出る杭は(蛇足:伊地知の受難)
!キャラクター崩壊 ギャグとも言い難い
!前半シモ(念のためのr15) 終盤伊地知がオギャる
アッパーアホ時空ダイジェスト これ(novel/27150338:r18)の蛇足です
おもろいと思ってんのかと言われると謝罪するしかないですが、ただしょうもない事をやってほしい気持ち
男どものごっこ遊び?なので経験のある方におかれましては細かい部分は気にしないでください
予告日車氏は抑揚のない良い声ですね 最高 どう叫んでくれるんでしょうね
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前回のあらすじ。男体型の呪物(対象日下部)と女体型の呪物(対象日車)に呪われて死ぬほどヤッた。以上。
「話が違うんじゃねえか?」
件の呪物のために這々の体で帰宅した二人は、酷い目には遭ったがこれで解呪はできただろうと思っていた。それは考えがものすごく甘かった。なんと丸三日と経たずにまたふつふつと体の内側から淫らな欲求が湧いてきて、その日の業務の片が付くまではどうにか堪えられたが、そこからどちらからともなく顔を見合わせるとそのまま大人専用ホテルへとなだれ込んだ。抜くだけで済めばという淡い期待も虚しく、どちらかと言うと日車の方がそれでは全く収まりがつかず、結局翌日にしっかり響くほど挿れては出してを繰り返す事態となった。また虚脱状態に陥りつつもその後は平生の頭の具合に戻る事はできたのだが、二度ある事は三度ある、また何日もしないうちに二人揃ってヤらずにはいられない状態になり、キャンセルできる仕事は全て放り出して夜通し淫行に耽る有り様だった。
「殺してくれ」
「普通にお断りだよ」
「悪かった、俺も流石にこんな事で死にたくはない」
「しっかしどうしたもんかねこれ……」
日車は数日に一日の高頻度で体調不良での欠勤を余儀なくされた。その翌日は出勤、翌々日は辛うじて出勤、場合によっては早退。更にその翌日はまた欠勤……そのループが続いていて、今日もベッドから生気の抜けた顔で日下部を見上げることしかできない体になっている。日下部も体力的に正直しんどい。恋人とはいえナニの頻度にも限界はあるし、いよいよ日下部まで腰がやられそうな気がする。生徒たちから「最近なんか枯れてるぞ」と揶揄されるが、当たっているのか外れているのか何とも言えない。全て下半身に搾り取られているのでそちらは全く枯れていない。当然このままではいられないので伊地知に本来の解呪方法を調査してもらっているが、未だに良い回答は得られていない。二人の距離を物理的に離してみようと日下部が一週間程度の出張に出てみたところ、事後三日目の日車から限界自撮り動画(成人指定)が届いてとんぼ返りしていった。埒が明かないので京都校とか別の施設に呪物を隔離してみてもらえないだろうかと打診したが、解呪方法もわからんものは引き受けられないと突っぱねられた。ないない尽くしである。
呪物を物理的に合体させると解呪までの時間が短くなる、そんな記述もあったので、何度目かの発作の時にそれを試してみる事にした。結果としては散々だった。事が起こったのは時間にすれば五分程度だったようだが、ギリギリでパンツを下ろす判断ができた日下部は衣類への被害は最小限で済んだものの、床に崩れ落ちて諸々が垂れ流しになった日車はだめだった。何が起こったかは察してほしい。状況が二人きりで良かったとだけ。発作自体はその短時間で収まったので、体の負担軽減や時短としては役に立ちそうだったが、日車が「絶対にこの手はもう使うな」と本気で殺しにかかってきそうな顔で言うものだから以降は無しになった。一晩かけて解消しているあれこれが五分間にまとめて襲いかかってくるようなので、よくまともな精神を保てたものだと言うべきか。こういった理由で呪具の破壊も保留している。何が起こるか本当に判らない。万が一下半身が物理的に爆発でもしたら、死ぬ。
話は冒頭の発言に戻る。日車は今日も欠勤しており、気怠げに椅子に座りながらも目だけがやたらとぎらついた日下部、彼も度重なる明け方までの行為で睡眠不足が極まり相応に辛いらしい。その前に立つ伊地知は身をただ竦ませていた。日下部は現状に対してキレてはいるものの、伊地知そのものに対する敵意はない。それをわかっていても、苛ついた大男が目の前にいるのはやはり恐ろしい。気分はか弱い小動物だ。
「お気持ちは理解しています。こちらとしても、日車さんほどの術師が現状日下部さん専用でしか機能していないというのは大きな損失ですので……」
「何でも良い、わかってる事があれば今すぐ教えてくれ」
ドスの効いた低い声に魂まで縮み上がる心地になる。元の上司とは別の方向で怖い。伊地知は顔にも体にも汗をかきつつ、慌てて暫定の調査結果がまとめられた紙をめくった。
「ええと、この呪物が元々保管されていた寺、といっても邪宗ですが、そこは子授けを利益としていたようです。ですからこれらの呪物も元来、子を成させる、産めよ殖やせよを目的としたもののようで……」
そこまで言うと額の汗を拭った。
「もしかすると、妊娠が解呪のトリガーかもしれない、という推測が……」
日下部の首がぐるりと回る。伊地知の喉から引きつった悲鳴が漏れた。
「詰みじゃねえか」
瞳孔の開いた目でこちらを見てくる。怖い!しかし男同士が呪われているので、この推測が正解なら本当に詰みなのは間違いない。だからもうちょっと前向きな方向で調べがついてから話をしたかったわけなのだが。
日下部は何かをぶつぶつ呟きながら机を指で叩き、忙しなく足を揺らしている。本当に怖い。伊地知は心底速やかに退出したかったがそうもいかない。どの行動、どんな一言で日下部が爆発するかわからなければ一歩も動けない。鳴り響く処刑へのカウントダウンを聞いているうちに、こつん、と日下部の指が動きを止めた。
「よーしわかった。物は試しだ、伊地知オマエ子供になれ」
「…………はい?」
是非もない。伊地知は三十路を目前にして子供を演る事となった。
「……はい、潔高ちゃん。ご飯の時間ですよ」
「えっと、は、はい……」
「赤子が喋るんじゃねえ」
「あ、ば……ばぶ………(怖……)」
死んだ眼をしてベビースプーンを持つ寛見ママ、同じく半ば死んだ眼をして隣に座る潔高ちゃん。その胸元には申し訳程度のベビー要素としてよだれ掛けが装着されている。そしてその二人を見守る位置に座る篤也パパ。控えめに言って地獄の食卓が展開されている。妊娠は無理だから、子供(概念)ができれば呪物も何となく騙されてくれるんじゃないか?という日下部の迷案が何故か採用された。日車も限界のようだ。哺乳瓶は用意が間に合わなかった事に伊地知は心底胸を撫で下ろした。
食卓には離乳食が並んでいる。具材の細かく刻まれたひき肉の肉じゃが、鮭が入っているように見える粥。こんな状況での食事なんてレトルトの離乳食で良さそうなところ、せめてもの愛情を、とこれらは新米ママ(仮)の日車が有り物でせっせと手作りしたらしい。妙な部分で真面目を発揮してくる。しかし見た目は完全に離乳食だが、食欲を唆る良い匂いがするのは間違いない。日下部がほんの少しだけ羨ましそうな顔をしているのは気づかなかった事にした。
「はい、あーん」
日車が(引きつった)笑顔で粥を乗せたスプーンを口元へ運んでくる。ちらっと目だけで日下部を見れば、食え、という圧力の籠もった視線が伊地知を射抜く。一瞬で目線を逸らして、ええいままよ!と口を開けた。
ぱくっ。
一匙を口に入れた瞬間、伊地知の中に存在しない乳児期の記憶が蘇った。
柔らかな布に包まれる感覚。規則正しく響くまな板の音と、ことこと煮える鍋の音。ぼやけた視界の中にある、台所に立つ大好きな背中。穏やかな夕陽の光と背中の温かさ。
毎日寝不足になりながらも、息子の健やかな成長を願って手作りされた食事。どちらも大人の舌には物足りないはずの薄味ながら、鮭入りの粥は橙色が目にも鮮やかで、塩気は控えめながら魚の旨味がじわりと広がり、軟らかく煮崩された米が口の中で解けて喉へ落ちていく。続いて差し出された肉じゃがは、鶏のひき肉を更に細かく解して、それを食べこぼさないよう弛くとろみがつけられていた。煮込まれた人参は舌で押せば潰れるほどに軟らかい。出汁と素材の甘味が体に沁み渡る。
かけられた手間と時間がそのまま形になった、愛情たっぷりの懐かしい気がする味。
「ば、ぁ、ばぶ……!(おかあさん……!)」
「えっ、伊地知く……じゃなかった潔高ちゃん、何故泣いている?!まだ熱かったか?やはり大人の口には合わなかったか?」
「おい伊地知……じゃなかった潔高ちゃん、そこまで赤ん坊再現しなくてもいいっつーの!」
涙が勝手に溢れてきた。ぼろぼろと泣きながら伊地知は再び口を開ける。戸惑いながらも日車がまたスプーンを運ぶと、伊地知は迷わず口に入れた。ぐずりながら二品を完食し、その後に恐る恐る出されたすり下ろしりんごのほんのりとした温かさにまた泣いた。
伊地知も疲れていた。
両親(仮)が唖然とする中、腹も心も満たされた潔高ちゃんはその夜、二枚の厚い胸板に挟まれてぐっすりと眠った。はて、何か大切な事を忘れているような……。
翌々日。日車は欠勤し、伊地知は更にやつれた日下部に「全部忘れろ」と詰められてまた身の細る思いがした。呪いは解けなかった。