遜な態度が有名な菫をここまで健気にさせる、王たる少女の末を頼もしく思った。
で?と先を促すと……更に、ぽつりぽつり、返ってくる言葉は続く。
菫「だけど、扉を開けて窺うよう外に出ようとした姿が見えたから。…どこか堅い様子も分かったし、だから」
菫「もしや突然心変わりしてまた去ろうとしてるんじゃないかと。そう思ってしまったらつい責める口調になってしまったんだ…」
聞きながら、その時の光景が鮮明に智美の脳裏に浮かぶ。簡単に想像できる。
ああ、やはり……なんとも不器用な少女だ。
智美「で、実際はどうだったんだ?…心変わりして去ろうとしてたのか?」
尋ねると、菫はゆっくり首を左右に振る。違う、という仕草に無意識に智美もほっと安堵の息を吐いた。
この傾きかけた国であって、やっとで見つけた王たる少女だ。
できるならば、無理矢理ではなくて、自発的に王として勤めを果たして頂きたい。その決意をして欲しい。
智美「じゃ、なんで?」
菫「なんでも部屋の掃除をしたかったと。そのまえに道具を探しに行こうとしていたらしい」
智美「………掃除?部屋の?」
菫はコクリと頷く。
106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/11(金) 01:10:14.62 ID:HdAV1VQi0
菫「自分が使ったからと。でもそんなことは王のする事ではない、だから必要無いと言った」
智美「………」
智美は話を聞いていて、別段菫の行動を可笑しいとは思わなかった。むしろ、正しい事を言ったと思う。
そして、王たる少女の行動も……昨日まで市井の片隅で生きてきたのならば、仕方ないのかもしれないとも思えた。
菫から聞いた話や、彼女が負っていた傷から連想するに…きっと圧迫された生活を送ってきたのだろうし。
だがそれは菫よりも世間を知っていて、なおかつ柔軟な思考で物事を考えられる智美ならば思い至れる訳で。
つまり、智美が結論付けるに彼女らの行き違いの根本は価値観の差であり、どちらが悪いという話では無い。
ただ、 まだ初対面に近い状態で菫の不器用さだけが向こう側へと伝わってしまったのは頂けないと思った。
智美「それから、主上は何て言ったんだ?」
菫「………何も」
智美「何も?」
菫「俯いてしまって、そのまま暫く待っても顔を上げてすらくれなかった。…鈍い私でも、拒絶されている事は分かる」
菫「ならば、必要とされていないのにあのまま側に留まることはできんだろうが」
気のせいでなければ…語尾は震えていたかもしれない。
こんな菫は王を探して彷徨っていた頃に等しく感じた。
智美「…菫ちん」
気遣いを持って名を呼ぶと、彼女は軽く頭を振った。そして、言葉を続ける。
菫「そういう事だ。…私は、どうすればあの人の側に居てもいいのか…」
菫「麒麟の時の話ではあるが…触れてもらえるのかわからない」
そうしてまた、菫は紫色の瞳を不安気に揺らした。
項垂れる麒麟を前に、仕方なさそうに智美は微笑を浮かべる。
智美「じゃあ、菫ちんは私に何をして欲しいんだ?」
何も知らずにやってきた自分を下がらせるでもなく、こうして中に通したのは多分、頼みたい事があったからだろう。
事実、菫は浅く頷いてから言った。
智美「………」
智美は話を聞いていて、別段菫の行動を可笑しいとは思わなかった。むしろ、正しい事を言ったと思う。
そして、王たる少女の行動も……昨日まで市井の片隅で生きてきたのならば、仕方ないのかもしれないとも思えた。
菫から聞いた話や、彼女が負っていた傷から連想するに…きっと圧迫された生活を送ってきたのだろうし。
だがそれは菫よりも世間を知っていて、なおかつ柔軟な思考で物事を考えられる智美ならば思い至れる訳で。
つまり、智美が結論付けるに彼女らの行き違いの根本は価値観の差であり、どちらが悪いという話では無い。
ただ、 まだ初対面に近い状態で菫の不器用さだけが向こう側へと伝わってしまったのは頂けないと思った。
智美「それから、主上は何て言ったんだ?」
菫「………何も」
智美「何も?」
菫「俯いてしまって、そのまま暫く待っても顔を上げてすらくれなかった。…鈍い私でも、拒絶されている事は分かる」
菫「ならば、必要とされていないのにあのまま側に留まることはできんだろうが」
気のせいでなければ…語尾は震えていたかもしれない。
こんな菫は王を探して彷徨っていた頃に等しく感じた。
智美「…菫ちん」
気遣いを持って名を呼ぶと、彼女は軽く頭を振った。そして、言葉を続ける。
菫「そういう事だ。…私は、どうすればあの人の側に居てもいいのか…」
菫「麒麟の時の話ではあるが…触れてもらえるのかわからない」
そうしてまた、菫は紫色の瞳を不安気に揺らした。
項垂れる麒麟を前に、仕方なさそうに智美は微笑を浮かべる。
智美「じゃあ、菫ちんは私に何をして欲しいんだ?」
何も知らずにやってきた自分を下がらせるでもなく、こうして中に通したのは多分、頼みたい事があったからだろう。
事実、菫は浅く頷いてから言った。
107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/11(金) 01:17:01.56 ID:HdAV1VQi0
菫「主上には一方の王としての教養を学んでもらわねばなるまい。今まで学を身に付ける機会も少なかったようだから」
菫「そのために信頼に足る師も用意する。…それらを傍で世話する役目を、お前に頼みたいんだ」
智美「私でいいのか?誤解を解くためにも菫ちんが側についた方がいいんじゃ…本当はそのつもりだったんだろ?」
菫「…………」
やはり、無言は肯定でしかなくて。暫くの後、菫は首を左右に振った。
そのまま俯き加減に、ぽつりと呟く。智美にと言うよりは……まるで自分に言い聞かせるように。
菫「私は……きっと嫌われてしまっただろうから」
だから。と、菫は首を巡らせ全く関係のない方向を徐に見上げる。
その視線を智美が追いかけても、開かれた窓より白い雲と、青い空しか見えない。
だが何かを感じ取るよう向ける菫の様子から、彼女が何を見ているのかは推測できた。
多分菫がじっと見つめる先には、彼女しか辿れない王の気配があって。
智美から見れば遠くに在る王へと一心に心を傾けている麒麟が目の前にいるだけだ。
本当に、不器用な事この上ない。
智美「まぁ、台輔が決めて、命じるのなら。……私は従います、臣下ですから」
菫「頼む」
間髪入れずに、返ってきた堅い声を聞いて。
これ以上、この場で何かを言い返すのは得策ではないと智美は判断する。
だから徐に目の前の書斎机に預けていた体を起こし一歩分だけ後退すると、姿勢を正した。
そして、胸の前で合掌をし「御意」と、遠くを見たままの台輔に向かい智美は一礼したのだった。
■ ■ ■
菫「そのために信頼に足る師も用意する。…それらを傍で世話する役目を、お前に頼みたいんだ」
智美「私でいいのか?誤解を解くためにも菫ちんが側についた方がいいんじゃ…本当はそのつもりだったんだろ?」
菫「…………」
やはり、無言は肯定でしかなくて。暫くの後、菫は首を左右に振った。
そのまま俯き加減に、ぽつりと呟く。智美にと言うよりは……まるで自分に言い聞かせるように。
菫「私は……きっと嫌われてしまっただろうから」
だから。と、菫は首を巡らせ全く関係のない方向を徐に見上げる。
その視線を智美が追いかけても、開かれた窓より白い雲と、青い空しか見えない。
だが何かを感じ取るよう向ける菫の様子から、彼女が何を見ているのかは推測できた。
多分菫がじっと見つめる先には、彼女しか辿れない王の気配があって。
智美から見れば遠くに在る王へと一心に心を傾けている麒麟が目の前にいるだけだ。
本当に、不器用な事この上ない。
智美「まぁ、台輔が決めて、命じるのなら。……私は従います、臣下ですから」
菫「頼む」
間髪入れずに、返ってきた堅い声を聞いて。
これ以上、この場で何かを言い返すのは得策ではないと智美は判断する。
だから徐に目の前の書斎机に預けていた体を起こし一歩分だけ後退すると、姿勢を正した。
そして、胸の前で合掌をし「御意」と、遠くを見たままの台輔に向かい智美は一礼したのだった。
■ ■ ■
108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/07/11(金) 01:26:31.68 ID:HdAV1VQi0
時間を見計らって、智美は目当ての部屋へと辿り着く。
扉の前に立つと丁度中より「今日はここまでですので、お疲れ様でございました」と柔い声が聞こえた。
だから、たっぷり一拍置いてから「失礼します」と声を掛けて扉を開く。
中には丸い机が置かれていて、対照的な位置に座る二人の人影があった。
一人は老齢で温厚な雰囲気の老人で…学の師だ。
市井より、菫が信頼に足る人物だと御呼びした先生で。
事実、智美も初対面で顔合わせした時はその柔らかな物腰、態度に好感を持った。
そしてそれは先生の目の前で「ありがとうございました」と丁寧に礼を述べる少女も同じだったのだと思う。
彼女が、咲が、この国の王だ。
最初こそかちこちに緊張した面持ちだったが。
こうして先生に教えを請う回数が増える度に、彼女らの師弟としての親しさが増しているような気がする。
師「丁度良くいらしゃいましたな。それでは主上、また明後日参上致しますので」
咲「はい。宜しくお願い致します」
咲はたまたま今まで学門より遠ざかる生活を送っていたから無知に近い状態だったが。
元々の素養は高いのだろう、こうして師に教わればそれこそ水を吸い込む綿のように知識を習得していった。
そうやって師より学問と道徳を学ぶ事も大事だけれど、
彼女が一番に目を輝かせたのは、奥
扉の前に立つと丁度中より「今日はここまでですので、お疲れ様でございました」と柔い声が聞こえた。
だから、たっぷり一拍置いてから「失礼します」と声を掛けて扉を開く。
中には丸い机が置かれていて、対照的な位置に座る二人の人影があった。
一人は老齢で温厚な雰囲気の老人で…学の師だ。
市井より、菫が信頼に足る人物だと御呼びした先生で。
事実、智美も初対面で顔合わせした時はその柔らかな物腰、態度に好感を持った。
そしてそれは先生の目の前で「ありがとうございました」と丁寧に礼を述べる少女も同じだったのだと思う。
彼女が、咲が、この国の王だ。
最初こそかちこちに緊張した面持ちだったが。
こうして先生に教えを請う回数が増える度に、彼女らの師弟としての親しさが増しているような気がする。
師「丁度良くいらしゃいましたな。それでは主上、また明後日参上致しますので」
咲「はい。宜しくお願い致します」
咲はたまたま今まで学門より遠ざかる生活を送っていたから無知に近い状態だったが。
元々の素養は高いのだろう、こうして師に教わればそれこそ水を吸い込む綿のように知識を習得していった。
そうやって師より学問と道徳を学ぶ事も大事だけれど、
彼女が一番に目を輝かせたのは、奥
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