【解説】「独身偽装」で2年交際…不妊治療経て妊娠も“既婚者”と発覚で460万円あまりの賠償命令 現状は“罰則なし”法整備の可能性は…
■出会いのきっかけは「リアル」が最多
こうした「独身偽装」の被害を訴える人たちによって、2024年には「独身偽装被害者の会」が設立された。同会はホームページ上でアンケートを実施し、これまでに被害を訴える本人や関係者ら合わせて207人が回答。(現在も回答を募集中) 「独身偽装」は素性を隠しやすいマッチングアプリ上の問題と思われがちだが、アンケートの結果、出会いのきっかけは「マッチングアプリ(約43%)」を抑え、仕事関係や知人の紹介などの「リアルでの出会い(約49.3%)」が最多という意外な実態が明らかになった。さらに、回答者のうち約2割にあたる42人が妊娠(中絶・流産・出産を含む)に至っているという。 しかし、回答した人のうち約60%は、弁護士に相談するなどの法的手続きを進めておらず、“泣き寝入り”となっていることもわかった。
■それでも“罰則はなし”…法整備の可能性は?
当事者の人生を狂わせ、周囲に深刻な影響を与えてしまう「独身偽装」。いわゆる「ロマンス詐欺」のように、金銭をだまし取った場合は「詐欺罪」となるが、独身と偽り交際するという行為に対して刑事責任を問う法律はないのが現状だ。 「被害者の会」の代表・マイコさん(仮名)は6月、法整備の可能性について考えるため、大阪大学大学院の島岡まな教授を訪ねて意見交換を行った。 マイコさんは、アンケートの結果を紹介し、「独身偽装は恋愛トラブルではなく、性暴力。既婚者だと知っていれば性行為には及んでおらず、発覚した後の精神的ダメージや人生設計への影響は重大だ」などと訴えた。その上で、「独身偽装」の刑事罰化や、民事賠償額の引き上げ、マッチングアプリ事業者に対して本人確認の強化や違反者の通報制度などの対策を求めた。 刑事罰化をめぐっては、2023年に性犯罪をめぐる刑法改正が行われた際、「独身偽装」についての議論もあったが、類型として加えるには至らなかった。法改正の検討会でヒアリングにも参加した島岡教授は、「被害の深刻さがしっかりと社会で理解されれば、法改正の可能性は十分ある」との考えを示した。その上で、「痴漢やセクハラも、時間をかけて社会問題として認識が広がった。独身偽装についても性被害として認識され、被害者が救われる社会になるべきだと思う」と語った。