2026/06/22 (月) 18:00 33
現役時代はKEIRINグランプリを3度制覇、トップ選手として名を馳せ、現在は評論家として活躍する競輪界のレジェンド・山田裕仁さんが岸和田競輪場で開催された「高松宮記念杯競輪」を振り返ります。
2026年6月21日(日)岸和田12R 第77回高松宮記念杯競輪(GI・最終日)決勝
左から車番、選手名、期別、府県、年齢
①郡司浩平(99期=神奈川・35歳)
②古性優作(100期=大阪・35歳)
③犬伏湧也(119期=徳島・30歳)
④山田庸平(94期=佐賀・38歳)
⑤眞杉匠(113期=栃木・27歳)
⑥簗田一輝(107期=静岡・30歳)
⑦新山響平(107期=青森・32歳)
⑧河端朋之(95期=岡山・41歳)
⑨寺崎浩平(117期=福井・32歳)
【初手・並び】
←①⑥(南関東)⑨②(近畿)④(単騎)③⑧(中四国)⑤(単騎)⑦(単騎)
【結果】
1着 ②古性優作
2着 ⑥簗田一輝
3着 ③犬伏湧也
今年の「上半期」を締めくくる6日制のビッグ「高松宮記念杯競輪(GI)」が6月16日から大阪府の岸和田競輪場で開催されています。勝ち上がりが東西に分かれていること、一次予選がポイント制で準決勝がほぼ2着権利であることなど、独特の面白さと難しさの両方があるシリーズですね。6月21日に決勝戦が行われましたが、そこに至るまでの過程も、特別競輪にふさわしい激闘の連続でした。
梅雨の時期でもあり、激しい雨のなかでのレースもありましたね。最終日は天候こそ回復しましたが、バックが強い追い風で、レースへの影響は大きかったと思いますよ。注目はやはり、地元・大阪のエースである古性優作選手(100期=大阪・35歳)でしょうね。今年のダービー王に輝いてから最初の特別競輪で、しかも地元開催とあっては、気合いが入らないわけがありません。
一次予選(2走)でのポイント上位者は、全員が準決勝に駒を進められる、4日目の青龍賞と白虎賞に出走。東の選手が走る青龍賞は、関東の「最強コンビ」である、吉田拓矢選手(107期=茨城・31歳)と眞杉匠選手(113期=栃木・27歳)がワンツーを決めましたね。そして西の白虎賞は、打鐘でかました寺崎浩平選手(117期=福井・32歳)が主導権。その番手から差した古性選手が、1着をとっています。
そんな好調モードの選手たちとは対照的に、調子がいまひとつだったのが脇本雄太選手(94期=福井・37歳)や郡司浩平(99期=神奈川・35歳)です。脇本選手はなんとか準決勝まで勝ち上がりましたが、見せ場なく8着に敗退。郡司選手はシリーズのなかで調子を上げ、準決勝ではうまくインを突いて1着をとりましたが、まだ本来のデキにはなさそうな印象を受けました。
そのほかの準決勝では、ここも眞杉選手と連係した吉田選手が、勝負どころで佐藤慎太郎選手(78期=福島・49歳)にブロックされて6着に敗退。眞杉選手は勝ち上がるも、勝ったのは絶好調モードの簗田一輝選手(107期=静岡・30歳)でした。古性選手は寺崎選手とのコンビで、準決勝も危なげなく通過。最終ホームから豪快に捲って後続を突き放した、寺崎選手のスピードは素晴らしかったですね。
決勝戦に勝ち上がった組だと、新山響平選手(107期=青森・32歳)や犬伏湧也選手(119期=徳島・30歳)もデキは上々。山崎賢人選手(111期=長崎・33歳)と嘉永泰斗選手(113期=熊本・28歳)も非常にいい仕上がりだったのですが、こちらは残念ながら準決勝で敗退しています。山崎選手、あのデキならば決勝戦でも通用すると思っていただけに、個人的にはかなり残念でした。
決勝戦まで勝ち上がったのは、熾烈なバトルをくぐり抜けてきた猛者ばかり。6日制のGIだけあって、動きにキレのある選手が揃いました。2車ラインが3つに単騎が3名というコマ切れ戦で、動きのあるレースが期待できそうですね。南関東勢は、郡司選手が先頭で番手を簗田選手が回ります。郡司選手らしい巧みな立ち回りで、前々で攻める走りをしてくることでしょう。
近畿勢は、ここも寺崎選手が先頭で、番手に古性選手という組み合わせ。寺崎選手は、古性選手が番手のときは駆けっぷりが本当にいいんですよ。勝ち上がりの過程でもみせていた思い切りのよさを、決勝戦でもみせてくれることでしょう。
中四国勢の先頭を任されたのは犬伏選手で、その番手を河端朋之選手(95期=岡山・41歳)が回ります。タテ脚の強力さならば、どこにも負けていませんね。
そして単騎勝負が、山田庸平選手(94期=佐賀・38歳)と眞杉選手、新山選手の3名。いずれも自力は十分ですが、それをどのタイミングで、どのように使うかが問われるレースとなりそうですね。着をまとめるならば「近畿勢の直後」が正解ですが、古性選手を差さねば優勝はないのですから、いい位置とは一概にはいえない。しかし、他力本願で勝てるほど甘くもない。難しいですよ、これは。
では、決勝戦の回顧に入りましょう。レース開始を告げる号砲が鳴ると、1番車の郡司選手と2番車の古性選手、8番車の河端選手が自転車を出していきます。ここは郡司選手がスタートを取って、南関東勢が前受けを決めます。近畿勢の先頭である寺崎選手は3番手からで、単騎の山田選手は5番手。後ろ攻めの中四国勢は6番手からで、7番手に眞杉選手。最後方に新山選手というのが、初手の並びです。
レースが動き出したのは、青板(残り3周)周回の3コーナーから。後ろ攻めとなった犬伏選手が外から上がっていくと、眞杉選手もこれに連動。犬伏選手は赤板(残り2周)掲示を過ぎてから、前を斬って先頭に立ちます。次の「順番」である寺崎選手は、中四国勢の後を追いつつ1センターを通過。バックストレッチの入り口で一気に加速し、力強く前を叩きにいきました。
これに単騎の山田選手も連動し、寺崎選手が外から先頭に並んだところで、レースは打鐘を迎えます。打鐘後の2センターで3車が前に出切って、犬伏選手は4番手に。眞杉選手が6番手、郡司選手が7番手、そして新山選手が変わらず最後方という隊列で、一列棒状で最終ホームに帰ってきました。主導権を奪った寺崎選手が飛ばし、中団や後方に動きがないまま最終1センターを回ります。
古性選手は寺崎選手との車間をきって、後方の動きを何度も確認しつつ追走。最終2コーナー過ぎから中団の犬伏選手が仕掛けますが、先頭で飛ばす寺崎選手がかかっているのもあって、前との差がなかなか詰められません。犬伏選手は最終バックでも山田選手の外併走で、その後ろの眞杉選手や郡司選手、新山選手が一気に捲ってくるような気配も、この時点ではありません。
最終3コーナーの入り口で、後方の郡司選手が空いていた最内を通って、山田選手の後ろまで進出。新山選手も仕掛けますが、こちらは外を乗り越えるルートを選択します。ここで山田選手が外帯線の外に出て、犬伏選手を警戒する古性選手も内を空けたことで、最内に進路が発生。そこを最短距離で駆け抜けようと、郡司選手と簗田選手が一気の加速で突っ込んでいきます。
ほぼ同じタイミングで、犬伏選手が少し外に膨らんでから戻り、山田選手も外帯線の外に出たことで、河端選手の進路が狭まります。内の山田選手と接触しかけた河端選手は、ここで後退。そして内を突いた郡司選手は、一瞬のうちに山田選手の内まで進出。しかし、古性選手が外帯線の内に戻ったことで前が詰まり、外に活路を求めました。しかしそこは、山田選手や犬伏選手がいる密集地帯です。
郡司選手が古性選手の外に抜けようとしたところで、自転車の後輪と山田選手が接触。これにより、郡司選手は車体故障を起こしてしまいます。山田選手は落車をまぬがれますが、アオリを受けた犬伏選手とともに、イエローライン付近まで振られてしまいました。この間に、最終4コーナーで空いた最内をうまく抜けてきたのが簗田選手。単騎の眞杉選手も続いて、最後の直線に向きます。
眞杉選手は簗田選手に続いて内を抜ける際に、車体故障で落車しかけていた郡司選手と接触。バランスを崩しかけますが、態勢を立て直して再び前を追います。先頭ではまだ寺崎選手がいい粘りをみせていますが、ここで古性選手は外に出し、満を持して寺崎選手を差しにいきます。簗田選手は寺崎選手の直後から、古性選手との間を割って進路をこじ開けようとします。
外からは犬伏選手と山田選手も追ってきますが、車体故障のアオリを受けたのもあり、前とはかなり差がある。30m線で古性選手が差して寺崎選手の前に出ますが、その内の狭いスペースから、簗田選手が前に出ようと追いすがります。ゴール直前で簗田選手と寺崎選手が接触して、寺崎選手が転倒落車しますが……それでも、簗田選手は古性選手を捉えられませんでしたね。
僅差ながらハッキリ先頭で、古性選手がゴールイン。続く2位が簗田選手で、外からしぶとく伸びた犬伏選手が3位で入線します。落車しつつ滑り込んだ寺崎選手が4位、眞杉選手が5位というのが上位の入線結果。しかし、当然ながらゴール後には審議の赤ランプが灯って、かなり長い審議に入ります。上位入線したほぼすべての選手が審議対象ですから、そりゃあ時間を要しますよ。
大荒れのレースとなりましたが、審議の結果は「失格なし」で確定。古性選手が、3年ぶり3度目の大会制覇を決めています。5月の平塚ダービーに続くGI制覇となりましたが、強いレースで導いてくれた寺崎選手が落車とあっては、全力で喜びたくとも喜べない。残念ながら笑顔なき表彰式となりましたが、このシリーズで古性選手がみせた強さは、ファンの心に残るものだったと思いますよ。
殊勲賞は当然、寺崎選手。ゴール前での落車は残念でしたが、打鐘前から犬伏選手を叩きにいく積極的な走りで、最後も本当によく粘っています。繰り返しになりますが、古性選手の前を任されたときの寺崎選手は、本当に思い切りのいい走りをする。後続は仕掛ける機会をうかがっていましたが、その「ワンチャンス」がなかった。戦略的にも戦術的にも、近畿勢の完勝といえます。
2着の簗田選手は、絶好調を生かしての上位食い込みでしたね。前を任せた郡司選手が、詰まるリスクを覚悟の上で内に突っ込んだのが、この結果につながりました。とはいえ、郡司選手は車体故障や落車で周りに迷惑をかけており、簗田選手自身も寺崎選手と接触してしまったことを踏まえると、なかなか褒めづらい。簗田選手にとって、大きな収穫と反省点の両方があった大会だったかもしれません。
犬伏選手は3着という結果でしたが、GI決勝戦の大舞台で正攻法の勝負ができたことは、得がたい経験となったはずです。一気のカマシや捲りで前をゴボウ抜き……といったレースのほうが力を出せるタイプではあるのでしょうが、さらに上を目指すならば、もっと走りに「幅」があったほうがいい。そうすることが、迷わず思い切りよく走れることにもつながってくると思います。
山田裕仁
Yamada Yuji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校第61期卒。KEIRINグランプリ97年、2002年、2003年を制覇するなど、競輪界を代表する選手として圧倒的な存在感を示す。2002年には年間獲得賞金額2憶4434万8500円を記録し、最高記録を達成。2018年に三谷竜生選手に破られるまで、長らく最高記録を保持した。年間賞金王2回、通算成績2110戦612勝。馬主としても有名で、元騎手の安藤勝己氏とは中学校の先輩・後輩の間柄。