変わる大学、大学はいま
「私立大を3分の1に」財務省主張の危うさ 地方小規模大学の価値を知ろう
2026.06.23
今ある私立大学を3分の1まで減らす必要がある――。財務省がそんな内容の資料を公表し、大学関係者をざわつかせています。今後少子化が進めば、現在の大学の数や学生定員をそのまま維持することはできません。とはいえ、定員割れしている地方大学や小規模大学が「退場」すればよい、という単純な話ではありません。入学時の学力が低い学生であってもきめ細かな教育や支援で成長させ、地域を支えている人材として輩出している大学が多いからです。大学取材が長く、朝日新聞「ひらく 日本の大学」取材班として「崖っぷちの私立大学」(朝日新書)を発刊した増谷文生記者(朝日新聞社教育シニアエディター)が解説します。(写真は、2024年度から学生募集を停止した恵泉女学園大学=2023年7月、東京都多摩市)
「定員割れ」の多くは地方にある小規模大
問題の資料は、財務省が4月の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会に提出した。財務省は最近、毎年4月と11月の分科会で同様の主張を繰り返しており、そのたびに文部科学省が「見解」を発表するなどして反論している。
今回は、2024年現在で624校ある私立大学について、40年には、減らす数を少なく見積もった場合で372校に、最大では217校まで減らす必要があるとの考えを示した。最少でも現在の6割に減らし、最大で3分の1にまで減らすことになる。
現在約110万人の18歳人口は、40年には約3分の2の74万人程度に減るのは確実だ。その際、国公立大は現在の188校を維持し、私立大だけを減らす前提で計算したという。
財務省が特にターゲットと考えているのが、入学者が定員を満たせない「定員割れ大学」だ。こうした大学の中には、小中学校で学ぶ「足し算」や「割り算」などの四則演算から教え直すようなケースがあることを理由に挙げるなどして、撤退すべきだと指摘している。
だが、定員割れとなっている大学は地方に立地している大学や小規模大学に多い。財務省の主張通りに減らしてしまえば、残るのは大都市の有名大ばかりで、地方からは多くの私立大が消えることになる。
多くの地方では、ただでさえ若者の流出が止まらず「消滅」する危機感を強めている。大学がなくなればますます地方を離れる若者が増えるだろう。地方によっては、地元で活躍する看護師や保育士らの供給が止まり、地域の衰退を加速させることはまちがいない。