極右を支持する女性たちの心理とは? 仏の国民連合、日本の参政党が煽る分断…移民たちに生活が奪われるという根拠のない恐怖
日本における参政党に限らず、今世界中で「極右」政党が躍進している。極右思想は、伝統的な性別役割や、男性中心的で女性を従属的な立場に置く秩序を重視しているが、何故か女性から指示を集めている。自らの権利を制限しかねない政治運動を、なぜ女性自身が支持し、時には政党の顔となって推進するのだろうか。 【写真】W杯に出場中の仏代表・ムバッペもフランス国内における極右政党の躍進を危惧 フランスの極右政党・国民連合を筆頭に、世界各地の極右勢力で進む「女性化」現象は、単なるイメージ戦略では説明しきれない複雑な背景を持つ。フランスの大学院で哲学を学ぶ森野咲氏が、現地での最新の研究や報道の成果をもとに、この逆説の構造を作るメカニズムを明らかにする。
極右の「女性化」
フランス極右の近年の躍進を考える上で避けられないのが、女性による国民連合支持の増加である。一般的に、極右の支持層は男性に偏ると考えられがちだが、驚くべきことに、近年の国民連合の支持層に男女差はほとんど見られない。 さらに、マリーヌ・ルペン、イタリア首相のジョルジャ・メローニ、ドイツAfD(ドイツのための選択肢)共同党首のアリス・ワイデルのように、女性政治家が極右勢力の顔となり、リーダーシップを担うことも、いまや珍しい光景ではない。 こうした極右の「女性化」とも言える傾向は日本でも観測されている。2025年夏の参院選で躍進した参政党は、神谷宗幣代表による「高齢の女性は子どもが産めない」などの発言が批判を浴びた一方で、女性候補者の割合は候補者の半数近くに達し、全政党のなかでも高い比率であった。 さらに、選択的夫婦別姓反対派で、自民党内でも最右翼とみなされてきた高市早苗が、2025年10月に憲政史上初の女性首相に選出された。このように、保守的な性道徳や家族観を掲げる政治勢力が女性の支持を集め、さらには女性政治家自身がその中心でリーダーシップを発揮するという、一見すると逆説的な状況が世界各地で生じているのである。 極右政党にとって、女性の動員は単なるイメージ戦略にとどまらない。それは、ナショナリズムを広め、過激な主張を「普通のもの」として見せ、政治的に正当化するうえで重要な役割を果たしている。 女性は、極右思想の暴力性や過激さを和らげるためのただの飾りではない。むしろ、その運動を内部から支える不可欠な存在なのである。しかし同時に、その存在は、極右イデオロギーが抱える矛盾を浮かび上がらせる。 極右思想は、伝統的な性別役割や、男性中心的で女性を従属的な立場に置く秩序を重視する。それにもかかわらず、その思想を支持し、広める役割を担っているのは、他でもない女性自身なのだ。 極右運動に参加する女性たちは、ミソジニー(女性蔑視)的な秩序のなかで「弱く、守られるべき存在」とされる一方で、その秩序を能動的に推進する政治的主体でもある。極右の女性たちは、従順さと行動力、脆弱さと大胆さという、矛盾する性格を併せ持っている。 では、なぜ一部の女性は、自らの権利を制限しかねない政治運動の「大使」として振る舞うのか。そして、なぜそのような戦略は実際に機能し、女性票の獲得へ繋がっているのだろうか。