ジェローム・ポーレン著、北丸雄二訳『LGBTヒストリーブック 絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』に登場するLGBTは、ほぼ全てヒーローとして描かれている。
思慮深く心優しいLGBTが困難に立ち向かい、体制側を変えていく歴史物語。
だがそれはある種の捏造であり、当然LGBTの中には悪人もいる。
偉人にはLGBTが多かったというストーリーはLGBT運動の戦略上必要だったのかもしれないが誤解を招いた事も事実。
細野豪志議員はLGBTを支援する理由として「LGBTには才能のある人が多く、国や地域に活力が出る」と述べた。
これに多くの当事者は反発。
「弱者に配慮をしているつもりかもしれないが、LGBTを特別視することは逆に差別」だと批判した。
「LGBTは能力が高い論」は、なぜ世の中に流通しているのか。
過去を振り返ると、何を隠そうLGBT活動家自身がこうした珍説をプレゼンしていたことがわかる(まさにこの本がその一例だ)。
細野氏はそれを素朴に信じただけ。
細野氏は「え?アンタたちが言ってたじゃん…」と狐に抓まれた気分だろう。
こうした社会運動における「大きな物語」を批判するのが宇野常寛氏だ。
宇野氏は吉本隆明を補助線に論を展開。
吉本は全ての共同幻想からの自立を説く。
国家の語るイデオロギーも、その打倒を主張する反権力のイデオロギーも共同幻想という意味では同じ。
他人の物語への同一化は人を思考停止に陥れる。
だから吉本は丸山眞男を「戦後民主主義という共同幻想が人々にもたらす思考停止」に無自覚なイデオローグとして断罪した。
ある共同幻想(近代天皇制)に対し、別の共同幻想(戦後民主主義)で対抗しようとする丸山眞男の思想は自立から最も遠いものだと位置付けた。
近年、市井のLGBTからLGBT活動家への風当たりがますます強くなっている。
その理由の一つが運動における「依存と自立」だと私は感じている。
個人を左派イデオロギーに埋没させるLGBT運動への嫌悪感。
LGBT運動はトランプ大統領と合わせ鏡であり、両者は容易に入れ替わることを無意識の内に分かっているのだ。
宇野氏は「ディズニーの語る物語のメッセージはリベラルで多文化主義的だが、その手法はドナルド・トランプのそれと酷似している」「大衆の欲する虚構を情報技術で作り上げ、それを与えることで動員するという点においてディズニーとトランプに差はない」と分析。
LGBT運動を考える上で傾聴に値する。
x.com/gogodai5/statu…
この本には、カマたくも、もちぎさんも、登場しない。
彼らの方がLGBT活動家よりもよっぽど社会に影響を与えただろうに。
雑誌『薔薇族』の伊藤文學さんから編集長職を引き継いだ竜超氏も載っていない。