自閉スペクトラム症の息子が国立大医学部に現役合格し、国家試験も合格。医師でもある母が続けたルーティン
実家をAirbnbに登録して大騒ぎ
ここまでお読みになると、非常に順調にいっているように思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。発想力・行動力が高いといえば聞こえはいいですが、成長した今でも、びっくりするような行動で家族や友人を振り回すことがたびたびあります。 たとえば、家族も知らないうちに、実家をAirbnbに登録して、ゴールデンウィークに急にお客さんがやって来て大騒ぎになったことがありました。旅行者の方も、泊まりに来たら普通の住宅で住人もいて、さぞ驚かれたことと思います......。 息子は「うちには使っていない部屋があるからいいじゃん!」と言うのですが......思いつきで行動して、その先どうなるかの見通しが弱いからこそ生じる出来事です。結局、その方には2泊していただいて事なきを得ましたが、今でもこの話は語り草です。 ほかにも、町おこしイベントを立ち上げたところ、打ち合わせのために全国各地から80人もの若者たちが実家に集まったこともありました。しかも、提唱者であるタロウ自身は途中から別のミーティングにオンラインで参加して自室にこもりきり。その間、家族が困るとか、参加者が途方に暮れるとかは想像ができません。 自分がどこに行っても「浮いている」という感覚を常に感じて居場所を求めているため、それが会社を興したり、イベントを立ち上げたり、といった行動力につながっているようです。私を含め家族や昔からの友人はすっかり慣れていますが、大人になってもその特性に伴うトラブルは多少なりともあるため、ある程度は許容する覚悟は必要です。
9年かけて医学部を卒業
行動力を発揮してさまざまなことにチャレンジした息子の大学時代。うまくいかないことも多かったと思います。留学していたとはいえ、2年留年扱いになり、クラスメートになじめず浮いた存在でしたし、医学部の卒業試験も1年留年。2年目も一発合格とはならず、再々試まで受けてようやく合格することができました。卒業までに9年かかった計算になります。 ほかにもやりたいことがたくさんあるため気が散ってしまい、なかなか試験の準備に集中できなかったようです。優先順位がつけにくいというのもASDの特徴です。留年中は、学業も人間関係もうまくいかない状況が続き、しかもこの後には難関の医師国家試験が控えており、その勉強はとうてい間に合っていない状態でした。当時、「このままで、オレは医者になれるんだろうか」と、息子もかなり苦悩していました。 ですが、こんなとき彼を支えてくれたのが「なんとかなるさ!」とポジティブに自分を信じる気持ちです。自分を信じる気持ちとは、「自己肯定感」と言い換えてもいいかもしれません。大事なのは、「失敗することもあるし、危機的な状況に陥ることもあるけれど、自分なら大丈夫!」と思えること。 少し遡りますが、実は幼い頃の息子はひどくネガティブ思考の子どもでした。当時の口癖は、「どうせオレなんて......」「きっとうまくいかないよ」「どうせ怒られるから」。生まれ持っての性格というよりも、やはりADHDとASD傾向から生じる数々のトラブルによって、何をやってもうまくいかないという思いにとらわれてしまったようです。また、発達障害であると判明する前だったとはいえ、私自身、常にタロウをガミガミと叱りつけていました。できないことを指摘したり、嫌がることを無理やりやらせたり......。いま思うと、やってはいけないことばかりです。 でも、小学3年生で発達障害の傾向があると恩師に言われたあと、「このままではいけない」と悟りました。親の私がこれまで取ってきた態度も、息子のネガティブ思考に拍車をかけていることに気づいたのです。 ネガティブ思考のまま、人生を送ってほしくない。 なんとかして、自己肯定感を上げなくては! そう思ってはじめたのが、寝る前のナイトルーティンです。「寝る前に3つ、楽しかったことを親子でお互いに話す」というもので、目標として「毎晩必ず笑って寝かせる」ことを設定しました。 今日からすぐにでもはじめられる簡単な習慣なので、ぜひ実践してみていただきたいのですが、楽しい気持ちで夜を過ごすというのは、親の心にも非常によい効果があります。ほかにも、「自己肯定感アップ作戦」を長いこと続けた結果、息子は幼かった頃とは性格が180度変わりました。前にも触れましたが、起業したりイベントを立ち上げたり、と驚くほど前向きな性格になったのです。