孫正義「上等だよ。どっちかが潰れるまでやってやるよ」PayPay「100億円キャンペーン」は「狂気」から生まれた
LINEヤフーの会長職を退任した川邊健太郎氏が、自身初の著書『7つの激変——いかがわしい者たちが主役の「インターネット産業」30年史』を上梓した。 学生起業した1995年から今日までの30年間、自身がインターネット産業の「ど真ん中」で目撃してきた興奮と狂気の歴史を、「検索・SNS・動画・通販・広告・文化・起業」の7つのテーマから語り尽くした1冊だ。 その30年史に、最後まで迷った末に収録を見送られた原稿がある。ここでは、その中から日本のキャッシュレス市場の覇権争い、そしてPayPay誕生のドラマを再編集し、前後編に分けてお届けする。
前編:PayPay誕生前夜「なんだ、このしょぼい技術は!?」LINEヤフー会長、川邊健太郎が中国で見た衝撃の光景 ■「辺境の小国」が頂点に立つための“奇策”とは? 辺境の小国が、強大な大国に戦いを挑む——歴史を振り返れば、その多くは玉砕覚悟の無謀な戦いです。 しかし、時には常識外れの「奇策」によって、歴史が大きく動くことがあります。 私たちPayPayが仕掛けた「奇策」。それが後に社会現象を巻き起こし、日本のキャッシュレス元年を象徴する出来事にもなった「100億円あげちゃうキャンペーン」でした。これが、3つ目のターニングポイントです。
後発である以上、とにかく、まずはユーザーに一度使ってもらわないことには始まらない。PayPay社内ではそのキャンペーン施策について連日議論を交わしていました。その末に、第1弾のポイント還元キャンペーンとして次の結論を導きます。 「LINE Payは6%のポイント還元をやっている。それなら、うちは8%で応戦しよう!」 ライバルより少しだけ条件のよい数字を提示する。マーケティングの定石ともいえる手堅い判断です。
しかし、私たちが仕掛けようとしていたのは、わずかなシェアを奪い合うような局地戦ではありません。勝者のいない、まったく新しい市場の覇権そのものをめぐる「天下獲り」です。後発の私たちがユーザーの決済習慣を根こそぎ変え、一気に頂点に立つためには、想定の範囲内のインセンティブでは意味がないのです。 私たちの出した「8%」という数字は、これから始まる壮大な戦いの規模を、まったく捉えきれていない。そのことを私たちに知らしめたのは「あの人」でした。
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