「スパイ防止法制定促進国民会議」とは
『暗号名 黒猫を追え!』をDVD化した「スパイ防止法制定促進国民会議」は、国際勝共連合の関連組織であり、勝共連合は統一教会(世界基督教統一神霊協会/現・世界平和統一家庭連合)の友好団体である。その名の由来は「国際的な共産主義に勝利するための連合」、すなわち反共産主義──1968年の設立以後、自民党の親米保守派とともに活動してきた。
80年代、勝共連合の機関紙・思想新聞や同じく友好団体である日刊新聞・世界日報の新年号には、「勝共推進議員」と呼ばれた自民党の政治家の名前がずらりと並び、選挙における堅固な協力体制が築かれていた。
堀幸雄『戦後の右翼勢力』(勁草書房)は勝共連合を「韓国から渡ってきた宗教に端を発しており、日本の右翼運動とはやや異質」と定義。反共のイデオロギーを主体としており、いわゆる民族派とは一線を画する存在であった。
1960年、総理大臣として日米安保条約の改定を果たした自民党・岸信介は親韓をモットーに統一教会の教祖・文鮮明と交流があり、勝共連合の設立に尽力。「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」の初代会長になった岸は、ソウルで行われた国際勝共決起大会に「私のもっとも尊敬する一人である文先生は、民族をこえアジアと世界のために粉骨砕身、努力してこられました」とメッセージを寄せ、憲法改正とスパイ防止法制定を宿願として87年に亡くなった。
その孫が安倍晋三──2022年に暗殺された、かつての内閣総理大臣である。通算在職日数3188日、憲政史上最長を記録した安倍は保守派として「美しい国、日本」を掲げながら2013年に特定秘密保護法を制定、その遺志を2026年現在の首相・高市早苗が受け継いでいる。
60年代に時を戻すと、笹川良一や児玉誉士夫ら右翼の大物も国際勝共連合を支持。反共の同志として民族派が手を組んだ。だが名誉会長を務めた笹川はのちに辞任し、80年代なかばに統一教会の霊感商法や合同結婚式がマスコミで大きく報じられたこともあり、右派と勝共の関係は変化していった。
当時、スパイ防止法の制定に対して各芸術団体や左派の文化人は次々と反対。日本映画監督協会(理事長:大島渚)も声明を発表し、街頭デモを行った。『あやまちはくりかえしません 国家機密法は許さない』(85年)という記録映画が作られ、テレビ朝日の2時間ドラマ『密約 外務省機密漏洩事件』(78年)が放映から10年を経て劇場公開される展開を見せた。