2025年5月13日
去る2025年4月21日、日本女性学会の幹事経験者有志の6名は、呼びかけ人として「『日本女性学会2024年大会分科会調査報告書』を受けての反省の表明および女性学・ジェンダー研究の発展と多様性の尊重をもとめる声明への賛同の呼びかけ」(以下、「反省の表明および声明」)を発出いたしました。
その後、5月1日に佐藤文香元第23期代表幹事と第23期幹事有志一同による上記の「反省の表明および声明」に対する「緊急メッセージ」が日本女性学会のメールニュースで送信されました。その翌日5月2日には、同様のメールが「緊急メッセージ」を発出したことを非会員にも伝える旨のメッセージと併せて送信されました。佐藤元代表幹事らは、「note」ページにおいても「日本女性学会への声明の背景に対する説明とガバナンスの機能不全について」とする同様の内容の記事を掲載しました。
これを受け、私たち幹事経験者有志6名が「反省の表明および声明」を出すに至った経緯について、改めて説明させていただきます。以下に、1)「反省の声明および声明」の位置付け、2)「反省の表明および声明」発出までの過程、3)調査報告書との関係性、4)幹事経験者としての肩書を用いることについて、5) 「ガバナンスの機能不全」という指摘について、5点に分けてご説明申し上げます。
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1.「反省の表明および声明」の位置付け
「反省の表明および声明」は幹事経験者有志によるもので、学会を代表するものではありません。現在までに、学会を代表する声明と誤解したという理由で賛同の取り消しを求める連絡はいただいておりませんが、万が一そのようなケースがあった場合は、速やかに賛同の取り消しに応じ、名前の削除を行います(2025liberation*gmail.com *をアットマークに置き換えて下さい)。
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2.「反省の表明および声明」発出までの過程
2025年4月8日に木村(第22期幹事)と井谷(第23期幹事)から、日本女性学会第22期・第23期の幹事に向けて、声明の内容を共有し、呼びかけ人を募るメールを送信しました。
そのメールの中で、昨年の大会より続けてきた議論と公表された調査報告書の内容、そしてトランプ政権によるバックラッシュの状況から、トランスジェンダーをはじめとする性的マイノリティの排除のみならず、ジェンダー概念の否定や女性差別・人種差別是正のためのアファーマティブ・アクションの否定など、ジェンダー研究やフェミニズムそのものの今後に対しても強い危機感を抱いており、「反省の表明および声明」の発出が必要であると考えた理由を説明しました。有志によるものであることも当該メールに明記しています。
これに対し、数名の幹事から「反省の表明」の箇所が現幹事会の総意であると誤解させる記述になっているとの指摘がありました。また、学会が公式に立ち上げたワーキンググループによる報告書という成果に異議を唱える内容として読まれる可能性を指摘する意見もありました。
これらの指摘を受け、木村と井谷は改めて有志によるものであることを第22期・第23期幹事に説明するとともに、そのような誤解を生じさせないために「反省の表明および声明」の冒頭に「*この文章は有志によるもので、日本女性学会を代表するものではありません。」という文言を加えました。その後、呼びかけ人として手を挙げた4名と再度文言を確認し、学会を代表するものという誤解を生まないよう最善を尽くして発出しました。
上記の通り、これまでのところ「反省の表明および声明」が学会を代表するものであるとの誤解に基づいて賛同した旨の連絡は届いておらず、賛同された方々には有志によるものであることを理解していただいたと考えております。
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3. 調査報告書との関係性
「反省の表明および声明」は、ワーキンググループにおける検証と議論の結果として確認された問題意識をより広い文脈に位置付けたものであり、日本女性学会の調査報告書自体への批判ではありません。従って報告書や幹事会を批判する文章は含まれていません。私たち有志は、真摯な議論を重ねて公表された調査報告書は、日本女性学会が誠意をもって取り組んだ成果であると考えています。
ただし、報告書の注12に示されているように、ワーキンググループでは、分科会Hで「差別的発言があった」という意見と、「裁定をすることには懸念がある」と考える意見との深刻な対立がありました。日本女性学会幹事会ならびにワーキンググループにおいては、参加者全員の合意をもって結論とすることを慣行としてきたので、報告書では分科会Hでなされた発言がどのような点で差別的なものであったのかについて説明しながらも、組織として「差別」を認定するにはいたりませんでした。
私たち有志は、これが現在の日本女性学会の組織としての結論であることを受けとめた上で、現在の状況が一学会の問題に留まらないという問題意識を持ち、差別があったという認識のもとに「反省の表明および声明」を発出することを決めました。
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4. 幹事経験者としての肩書を用いることについて
分科会Hで起きた問題は、分科会の主催者にその主たる責任がありますが、開催を承認し、現場で介入を行う権限をもっていた幹事会にも責任があります。報告書においても、幹事会の対応に問題があったことが指摘されています。この報告書の指摘に対して、第22期幹事を務めた幹事経験者が反省し、謝罪したいと考える場合、幹事としての立場性を取り除いた上でそれを表明することはできません。
また、第23期から学会運営に加わったものには、報告書の決定についての責任があります。選挙により、学会の宣言に沿った差別のない学会運営を託された身であり、一般の会員とは立場性が異なることから、幹事経験者として「反省の表明および声明」を発出することに重要な意味があると考えました。
実際、声明発出からまもなく多くの賛同をいただく中で、幹事経験者からこの声明が出たことを評価してくださるコメントが学会内外から寄せられており、私たちはフェミニズム・女性学・ジェンダー研究が直面している課題について認識を新たにしていることをお伝えしたいと思います。
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5.「ガバナンスの機能不全」という指摘について
佐藤元代表幹事らによる緊急メッセージには、
「この『声明』は、日本女性学会の正規の手続きに基づきまとめられた調査報告書を、内外からの圧力をもって上書きしようとする行為であり、学会のガバナンスと討議の自由を著しく損なうものです。」
とあります。ワーキンググループの立ち上げや、調査報告書の検討など多大な労力と時間を要する作業が加わったことで、一部の学会業務が例年より遅れたことは事実です。しかし、それは「反省の表明および声明」とは関係がなく、またその発出にあたって幹事会における討議の自由を妨げた事実もありません。調査プロセスやワーキンググループ・メンバーが誰であるのかなど、守秘を互いに確認していた内容について、私たちの声明では一切言及していません。
幹事会に存在したのは意見の相違であり、「ガバナンスの機能不全」ではありません。現に第23期幹事は現在次回大会に向けて誠実に業務を遂行しており、調査報告書の結論であった、「日本女性学会は今回の指摘、批判を真摯に受け止め、『学会活動の自由と公正のための宣言』に基づいて、大会を含めた学会運営の改善を検討してまいります」という決意に沿って他の幹事とともに努力している最中です。
以上、ご説明申し上げます。
飯田祐子・井谷聡子・北仲千里・木村涼子・西倉実季・堀江有里