「今回は違う」と人はなぜ言いたがる?──バブル時に見られる自己正当化バイアス
「今回は違う」と人はなぜ言いたがる?
──バブル時に見られる自己正当化バイアス
経済や株式市場が異常な熱気に包まれると、ある種の“魔法の言葉”が飛び交うようになります。
それが、「今回は違う(This time is different)」というフレーズです。
過去のバブル崩壊を知る人ですら、なぜか同じ罠に陥り、この言葉を使ってしまう。
なぜ、人はバブル期にこの言葉を口にし、冷静な判断を失うのでしょうか?
自己正当化バイアスとは何か?
・自己正当化バイアス(self-justification bias)とは、自分の選択や行動を都合よく正当化し、間違いを認めにくくする心理傾向のことです。
・投資の世界では、「自分の判断は合理的で間違っていない」と信じたいがために、明らかに過熱した相場にもかかわらず、「まだ上がる」と根拠の薄い期待を抱いてしまいます。
・このバイアスは、サンクコスト効果(損切りを避ける心理)とも密接に関連し、損を出すことへの恐れや後悔回避の感情によってさらに強化されます。
「今回は違う」が生まれる4つの要因
・1. 希少性バイアスとFOMO(取り残される不安)
今回のバブルはAI、ブロックチェーン、新興国消費、脱炭素など、「かつてない技術やトレンド」が背景にあるため、「これは従来のバブルとは違う」と信じ込みやすくなります。
・2. 群集心理による正当化
周囲の誰もが儲かっていると、自分だけ慎重に構えるのが怖くなります。「みんなが買っているから正しい」と考えることで、自分の判断を補強しようとします。
・3. 過去の成功体験の呪縛
一度バブル相場で利益を出した人ほど、同じような相場環境で「今回も勝てる」と思いやすくなり、以前とは明らかに異なる状況でも「今回は違う」と言ってしまいます。
・4. 経済学的無知と複雑性の回避
バブル時は理屈を超えた値動きが起こります。理解できない動きを「今回は新時代だから」と片づけてしまうことで、安心したいという防衛本能が働きます。
歴史に学ぶ「今回は違う」の実例
・1929年 アメリカ株の大暴落前
「株式市場は恒久的な成長期に入った」と信じられていたが、大恐慌が始まった。
・1980年代後半 日本のバブル期
「日本の土地は有限だから価値は下がらない」「金融自由化でこれまでと違う時代」と語られていたが、90年代の長期低迷に突入。
・2000年 ドットコム・バブル
「インターネット企業は従来の収益モデルとは無関係」「新経済だからPERは意味がない」という主張がまかり通っていた。
・2008年 サブプライムローン危機
「金融工学によるリスク分散で崩壊は起きない」という自信があったが、CDOとレバレッジの連鎖により金融システムが崩壊した。
・2020年代 グロース株や仮想通貨の急騰
「テクノロジーの破壊的進化は過去の常識を超える」「中央銀行の金融緩和で株は永遠に上がる」と語られたが、その後の調整で現実が露呈。
冷静さを保つために必要な視点
・過去のバブルと“違っている”ように見えるのは毎回同じです。
・人間の認知バイアスや欲望、集団心理が繰り返されている限り、「今回は違う」は“毎回同じ”誤解です。
・「違う」のではなく、「違うと信じたい」という欲望が言わせているにすぎません。
まとめ
・「今回は違う」という言葉は、自己正当化バイアスの象徴的フレーズであり、バブル期に多くの人が使いたくなる心理的トリガーです。
・バブルの熱狂の中でこそ、「歴史に学ぶ冷静さ」が求められます。
・一歩引いて「自分も同じバイアスにかかっていないか?」と問い直す視点が、投資家としてのリスク管理力を養う第一歩です。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や投資対象への売買を推奨するものではありません。
投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。
相場環境や経済状況は常に変化しており、本記事に記載された情報が将来も正確・有効であることは保証できません。
また、過去の事例や傾向が、今後も同様に繰り返されるとは限りません。
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