親イスラエル系のシンクタンクの過激な言説
たとえば対イラン強硬派のネオコン系で、親イスラエルとして知られるハドソン研究所は、オバマ政権期に成立したJCPOAを、終始一貫して批判し、アメリカの離脱を促してきた。現在でも、ハドソン研究所の中東研究部門は、トランプ大統領を擁護して、徹底的にイランを叩くべきだという主張を展開している。
同じような立ち位置は、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)という代表的な親イスラエル的なシンクタンクでも、はっきりと確認できる。今回の戦争をめぐっても、AEIの中東研究部門は、アメリカ政府に批判的な論調のメディアを攻撃し、トランプ政権の継戦姿勢を称賛するだけでなく、さらに徹底的にイランを叩き潰すべきだと主張し続けている。
戦争研究所(ISW)は、日本でも頻繁に参照されるシンクタンクだ。豊富な資金があるらしく、有益な地図やデータを提供している。ただし経営陣は、筋金入りのネオコン(積極的な対外軍事行動の推奨派)だ。そこでISWの論説などは、イデオロギー的に偏ることがある。今回の戦争においても、開戦初期には、イランは早期に弾薬を枯渇させてきているので、アメリカの勝利が必至である、という趣旨の言説を書き連ねていた。イランが否定し続けていたパキスタンでの第二回和平協議が開催されることは確実だ、といったアメリカ政府の主張を補強するような論説を出す場合なども目立つ。
これらのシンクタンクは、日本の「専門家」層にも強い影響力を持っている。率直に言って、日本の「専門家」は、「アメリカのシンクタンクがそう言っている」と知ると、無条件にそれを受け入れてしまうようなところがある。
日本の実務家・研究者から構成される日本の安全保障コミュニティは、アメリカの安全保障コミュニティと密接に結びついている。「富士山会合」と呼ばれる継続的な日米の安全保障の実務家・研究者が集う非公開フォーラムや、日本の若手安全保障研究者がアメリカのシンクタンクを訪れて交流する国際安全保障研究奨学プログラム、ハドソン研究所日本研究部門における防衛省・自衛隊幹部職員のポストなどを通じて、日米の安全保障コミュニティの一体化は重層的に進められている。
日米同盟の重要性を考えれば、緊密な交流に不思議はないのだが、ややもすると視野の狭隘さにつながらないか、という懸念は持ちうるだろう。たとえば今回のようにアメリカが深く関与する戦争が、非欧米の地域大国との間で行われるような場合、どうしてもアメリカ発の情報をアメリカ人の視点で受け止める傾向が強くなる。そしてイランの視点はもちろん、イランの実力評価の軽視の危険性すらも目立ってしまう可能性がないとは言えない。
そのとき、目に見えない形で、アメリカ経由で、イスラエルの利益に基づくイスラエルの視点が、日本の専門家層に意識的・無意識的に及んできてしまうことも、指摘せざるをえない。
もちろん日本には地域研究者など安全保障の専門家以外の専門家もいる。しかし日本社会の権力構造が、アメリカ依存の形態になってしまっているので、特にアメリカが戦争に関わっているような場合、アメリカ人の言説を代弁するような専門家ばかりがメディアで取り上げられるような傾向も生まれがちになる。