教養講座「日本思想1―国学入門篇」(石橋直樹)
いま、神道を考えることは可能か
近代日本を考えるとき、私たちはしばしば「国家」「宗教」「文学」「民俗」「ナショナリズム」といった言葉から出発します。
しかし、それらの言葉が近代において制度化される以前、日本にはどのような思考の回路があったのでしょうか。そのために、歴史に学び、日本思想から現代を立ち上げるための教養講座(講義全5回+ゲスト回)を始動します。講師は私、石橋直樹が務めます。
今回の講座(日本思想1)で扱うのは、近代から近世へと連なっていく思想の基層としての国学です。来期(日本思想2)以降では、近代日本思想や宗教思想などに展開予定です。
本居宣長、平田篤胤、近代神道、国家神道、霊魂思想……。これらを単なる過去の学問としてではなく、現代の私たちが日本思想を考え直すための入口として読み解いていきます。
本講座では、次の問いを中心に据えます。
いま、神道を考えることは可能なのか。
神道を、〈国家神道〉という枠組みに回収せず、日本思想史・民俗学・霊的想像力の問題として捉え直すことはできるのか。そしてその淵源としてあった平田篤胤以後の国学が、近代日本の精神史で果たした役割を明らかにすることが重要である。
全5回の講義を通じて、国家神道をめぐる問題から、国家神道に対抗する所謂〈異端神道〉、そして平田篤胤が作り出した神道の想像力までをたどります。
さらに特別ゲスト回も開催します。ゲストは八幡書店社主・武田崇元さん。平田篤胤を中心とする霊魂思想、宮地神仙道、本田親徳、星野輝興、そして近代以後の「もう一つの神道」の系譜についてお話を伺います。
教養講座「日本思想1―国学入門篇」
概要ー国家神道に対抗するものとしての「異端神道」へ
近代日本において、神道はしばしば「国家神道」という枠組みのなかで語られてきました。そこでは神道は、天皇制国家、国体論、国民道徳と結びつき、近代国家を支える宗教的・思想的装置として理解されます。
しかし「国家神道」という枠組み自体に疑義が呈されているのみならず、実はそれだけではない神道のあり方も存在しております。つまり、より広い学知のネットワークの中で、別種の神道のあり方が模索されていたのです。
神道研究者・斎藤英喜は、近代神道を考えるうえで「異端神道」という概念を提示しました。国家神道の主流的な語りから外れた神道的想像力、霊学、神道系新宗教、オカルティズムなどが、国家神道の枠組みに対抗しながらも存在するものとして再定位されました。また、斎藤の論考には「神仙・調息・ファシズム―平田篤胤と近代異端神道をめぐって」として、この「異端神道」の系譜が語られています。
本講座では、この〈異端神道〉という視角を重要な導きの糸とします。
ここでいう「異端神道」とは、単に奇矯な神道、周縁的な神道という意味ではありません。
むしろそれは、国家神道の制度的・公的な語りに対して、霊魂、幽冥、神仙、鎮魂、帰神、民俗的想像力、神秘的身体技法といった領域から、もう一つの神道の可能性を開いてきた思想の系譜です。
たとえば、本田親徳の霊学神道があります。
本田親徳の霊学は、鎮魂・帰神・太占といった実践を中心に展開し、のちに大本教の出口王仁三郎、神道天行居の友清歓真など、神道系新宗教の形成にも影響を与えたとされています。
また、宮地水位・宮地巌夫の神仙道も重要です。
宮地水位の宮地神仙道は、神仙界、幽界、霊的修行、神秘的身体観を含む、近代神道のなかでもとりわけ秘教的な系譜として位置づけられます。
では、この「異端神道」の源泉はどこにあるのでしょうか。本講座では、その重要な源流として平田篤胤の神道を取り出します。
平田篤胤の思想は、単なる国学の一形態にとどまりません。
死後の世界、幽冥、霊魂、神々の世界をめぐる篤胤の思考は、近世から近代へと流れ込む霊的想像力の巨大な源泉となりました。篤胤の神道は、近代以降の異端的・霊的な神道思想を考えるための避けて通れない入口です。
この講座が目指すのは、国家神道を否定するために神道を語ることではありません。
そうではなく、「国家神道」の影に隠れて見えにくくなった、もう一つの神道思想史を掘り起こすことです。それは、神道の一つのプロテスタンディズムとしてあった思想史的可能性でもあります。
もう一つの神道の可能性を、一緒に探っていきましょう!
特別ゲスト回:武田崇元さんをお迎えして
第2回では、八幡書店社主・武田崇元さんをゲストにお迎えします。
1950年生まれ。伝説的オカルト誌「復刊地球ロマン」(1976~1977)の編集長として秘教的伝統の更新を企て、学研「ムー」の創刊に顧問として参画、神道霊学書籍の発掘を目的とする八幡書店を創立(1981年)、1983年には「出口仁三郎の霊界からの警告」(光文社)がベストセラーになるなど80年代のオカルトブームに決定的な影響を与える。幻覚誘導装置の開発研究にも尽力。
武田さんは、宮地神仙道、本田親徳、星野輝興をはじめとする近代神道・霊学・秘教的思想の領域において、長年にわたり重要な仕事を積み重ねてこられました。また『霊的最前線に立て!』などでの証言は、近代以降の日本における霊的思想の展開を考えるうえで、避けて通ることのできないものです。
今回のゲスト回では、平田篤胤を中心に、近世から近代、そして現代にまで連なる霊魂思想の系譜について伺います。
平田篤胤とは何者だったのか。
篤胤の神道思想は、近代神道の中でどのように受け継がれ、変形されていったのか。
宮地神仙道や本田親徳らの思想は、国学以後の日本思想にどのような位置を占めるのか。
そして、現代において「霊的なもの」や「神道的なもの」を考えることには、どのような意味があるのか。
武田さんによるお話、石橋直樹を聞き手とした対談、参加者からの質疑応答を通じて、通常の思想史では見えにくい「もう一つの日本思想史」に迫ります。
スケジュール
第一回(7月1日) 〈国家神道〉とは何だったのか
第二回(7月5日) 特別ゲスト回:武田崇元さんを迎えて
第三回(7月17日) 〈異端神道〉とは何か
第四回(7月24日) 平田篤胤を読む:〈異端神道〉の淵源
第五回(7月31日) 本居宣長を読む:「古事記伝」総論の精読
第六回(8月8日) 今、神道を実装するには
講義回(第一回・第三回・第四回・第五回)
毎回、最低三時間ほどを予定しています。質問や議論に応じて延長する予定です。19時スタートを予定しています。
基本的にZOOMでリアルタイム形式。石橋が講義を行いますが、講義の途中で適宜質問・議論することができます(ゼミ形式)。
アーカイブについては、録画したものを限定配信します。後日についても、質問やコメントについては適宜受け付けています。
ZOOMリンクは限定Discordで配信し、後日の質問・コメント、または議論についてもDiscordのチャンネルを使用します。
特別ゲスト回(第二回)
7月5日(日) 18時から21時
タイトル「霊的思想の淵源としての平田篤胤」
武田崇元さん×石橋直樹 企画協力・司会:比嘉光太郎さん
現地参加+オンライン配信(リアルタイム+アーカイブ)の形式で実施します。
武田さんに直接質問等をすることが可能です。対談後、交流会等も予定しています。受講者には、Zoomにてリアルタイム配信があります。
アーカイブについては、録画したものを限定配信します。後日についても、質問やコメントについては適宜受け付けています。
こんな人に受けてほしい!
思想としての神道を知りたい
日本文化論に興味がある
自分には教養がないと思っている
個人儀礼としての神道に興味がある
霊的最前線に立ちたい
身体を鍛えたい
強くなりたい
参加申込方法(6月26日〆切)
受講料
20,000円(税込)
通しの受講となります。各回単独でのご購入はいただけません。
支払い方法は銀行振込となります。
申込フォーム・受講までの流れ
締切:6月26日(金)24:00まで
① Googleフォームに必要事項を記入してください。(6月26日まで)https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScq8xBOIMaq0ABNGmebsxJYJ0x3mOCrD6OgYvA1YWfsuwOulA/viewform
※自働返信のメールが届かない場合は、メールアドレスが間違っているか、迷惑メールに振り分けられている可能性があります。
② 振込先の口座が入力メールアドレス先に通知されます。6月29日17時までに受講料をお振込ください。
③ お振込の確認でき次第、お振込の確認メールが届きます。そちらのメールで、講座限定Discordにご招待します。Zoomなどのリンクはそちらの限定Discordに配信いたします。
主催・問い合わせ先
石橋直樹 naoki.pc@icloud.com
石橋直樹(Ishibashi Naoki)
宗教学・近世思想史・批評。2001年生、神奈川県出身。論考「ザシキワラシ考」で、2020年度佐々木喜善賞奨励賞を受賞し、民俗学を中心に執筆活動をはじめる(論考はその後『現代思想』「総特集=遠野物語を読む」に掲載)。論考「〈残存〉の彼方へー折口信夫の「あたゐずむ」から」で、第29回三田文學新人賞評論部門を受賞。論考「看取され逃れ去る「神代」」(『現代思想』「総特集=平田篤胤」)の発表以降、平田篤胤を中心とした国学思想・儀礼を専門に研究を進める。編著『批評の歩き方』等々に寄稿。(X=@1484_naoki)。


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