日本語文芸小説 執筆ガイドライン
自分でもよく校正時に抜けが出たりするので、できるだけ最新の情報を集めて、ガイドラインとしてまとめてみました。
文体と言語スタイルの統一
敬体(「です・ます」調)か常体(「だ・である」調):
小説の地の文では文体を統一することが重要です。児童文学などでは敬体を用いる例もありますが、一般的な文芸小説(純文学、恋愛、SF、ミステリ等)では常体が多用されます。一度文体を決めたら、作品全体を通じて途中で切り替えないようにします。読者が混乱しないための配慮です。視点と時制:
一人称・三人称の視点や、過去形・現在形といった時制も作品内で一貫させます。意図的な手法でない限り、視点や時制の頻繁な変更は避け、読みやすさと物語の流れを重視します。口語と文語のバランス:
地の文では基本的に現代の標準的な書き言葉を用います。セリフ中では口語や方言も使えますが、地の文では極端な話し言葉や崩れた表現は控えます。敬語の乱用や誤用(二重敬語、ら抜き言葉など)は校閲で指摘されることがあるので注意しましょう。
段落・改行と字下げ
段落の字下げ:
新しい段落の冒頭は、全角スペース一字分の字下げをするのが原則です。ただし会話文が「」で始まる行では字下げ不要とされる場合があります。これは会話の始まりを明確にし、字下げによる余白と重ならないようにするためです。改行のタイミング:
改行は文の切れ目や場面転換で適切に行います。地の文では、長く続く一文は読点「、」よりも句点「。」で区切って文を分け、改行して段落を変えたほうが読みやすくなる場合があります。不必要に長い段落は避け、1段落を3~5文程度に収めると読みやすくなります。会話の改行:
会話文では話者が変わるごとに改行し、新たな段落として字下げ(または行頭の「」で開始)します。会話と地の文が連続する場合も、適切に改行して区切りをつけます。空行・段落区切り:
シーンの切り替えや時間経過の表現には、一行空けを用いることがあります。この場合、章や節の区切りとして空白行や「*」「◆」などの記号を使うことも出版社の方針によっては認められています。
句読点と約物の使い方
句読点の基本:
日本語の文章では句点「。」と読点「、」を使用します。横書き文中でも原則として和文句読点(、。)を用い、「,」「.」(全角カンマ・ピリオド)や半角の, .は和文には使いません。句点は文末に打ちます。箇条書きの各項目末にも原則句点を付けます(単語羅列のみの場合を除く)。読点の用法:
読点「、」は文中での適切な区切りに使います。意味上切れない所に乱用すると読みにくくなるため注意します。並列する語をグループ化してひとかたまりに示す場合は読点より中黒「・」が適しています(例:「氏名・住所・電話番号」のように列挙する場合)。疑問符・感嘆符:
「?」(クエスチョンマーク)や「!」(エクスクラメーションマーク)は用いることができますが、使い方に注意が必要です。文末が「?」や「!」で終わる場合は、その直後に句点「。」を重ねません。
文末がそれらで終わった後に地の文が続く場合、1字分のスペースを空けて次の文を続けます。これは縦書き組版でも横書きでも読みやすさを保つための約物処理です。なお「!?」「!?」といった組み合わせも作品によって見られますが、多用すると稚拙な印象を与える可能性があるため控えめにします。「……」三点リーダー・「――」ダッシュ:
文章中で余韻や沈黙を表す三点リーダーは「…」を2つ重ねて「……」とするのが標準です。同様に感情の高ぶりや台詞の途切れを表現するダッシュも「―」を2つ重ねた「――」を用いることが推奨されています。
奇数個のリーダーやダッシュを使うと不安定な印象になるため、基本は偶数個で統一します。括弧類の使い分け:
かぎ括弧「」:
会話文や引用に使用します。かぎ括弧内の文末には通常、句点「。」を打ちません。会話文が地の文に続く場合、閉じ括弧の後に地の文の句点を打って文を結びます(例:「はい」と彼は答えた。)。二重かぎ括弧『』:
かぎ括弧内にさらに引用や会話を入れる場合に使用します。入れ子が深くならないよう注意し、シンプルに表現しましょう。丸括弧():
地の文中の補足・注釈に使います。(丸括弧内が1文だけの場合、閉じ括弧前の句点は省略します。複数文を入れるときのみ括弧内に句点を打ちます。)その他の括弧:
〔〕〈〉【】などは特殊な用法か引用で必要な場合以外はあまり使いません。亀甲括弧【】は主に辞書などで見出し語を示すのに用いますが、小説では出番が少ないでしょう。
中黒「・」:
人名のフリガナ区切り(「佐藤さと・う」等)や、固有名詞の読み仮名を区切る場合、また外来語の音節区切り(「コンピュー・タ」等)に使われます。小説本文ではカタカナ語の複合語を読みやすくする目的で使われる程度です。使いすぎると読みづらいため、必要最小限に留めます。その他の記号類:
長音記号「ー」(音引き)はカタカナの外来語などで適切に使います(例:「ケース」など)。波ダッシュ「〜」やチルダ「~」は和文では意味が曖昧になるため、用いる場合は用法を明確に(例:「〜から〜まで」を示す場合は正式には「…から…まで」と書く)。文章中で特殊記号(♪◆★など)を使うのは、章区切りや装飾的効果を除き控えます。
会話文の表記と処理
会話の始まり:
会話はかぎ括弧「」で囲んで表記します。会話部分が行頭に来る場合、字下げしないか浅めにする処理が一般的です。地の文と会話文が交互に出る場合でも、改行して段落を分けることで読みやすくします。会話文中の句読点:
話し言葉の語尾に「。」を付けるかどうかは統一します。一般的には「」内の台詞が単独で文として完結する場合でも句点を付けずに閉じます。ただし作品全体で統一されていれば、付ける場合もあります。いずれにせよ表記の揺れがないよう注意します。地の文との接続:
会話の後に「~と言った」「~と彼女は叫んだ」のように地の文が続く場合、閉じ括弧後に読点や句点を適切に配置します。例:「行こうよ」と太郎は言った。→この場合「行こうよ」の後に句点を打たず閉じ、「言った」の後で文全体の句点を打ちます。会話の改ページ:
紙の書籍では、かぎ括弧で開いた会話がページをまたぐとき、閉じ括弧が冒頭に来てしまうことがあります。組版上は禁則処理で避けますが、原稿では意識しすぎなくて構いません。編集・組版時に調整されます。話者の明示:
長い会話が続く場合でも、適宜「と◯◯は言った」「◯◯が尋ねた」のように話者を補って明確さを保ちます。会話のみでページが続く際は、読者が混乱しないよう指示語や口調で話者を推測できるよう工夫します。
漢字とかなの使い分け
現行の表記基準:
常用漢字表および現代仮名遣いにもとづき、漢字とひらがなの使い分けを行います。旧字体・歴史的仮名遣いは使用しません(歴史小説など特殊な場合を除く)。例えば「ゐ/ゑ/ヰ/ヱ」等の旧仮名や「體(体)」「關(関)」等の旧字は新字に統一します。印刷標準字体に揃えるのが業界の一般的な方針です(※出版社によっては作家の意図を尊重して旧字を残すケースもありますが、校正段階で統一するのが通常です)。漢字とひらがなのバランス:
難しい漢字を多用しすぎると読者に負担をかけるため、読みやすさを優先してひらがなに「開く」判断が重要です。文化庁のガイドライン『公用文における漢字使用等について』でも、一般文書での漢字使用は読み手に応じた配慮が求められています。文章全体で漢字3割:ひらがな7割程度が目安とも言われます(内容によって変動)。送り仮名:
送り仮名の付け方は現代仮名遣いに従います。例えば「行なう」ではなく「行う」、「出来る」ではなく「できる」とします。誤った送り仮名(例:「起こして置く」→正しくは「起こしておく」など)に注意しましょう。助詞・助動詞・補助動詞のかな表記:
頻出する以下のような言葉はひらがなで書くのが原則です。助動詞・助詞類:「ある(有る)」「いる(居る)」「ない(無い)」「なる(成る)」など否定・存在・状態を示す語はひらがな表記kousei.club。「ではないか」を「では無いか」などとしないよう統一します。
可能動詞の「~れる/られる」:「見られる」を「見れる」としない、「来られる」を「来れる」としない等、正しい形で表記します(口語の表現を地の文で使う場合は要注意)。
補助動詞:「~していく」「~してくる」「~してみる」「~しておく」等の「~て+動詞」は基本ひらがな(例:「歩いて行く」ではなく「歩いていく」)。
謙譲語・丁寧語:「~していただく」「~してください」の「いただく」「ください」は漢字にせず「いただく」「ください」と書きます(※「頂いた品物」のように本来の意味で使う「頂く」は漢字を用いることもありますが、補助的な「~してもらう」の意ではひらがな)。
可能の「できる」:「出来る」は一般的な文では「できる」と平仮名にします。
形式名詞の表記:
形式名詞(意味を持たず形式的に使われる「こと・とき・もの・ところ」等)はひらがな表記が基本です。例えば「〜する事」ではなく「〜すること」、「〜した時」は「〜したとき」とします。ただし同じ語が文脈上実質的な名詞(具体的な意味を持つ場合)として使われるときは漢字にすることもあります。作品内で判断を統一し、混在しないようにしましょう。固有名詞の表記:
人名・地名など固有名詞は正式表記に従います。常用漢字外の人名用漢字は使用可能ですが、読み仮名を初出で付けるなどの配慮をします。例えば「瀨戶内海」のような旧字体地名は現在の表記「瀬戸内海」に改めるのが通常ですが、物語の時代設定によって使い分けることもあります。カタカナ語:
外来語はカタカナで表記します。ただし表記ゆれが起きやすいので統一ルールを決めます。長音の有無(「コーヒー」か「コーヒ」か)、小文字・大文字(「エネルギー」か「エネルギー」か等)は出版社や辞書の規定に従うとよいでしょう。文化庁が公開している「外来語(カタカナ)表記ガイドライン」も参考になります。数字の表記:
漢数字とアラビア数字を使い分けます。縦書きの場合、漢数字が基本ですが、桁数の多い数字(電話番号や西暦年号、科学的な数値など)は算用数字(アラビア数字)を用いる方が読みやすいことがあります。横書き文章ではアラビア数字が主体となります。ただし一つの作品内で表記の揺れがないよう統一します。例えば、「一〇〇〇万円」と「1000万円」が混在しないようにします。また桁区切りの読点(「1,000」のようなカンマ)は和文では3桁区切りで使用することもありますが、漢数字には不要です。年号・日付:和暦・西暦問わず年号を漢数字で表記する場合は、「二〇二五年」のように〇(ゼロ)も含めて一字一字を漢数字に置き換えますkoubo.jp(「二千二十五年」のように桁を漢字で表さない)。年月日の区切りには「〇月〇日」とし、「〇・〇」「〇/〇」は公用文でない限り避けます。
時間:時刻は「午前九時三〇分」のように漢数字+漢字(〇分を「〇〇分」とする)か、必要に応じ「9時30分」のように数字+漢字を組み合わせます。ただし同一文書内で表記を揃えます。
番号・序数:章番号や段落番号などは算用数字を用いることが一般的です(「第3章」など)。会話中での番号言及(「3つの箱」等)は地の文同様の表記にします。
表記ゆれのチェック:
上記のような漢字・かな表記の基準は出版社や媒体ごとに細かな取り決めが存在することもあります。たとえば新聞社は独自の「用字用語の手引き」を持ち、出版社も社内規定の表記集を備えています。小説執筆時には一作品の中で用字用語を統一し、矛盾がないようにしましょう。
迷ったときは『記者ハンドブック』『読売新聞用字用語の手引』『朝日新聞の用語の手引』等を参照すると基準が得られます。
また、文化庁の公表資料や各出版社の投稿規定集に目を通すと最新の標準に触れることができます。
ルビ(振り仮名)の使用方法
ルビを振る基準:
漢字の読みが難しい場合や人名・当て字・造語など読者が読めない恐れのある語には、適宜ルビを振ります。一般的な文芸書ではすべての漢字にルビを振る「総ルビ」は行いません(児童向け作品を除く)。読者ターゲットに応じて必要最小限の振り仮名に留めます。
固有名詞(登場人物名や地名など)は初出時にルビを付けるのが親切です。特殊な読み替え(例:「生命【いのち】」のように漢字に独自の読みを当てる)も物語上効果的であれば使用できますが、多用は避けます。ルビの記入方法(原稿作成時):
縦書き原稿用紙やワープロ原稿では、漢字の直後に丸括弧()で読み仮名を記すのが一般的です。たとえば原稿上で「魔法(まほう)」のように書いておけば、組版時に「魔法」の上に「まほう」とルビを載せる指定になります。応募要項などで特別な指示がない限り、原稿段階では無理に組版用のルビ機能を使わず括弧書きで示せば十分です。
後の編集作業で正式なルビに置き換えられます。Web投稿プラットフォーム(例えば「小説家になろう」等)では専用の記法(例:「魔法」)が定められている場合もありますので、それに従ってください。ルビの体裁:
縦書き印刷ではルビは親文字の右肩(上部)に小さな文字で配置され、横書きでは文字の真上に配置されます。著者が原稿中で配置を気にする必要はありませんが、一度に長すぎるルビ(長いフレーズの説明など)は避け、簡潔にします。必要があれば本文中で補足説明するか、脚注や地の文で補完する方が読みやすい場合もあります。特殊なルビ:
造語や詩的表現で「当て字+ルビ」を使うことがあります(例:「真紅の霧(ブラッディ・ミスト)」のように英語読みをルビに振る)。この場合も初出時にのみルビを振るのが通例です。同じ語が再登場する際は文脈で理解できるなら省略し、必要に応じて再度振ります。ルビの多用は読者の視線を散らすため、演出上の狙いがある場合に絞りましょう。
NG表記・避けるべき表現
表記の不統一:
最も注意すべきは表記ゆれです。同じ人物・物・用語を指すのに表記が揺れている(例:「お母さん」と「おかあさん」、「一人」と「1人」など混在)のはNGとされます。必ず統一し、校正時にも見直しましょう。漢字・かな遣いも前述の基準に沿って統一します。誤字脱字・変換ミス:
商業原稿では誤字脱字は厳禁です。特に日本語は漢字変換ミスで別の意味になることもあります(「以外」と「意外」、「確信」と「核心」など)。執筆後は時間を置いて見直し、自信がなければ第三者や校正者のチェックを受けます。数字や日付のミスも校正段階で細心の注意を払いましょう。不適切な差別用語・侮蔑表現:
テレビの放送禁止用語ほど明確なリストはありませんが、小説の編集過程でも社会的に差別的・侮辱的と受け取られかねない表現には注意が払われます。文脈上必要な場合でも、編集者や校閲者から必ず指摘・相談が入り、慎重に検討されます。
作者としても安易に差別的表現を使わず、どうしても必要な際は巻末の注釈を入れるなどの配慮を検討しましょう。特に現在ではポリティカル・コレクトネスの意識も高まっているため、古い言い回しや表現には最新の注意を払います。極端に崩れた表現:
地の文では、あまりにもくだけた若者言葉・ネットスラング、顔文字や絵文字、過度な擬音のみの表現などは一般的な商業小説では避けられます。会話文中でキャラクターの個性として用いるのは構いませんが、乱用すると作品全体の品位を損ねる恐れがあります。描写したいニュアンスがある場合も、地の文ではなるべく標準的な表現で書き、必要なら会話や手紙文の中で崩すようにしましょう。過剰な強調:
「!」「?」「!?」などの強調記号の連発、長大な傍点や下線の多用は避けます。プロの出版物では、強調したい部分は文体や語順で表現し、どうしても必要なら傍点(二重山括弧で指定)やイタリック体(組版指定)を用います。
一般的に、読点「、」を打ちすぎない、一文に「の」を詰め込みすぎないなど読みやすさの観点からも過度な強調・冗長は編集で修正対象となります。レイアウト依存の表記:
紙幅に合わせた意図的な改行やスペース挿入(行揃えのための空白入れなど)は原稿では不要です。レイアウト調整は組版で行われるので、著者原稿では通常の書式に従って書けば問題ありません。禁則事項(行頭禁則文字など)も組版処理で解決されますので、原稿で無理に避ける必要はありません。
ただし、英文や数字が文中に混じる場合、縦書きでの表示を意識して必要なら縦中横(横組み指定)を編集者に伝える程度の配慮はあります。校正者との協働:
商業出版では、原稿提出後に編集者・校正者が文章を精査し、誤りや不適切表現をチェックします。著者自身も校正刷り(ゲラ)を確認する機会がありますので、その際は上記NG表記が残っていないか最終チェックします。校正記号の指示に従い、必要があれば修正案を出しましょう。読者にとって読みやすく、誤解や不快感のない文章に仕上げることが、著者と校正者双方の目標です。
参考資料とガイドライン
本ガイドラインは、出版社や業界団体が示す基準、および近年の出版校閲基準にもとづいて作成しました。特に新聞社の用語手引き(共同通信社『記者ハンドブック』や各紙の用字用語集)や文化庁の国語施策資料は、一般文書のみならず出版物の表記ルールにも影響を与えています。
各出版社も新人賞応募要項や執筆マニュアルで独自の細則を定めていますが、根幹となる部分は共通しています。本書ではそれらを踏まえ、横書き・縦書き双方に対応しうる形でまとめましたj。実際の執筆の際には、応募先や出版社の指定フォーマット(原稿用紙設定やデジタル原稿の書式)にも注意してください。
最後に、ルールはあくまで「読みやすくするため」の手段です。作品の個性や芸術性が必要と判断すれば、意図をもって慣例を外れることも可能ですが、その際も全編を通じた整合性と読者への配慮を忘れないようにしましょう。
いいなと思ったら応援しよう!
どこにでも居るバーチャルJC MMDユーザーの一人。
MMDアニメーター、動画制作・編集、VTuber関連制作などを行っているただのJC。


コメント