本日の言霊 2020.06.19
「ウルトラマン」の最終回を見たのは、隣に住んでいた従兄弟の家の居間だったと記憶している。ゾフィーがM78星雲から飛来し、命を落としたウルトラマンを救出。ハヤタ隊員とウルトラマンを分離させ、それぞれに「命」を与えることで、ハヤタは人間として生き延び、ウルトラマンは光の国へ帰還する。「ゾフィ、ゾフィ、ゾフィ⋯」「ハヤタはまだ若い、若い、若い⋯」とこだまするセリフをよく真似ていた。
次作の「ウルトラセブン」では、正義の味方のウルトラセブンが十字架に架けられた。子供心ながら得体のしれぬ衝撃を与えられた。アメリカで正義のヒーローが十字架に架けられたら、キリスト教系の宗教団体からクレームが来て、 放送ができなかったかもしれないが、日本ではそんな衝撃的な作品をみな子供の頃から見せられていたのだ。現在のウルトラマンシリーズは見ていないが、円谷英二が当時製作していた作品は明らかに大人向けだった。
「ウルトラマン」で科学捜索隊でキャップ役を務めていた小林昭二氏は、制作第1話の際のアフレコルームでバルタン星人が分身する場面を見て、共演者に「特撮があんなに素晴しい仕事をしているんだから、俺たちも子供番組と思わないでしっかり頑張らないと負けるぞ」と呼びかけたという。小林昭二氏は演劇的なことも含めて科学捜索隊のキャップだったと語っているのはフジ・アキコ隊員を演じた桜井浩子(80)さんだ。
桜井さんは円谷英二監督のVES(米国視覚効果協会)の殿堂入りを心から喜んでいる。円谷英二監督と息子さんの円谷一監督について、「2人の目標は、ウルトラマンをハリウッドで認めてもらうことでした。当時、その目標がどれだけ高かったことか。それが実現したんですから、私は見届けられてよかった。でも英二監督は多分、賞なんか要らないから、撮らせろって言うと思います」と語っている。
昭和の大人たちは、子供たちのために必死になって作るだけではなく、大人に対しても伝わるメッセージを込めて「ウルトラマン」を皆で製作していた。名作回とされる「故郷は地球」は、事故で見捨てられた宇宙飛行士が怪獣ジャミラとなって国際平和会議を襲うものだったが、脚本の佐々木守氏によると、アルジェリア独立運動に参加した少女をモチーフに書いたものだったという。そんな国際的且つ社会的なテーマが隠されていたとは知らなかった。
この脚本を読んだ実相寺昭雄監督はニッと笑って「これ、いいね」と言い、「そう、あれ」と佐々木氏が応え、「実相寺と一緒に仕事をやっていることを誇りに思う」と言ったという。桜井さんは「それだけの教養が作りてにあったんですね。ひけらかさない氷山の一角がエンターテインメントになっている。アジテーションや上から目線ではなく、特撮のエンタメに仕立てたのは本当にプロの仕事でした」と語っている。
「最初の『ウルトラマン』をきっちり作っていたから、シリーズが何十年たっても崩れないと監督たちはおっしゃっていましたし、私もそう思います」と桜井さん加えている。ウルトラマンも60歳で還暦だ。が、これからも時代を超えて少年少女の胸に刻まれることを願っている。日本のプロたちが全力で作り上げた作品は、これからも日本だけでなく、海を飛び越えて世界の子供たちを魅了してくれるに違いない。