カードショップの視点から見た新規TCG失敗の要因 2024ver

こんにちは、カードランドです。

0.初めに

今から2年半前にこのようなnoteを投稿しました。
スキ数を見て頂ければ一目瞭然ですが、当時少しばかり話題になったnoteです。

あれから2年半もの歳月が流れ、当時起こっていた所謂"ポケカバブル"も近年では落ち着きをみせ、業界全体として見ても少し前の言わば狂気じみたバブル景気も同様の状態になりつつあります。

そんな状況であった2024年は、歴代で最も新規TCGが発売された年と言えるかもしれません。
今年発売された新規TCGのタイトルは(発売予定も含む)

・ドラゴンボール フュージョンワールド
・ディヴァインクロス
・ドリームオーダー
・名探偵コナンカードゲーム
・ニンジャスレイヤーTCG
・hololive OFFICIAL CARD GAME
・開運コロシアム
・五等分の花嫁 カードゲーム
・ウルトラマンTCG

主なタイトルは以上になります。
各メーカー様から数多くの新規TCGが世に出ました。
一年でここまで多くの新規TCGが出た年は、TCG黎明期を除けば初めてかもしれません。
そして来年には

待望のガンダムカードゲームも発売が予定されており、その他にも"ラブライブシリーズカードゲーム"等の新作、
新規TCGと言えるかどうかは不明ですが、ロルカナの日本語版の販売を控えております。
今年ほどの数が出るかはわかりませんが、他にも複数タイトルが発売もしくは発表されると思われます。

このnoteでは、2年半前からの業界の変化や、今の新規TCGに求められているかもしれない要素を、カードショップ側の視点から書き綴ったnoteとなります。

1.1つの転換期となったワンピカード

マジック:ザ・ギャザリングがこの世に生まれ出て早31年、
日本初のTCGとされるポケモンカードが世に出て今年で28年、
この間に、TCG業界では幾つもの転換期と呼べる出来事がありました。

・遊戯王の登場(1999年)
・ガンダムウォーやデュエルマスターズを始めとした国産TCG黎明期(2003年)
・ヴァンガードの登場と躍進(2011年)
・タルキール覇王譚発売後のMTG国内市場の盛り上がり(2014年)
・遊戯王とデュエルマスターズの古参TCGの盛り上がり(2016年)
・ポケモンカードの人気爆発からポケカバブル(2018年)

大きな業界の転換期と言えば、この6つが挙げられると思います。

そして2022年の7月、今やTCG業界の最先端と言っても過言ではないワンピースカードゲームが登場します。

ワンピカードはまさしく大転換期と言える勢いと拡大っぷりを見せており、現状アクティブユーザーの数だけで見れば、間違いなく国内随一のTCGです。
前回のnoteは2022年2月の執筆となりますので、その時と今では大きく状況が異なります。
その一番の違いは、ワンピカードの存在です。

ワンピカードがここまでウケた要因は、

・戦略性があり奥深いゲームシステム、それでいて初心者や中級者がプレイが上手い熟練者にも勝てるバランスの丁度いい塩梅が取れている。
→ゲームプランや状況に応じたプレイ等、突き詰めれる要素が幾つもある為、やりごたえがありつつ、それでいて決してプレイヤーの腕だけが勝敗の全てを決するわけではなく、かといって運要素が強いわけでもない、今までにないバランスが奇跡的に成り立っている。


・素晴らしいゲームシステムに加え、カードデザインが神がかっていた

→上記noteでも述べている通り、開発のカードデザイン能力が業界内でもトップクラスに長けている為、常に新しい体験が出来つつも、過去のデッキも滞留し、常に多彩なメタゲームが環境を彩っている。

画像
冷静に強すぎるだろコイツら

もう発売から2年以上経つため、若干のやらかし調整ミスのようなことはありつつも、その都度禁止制限改定でユーザーの溜飲を下げている。
またその対応が多くのユーザーの共感を得ている為、ユーザーからの不満が生まれづらいどころか、むしろ「この公式は安心できるな」と更なる信頼を得ています。


ワンピカードがここまで広い層に広まり、公式イベントも毎回大盛況なのは、主にこの2点だと感じています。
よく「ワンピースという強い版権だから売れた」という方がおられます。
版権の強さが要素の1つを担っていることは否定しませんが、それだけで売れるほど、今のTCG業界は単純な構造にはなっていないと思います。
むしろ版権の強さというのは、売れる要素としては重要度がそこまで高くないと思っています。
版権が強かろうが、ゲームのバランスや宣伝不足等でダメになった例はいくつも存在します。
それこそワンピースは過去に何度もTCGとして販売されており、
直近では2016年にもTCGとして商品化しておりますが、早期に終了しています。

ゲームバランスや売り方等で動向が伸び悩んでしまうTCGが昔よりも多く感じます。
今のTCGメインユーザーは数年前よりも更に成熟しており、少しでも綻びがあるとすぐに見限られてしまう…そんな傾向が年々強くなっているように感じます。
何故そのような状況なのか?それは下記の要因が考えられます。

2.「ワンピで良くね?」という高いハードル

・ワンピカードの出来が良すぎる
・TCGユーザーの成熟度は年々高まっている

新規TCGは現代最強のTCGの1つであるワンピカードと戦う必要があります。

前提として、もう1つの現代最強TCGのポケモンカードとは、戦えないものだと思っています。
ポケモンカードは世界最強のIPと言えるポケモンという題材。
その上で他のTCGには絶対に真似できない、30年という長い歴史を兼ね備えています。
ですので、ポケモンカードと戦うというのは、些か現実的ではないように思えますし、戦う必要もないと思います。

しかし、ワンピカードは歴史だけで言うとまだ2年しか経っていないTCGです。
その為、これから出る新規TCGは全てワンピカードと比べられることになります。

もちろん現代最強TCGの一角であるワンピカードに勝つのは、それも現実的ではありません。
しかし、戦うことすらしないのであれば、ユーザーは「これやるならワンピで良くね?」となってしまいます。
既存・新規を含むTCGの中にも、既にこのような状況になってしまっているTCGもあるのではないでしょうか?

繰り返しになりますが、TCGユーザーは全体的に年々成熟しています。
例えば国産TCG黎明期から続けている人は20年選手、
当時数多くの新規層を生んだヴァンガードから続けている人は13年選手、
YouTuberによる宣伝で爆発的な伸びを見せたポケモンカードから入った新規層も、今でも続けているのであれば6年以上TCGを続けていることになります。

もちろんTCGをまだ触れたことのない人たちも沢山います。
しかし伊達に30年続いている業界です。
特にメイン層である20代~40代の人たちにとっては、TCGという文化に何かしらの形で触れたことがある人が大半を占めていると思います。
このような状況で、完全なる新規層を狙いに行くのは、些か険しい道のりだと思います。

そして現代は情報化社会でもあります。
強いデッキ、強い戦法は瞬く間に拡散され、すぐに色々なユーザーに届きます。
それと同じく、ゲームの出来も瞬く間に広まります。
「このゲーム○○一強らしいよ」「このゲーム右手ゲー(運ゲー)らしいよ」「1BOX〇〇〇〇円は安すぎる!」
誰もが一度は耳にしたフレーズだと思います。

特に「エコーチェンバー現象」も当てはまるかもしれませんが、現代のSNSはネガティブな表現の方が広まりやすく、拡散もされやすいです。
「封入率が悪い」「ゲームの出来が悪い」「商品が安売りされている」という悪評はあっという間に広まり、それを隠すことは現代の情報化社会では不可能です。

つまり、この超情報化社会に耐えうる強い構造持ったTCGでなければ、スタート地点にも立てないのではないかということです。

3.本格派からは逃げられない

TCGにおける本格派の定義は人それぞれだと思いますが、このnoteでは

・ゲームのルールが、基本的なTCGのルールから逸脱していない。
・競技としての下地が揃っている。

として定義いたします。

その上で、新規TCGはワンピカードのような本格派TCGとして、同じ土俵に立つべきなのでしょうか?
本格派TCGとしてのワンピカードの地位と戦うのであれば、あえて本格派を避けて別の路線で戦うべきなのでしょうか?

結論から言うと、本格派路線からは逃げられないと思っております。

まず、ポケカ大躍進の2018年頃から遡って、俗にいうヒットした新規TCGを見てみると…

・シャドウバースエボルヴ(2022年)
・ワンピースカードゲーム(2022年)
・ドラゴンボール フュージョンワールド(2024年)

この3タイトルが突出してヒットしたTCGであると言えます。
そして共通点としては、全て本格派のTCGであるということです。

このnoteでも言及したように、やはり近年の求められているTCG像は

・いかにやり応えがあり、TCGとして深みがあるのか。
・やり込むほどの価値を見出せるのか?やり込むに値するTCGなのか?

この2点がかなり重視されているように感じます。

近年のTCGユーザー達のカードゲームに対する競技的思考が強まっているのは、誰の目から見ても明らかです。
それを裏付けるのが、有料noteという文化の定着でしょう。
昔ではTCGの戦略や戦術、デッキレシピ等が有料で取引されるというのは、考えられない世界でした。
何故ならば、当時の競技プレイヤーというのは、多くても1割~2割程度でした。
特にTCGとしての規模が大きくなればなるほど顕著で、遊戯王やデュエルマスターズでは間違いなく5%以下、かなり小さい数字であったと思われます。

ショップの大会に出ることすら、少数派の時代でもありました。
そもそもカードショップという文化すら知らない方々が多数派の時代です。

しかし近年では、大会や公式イベントに出たことがない人、行った事がない方が少数派でしょう。
そして、勝ち負けを競うイベント、勝敗に応じた報酬としてのプロモーションカードが配られる機会も増えてきました。
今では、どんな人でもある程度の目標を持ってプレイしている方が大半だと思います。
例えばワンピカードで言うと、大多数の方がフラッグシップバトルでの上位入賞を目指して奮闘していると思います。
その結果が、有料noteという文化の定着でしょう。

4.ボドゲライクのカードゲームは成立するのだろうか?

一方で本格派とは別の路線を行くカードゲームも数多くあります。
近年ではボードゲームのようなゲーム、いわゆるボドゲライクのカードゲームが増えているように感じます。

ボドゲライクの特徴としては
・ターンをお互いで共有する。
・陣地や共有のカード等を取り合う勝利条件。
・カードを裏向きにする秘匿要素や、相手を欺くブラフ要素が強い。
・秘匿要素によって勝敗が決まる等、運要素が非常に強い。

このような要素が挙げられると思います。

結論から言うと、このような要素の強いボドゲライクのカードゲームは、商品としての継続は難しいのではないかと感じています。
理由としては、現代のTCGとボードゲームの方向性が噛み合っていないように感じるからです。

まずTCGビジネスというのは、インフラビジネスであるという点です。
インフラビジネスであるということは、継続性が求められるコンテンツということです。
TCGにおける継続性とは、ゲーム環境の維持やイベント運営の維持、その他全ての要素を1つのTCGとして、安定して続けていくことを定義します。

一方でボードゲームというのは、継続性よりも刹那的な娯楽性が高い性質があると思います。
その最たる例がボードゲームカフェと呼ばれる業態のお店で、そのようなお店では、およそ一日では遊びきれない程の種類のボードゲームが置かれており、日替わりで色々なゲームを触れることが出来ます。
ボードゲームカフェで1年間同じゲームを遊んでる方はほとんどいらっしゃらないと思います。

このように、TCGとボードゲームというのは目指している方向性がそもそも違うので、TCGにボドゲの要素を足してボドゲライクにした所で、TCGに一番必要な継続性が維持できないのだと思います。
ボドゲライクのカードゲームでは定期的に拡張商品を出し続けることは難しく感じますし、継続してユーザーに商品を取ってもらうことも難しいと思います。
だからこそ、ボドゲライクのカードゲームは総じて長期での展開に苦戦している印象を持ちます。

以上の事から、ボドゲライクのカードゲームというのは、TCGというビジネスとは似て非なる商品であり、TCGのような売り方が継続できない以上、新規TCGの企画としては成り立っていないように感じます。

5.これからの新規TCGに求められる事

前回のnoteでは

・封入率をミスってはダメ
・2弾の作り方は気を付けましょう

主にこの2点を上げさせて頂きました。
その上で、ワンピカードによる転換期を迎えたTCG業界では、更に多くの事が求められます。

・ワンピカードと本格派TCGとして戦う覚悟
・TCGとしての継続性が見込める商品体制と、長く遊べるようにカードのインフレを抑制するカードデザイン

繰り返しになりますが、新しいTCGを世に広めるためには、ワンピカードとの戦いは避けては通れません。
よほど凄いことが起こらない限り、勝つことはできないと思います。
勝てないのが当たり前なので、負けても良いんです。
負けたとしても全てが0になるわけではなく、ゲームとしての強み、普遍的な面白さがあればそこには絶対にファンが定着します。
戦いもせずに逃げても、そこに楽園はありはしません。

もちろんこれは、ワンピカードを展開しているBANDAI様にも言えることです。
基本的にTCGユーザーは箱推しの方は多くはないと思います。
客層の取り合いという視点だけで見れば、ドラゴンボールだろうが、ガンダムだろうが、ある意味ワンピカードの敵でありライバルです。

6.競技化が進みすぎていることへの懸念

最後に近年の本格派志向、競技化志向について、懸念点がないわけでもありません。
それは、大会景品の高額化が行き過ぎているのではないかという点です。

大会景品の高額化は、上位記念品として価値を付加するメーカー様と、その付加価値に値段を付ける市場側、二つの側面から構成されています。

現代のTCG業界では、それがTCGの一種のステータスのような側面があることは、否定できないと思います。
しかしその結果、複数のアカウントを作り大会に出ようとする行為や、他人の身分証を使って大会に出ようとしたりするなど、もはやモラルの低下という言葉では収まらないレベルの、また景品の持ち逃げや記念品の周回ループ、その他にも犯罪のような出来事も多々起こってしまっているのが現状です。

もちろんメーカー側も不正対策に努力してくださっていますし、TCGを運営していくにあたって、カードとしての付加価値が必要なことは理解しています。
しかし、必要以上の付加価値を付けて盛り上げようとする事は、色々なデメリットも内包しています。

特に近年シリアル入りカードというのが存在します。
それを大会の上位記念品として配るシリアル争奪戦という大会が多く行われております。
このシリアル入りカードは、コレクション性の高さもそうですが、その番号が世界に1枚だけのカードということで特別感が非常に高い仕様です。

一方で、その特別感が行き過ぎてしまい、その結果、大会自体のマナーも荒れやすくなっています。
特に色々な方面から競技勢の方が集結するため、それ以外のカジュアルに楽しみたいプレイヤーの方々の居心地が悪くなりがちです。

もちろん、それ自体がずっと続くのであれば、そういった方々の間での需要が続くだけなので、TCGの運営としては問題はないと思いますが、大体がシリアル争奪戦が終わってしまった後に、大きな割合で離れてしまう方が多いので、反動でアクティブなユーザー数の減少が起こります。
それを他のユーザーの方々がイベントへの参加人数の減少という形で感じてしまい、結果として更にユーザーが減っていってしまう負のスパイラルに突入してしまうのだと思います。

必要以上に付加価値を付ける行為は、その後の商品展開にも大きく影響をしてしまうと思います。
大会に出る前はカードの購入が活発になりますが、オフシーズンに入った瞬間に需要が崩壊します。
この需要の崩壊は新商品の購買意欲にも直結しますので、必然的に新商品の売れ行きが鈍った結果、商品の安売りに繋がってしまいます。

また店舗大会レベルでシリアル争奪戦をするのは、店舗の防犯上やトラブルのリスクを考えても、深く検討をすべきなのではないかと思います。

7.最後に

この情報化社会+ワンピカードの旺盛の中、新しいTCGをヒットさせるというのは、昔に比べても相当難易度が高くなっていると思います。
それでも色々なメーカー様は挑戦をし続けると思いますし、その成功は間違いなくTCG業界を盛り上げていただける要素だと思います。
1つでも多くの成功を願ってはおりますが、一方で過去の教訓や時世を読む必要も大いにあると思います。

2022年に書いたnoteの時と変わらず、少しでも多くの新規TCGが、この荒波を乗り越えて、長く盛り上がってくれることを願います。

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コメント

1
葵組
葵組

「カードショップの視点から見た新規TCG失敗の要因 2024ver 」
2024年の新規TCGがいかに失敗したのか?を分析した記事であるかのような見出しですが、内容は新規TCGが参入することの難しさを語るものでありタイトルとは大きな乖離があります。
また、記事で語られているとおり記事の掲載された10月時点では発売されていないものや発売直後のものもあり2024年を総括するには時期が適当ではなく、またこの記事のタイトルのように失敗と断定するのも時期尚早でしょう。

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カードショップの視点から見た新規TCG失敗の要因 2024ver|カードランド秋葉原店
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