司法試験合格後“ワクチン接種”で帰らぬ人に…息子を亡くした両親が意見陳述 新型コロナワクチン被害集団訴訟
新型コロナウイルスのワクチンの接種で被害を受けたとして、遺族や後遺症患者らが国に損害賠償を求めている「新型コロナワクチン被害集団訴訟」。第3次提訴の口頭弁論が6月22日、東京地方裁判所で開かれた。先行する第1次・第2次訴訟と合わせ、原告は計63人、請求額は約4億3900万円に上る。
期日後の会見で原告代理人の弁護士らは「史上最大ともいうべき薬害訴訟で国の責任を追及したい」と述べた。(ライター・榎園哲哉)
「弁護士になりたい」息子の夢絶たれる
この日の法廷内では、第3次訴訟の原告(遺族7人、患者5人)のうち、26歳の息子Aさんを亡くした両親が意見陳述に立った。
Aさんは司法試験に合格し、司法修習を目前に控えた2021年11月にワクチンを接種した。父親は「感染して周囲に迷惑をかけてはいけないとの思いから、急ぎ接種を受けた」と当時の状況を語った。
しかし接種直後から38~39度の高熱やけいれんが続き、うわごとのような不穏な言動が現れた。訪れた総合病院で、ワクチン接種による「急性散在性脳脊髄炎(ADEM)」の可能性が指摘された。
高次医療施設に転送後、ADEMに有効とされるステロイドパルス療法が施され一時改善を見せたが、その後急変し、接種からおよそ3週間後、多臓器不全で死亡した。
母親は法廷で「息子は『弱者を助ける弁護士になりたい』と目標を決めていた」と声を詰まらせた。Aさんの夢は叶うことなく、絶たれた。
累計4億回超の接種と、救済制度の認定状況
2020年1月に国内で初めて感染者が確認されて以来、2023年5月に感染症法上の位置付けがインフルエンザと同等の「5類」に引き下げられるまで、国内では約3300万人が新型コロナウイルスに感染した。
この間、政府の推奨のもと、公費によるコロナワクチンの「特例臨時接種」が進められ、2024年3月までの総接種回数は、およそ4億3600万回に上った。
一方で、ワクチン接種が原因とみられる健康被害も報告されてきた。厚労省の「予防接種健康被害救済制度」では、2026年4月までに死亡関連でおよそ1000件、副反応でおよそ9400件の給付が決定している。
こうした状況を受け、接種後に家族を亡くした遺族や、半身不随など重篤な後遺症を負った患者らが原告となり、国を提訴。2024年4月に第1次、2025年8月に第2次、そして今回の第3次訴訟を提起した。
「メリットは誇張、デメリットは隠蔽」弁護士が指摘する国の“情報操作”
原告側が最大の争点として挙げるのが、国による不十分な情報提供だ。
会見で原告代理人の青山雅幸弁護士は、国がワクチンのメリットを誇張し、デメリットを隠蔽したとして「国民の自己決定権が奪われた」と強く批判した。
不十分な情報提供の例として青山弁護士が挙げたのは、若い世代で副作用の報告が相次いだ心筋炎のリスク周知だ。
日本循環器学会は2023年3月にはガイドラインを公表し、接種後の心筋炎発症頻度の高さを伝えていた。国は、「コロナに感染した場合の心筋炎リスク」が「ワクチン接種後のリスク」を上回ると周知していた。しかし、感染した場合のリスクを算出する際、分母を陽性者全体ではなく、「入院患者」に限定。これにより、感染リスクが意図的に高く見せかけられていたと青山弁護士は指摘する。
さらに、ワクチンの接種者と未接種者の感染率データにも問題があったと指摘。「未接種者」のカテゴリーに、実際は接種歴が不明な者が含まれていたため、未接種者の感染率が実態より高く算出されていたという。後にこのデータは公表中止となったが、国からの訂正はなかった。
その上で青山弁護士は、「接種によるメリットが誇張され、デメリットが隠ぺいされた結果、接種圧力ばかりが増す社会情勢が強固に構築された。リスクとベネフィットを勘案して接種について判断する国民の自己決定権が侵害されていった」と訴えた。
「当たり前の日常が難しくなった」後遺症患者の訴え
会見では、接種後に重篤な後遺症を負った原告男性Bさん(49)も登壇した。
Bさんは2023年11月のワクチン接種後、動悸や息切れ、深夜の発作などに襲われるようになったという。
現在は慢性疲労症候群など13もの診断を受け、「当たり前にできていた日常の一つ一つが難しくなり、精神的にも追い詰められている」と語った。
当時、区役所から届いた接種券には、「大きな副反応はほとんどない」と記載されていたという。Bさんは「国には、情報の伝え方に誤りはなかったかを真摯に振り返り、健康被害から目を背けずに向き合っていただきたい」と訴えた。
「反ワクではない」国の責任を問う
青山弁護士によれば、裁判で国側から「反論らしい反論はない」とし、「2027年中には結審して、判決に至るスケジュールを想定している」と見通しを語った。
最後に青山弁護士は、改めて訴訟の意義を強調した。「国による副作用情報の隠ぺいが生んだ悲劇に対し、正当な検証がなされるべきだ。この訴訟は、いわゆる『反ワク』ではない。史上最大ともいうべき薬害訴訟で、国の責任を正当に追及するものだ」
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。
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