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【「FUJI&SUN'26」2日目リポート】KIRINJI、cero、君島大空…雨空に響いた5アクト

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は6月6~7日に富士市の「富士山こどもの国」で開かれた野外フェスティバル「FUJI&SUN'26」の2日目の模様をリポートする。(文中、敬称略)。
(文=社会部・菊地真生)

筆者がFUJI&SUNを訪れたのは2024年以来2年ぶり。朝はゆっくりスタートで、優河の音漏れを聞きながら会場入りした。1日目は天候に恵まれたものの、2日目は午後2時頃から本格的な雨が降る予報。ぽつぽつと頬に落ちる雨粒を感じながら、半円状の石段ステージ「STONE CIRCLE STAGE」に向かった。

STONE CIRCLE STAGEに到着したのは、眞名子新の開演10分前。不勉強ながら初めて知ったアーティストだったが、石の上に座って見られる前列はすでに満席で、立ち見客でにぎわっていた。ステージがしっかりと見える場所を見つけるのも一苦労。周囲の会話に耳を傾けると、たまたま来たというよりは、彼を目的に訪れて心待ちにする観客がかなり多い印象を受けた。

(c)FUJI&SUN’26 

アコースティックギターを抱えてステージに現れた眞名子は開口一番、「昨日、地元神戸でライブをして、その足で今朝3時に清水に着いて、そのまま富士に来ました!」と元気にあいさつ。エネルギッシュな第一印象だったが、弾き語りを始めるとそのイメージは一変し、少しハスキーな声質と歌唱力に引き込まれた。ピッチとリズムを正確に捉えて、繊細な音量コントロールで心の機微を表現する。フレーズ末尾の音のニュアンス処理からは、彼が音楽的ルーツとして挙げるハナレグミの影響も感じさせる。

20代以下のメインカルチャーが音楽からダンスにシフトしている2020年代において、フォークやカントリーをベースとした若手アーティストの存在は新鮮だった。等身大の歌詞と肩の力が抜けた今時の若者らしさも魅力で、聴き手にまっすぐ届く音楽が今も生まれ続けていることがうれしくなった。

中座して、眞名子と同時間に開演したメインステージ「SUN STAGE」のCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN(チョコパコチョコキンキン)へ。彼らが世間の注目を集めた契機は、ベースの細野悠太が細野晴臣を祖父に持つというエピソードだったと記憶するが、筆者が彼らのライブを見るのは初めてだ。気になるライブに足を運ぶ度に、客席で誰よりも真剣に音楽に聞き入る彼らの姿を見かけたことが過去に何度かあり、「常に新しい音楽を探究する『ガチの音楽マニア』なんだろうな」という印象を抱いていた。

(c)FUJI&SUN’26 

ステージ前に到着した時点で観客からの熱気を感じ取り、自然に身体がリズムに合わせて動いてしまう。今回はサポートメンバーを迎えた8人の大編成。生ドラム、パーカッション、サンプリングが多層的なリズムを生み出し、爆音が身体に直接迫ってくる。コンガやシェーカー、スチールパンが南洋幻想のイメージやノスタルジアを醸し出しつつも、リズムは明らかに2020年代のものだった。ボサノバかと思ったら、ノイジーなギターもかき鳴らされて、奇妙な夢を見ているよう。音像が数十秒ごとに移り変わっていく。新しい音像を探究しようと突き進む爆発力に若さを感じるとともに、この旅がどこに行き着くのか、現在制作中という2枚目のアルバムを早く聴いてみたい。

昼時になったので、ランチは「青果ミコト屋」のパッタイの列に並んだ。スタッフが「並ばず食べられるナイスパッターイ!」と叫んでいたので、「本当か?」と思ったら5分ほどでありつくことができた。実に「ナイスパッタイ!」であった。

その近くには見覚えのあるバートラック。県内初のクラフトジン蒸留所である「沼津蒸留所」(沼津市)によるオフィシャルドリンクブースだった。本当はFUJI&SUNオリジナルカクテルを飲んでみたかったが、車で訪れたので泣く泣く断念。同市のチャトラコーヒーのカフェラテを飲んで一息ついた。このほか「ラーメンやんぐ」「Swing Coffee Stand」「魚鳥木」など、静岡県東部の魅力的な飲食店が一堂に集うのもFUJI&SUNの楽しみの一つだ。


腹を満たし、中規模のステージ「MOON STAGE」へ君島大空を見に行った。2021年以降4回目の登場で、FUJI&SUNの常連ともいえる君島は、ギターを携えた弾き語りの「独奏」形態で登場。今年リリースした3枚目のアルバムに収録されている『琥珀の遠景』では、はかなく中性的で軽やかなハイトーンボイスとギターの超絶技巧を聴かせた。富士の麓の澄み切った空気と溶け合い、FUJI&SUNの「うま味」を堪能した。

(c)FUJI&SUN’26 

「『いけるかFUJI&SUN!』みたいなことが言えたらいいのにと、昨日、田島貴男を見て思いました」とつぶやいた後に披露した新曲は、普段の歌唱法とは少し異なる印象を受けた。ハイトーンを出すときの喉の開きが普段よりも広く、桜井和寿に近い声質。曲の後半になるにつれコード進行も複雑化し、荒々しいブルースギターの要素も強くなっていった。これまで赤いリップをつけて少年的、中性的なイメージがあった君島だが、ブルージーかつノイジーで男性的な弾き語りが強烈に残るステージだった。

再びSTONE CIRCLE STAGEに戻り、KIRINJIを待機していると、雨は徐々に本降りに。気温が下がる一方、会場は堀込高樹の登場を待ちわびる観客の期待に満ちていた。ギターを抱えて一人で登場した堀込は、男子校の入学式から帰ってきた次男が発したという「女子がいないな」という一言から発想を得たという『デートの練習』を披露。「季節限定のパフェをつついてる 野郎の瞳はきらきら でも、女子なんていない どこにもいない」という歌詞を聞き、ふと中高一貫の男子校出身アイドル・timeleszの篠塚大輝の顔が思い浮かんだ。どうしてこの人は大人になっても、思春期の男子の等身大の歌が書けるのだろうか。

(c)FUJI&SUN’26 

次の『反省と後悔』では、「やらかしたけど やってよかった」というフレーズを美しいコードとメロディーで歌い上げるギャップに笑ってしまった。堀込高樹という作家は、日常の中に潜む異物感をキャッチし、地面から3センチほど宙に浮いたSF的な作品として結晶化させる天才であると痛感した。

6月1日に藤井風がインスタグラムで同曲をカバーしたことでも話題になった、兄弟ユニット時代の超名曲「Drifter」を演奏した。筆者も10代の頃に数え切れないほど聞いた同曲だが、改めてライブで聴くと歌詞とメロディーの美しさを再認識し、不意に涙がこぼれた。いま、作者が同曲を作った30代になって改めて聞くことで、作品の本質を理解できることもあるのだろう。こういった予測不能な感情の揺れを体験できることこそ、ライブの醍醐味であると身に染みたステージだった。

その後、トークイベント「温泉に10倍楽しく浸かる方法」で、かつて聞いたことないほどのマニアックなかけ流し温泉の入り方に関するトークに耳を傾けた。テントで雨宿りをしたあと、SUN STAGEのceroへ。2024年のFUJI&SUNでは2023年リリースのアルバム「e o」に収録されている壮大かつ宇宙的な楽曲を大編成バンドで再現していた彼らだが、今年はドラムの光永渉、ベースの厚海義朗を迎えたシンプルな5人編成で登場した。

(c)FUJI&SUN’26 

『マイ・ロスト・シティー』『Summer Soul』など、2010年代の楽曲を中心とする原点回帰的なセットリストでライブは進んだ。『Orphans』を披露した後、ボーカルの高城晶平 は「ここは静岡で合ってたっけ?静岡に住む昔からの大親友が結婚したのでおめでとう!竜ちゃん!」と、2枚目のアルバム『My Lost City』や3枚目『Obscure Ride』のジャケット写真、アーティスト写真を手がけてきた御殿場市在住の写真家鈴木竜一朗を祝福した。観客からは拍手と歓声が上がり、祝祭的なムードに包まれた。もしかしたら今回のライブは、結婚式の余興としての意味合いが強くあり、過去の歩みを振り返るようなセットリストなのかもしれない。

最後は『健忘者たち』『ネメシス』など、2020年代の楽曲を5人編成で披露した。近年はシンセサイザーや多様な楽器を重ねた複雑なサウンドが特徴的な楽曲が多いが、今回のライブではシンプルなバンドアレンジのため、楽曲の構造が録音よりもはっきりと見えて、新鮮な印象を受けた。

本当はnever young beachを見てから帰りたかったが、雨足が強くなり、翌日からの仕事に備えて体力を温存するため、ここで泣く泣く帰路についた。

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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