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ベトナム人グループが民家で栽培していた大麻草(2023年7月、群馬県渋川市)=同県警提供

摘発外国人比率トップ
群馬県の現場を追う

2024年3月29日 10:00

ベトナム人グループが民家で栽培していた大麻草(2023年7月、群馬県渋川市)=同県警提供

大麻草1000本栽培、2億円分の銅線窃盗――。外国人グループによる大型犯罪の摘発が群馬県で目立っている。県内の全摘発者に占める外国人の割合は1割を超え、5年連続で全国トップ。不法滞在者らがSNSを通じて集まり、犯罪行為へ加わっていく構図が浮かぶ。外国人材の受け入れ「先進県」で何が起きているのか。現場を追った。

「ブーン」。群馬県渋川市の一軒家の2階。扇風機の音が響く部屋には鉢植えが並んでいた。葉を茂らせていたのは違法薬物の大麻草。県警は2023年7月、ベトナム人の男女16人を逮捕した。この住宅を含め6カ所で1000本超の大麻草が見つかった。

現場は閑静な住宅街の一角だ。近隣の女性(78)は一軒家から出てきた外国人の青年と挨拶を交わしたことがあったという。「夏でも雨戸を開けず、エアコンの室外機3台が常に動いていておかしいと感じていた。まさか大麻とは」

外国人犯罪を管轄する県警国際・捜査支援分析課の木村光男次席は「厳正に取り締まり県民の安全安心を確保する」と強調する。

製造業が盛んな地域を中心に、1990年代から日系人や技能実習生らを受け入れてきた群馬県。住民の外国人割合(23年1月時点)は3.4%で、東京都(4.2%)、愛知県(3.7%)に続き3番目に高い。主要産業を支える貴重な役割を担ってきた。

一方、近年は治安情勢に影を落とし始めている。23年はベトナム人による住居侵入窃盗事件(被害総額約1210万円)、カンボジア人による太陽光発電用銅線の窃盗事件(同約2億5400万円)といった組織的な犯罪が目を引いた。

カンボジア人グループが太陽光発電施設の送電用ケーブルを盗んだ事件で押収された銅線(2023年8月、群馬県)=同県警提供

県内の全摘発者に占める外国人の割合は上昇しており、19年にそれまで全国で最も高かった東京都などを上回った。23年は11.1%を占め、全国(4.8%)の2倍を超える。「摘発者の10人に1人が外国人」という特異な状況はなぜ生じているのか。

23年の事例をひもとくと、4割は不法残留といった入管法違反だった。群馬県内の居住者が在留資格を失ったケースに加え、県外から流入した不法滞在者らの存在が比率を押し上げている。呼び水の一つとして浮上しているのが、同胞が集うSNSだ。

「レストラン1人、時給1250」「車はラジオ付き」。「GUNMA」と冠するベトナム語のフェイスブックグループには、不法就労のあっせんとみられる職業紹介や違法売買が疑われる車の写真があふれる。偽造在留カードの売買もSNSで完結する。

SNSで知り合った仲間を頼って群馬に入る不法滞在者らは、同胞が暮らすアパートに同居する傾向がある。生活も困窮するなか、SNS上の情報に唆され集団で犯罪の道へ――。治安を脅かすいびつな構造が形成されている疑いがある。

一部は勤務先を失踪した元技能実習生だ。言葉の壁や過酷な労働環境を背景とする失踪者は22年に全国で約9千人。外国人労働者問題に詳しい神戸大の斉藤善久准教授は「転職の自由化や支援拡充など、失踪者を生まない制度に改善しなければ根本的には解決できない」とみる。

政府は技能実習に代わる新制度「育成就労」を導入する。失踪の一因となっている転職制限を緩和するが、関連法案の成立・施行にはまだ時間がかかる。いち早く治安悪化を防ぐためには、制度改正とは違ったアプローチが必要だ。

県警は摘発強化と共生策の両輪で抑止を図る。捜査面では通訳可能な人員を集中的に配置した国際・捜査支援分析課を昨春に新設した。一方で外国人向けのフットサル大会や柔道教室を開き、困り事は警察に相談してもらえるような関係構築を目指す。

群馬県警の重永達矢本部長は来日外国人による犯罪について「背景には不法就労者や不法滞在者らを受け入れて生活基盤を提供する者がいる実態がある」とみる。「治安対策上、考慮すべき課題として注視していかなければならない」と語る。

かつての技能実習生も動き出した。前橋市の自営業、ブイ・バン・フィさん(33)は昨夏、任意団体「群馬県ベトナム人協会」を立ち上げた。「過去の自分と同様に困っているベトナム人がうまく生活できるように支えたい」との思いがあった。

SNSを通じて暮らしのルールや行政の情報をベトナム語で発信。地域清掃などのボランティア活動を企画しているほか、旧正月(テト)の2月には、ベトナム料理や音楽を通じて地域住民らと交流するイベントを開いた。

協会のイベントに参加しているグェン・ヴァン・トゥアンさん(32)は特定技能1号として鋳造業の会社で働いている。「休日は家にいてばかりだったが、日本人と交流できる場があると日本語の練習にもなるし、何より楽しい」という。

ブイさん自身も技能実習生時代、職場で日本語の指示を理解できず怒られる日々が続き、失踪も頭をよぎった。「怪しいSNSを頼るのは簡単だが、逮捕されてからでは遅い」。ベトナム人が孤立しないよう、協会がよりどころになりたいと考えている。

取材・記事
木村梨香

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