機関車工学:下巻(その384)火室の修繕:ステー
【 「ステー」 】
火室における「ステー」は火室の膨脹に伴ふて屈曲作用を受くるものなれば、常に折損せんとするの傾向を呈し、永く使用すれば亀裂を生じついに全く折損するに至るものなり。
既に第 13編において述べたるがごとく火室の固定部分は板の膨脹すること僅少なれども、これを遠ざかるに従ひ漸々その量を増加するものなれば、「ファウンデーション・リング」付近は「ステー」の折損僅少にして、上部及び前部において特に多きを見るべし。また銅製火室における「ステー」の亀裂は、多く外殻(shell)の内部水側に接近して発生し火室の水側に起ること少し。けだし火室は銅にして柔軟なれども、外殻は鋼にして「ステー」の屈曲作用に抵抗すること強きをもってなり。しかして屈曲作用に帰因する内力は板面に接近したる部分なるをもって、「ステー」の亀裂は必ず板に接近して起るを例としその中間において起ること稀なり。
「クラウン・ステー」もまた前部両側において多く折損するを例とす。しかれども「サイド・ステー」よりも長大なるをもって屈曲作用を受くること比較的薄弱なり。故に「サイド・ステー」のごとく速に折損するものにあらず。特に「クラウン・バー」を応用せるものにおいてはほとんど永久的なり。第 1607図は垂直「ステー」がその下部「クラウン・プレート」に接近したる部分より腐食し始むる状況を示す。
「ステー」の折損せるものは小き手鎚をもって軽打すれば、濁音を発するをもって発見することを得べし。折損したるものは「ステー」の頭部を切り去り、しかる後両側より「ドリル」を用ひて「ステー」の径より約 8分の1 インチだけ小なる穴を穿ち、「チゼル」をもってその内部を打ち切り缶内に落すべし。また「ステー」穴に環状をなして残れる部分は、これまた「チゼル」もってていねいに切り取るべし。
しかしてネジ山の完全なる場合は「ステー・タップ」をもってネジ底をさらへ、これに相当する径大の「ステー」をねじ込むべし。もしまたネジ山の損傷したる場合には「リーマ」をもって少しく孔を削り、さらに「ステー・タップ」をもってネジを作るべし。「ステー」をねじ込みたる後は生にて浅き鋲頭を形成すること既に第 11編に述べたるがごとし。機関庫における修繕にして頭を形成し得ざるときは「テル・テール・ホール」の孔を削り拡げ、「ポンチ」をもってなおその孔を打ち拡げ、もって無頭の「ステー」を用ふることを得べし。
「ステー」の折損したるものは音響をもって判断し得べく、また「テル・テール・ホール」より蒸気の噴出するをもって発見し得べしと言えども、その亀裂しまたは腐蝕して未だ折損するに至らざるものは、洗缶の際または修繕の際缶内を照らしてよく検査し、不安全なるものあるときは折損に先ちてこれを取替ふる手配をなすべし。
「サイド・ステー」は第 1608図に示すがごとき特種の器械をもって、銅棒または鉄棒より直ちに自動的に製作し得るものにして、多数の機関車を修繕する工場においてはこれを設備して一般の需要に応ずるを良とす。
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