2023年6月18日、米OceanGate(オーシャンゲート)が独自開発した有人潜水艇Titan(タイタン)号が、水深3363m付近で圧壊した(図1)。当時タイタン号は、北大西洋にある沈没船「タイタニック号」の探検ツアー中だった。事故により、同社の最高経営責任者(CEO)を含む乗員5人が死亡。圧壊の原因は、耐圧殻の炭素繊維強化樹脂(CFRP)部分で起きた層間剥離だった。

図1 水深3363m付近で圧壊した有人潜水艇「タイタン」号
図1 水深3363m付近で圧壊した有人潜水艇「タイタン」号
(出所:OceanGate)

 2025年10月に米国家運輸安全委員会(NTSB)がまとめた調査報告書(以下、報告書)を基に事故原因をひもといていこう。

 タイタン号の乗員が搭乗するCFRP製耐圧殻は、長さ2.5mほどの円筒形をしている。その両端は、チタン製のリングとドームで覆ってあった(図2)。円筒部の厚さは約13cm(5インチ)。厚さ2.54cm(1インチ)の複合層を5層重ねて、強度を確保していたはずだった。

図2 タイタン号の乗員区画である耐圧殻
図2 タイタン号の乗員区画である耐圧殻
CFRP製の円筒の両端を、チタン製のリングやドームで覆って造ってあった。(出所:NTSBの資料を基に日経ものづくりが編集)

 だが、報告書によると、潜水を重ねるうちにCFRPの複合層を接着している領域で、複数のしわや空隙が発生。複合層同士で層間剥離が起き、接着層のせん断強度が低下した。そのため、設計上の厚みが持つ圧縮強度や座屈耐性を発揮できず、局所座屈を起こして瞬間的に圧壊した─。これが事故調査に当たったNTSBの結論だ(図3)。

図3 タイタン号の残骸(a)とCFRP製円筒の破片(b)
図3 タイタン号の残骸(a)とCFRP製円筒の破片(b)
遠隔操作型無人潜水機(ROV)が海底で発見した。(出所:NTSBの資料を基に日経ものづくりが編集)

次のページ

「しわ」を抑える5層構造、だったはずが…

この記事は有料会員限定です