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社会はどう変わるのか?「正しい一本道」という幻想

「どのやり方が正しいのか?」社会運動を見ていると、ついそればかり考えてしまう。でも、社会は私たちのイメージ通りには変わらないのかもしれない。変化って、もっと偶発的で、もっと雑多なものだから。



社会運動を見たとき、自分の中で起きること

ここ数ヶ月で、社会運動っていうものが、多くの人にとって急に身近になった。

これまでは教科書の中とか、自分とは遠い世界の話みたいに感じていた人も多かったと思う。けど今はSNSを開けば社会運動の発信が流れてくるし、抗議やデモや政治の話題を目にすることも増えた。

そうすると、運動そのものだけじゃなくて、それを見ている自分自身にも、初めて出会うことになる。

これを見ると、なんか嫌な気持ちになるな、とか。
なんでこんなやり方するんだろう、とか。
これはすごくわかるな、とか。

自分の性格や考え方は知っているつもりでも、「社会運動を目の前にしたとき、自分はどう反応する人間なのか?」を知るのは初めて、という人も多いんじゃないかと思う。

SNSを見ていると、自分が実際に参加している現場だけじゃなく、よその町で知らない誰かがやっているいろんな試みも、どんどん目に入ってくる。

このプラカードは強すぎないか。
この言い方じゃ伝わらないんじゃないか。
もっと別のやり方があるんじゃないか。

そんな反応が心の中に立ち上がるのは、自然なことだと思う。

だって、みんな本気だから。このままじゃまずい、急がないと取り返しがつかなくなるかもしれない。そういう危機感をどこかで抱えているからこそ、目に入ったものに本気で反応してしまう。

だから、反応すること自体は、悪いことじゃない。むしろ、当然のことだと思う。

問題は、その反応が起きた、あとだ。

「最高の方法」は存在するのか

本気だからこそ、私たちはこう考えはじめる。もっと早く、もっと効率的に、もっと効果的に。いちばん効くやり方は何だろう、と。そうやって、「最高の方法」を探す議論に、転がっていく。

でも、ここで一度、立ち止まりたい。

その「いちばん効くやり方」「最高の方法」はたぶん存在しない。

というのも、社会は、賢くてうまい方法を見つけて、それを実行すれば狙い通りに変わる、というほど単純にできてない。

もちろん、一つひとつの現場で、「どうすれば届くか」「どうすればリスクを減らせるか」「どうすればより多くの人が参加しやすくなるか」を本気で考えることには意味がある。そこを手放せと言っているわけじゃない。

問題にしたいのは、個々の現場での工夫ではなく、それを「運動全体が従うべき一つの正解」にしてしまう発想のほうだ。

実際の社会の変化は、もっと偶発的だ。

失敗だと思っていたことが、回り回って突破口になる。
誰も狙っていなかった偶然が、大きな波になる。
本気で練り上げた戦略が、ほとんど何も起こさずに終わることもある。
逆に、なんの気なしに遊びでやったことが、あとから大きな意味を持つこともある。

何が効くかは、前もってわからない。

社会変革は、一本道では起きない

社会変革の歴史を振り返っても、そんな都合のいい一本道には、なっていない。うまいやり方を見つけて、実行して、大成功して、次の日に政府が動いた。なんてことは、起きない。社会はそんな風にコントロールできるものじゃない。

なのに、「最高の方法」を探しはじめた瞬間、私たちはこの偶発的で、一本道じゃないという当たり前を、なぜか急に忘れてしまう。

どこかに正しい一本道があって、賢く押せば狙い通りに進む。そういう絵を、つい描いてしまう。

でも、社会が変わっていくということは、偶発的で、何が効くか前もってわからないものだとしたら。

そこから逆算すれば、やることは、はっきりしている。

雑多な試みは、遠回りじゃない

できるだけ多くの手を、いろんな方向から打っておくこと。いろんな人が、いろんな場所で、いろんなやり方で、同時に動いていること。

これは、「いろんな人がいた方がいい」っていう、きれいごとの話じゃない。何が当たるか前もってわからない以上、たくさん試していること自体が、社会を変える確率をいちばん上げてくれる。

雑多な試みは、遠回りじゃない。ってことだ。

こう言うと、「結局それも“正解は多様性だ”って、一番いい方法を示してるだけじゃないか」と思うかもしれない。私は、どの試みが当たるかを当てようとしているんじゃない。当てようとするのを、やめようと言っている。正解を一つに絞らないからこそ、どこかで何かが引っかかってくれる可能性を少しでも残したい。

そして、手放したいのは、「全員が同じ一番いい方法に揃うべきだ」という思い込みだ。

削るべきなのは、試みではなく「正解は一つ」という思い込み

だから、「そのやり方は効率が悪い」「その方法は間違っている」と言って、いろんな場所で立ち上がってきた試みを削っていくこと。それは、よかれと思いながら、自分の手持ちを、自分で減らしていることでもある。

間違いは、選ぶやり方を間違えることじゃない。「正しいやり方が一つあって、みんなでそこに揃えるべきだ」と思いこむこと、そのものだと知ってほしい。

もし、社会運動がうまくいってほしいと思うなら。確かめるべきなのは、「正しいやり方が見つかったか?」じゃない。

今日も、いろんな場所で、いろんな人が、いろんなやり方で動いているか?あちこちでいろんな試みが、ちゃんと起きているか?

まずは、そこなんじゃないかと、私は思う。

正しい一本道でないことの希望

そして、この話には希望がある。

社会を変えたいと思うと、どうしても力が入る。

もっと正しくやらなきゃ。
もっと効果的にやらなきゃ。
もっと賢く、もっと戦略的に動かなきゃ。

そう思ってしまうのは、私たちは追い詰められていて、危機感や焦りを感じていて、本気だからだと思う。

でも、もし社会が変わっていくことが、そんなにきれいにコントロールできるものではないのだとしたら。偶然や、失敗や、意図していなかった出来事が、あとから波になっていくものなのだとしたら。

私たちは、そこまで全部を背負いこまなくてもいいのかもしれない。

動ける日に、動ける人が、動ける範囲で動く。自分がやってみたい抗議の仕方をする。これならできそうだと思えるアクションをする。大きな意味や、立派な戦略がなくても、「ちょっとやってみたい」「これなら面白そう」と思えることをやってみる。

そんなことをしても意味がない、と言われそうなことでも、やってみたいなら、やっていい。なぜなら、何があとから意味を持つかは、誰にもわからないからだ。

もちろん、危険なことを無理にやれという話ではないし、考えなくていいという話でもない。

でも、すべての行動に、最初から正しさや効果や戦略を背負わせなくてもいい。

何にも考えていなかったような小さなアクションが、あとから誰かの記憶に残るかもしれない。その場では失敗に見えたことが、別の人に引き継がれて、違う形で生きるかもしれない。

そういう、棚ぼたみたいなルートが存在してしまうところも、社会運動の面白さなんだと思う。

だから、「正しい一本道なんてない」ということは、ただ厳しく覚えておくべき教訓じゃない。むしろ、それを覚えておくことで、少し気持ちを楽にしてくれるお守りになる。

完璧な方法を選べなくてもいい。
最高の戦略を持っていなくてもいい。
その日できることを、その日できる形でやる。
ときにはサボる。
ときには手を抜く。
それでも完全に離脱しないで、細く続いていく。

社会運動にとって本当に大事なのは、ひとつの正解に全員がたどり着くことではなく、いろんな人が、いろんな温度で、いろんな形で、そこに残り続けていることなんじゃないかと思う。

※社会運動おたく向けのおまけも書きました。


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