エゴって何者?生存本能からひも解く心のしくみ|シリーズ:エゴと感情のマネジメント_vol.2
こんにちは、野村りなです。
前回は、このシリーズ全体のご紹介をしました。
今回は「エゴ」という言葉の正体を、人間の歴史や脳のはたらきから少し丁寧に見ていきたいと思います。
エゴは人間を生かしてきた力
「エゴ」というと、自己中心的でわがまま、といった否定的なイメージを持つ人が多いと思います。
でも、本来のエゴは「人間を生き延びさせてきた大切な力」です。
例えば、
お腹が空いたら「食べたい」と感じる
危険を察したら「逃げたい」と思う
仲間から受け入れられたい、評価されたいと思う
競争で勝ちたい、優位に立ちたいと感じる
これらはすべて、生存や種の存続に必要だった本能的な欲求であり、エゴの根っこです。
つまりエゴは、人間が数十万年にわたって「生き延びる」ために備わった自然なしくみ。
悪いものどころか、なくてはならないものなのです。
脳のしくみから見るエゴ
このエゴのはたらきは、脳の進化の過程と深く関わっています。
人間の脳は大きく分けて二つの層で説明されることがあります。
原始的な脳(脳幹+大脳辺縁系)
生命維持や感情反応をつかさどる部分。ここには、恐怖や警戒を察知する扁桃体があり、危険をいち早くキャッチします。また、報酬や快感を感じる「報酬系(ドーパミン回路)」もここに含まれます。理性的な脳(大脳新皮質、特に前頭前野)
計画、判断、抑制、論理的思考をつかさどる部分。原始的な脳が出す「欲求」や「感情」を調整し、社会に適応できるよう働きます。
つまり、エゴは原始的な脳の声であり、それを理性的な脳が調整することで、私たちは社会的な存在として振る舞えているのです。
エゴは自然なこと
ここで大切なのは、エゴ自体は悪いものではないということです。
空腹を感じる、危険から逃げる、承認を求める。すべては自然で健全な反応です。
エゴがあるからこそ、私たちは「働きたい」「成長したい」と思えるし、挑戦や創造も生まれます。
むしろ、エゴがなければ、人は無気力で危険から身を守ることもできず、文明も築けなかったでしょう。
現代社会でエゴが暴走するとき
ただし、問題は「エゴが過剰に働きすぎる」ときに起こります。
原始時代、エゴは命を守るために必要でした。けれど現代では、同じしくみが「成果を出さなきゃ」「人に負けたくない」「もっと評価されたい」といったかたちで表れます。
それが行きすぎると、
休めない
人と比べすぎて苦しい
不安や怒りが強くなる
といった「心の疲れ」につながります。
エゴとどうつきあうか
エゴは「なくす」ことはできません。それは人間にとって本能だからです。
大切なのは、
「あ、いまエゴが強く反応しているな」と気づくこと
必要以上に振り回されず、理性的な脳でバランスをとること
たとえば会議で「相手に勝ちたい!」と思ったときに、「これは生存本能に根ざすエゴの声だな」と気づくだけで、冷静に言葉を選べるようになることがあります。
まとめ
エゴは、敵でも厄介者でもなく、人間が生き延びるための大切な相棒です。
ただし、放っておくと暴走することもあるので、「気づく」「調整する」ことが大切になります。
次回は、このエゴと切っても切れない「感情」について。
「イラッとするのはなぜ?」「嬉しいのはどうして?」
感情の正体を、一緒に探っていきましょう。
マガジン「エゴと感情のマネジメント」のご紹介
このシリーズは、noteマガジン 「エゴと感情のマネジメント」(無料) の一部としてお届けしています。
エゴや感情に振り回されながらも、それを否定せずに受けとめ、マインドフルに働くための視点を11回にわたってまとめていきます。
より多くの人々が、人間らしさを活かして、しなやかに働けるようになることを目指しています。
「しんどいときに立ち戻れる場所」として、ぜひマガジンをフォローしていただけたらうれしいです。
参考文献
Baumeister, R. F., & Bushman, B. J. (2017). Social psychology and human nature. Cengage Learning.
Damasio, A. (1994). Descartes' error: Emotion, reason, and the human brain. Putnam.
LeDoux, J. (1998). The emotional brain: The mysterious underpinnings of emotional life. Simon & Schuster.
Panksepp, J. (1998). Affective neuroscience: The foundations of human and animal emotions. Oxford University Press.



コメント