夏の高水温で水底からセシウム溶出か 福島・松川浦の観測で明らかに

波多野陽
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 東京電力福島第一原発から北に約40キロ離れた潟湖(せきこ)の松川浦では、原発事故由来とみられるセシウムの濃度が周囲より高いことが知られている。福島大学などの研究グループが、松川浦で観測されるセシウムは川や太平洋からの流れ込みではなく、水底の堆積(たいせき)物から溶け出したものであることを突き止めた。

 飲料水のセシウムの基準値は1リットルあたり10ベクレル。今回の研究対象はいずれもその1千~100分の1の水準で、魚などへの移行が問題になるレベルではない。今回の研究は、主に自然界でのセシウムの動き方を探る目的で行われ、5月に専門誌で発表した。

 福島県相馬市の松川浦は、砂州で太平洋と隔てられた県内唯一の潟湖で、半閉鎖性の水域になっている。景勝地として知られる一方で、周辺の河川や太平洋の沿岸などよりもセシウムの濃度が高いことが謎だった。

 同大共生システム理工学研究科の博士後期課程2年の新井田拓也さんらは2021~23年、松川浦と流入する四つの河川、外側の太平洋の計13地点で計測した。

 その結果、川や外海では水中のセシウムが1リットルあたり5ミリベクレル以下だったが、松川浦のみで5~19ミリベクレルとほかに比べて高かった。さらに、松川浦では水温が高い夏になると、セシウムの濃度が上がる傾向も見られた。

 モデルを使って解析したところ、水に溶けているセシウムの96%が海底の堆積物由来で、川や外海からの流れ込みはほとんどないとの評価結果が得られた。水中のセシウムは以前から温度が高いと溶け出しが進むことが指摘されており、グループは実験を進めている。

 新井田さんは「福島沿岸域における環境回復の過程を理解する上で重要な知見となる」と話す。一方、福島大環境放射能研究所の高田兵衛教授は、松川浦の水産物から検出されるセシウムは少ないとしたうえで、「今回の結果を見ると、セシウムが海底の堆積物に固定されたことで、生態系に広がることが抑えられたのではないか」と話している。

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